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秘密証書遺言とは?メリット・デメリットを徹底解説!どんな時に使うべき?

2025-07-19
目次

「遺言書を残したいけど、内容は誰にも知られたくない…」そうお考えの方もいらっしゃるかもしれませんね。そんな時に選択肢の一つとなるのが「秘密証書遺言」です。あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、遺言書の大切な形式の一つです。この記事では、秘密証書遺言がどんなもので、どんなメリットやデメリットがあるのか、そしてどのようなケースで利用されるのかを、他の遺言方法と比較しながら分かりやすく解説していきますね。

秘密証書遺言とは?3つの遺言方法を比較

遺言書には、主に「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3つの方式があります。秘密証書遺言は、この中でも少し特別な位置づけにあるんですよ。

秘密証書遺言の基本

秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも知られることなく、その「存在」だけを公証役場で証明してもらう遺言の形式です。遺言者本人が作成した遺言書を封筒に入れて封をし、公証人と証人の前で「これは私の遺言書です」と宣言することで成立します。内容のプライバシーを守りつつ、遺言書が存在することを公的に証明できるのが特徴です。

自筆証書遺言との違い

自筆証書遺言は、全文を自分で手書きする必要がありますが、秘密証書遺言は署名以外、パソコンでの作成や第三者による代筆も可能です。字を書くのが苦手な方や、手が不自由な方でも作成しやすいという違いがあります。一方で、自筆証書遺言は費用がかからず一人で作成できますが、秘密証書遺言は公証役場での手続きが必要で、手数料や証人も必要になります。

公正証書遺言との違い

公正証書遺言は、公証人が内容を聞き取って作成するため、法的に無効になるリスクが極めて低い、最も確実な方法です。しかし、作成過程で公証人と証人2名に遺言の内容が知られてしまいます。その点、秘密証書遺言は、公証人や証人にも内容を見せることなく手続きができるため、秘密を厳守したい場合に適しています。ただし、公正証書遺言は原本が公証役場で保管されるのに対し、秘密証書遺言は自分で保管しなければなりません。

3つの遺言方式の比較表
種類 秘密証書遺言
作成方法 パソコン・代筆も可能(署名は自筆)
証人 2名以上必要
費用 公証人手数料として一律11,000円
秘密性 内容を誰にも知られない
保管 自分で保管
家庭裁判所の検認 必要
無効になるリスク 内容の不備により無効になる可能性がある
種類 自筆証書遺言
作成方法 全文自筆(財産目録はパソコン作成可)
証人 不要
費用 原則無料(法務局での保管制度利用時は3,900円)
秘密性 内容・存在ともに秘密にできる
保管 自分で保管、または法務局で保管
家庭裁判所の検認 必要(法務局保管の場合は不要)
無効になるリスク 形式不備により無効になるリスクが高い
種類 公正証書遺言
作成方法 公証人が作成する
証人 2名以上必要
費用 財産額に応じて数万円~
秘密性 公証人と証人には内容が知られる
保管 原本を公証役場で保管
家庭裁判所の検認 不要
無効になるリスク 極めて低い

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言には、他の方式にはないユニークなメリットがあります。具体的に見ていきましょう。

遺言の内容を誰にも知られずに済む

最大のメリットは、なんといっても遺言の内容を秘密にできることです。遺言書を封筒に入れて封をしてから公証役場に持っていくため、手続きに立ち会う公証人や証人でさえ、中身を見ることはありません。家族間の関係が複雑で、生前に内容を知られたくないといった場合に有効な方法です。

パソコン作成や代筆が可能

自筆証書遺言と違い、本文はパソコンで作成したり、他の人に代筆を頼んだりすることができます。もちろん、遺言者本人の意思に基づいて作成することが大前提ですが、ご高齢で長い文章を手書きするのが難しい方や、パソコンの方が慣れている方にとっては大きなメリットと言えるでしょう。ただし、署名だけは必ず遺言者本人が自筆で行う必要がありますので注意してくださいね。

偽造や変造のリスクを減らせる

秘密証書遺言は、公証役場で「遺言者の遺言書である」という証明を受け、封印された状態で手続きが完了します。この公的な手続きを経ることで、遺言書の存在が明確になり、自筆証書遺言のように「本人が書いたものではない」といった疑義が生じにくくなります。また、封印されているため、第三者による偽造や変造のリスクを低減させる効果も期待できます。

秘密証書遺言のデメリットと注意点

メリットがある一方で、秘密証書遺言には知っておかなければならないデメリットも多く存在します。むしろ、こちらのデメリットの方が重要かもしれません。

形式不備で無効になるリスクがある

これが最も大きなデメリットです。秘密証書遺言は、公証人が内容を確認しません。そのため、遺産の指定方法が曖昧であったり、法律で定められた形式(例えば遺留分を侵害しているなど)に沿っていなかったりしても、誰も指摘してくれません。せっかく遺言書を作成しても、法的に無効になってしまう危険性が常に伴います。

作成に手間と費用がかかる

自筆証書遺言と違って、公証役場での手続きが必要です。まず、公証役場に支払う手数料として、財産額にかかわらず一律11,000円がかかります。また、手続きには証人が2名以上必要です。信頼できる友人などに頼むこともできますが、適当な人がいない場合は公証役場で紹介してもらうことも可能です(別途費用がかかります)。

紛失・発見されないリスクがある

公正証書遺言のように原本を公証役場で保管してくれるわけではありません。手続きが終わった遺言書は自分で持ち帰り、自己責任で保管します。そのため、どこに保管したか忘れてしまったり、火事などで失われたりする可能性があります。また、亡くなった後に相続人がその存在に気づかず、発見されないままになってしまうリスクもあります。

死後に家庭裁判所の「検認」が必要

遺言書が発見された後、相続人はすぐに開封することができません。家庭裁判所に提出して「検認」という手続きを受ける必要があります。検認とは、遺言書の形状や状態を確認し、偽造などを防ぐための手続きです。この手続きには申立てから1~2ヶ月ほど時間がかかることがあり、相続手続きをすぐに始められないというデメリットがあります。

秘密証書遺言はどんな時に使われる?

ここまで見てきたように、秘密証書遺言はメリットよりもデメリットの方が目立つため、実際にはほとんど利用されていません。日本公証人連合会の統計によると、公正証書遺言が年間約10万件作成されるのに対し、秘密証書遺言はわずか100件程度です。
では、どんな時に使われる可能性があるのでしょうか。それは、「自筆で遺言を書くのは難しいけれど、遺言の内容は公証人や証人を含め、誰にも絶対に知られたくない」という、非常に限定的なケースに限られるでしょう。例えば、特定の相続人に多くの財産を残したいけれど、そのことを巡って生前から親族間でトラブルになるのを避けたい、といった強い希望がある場合などが考えられます。

秘密証書遺言の作成方法

もし秘密証書遺言を作成する場合、どのような手順を踏むのでしょうか。厳格なルールがあるので、しっかり確認しましょう。

ステップ1:遺言書を作成し、署名・押印する

まず、遺言の内容を記した書面(証書)を作成します。パソコンで作成しても、誰かに代筆してもらっても構いません。ただし、最後に遺言者本人が必ず自筆で署名し、押印します。この押印は、後の手続きで使うので、どの印鑑を使ったか覚えておきましょう。

ステップ2:遺言書を封筒に入れ、封印する

作成した遺言書を封筒に入れます。そして、封をした箇所に、ステップ1で遺言書に押したのと同じ印鑑で封印をします。違う印鑑を使うと無効になってしまうので、注意が必要です。

ステップ3:公証役場で手続きをする

封印した遺言書を、証人2名以上とともに公証役場へ持参します。公証人と証人の前で、その封書を提出し、「これは自分の遺言書であること」と「(代筆者がいる場合は)筆者の氏名と住所」を口頭で伝えます(これを申述といいます)。

ステップ4:封紙に署名・押印して完成

公証人が、提出された日付と遺言者の申述内容を封紙(封筒)に記載します。その後、その封紙に遺言者本人、証人、そして公証人がそれぞれ署名・押印します。これで秘密証書遺言は完成です。完成した遺言書は遺言者が持ち帰り、大切に保管します。

まとめ

秘密証書遺言は、「内容を秘密にできる」「パソコン作成が可能」というメリットがありますが、「無効になるリスク」「手間と費用」「紛失のリスク」「検認が必要」といった多くのデメリットを抱えています。そのため、実務上はほとんど利用されていないのが現状です。
遺言の内容を確実に実現したいのであれば、専門家である公証人が作成に関与し、無効になるリスクが極めて低く、検認も不要な公正証書遺言が最も安心できる方法です。また、手軽に作成したい場合は、自筆証書遺言を作成し、法務局で保管してもらう「自筆証書遺言書保管制度」を利用すれば、紛失のリスクがなくなり、検認も不要になるのでおすすめです。
どの遺言方法がご自身の状況に合っているか、もし迷われたら、弁護士や司法書士などの専門家に相談してみてくださいね。

参考文献

日本公証人連合会 遺言

法務省 自筆証書遺言書保管制度に関するQ&A

秘密証書遺言のよくある質問まとめ

Q. 秘密証書遺言とは何ですか?

A. 遺言の内容を誰にも知られずに、その存在だけを公証役場で証明してもらう方式の遺言です。プライバシーを守りつつ、遺言の存在を公的に証明できる点が特徴です。

Q. 秘密証書遺言はどんな時に使われますか?

A. 遺言の内容を相続人を含め誰にも知られたくないが、偽造や紛失のリスクは減らしたい、という場合に適しています。また、自筆が難しい方がパソコン等で本文を作成したい場合にも利用されます。

Q. 秘密証書遺言のメリットは何ですか?

A. 主なメリットは、①遺言の内容を秘密にできる、②公証役場で存在が証明されるため偽造等のリスクが低い、③パソコンでの本文作成が可能(署名・押印は自筆)、という3点です。

Q. 秘密証書遺言のデメリットはありますか?

A. デメリットとして、①内容に法律的な不備があると無効になる可能性がある、②遺言書自体は自分で保管するため紛失のリスクがある、③死後に家庭裁判所の検認手続きが必要、という点が挙げられます。

Q. 秘密証書遺言と公正証書遺言の違いは何ですか?

A. 最も大きな違いは、遺言内容の有効性です。公正証書遺言は公証人が内容を確認するため無効になるリスクが極めて低いですが、秘密証書遺言は内容のチェックがないため不備により無効となる可能性があります。

Q. 秘密証書遺言を作成した後、家庭裁判所の検認は必要ですか?

A. はい、必要です。秘密証書遺言は、遺言者が亡くなった後、相続人が家庭裁判所に申し立てて「検認」という手続きを受ける必要があります。この手続きを経ないと遺言の内容を実現(執行)できません。

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