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相続税、先に納税したら不足が判明!申告期限前の追加納付は可能?

2025-08-05
目次

相続税の申告と納税は、どちらも被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内という期限が定められています。期限ギリギリで慌てないように、先に納税だけ済ませておきたいと考える方もいらっしゃるかもしれませんね。でも、もし先に納税した金額に間違いがあって、実は納税額が足りなかった…なんてことになったら、どうすればいいのでしょうか。今回は、そんな「申告期限前に納税したけど、金額が不足していた!」という場合の対処法について、分かりやすく解説していきます。

申告期限前に納税額の不足に気づいた!どうすればいい?

相続税の計算を終えて、申告書を出す前に納税を済ませた。これで一安心…と思いきや、申告書を最終チェックしている段階で計算ミスが見つかり、納税額が不足していることに気づくケースは意外とあります。そんな時、「ペナルティがかかるのでは?」と不安になってしまいますよね。でも、ご安心ください。大切なのは「いつ気づいたか」というタイミングです。

結論:申告期限内なら追加納税で問題ありません

結論からお伝えすると、相続税の申告期限内であれば、不足している税額を追加で納付し、正しい内容の申告書を提出すれば全く問題ありません。

税務署では、申告期限までに「提出された申告書に記載された税額」と「実際に納付された税額の合計」が一致しているかを確認します。そのため、たとえ納税が2回に分かれたとしても、最終的な合計額が合っていれば大丈夫です。この場合、延滞税や過少申告加算税といったペナルティは一切かかりませんので、安心してくださいね。

なぜ「先に納税」という状況が起こるの?

そもそも、なぜ申告書を提出する前に納税するのでしょうか。それは、申告期限と納付期限が同じ日だからです。特に、相続財産が多くて納税額が高額になる場合や、相続人が複数いて納税額を分担する場合など、金融機関での手続きに時間がかかることを見越して、早めに納税を済ませておきたいと考える方が多いのです。そうして余裕をもって納税したものの、その後の最終チェックで、不動産の評価誤りや、計上し忘れていた財産が見つかるなどして、納税額の不足が判明することがあります。

申告期限を過ぎてしまったらどうなる?

もし、納税額の不足に気づいたのが申告期限を過ぎてからだった場合は、話が少し変わってきます。この場合は「修正申告」という手続きが必要になります。

修正申告を行うと、本来納めるべきだった期限(法定納期限)の翌日から、実際に納付した日までの日数に応じて「延滞税」という利息のようなペナルティが課されます。さらに、税務署からの指摘を受けて修正申告をする場合は、「過少申告加算税」という追加のペナルティが課されることもあります。ですから、いかに申告期限内に誤りに気づき、対応することが重要かが分かりますね。

申告期限前の追加納税と申告手続きの流れ

それでは、実際に申告期限前に納税額の不足に気づいた場合、どのような流れで手続きを進めればよいのか、具体的なステップを見ていきましょう。

ステップ1:正しい相続税額を再計算する

まずは、どこで計算を間違えたのかを正確に把握し、正しい相続税額を計算し直すことが最も重要です。財産の評価額は適切か、計上漏れの財産はないか、適用できる控除(配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など)を見落としていないかなど、一つひとつ丁寧に見直しましょう。ここで正確な税額を確定させることが、次のステップに進むための第一歩です。

ステップ2:不足している税額を追加で納付する

正しい相続税額が分かったら、最初に納付した金額との差額、つまり不足している税額を計算します。そして、その不足額を納付します。新しい納付書を用意し、追加で支払う金額を記入して、金融機関や所轄の税務署の窓口で納付手続きを行ってください。e-Taxを利用して電子納税することも可能です。最初に納付した際の領収証書は、念のため大切に保管しておきましょう。

ステップ3:正しい内容の相続税申告書を作成・提出する

追加の納税が完了したら、再計算した正しい金額を記載した相続税申告書を作成し、税務署に提出します。提出先は、亡くなられた方(被相続人)の最後の住所地を管轄する税務署です。提出方法は、税務署の窓口へ直接持参するほか、郵送やe-Taxでも可能です。この申告書の提出も、必ず申告期限内に済ませるようにしてください。

期限内に手続きするメリットと注意点

申告期限内にすべての手続きを完了させることには、大きなメリットがあります。一方で、いくつか注意すべき点もありますので、ここで整理しておきましょう。

期限内ならペナルティは一切なし!

最大のメリットは、なんといってもペナルティ(追徴課税)が一切かからないことです。申告期限後に必要となる修正申告では、延滞税や過少申告加算税がかかる可能性がありますが、期限内に自ら誤りを見つけて正しい納税と申告を行えば、そうした心配は全くありません。安心して正しい手続きを進めてください。

申告期限を境に、手続きの名称やペナルティの有無が大きく変わります。違いを理解しておくと、より期限内に対応することの重要性がわかります。

手続きの時期 納税額が少なかった場合
申告期限前 不足分を追加納付し、正しい申告書を提出(ペナルティなし)
申告期限後 修正申告(延滞税などのペナルティあり)

注意点:納税と申告は必ず期限内に行う

とても大切な注意点として、追加の納税と申告書の提出、その両方を必ず申告期限内に完了させる必要があります。例えば、追加納税は期限内に済ませたけれど、申告書の提出が1日でも遅れてしまった場合、「期限後申告」となり、無申告加算税延滞税の対象となってしまいます。逆も同様です。スケジュールには十分に余裕を持って、計画的に進めるようにしましょう。

もし納税額が多かった場合はどうする?

今までは納税額が「不足」していたケースを見てきましたが、逆に「多く払い過ぎていた」場合はどうなるのでしょうか。この場合も、気づいたタイミングによって手続きが異なります。

申告書提出前なら、正しい税額で申告するだけ

まだ申告書を提出していない段階で多く払い過ぎたことに気づいた場合は、シンプルです。正しい税額を記載した申告書を提出すればOKです。払い過ぎた税金は、申告手続きが完了した後に税務署から還付(返金)されます。申告書に還付金の振込先口座を記入する欄がありますので、忘れずに記載しましょう。

申告期限後なら「更正の請求」

申告期限を過ぎてから、税金を多く払い過ぎていたことに気づいた場合は、「更正の請求」という手続きを行います。これは、「税額を訂正して、払い過ぎた分を返してください」と税務署にお願いする手続きです。この手続きは、原則として法定申告期限から5年以内に行う必要があります。請求が認められれば、後日、指定した口座に過払い分の税金が還付されます。

期限内の手続きに関するQ&A

最後に、申告期限前の手続きについて、よくあるご質問をまとめました。

Q. 追加納税の納付書はどうすればいいですか?

A. 新しい納付書を用意して、追加で納める金額を記入して納付します。納付書は税務署や金融機関の窓口で入手できます。先に納税したことを証明するために、最初の納付書の控え(領収証書)は大切に保管しておいてください。

Q. 分割で納税することはできますか?

A. 申告期限内であれば、最終的に申告額と納税額の合計が合っていれば、複数回に分けて納税すること自体は可能です。ただし、手続きが煩雑になるため、できれば1回か2回にまとめて納付するのがおすすめです。もし一括での納付が難しい場合は「延納」という制度もありますが、こちらは担保の提供など一定の要件を満たした上で、別途申請が必要になります。

Q. 申告書に、先に納税したことを書く欄はありますか?

A. 相続税申告書には、いつ、いくら納税したかを具体的に記入する欄はありません。申告書にはあくまで最終的に確定した正しい税額を記載します。大切なのは、その申告額に見合う金額を、申告期限までにきちんと納付し終えていることです。納税した際の領収証書は、ご自身の記録として大切に保管してください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。申告期限前に相続税を納税した後に、納税額の不足に気づいたとしても、申告期限内であれば慌てる必要はありません。

不足している金額を追加で納税し、正しい内容で作成した相続税申告書を期限内に提出すれば、ペナルティは一切発生しません。最も重要なのは、「正しい申告」と「全額の納税」の両方を、申告期限までに完了させることです。

もし申告期限を過ぎてしまうと、「修正申告」となり、延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。間違いに気づいたら、一日でも早く行動することが大切です。相続税の計算は専門的で複雑な部分も多いため、少しでも不安に感じたら、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

国税庁 相続税及び贈与税の更生の請求手続き

国税庁「延滞税の計算方法」

相続税の申告前の納税・追加納税に関するよくある質問まとめ

Q.申告期限前に相続税を納税しましたが、申告書提出前に計算ミスが発覚し、納税額が不足していました。追加で納税してから申告書を提出できますか?

A.はい、可能です。申告期限内であれば、不足分の税額を追加で納付し、正しい金額を記載した相続税申告書を税務署に提出してください。

Q.相続税の追加納税はどのように行えばよいですか?

A.不足している税額分の納付書を作成し、金融機関や税務署の窓口で納付します。e-Taxを利用して電子納税することも可能です。申告書に記載する納税額と、実際に納付した合計額が一致するようにしてください。

Q.申告期限前に追加納税した場合、延滞税などのペナルティはかかりますか?

A.いいえ、かかりません。法定納期限(申告期限と同じ日)までに正しい税額の全額を納付すれば、延滞税は発生しません。最初の納付と追加の納付を合わせて期限内に完納すれば問題ありません。

Q.もし、先に納税した金額が多すぎた(過大だった)場合はどうなりますか?

A.正しい税額で申告書を提出すれば、納めすぎた税金(過納金)は後日、税務署から還付されます。申告書に還付金を受け取るための金融機関口座を記載する欄がありますので、忘れずに記入しましょう。

Q.相続税の納税と申告は、どちらを先に行うのが一般的ですか?

A.特に法律上の決まりはありませんが、申告書を作成して正確な納税額を確定させてから、その金額を納税する流れが一般的で間違いが少ないです。申告と納税は、どちらも相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。

Q.申告期限前に納税と申告を済ませる際の注意点はありますか?

A.申告内容に誤りがないか、財産の評価や特例の適用などを十分に確認することが最も重要です。納税を急ぐあまり計算ミスがあると、後で修正が必要になります。期限に余裕を持って準備を進め、不安な場合は専門家に相談することをおすすめします。

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