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不動産所得は事業所得にならない?二つの違いと判断基準を徹底解説!

2025-07-20
目次

個人事業主の方や不動産をお持ちの方にとって、確定申告は毎年悩むポイントですよね。「この収入は事業所得?それとも不動産所得?」と迷うことはありませんか?実は、この二つの所得区分は税金の計算方法や受けられる控除に違いがあるため、正しく理解しておくことがとても大切なんです。この記事では、事業所得と不動産所得の基本的な違いから、具体的な判断基準、確定申告での注意点まで、分かりやすく解説していきますね。

事業所得と不動産所得の基本的な違い

まず、所得税法では所得を10種類に分けています。その中でも特に混同しやすいのが「事業所得」と「不動産所得」です。それぞれの定義をしっかり押さえることが、理解への第一歩ですよ。

不動産所得とは?

不動産所得とは、とてもシンプルに言うと「不動産などを貸し付けること」によって得られる所得のことです。例えば、アパートやマンション、戸建て、駐車場、土地などを誰かに貸して得た家賃や地代などがこれにあたります。具体的には、以下のようなものが不動産所得の収入になります。

  • 家賃、地代
  • 権利金、礼金、更新料
  • 返還する必要のない敷金や保証金
  • 共益費として受け取る電気代や水道代

不動産所得の金額は、これらの総収入金額から、固定資産税や修繕費、減価償却費などの必要経費を差し引いて計算します。

【計算式】総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得の金額

事業所得とは?

一方、事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの「事業」から生じる所得を指します。ポイントは、「継続・反復・独立」して行われる仕事であることです。フリーランスのエンジニアやデザイナー、お店の経営などが典型的な例ですね。不動産業界で言うと、不動産の「売買」や「仲介」で得た収入は、資産の貸付けではなくサービスの提供にあたるため、事業所得に分類されます。

【計算式】総収入金額 - 必要経費 = 事業所得の金額

一番の違いは「活動内容」

結局のところ、二つの所得の一番大きな違いは「活動の内容」にあります。資産を「貸す」ことで対価を得るのが不動産所得、自ら「モノやサービスを提供する」ことで対価を得るのが事業所得と考えると分かりやすいかもしれません。下の表で違いを整理してみましょう。

所得区分 主な活動内容と具体例
不動産所得 資産(不動産、船舶、航空機)の貸付け
例:アパートの家賃収入、駐車場の賃料、土地の地代
事業所得 モノやサービスの提供(反復・継続・独立して行われるもの)
例:商品の販売、コンサルティング、不動産仲介・売買

不動産貸付けは事業所得にならないの?

「アパートを何十室も経営していたら、それはもう『事業』だから事業所得になるのでは?」と考える方も多いかもしれません。これは非常によくある疑問ですが、結論から言うと、不動産の貸付けによる所得は、その規模がどれだけ大きくなっても原則として「不動産所得」のままです。所得の種類が変わるわけではないんですね。ただし、規模によって税金の計算上の取り扱いが変わる「事業的規模」という大切な考え方があります。

不動産所得における「事業的規模」とは?

不動産の貸付けが一定の規模を超えると、税法上「事業的規模」として扱われます。これは、所得区分が事業所得に変わるという意味ではなく、あくまで不動産所得の計算をする上で、事業に近いものとして税制上の優遇措置を受けられるということを意味します。つまり、「事業的規模の不動産所得」という特別なカテゴリーに入るイメージです。

事業的規模の判断基準「5棟10室基準」

では、どのくらいの規模になれば「事業的規模」と判断されるのでしょうか。国税庁は、形式的な判断基準として以下の目安を示しています。これは「5棟10室基準」として知られています。

  • 独立した家屋(戸建て)の貸付け:おおむね5棟以上
  • アパート・マンション等の貸付け:おおむね10室以上

例えば、戸建てを3棟とアパートを4室貸している場合はどうでしょう?この場合、戸建て1棟をアパート2室分として換算し、「3棟×2室+4室=10室」となるため、事業的規模と判断されます。駐車場の場合は、5台でアパート1室分と換算されるなど、貸し付ける資産の種類によって計算方法が異なります。

実質的な判断基準も

「5棟10室基準」はあくまで形式的な基準です。この基準に満たなくても、例えば建物の管理状況や入居者募集の活動状況、人的・物的設備の有無などから、社会通念上、事業と呼べる規模かどうかを実質的に判断されることもあります。最終的な判断に迷う場合は、税務署や税理士に相談するのが安心です。

「事業的規模」になると何が変わる?

不動産貸付けが「事業的規模」と認められると、税金の計算でいくつかの大きなメリットがあります。節税に直結する重要なポイントなので、しっかり確認しておきましょう。

青色申告特別控除額が最大65万円に

確定申告には青色申告と白色申告がありますが、帳簿付けなどをしっかり行うことで様々な特典が受けられる青色申告がおすすめです。事業的規模の不動産所得で青色申告をすると、所得金額から最大で65万円を控除できます。
具体的には、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して期限内に申告すれば55万円、さらにe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存を行えば65万円の控除が適用されます。
一方、事業的規模でない場合の青色申告特別控除は最大10万円なので、その差は非常に大きいですね。

青色事業専従者給与が必要経費に

事業的規模の場合、生計を一緒にしている配偶者や15歳以上の親族が事業を手伝っている場合、その方へ支払う給与を「青色事業専従者給与」として全額必要経費にすることができます。事前に届出が必要ですが、家族に支払った給与が経費になるのは大きな節税メリットです。事業的規模でない場合は、この制度は利用できません。

貸倒損失・資産損失の取り扱いの違い

万が一の際の損失の取り扱いも有利になります。例えば、入居者が家賃を支払わずに回収不能になった場合(貸倒損失)や、賃貸物件を取り壊した場合(資産損失)の経費算入ルールが異なります。事業的規模の場合は、損失額の全額をその年の必要経費にできるなど、より柔軟な処理が認められています。

項目 事業的規模の場合
青色申告特別控除 最大65万円(電子申告等の要件あり)
青色事業専従者給与 適用あり(届け出た範囲内で全額経費算入可)
貸倒損失 回収不能となった年の必要経費に算入できる
資産損失(取り壊し等) 全額を必要経費に算入できる

こんなケースはどっち?迷いやすい事例

不動産に関連する収入でも、その内容によっては不動産所得ではなく事業所得や雑所得になる場合があります。いくつか具体的なケースを見ていきましょう。

食事付きの下宿

アパート経営と同じように部屋を貸していても、下宿のように食事の提供というサービスが伴う場合は、単なる場所の貸付けとはみなされません。これはサービスの提供がメインとなるため、事業所得または雑所得に分類されます。

コインパーキング・月極駐車場

駐車場の経営も内容によって異なります。アスファルト舗装などをして区画を貸すだけの月極駐車場は、土地の貸付けなので不動産所得です。一方、不特定の人が利用するコインパーキングのように、機械設備を設置し、駐車している車両の管理を行う場合は、場所の提供に加えて管理という役務提供が含まれるため、事業所得または雑所得となります。

確定申告での注意点

事業所得と不動産所得、あるいはその両方がある場合、確定申告ではどのような点に気をつければよいのでしょうか。

申告書の様式を間違えない

不動産所得や事業所得がある方が確定申告をする場合、「確定申告書B」を使用します。そして、収入や経費の内訳を記載した書類を添付する必要があります。青色申告の場合は「青色申告決算書」、白色申告の場合は「収支内訳書」です。これらの書類は「一般用(事業所得用)」と「不動産所得用」に分かれているので、ご自身の所得に合った様式を使いましょう。

両方の所得がある場合の申告

例えば、フリーランスとして事業所得があり、かつアパート経営で不動産所得もある、という方もいらっしゃるでしょう。その場合は、「青色申告決算書(一般用)」と「青色申告決算書(不動産所得用)」の両方を作成し、それぞれの所得金額を計算します。そして、確定申告書Bで二つの所得を合算して総所得金額を算出し、税額を計算することになります。

まとめ

今回は、事業所得と不動産所得の違いについて詳しく見てきましたが、いかがでしたでしょうか。最後に大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 事業所得と不動産所得の根本的な違いは「活動内容」です。資産を「貸す」のが不動産所得、「サービスを提供する」のが事業所得です。
  • 不動産の貸付けは、規模が大きくなっても原則として所得区分は「不動産所得」のままです。
  • ただし、「事業的規模(5棟10室基準など)」と認められると、最大65万円の青色申告特別控除が受けられるなど、税制上のメリットが非常に大きくなります。

ご自身の所得がどの区分に当てはまるのか、そして事業的規模のメリットを受けられるのかを正しく理解することは、適切な納税と節税の第一歩です。もし判断に迷うことがあれば、お近くの税務署や税理士などの専門家に相談してみてくださいね。

参考文献

国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)

国税庁 No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)

国税庁 No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分

国税庁 No.2072 青色申告特別控除

事業所得と不動産所得のよくある質問まとめ

Q. 事業所得と不動産所得の根本的な違いは何ですか?

A. 事業所得は事業活動から生じる所得、不動産所得は不動産の貸付けによる所得です。所得の源泉が「活動」か「資産」かで区別されます。

Q. 具体的に、どのようなものが事業所得と不動産所得に分類されますか?

A. 事業所得は小売業、サービス業、農業などから得られる所得です。不動産所得はアパートやマンションの家賃収入、土地や建物の賃料などが該当します。

Q. なぜ事業所得と不動産所得を区別する必要があるのですか?

A. 所得税法で所得の種類が区分されており、赤字が出た場合の損益通算のルールや、青色申告特別控除の要件などが異なるため、正しく区別して申告する必要があります。

Q. 不動産所得が「事業的規模」になると、何が変わりますか?

A. 青色申告特別控除で最大65万円の控除が受けられたり、青色事業専従者給与を経費にできたりするメリットがあります。一般的に「5棟10室基準」で判断されます。

Q. 赤字が出た場合、事業所得と不動産所得で取り扱いに違いはありますか?

A. はい、違いがあります。どちらも他の所得と損益通算できますが、不動産所得の赤字のうち、土地取得にかかる借入金の利子に相当する部分は損益通算の対象外となる場合があります。

Q. 青色申告特別控除の金額に違いはありますか?

A. はい、あります。事業所得は要件を満たせば最大65万円控除が可能です。不動産所得で同額の控除を受けるには「事業的規模」である必要があり、そうでなければ最大10万円の控除となります。

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