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相続人が立て替えた入院費用は債務控除できる?申告書の書き方も解説

2025-08-03
目次

ご家族が亡くなられた後、相続税の申告準備を進める中で、「そういえば、亡くなる前の入院費用を自分が立て替えていたな…」と思い出すことがありますよね。この立て替えた費用、実は相続税を計算するときにきちんと差し引くことができるんです。でも、申告書にどう書けばいいのか、特に「名称」や「弁済日」の欄で手が止まってしまう方も少なくありません。この記事では、相続人が立て替えた入院費用を相続税申告でどう扱うのか、申告書の書き方まで分かりやすく解説していきますね。

相続人が立て替えた入院費用は債務控除の対象になります

結論からお伝えすると、相続人が被相続人(亡くなった方)の入院費用を相続発生前に立て替えていた場合、その費用は相続税の「債務控除」の対象になります。これは、本来は被相続人自身が支払うべき費用だったためです。まずは、この債務控除の仕組みから見ていきましょう。

債務控除とは?

債務控除とは、相続税を計算する際に、亡くなった方が残したプラスの財産(預貯金や不動産など)の合計額から、マイナスの財産(借金や未払金など)を差し引くことができる制度のことです。亡くなった方が残した借金などを相続人が引き継ぐことになるので、その分は財産から引いて税金計算をしましょう、という考え方ですね。これにより、相続税の負担を軽減することができます。

債務控除の対象になるものの例 ・金融機関からの借入金
・未払いの税金(住民税や固定資産税など)
・未払いの医療費、入院費用
・クレジットカードの未払金
債務控除の対象にならないものの例 ・お墓や仏壇の未払金(非課税財産のため)
・保証債務(主債務者が返済不能な場合を除く)
・香典返しの費用

立て替えた入院費用が債務控除になる理由

相続人が被相続人の入院費用を立て替えた、ということは、被相続人から見ると「相続人からお金を借りて入院費用を支払った」のと同じ状況になります。つまり、被相続人には「相続人に対する未払金(返済義務)」という債務があったと考えられるのです。この債務は、相続開始時点で確実に存在したものなので、相続税の申告で債務控除の対象として計上できるというわけです。

扶養義務の範囲内だと認められない可能性も

一つ注意点として、親子や夫婦間での支払いは、単なる「扶養義務の範囲内での援助」とみなされ、立て替え(貸し借り)とは認めてもらえない可能性もゼロではありません。これを避けるためには、「これは立て替えであり、後で返してもらうつもりだった」ということを客観的に示す必要があります。親子間で借用書を交わすのは現実的ではないかもしれませんが、少なくとも、誰が、いつ、いくら支払ったのかが分かる領収書や振込記録などをきちんと保管しておくことが大切です。

相続税申告書への具体的な記載方法

では、実際に相続税の申告書に記載する方法を見ていきましょう。立て替えた入院費用は、相続税申告書の「第13表 債務及び葬式費用の明細書」に記入します。

債務の名称は何と書く?

申告書の「債務の内容」や「債務の種類」の欄には、誰が見ても分かるように具体的に書くことがポイントです。一般的には以下のような名称で記載します。

「未払医療費」や「入院費用未払金」といった名称で問題ありません。さらに具体的に「〇〇病院 入院費用(令和〇年〇月分)」のように記載すると、より丁寧です。

そして、「債権者」の欄には、お金を請求する権利のある人、つまり費用を立て替えた相続人の住所と氏名を記載します。ここを病院名にしないように注意してくださいね。

弁済日はいつを記載すればよいでしょうか?

今回のケースのように、相続発生日より前に相続人が立て替えている場合、弁済日(返済した日)の欄は空欄で問題ありません。なぜなら、相続が開始した時点では、この債務はまだ被相続人から相続人へ返済されていない「未弁済」の状態だからです。申告時点でまだ返済が行われていない債務について、弁済日を記載する必要はありません。

ちなみに、もし相続発生「後」に、相続人が被相続人の預金から病院へ直接入院費用を支払った場合は、その支払った日を弁済日として記載することになります。

申告書第13表の記載例

具体的な記載例を表にまとめましたので、参考にしてください。

項目 記載内容の例
債務の種類 未払金
債務の内容 〇〇病院 入院費用(令和〇年〇月分)
債権者の住所・氏名 (費用を立て替えた相続人の住所と氏名)
弁済年月日 空欄
金額 300,000円
債務を負担した相続人の氏名など 相続人 〇〇 〇〇

支払いタイミングで変わる医療費の取り扱い

被相続人の医療費は、誰がいつ支払ったかによって税務上の取り扱いが変わってきます。少し複雑ですが、整理して理解しておきましょう。

相続発生「前」に相続人が立て替えた場合(今回のケース)

これが今回のテーマです。被相続人から相続人への「未払金」として扱われ、相続税の債務控除の対象となります。

相続発生「後」に相続人が病院へ支払った場合

相続が始まった時点では、まだ病院に支払われていない「未払医療費」として被相続人の債務が存在しています。そのため、これも相続税の債務控除の対象になります。この場合の債権者は「病院」になります。

相続発生「前」に被相続人本人が支払った場合

被相続人本人が生前に支払いを済ませている場合、それは単に財産がその分減っただけですので、債務控除の対象にはなりません。その代わり、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得を申告する「準確定申告」において、医療費控除の対象とすることができます。

要チェック!債務控除と医療費控除の違い

ここでよく混同されがちな「債務控除」と「医療費控除」の違いをはっきりさせておきましょう。この2つは全く別の制度です。

相続税の「債務控除」

相続税を計算するときに、相続財産の総額から差し引くことができるものです。対象となるのは、あくまで亡くなった方が残した債務です。

所得税の「医療費控除」

所得税を計算するときに、その年の所得金額から差し引くことができるものです。対象となるのは、自分自身または「生計を一にする親族」のために支払った医療費です。

条件が合えばダブルで控除できるケースも!

実は、条件を満たせば「債務控除」と「医療費控除」の両方を適用できるお得なケースがあります。それは、被相続人と生計を一つにしていた相続人が、被相続人の入院費用を立て替えた(または相続後に支払った)場合です。

この場合、以下の2つの控除が可能です。

  1. 相続税の申告で、立て替えた入院費用を「債務控除」として相続財産から差し引く。
  2. 立て替えた相続人自身の確定申告で、その支払った入院費用を「医療費控除」として所得から差し引く。

「生計を一にする」とは、必ずしも同居している必要はなく、仕送りなどで生活を支えている場合も含まれます。この両方の制度を使えれば、大きな節税につながる可能性がありますので、ぜひ確認してみてください。

債務控除を認めてもらうための必要書類

税務署に債務控除を認めてもらうためには、その債務が確かに存在したことを証明する客観的な資料が必要です。以下の書類を大切に保管しておきましょう。

病院発行の領収書や請求明細書

いつ、どこの病院に、いくら支払ったのかが分かる最も重要な証拠です。入院費用の内訳が分かる明細書も一緒に保管しておくと万全です。

支払いの事実がわかるもの(通帳の記録など)

「誰が」支払ったのかを証明するために、現金での支払いよりも、立て替えた相続人の口座からの振込記録や、クレジットカードの利用明細などが残っているとより確実です。これらの記録もコピーして申告書に添付しましょう。

借用書や念書(あればより確実)

もし、立て替える際に親子間などで借用書や「立て替え分は相続財産から精算します」といった内容の念書を交わしていれば、それは非常に強力な証拠となります。ただ、これらがなくても、上記の領収書や支払い記録があれば認められることがほとんどですので、ご安心ください。

まとめ

最後に、今回のポイントをまとめます。

  • 相続人が相続発生前に立て替えた入院費用は、相続税の債務控除の対象になります。
  • 申告書(第13表)には、「未払医療費」などの名称で記載し、債権者は立て替えた相続人になります。
  • 相続発生前に立て替えた場合、弁済日の欄は空欄で提出して問題ありません。
  • 債務控除を証明するために、病院の領収書や支払った記録は必ず保管しておきましょう。
  • 被相続人と生計を一にしていた場合は、相続人の所得税の医療費控除も併用できる可能性があります。

相続税の申告は専門的な知識が必要な場面も多く、判断に迷うこともあるかと思います。もしご自身での申告に不安を感じる場合は、無理をせず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。大切なご家族を亡くされたばかりで大変な時期かと思いますが、落ち着いて一つずつ手続きを進めていきましょう。

参考文献

国税庁 No.4126 相続財産から控除できる債務

相続税申告での入院費用立替金の債務控除に関するFAQ

Q.被相続人の入院費用を相続人が生前に立て替えた場合、相続税の債務控除はできますか?また、申告書には何と記載しますか?

A.はい、債務控除の対象となります。これは被相続人が相続人に対して負っていた「借入金」と同様に扱われるためです。申告書の債務の名称欄には「立替医療費」や「未払医療費」などと記載するのが一般的です。

Q.相続税申告書の債務控除欄にある「弁済日」は、いつの日付を記載すればよいですか?

A.相続人が病院に費用を支払った「立替日」を記載してください。相続発生日(被相続人が亡くなった日)より前の日付になります。

Q.立て替えた入院費用の債務控除を認めてもらうには、どのような書類が必要ですか?

A.被相続人の債務であることを証明するために「病院の請求書や領収書」と、相続人が立て替えて支払ったことを証明する「銀行の振込明細」や「クレジットカードの利用明細」など、両方の書類を保管しておきましょう。

Q.相続発生後(亡くなった後)に、生前の入院費用を支払った場合はどうなりますか?

A.相続発生後に支払った場合も、被相続人が亡くなった時点で確定していた債務ですので、「未払医療費」として債務控除の対象になります。この場合の弁済日は、相続人が実際に支払った日を記載します。

Q.高額療養費の還付が見込まれる場合、債務控除額はどう計算しますか?

A.実際に支払った医療費の全額ではなく、後日還付される高額療養費や生命保険からの入院給付金などを差し引いた、実質的な負担額を債務控除の金額として計上します。還付金は別途、相続財産として計上する必要があるため注意してください。

Q.立て替えたお金が被相続人から返済されないまま亡くなった場合、どう考えればよいですか?

A.被相続人から返済されていない立替金は、相続人が被相続人にお金を貸していた状態(債権債務関係)とみなされます。そのため、被相続人の債務として相続財産から控除することができます。

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