個人事業主の方が確定申告をする際、所得税の計算では「事業所得」と「不動産所得」を分けて計算しますよね。では、都道府県から納付書が届く地方税の「個人事業税」は、どのように計算されるのでしょうか。「不動産所得にも事業税はかかるの?」と疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、個人事業税の計算対象となる所得について、特に事業所得と不動産所得の関係性を中心に、わかりやすく解説していきます。
個人事業税ってどんな税金?
まず、個人事業税がどのような税金なのか、基本からおさらいしましょう。個人事業税は、個人が事業を行う際に、その事務所や事業所がある都道府県に納める地方税です。国に納める所得税とは別の税金で、事業を行うための道路や港湾などの公共サービスにかかる経費を、その利用度合いに応じて負担してもらう、という考え方に基づいています。
誰が納めるの?
個人事業税を納めるのは、都道府県内に事務所や事業所を設けて、地方税法で定められた「法定業種」に該当する事業を行っている個人の方です。言い換えると、法定業種に当てはまらない事業だけを行っている場合は、個人事業税の納税義務はありません。
法定業種と税率
法定業種は全部で70業種あり、ほとんどの事業がこれに該当します。事業の種類によって3つの区分に分けられ、それぞれ税率が異なります。不動産貸付業や駐車場業は、第1種事業に分類されます。
| 事業区分 | 税 率 |
| 第1種事業(37業種) | 5%(物品販売業、製造業、不動産貸付業、コンサルタント業など) |
| 第2種事業(3業種) | 4%(畜産業、水産業など) |
| 第3種事業(30業種) | 5%または3%(医業、弁護士業、デザイン業などは5%、あん摩・マッサージ業などは3%) |
いつ、どうやって納めるの?
個人事業税は、原則として8月と11月の年2回に分けて納付します。毎年8月頃に、都道府県の税事務所から納税通知書が送られてきますので、その通知書を使って金融機関などで納めます。所得税の確定申告を行っていれば、その情報が都道府県に共有されるため、原則として個人事業税のための別途の申告は必要ありません。
事業税の計算対象になる所得は?
ここからが本題です。結論から言うと、個人事業税は、所得税の確定申告における事業所得と不動産所得の両方が計算の基礎になります。所得税のように、この2つの所得を別々に考えるわけではない、という点が大きなポイントです。
所得税と事業税の所得計算の違い
個人事業税は、確定申告書に記載された事業所得や不動産所得の金額をもとに計算されますが、いくつか所得税の計算とは異なる点があります。特に重要なのが「青色申告特別控除」の扱いです。
所得税の計算では、青色申告をしていると最大65万円の青色申告特別控除を受けられますが、個人事業税の所得計算では、この青色申告特別控除は適用されません。そのため、確定申告書の所得金額に、差し引いた青色申告特別控除額を足し戻して、事業税の課税所得を計算する必要があります。
事業所得と不動産所得が両方ある場合
アフィリエイトなどの事業所得と、アパート経営による不動産所得の両方がある場合、個人事業税はどのように計算されるのでしょうか。この場合、それぞれの所得を合算した金額が、個人事業税の計算のスタートラインとなります。例えば、事業所得が300万円、不動産所得が100万円あれば、合計の400万円を基に税額計算が進められます。
不動産所得があっても事業税がかからないケース
「不動産所得も対象になるなら、アパート1室でも貸していれば事業税がかかるの?」と不安に思うかもしれませんが、必ずしもそうではありません。不動産の貸付や駐車場の経営が、事業税の課税対象となる「不動産貸付業」や「駐車場業」に該当するかどうかには、一定の基準が設けられています。
不動産貸付業・駐車場業の「事業認定基準」
不動産の貸付が事業的な規模で行われているかどうかを判断するために、各都道府県は「事業認定基準」を定めています。この基準を満たさない小規模な貸付は「事業」とは見なされず、不動産所得があっても個人事業税は課税されません。基準は自治体によって若干異なる場合がありますが、一般的には以下のような基準が設けられています。
| 不動産貸付業の認定基準(例) | 規模など |
| 一戸建ての貸家 | 10棟以上 |
| アパート・マンションなど | 10室以上 |
| 土地の貸付 | 契約件数10件以上 |
| 駐車場業の認定基準(例) | 規模など |
| 建築物・機械式駐車場 | 駐車可能台数に関わらず課税対象 |
| 青空駐車場など | 駐車可能台数が10台以上 |
これらの基準は、共有物件の場合、ご自身の持分に関わらず、物件全体の規模で判断される点に注意が必要です。
個人事業税の計算方法を具体的に見てみしよう
それでは、実際に個人事業税がどのように計算されるのか、その流れを見ていきましょう。計算式は少し複雑に見えるかもしれませんが、ポイントを押さえれば大丈夫です。
基本的な計算式
個人事業税の税額は、以下の計算式で算出されます。
(所得金額 - 各種控除) × 税率 = 個人事業税額
ここでの「所得金額」とは、前述のとおり、事業所得と不動産所得の合計額から青色申告特別控除を足し戻した金額などを指します。
年間290万円の事業主控除
個人事業税の計算で最も重要なのが、「事業主控除」として年間290万円が一律で控除される点です。これは、事業主の生活維持などを考慮した基礎控除のようなもので、課税対象となる所得が290万円以下の場合、個人事業税は課税されません。
なお、事業を始めた年や廃止した年で、営業期間が1年に満たない場合は、この事業主控除額は月割りで計算されます。
| 事業を行った月数 | 事業主控除額 |
| 12ヶ月 | 2,900,000円 |
| 6ヶ月 | 1,450,000円 |
| 1ヶ月 | 242,000円 |
その他の控除(損失の繰越控除など)
事業主控除のほかにも、青色申告者で事業所得が赤字になった場合に、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越せる「損失の繰越控除」など、いくつかの控除制度があります。これらの控除をすべて差し引いた後の金額に、業種ごとの税率を掛けて最終的な税額が決定します。
支払った事業税は経費になるの?
納めた個人事業税は、所得税の確定申告において必要経費として計上することができます。これは節税につながる大切なポイントなので、忘れずに処理しましょう。
経費に計上するタイミング
個人事業税を経費として計上できるのは、実際にその税金を納付した年です。例えば、令和5年分の所得に対する個人事業税を令和6年の8月と11月に納付した場合、その金額は令和6年分の確定申告で経費に算入します。会計処理上の勘定科目は「租税公課」となります。
所得税や住民税との違い
同じ税金でも、所得税や住民税は必要経費にすることはできません。これらは事業のコストではなく、個人として得た所得に対して課される税金だからです。一方、個人事業税は事業そのものに対して課される税金であるため、事業を営む上で必要なコストと見なされ、経費として認められています。
まとめ
今回は、個人事業税と事業所得・不動産所得の関係について解説しました。最後に、大切なポイントを振り返っておきましょう。
・個人事業税は、国税の所得税とは異なり、事業所得と不動産所得を合算して計算されます。
・ただし、不動産貸付が一定の事業認定基準に満たない場合は、不動産所得があっても事業税の課税対象外となります。
・事業税の計算では、青色申告特別控除は適用されませんが、年間290万円の事業主控除があります。
・課税対象の所得が290万円以下であれば、個人事業税はかかりません。
・納付した個人事業税は、所得税の確定申告の際に必要経費(租税公課)として計上できます。
所得税と個人事業税では所得の考え方に違いがあることを理解し、正しい納税と経費計上を心がけましょう。
参考文献
個人事業税と不動産所得に関するよくある質問まとめ
Q.個人事業税は、不動産所得にもかかりますか?
A.はい、事業として行われている不動産貸付や駐車場経営による所得(不動産所得)は、個人事業税の課税対象となります。所得税のように事業所得と不動産所得が必ずしも別扱いになるわけではありません。
Q.不動産貸付が「事業」とみなされる基準はありますか?
A.一般的に「事業的規模」であるかが判断基準となります。例えば、アパートなら10室以上、戸建てなら5棟以上を貸し付けている「5棟10室基準」が目安とされますが、最終的には個々の実態に応じて総合的に判断されます。
Q.所得税と個人事業税で、所得の扱いはどう違うのですか?
A.所得税では、事業所得と不動産所得は明確に区分されます。一方、地方税である個人事業税では、不動産貸付や駐車場業が「事業」と認定されれば、その所得は事業所得と同じように扱われ、課税対象に含まれます。
Q.個人事業税の計算に不動産所得はどのように含まれますか?
A.事業と認定された不動産所得は、事業所得など他の対象所得と合算されます。その合計額から事業主控除(年290万円)などを差し引いた金額に、定められた税率を掛けて税額が計算されます。
Q.不動産所得が赤字の場合、事業税はかからないのでしょうか?
A.事業と認定された不動産所得の赤字は、他の事業所得と損益通算ができます。通算後の所得金額が事業主控除(年290万円)以下になれば、個人事業税は課税されません。
Q.個人事業税のために、確定申告とは別に申告が必要ですか?
A.所得税の確定申告をしていれば、その情報が都道府県に共有されるため、原則として個人事業税の申告は不要です。確定申告書の「事業税に関する事項」欄に正しく記載することが重要です。