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土地のルール、区域区分と用途地域の違いをわかりやすく解説します!

2025-08-18
目次

お家を建てたり、土地を活用したりするときに、ふと耳にする「区域区分」や「用途地域」といった言葉。なんだか似ているようで、どう違うのかよくわからない…と感じる方も多いのではないでしょうか。これらのルールは、私たちが快適に暮らすための街づくりに欠かせない、とても大切なものなんです。この記事では、区域区分用途地域の違いやそれぞれの役割について、初心者の方にも分かりやすく、丁寧にご紹介していきますね。

そもそも都市計画法って何?

まず、区域区分や用途地域を理解するための大前提となるのが「都市計画法」という法律です。これは、みんなが安全で快適に暮らせる街をつくるための、いわば「街づくりの設計図」に関するルールを定めた法律なんですよ。

計画的な街づくりのためのルール

もしも何のルールもなく、みんなが好きな場所に好きな建物を建ててしまったらどうなるでしょう?きっと、家のすぐ隣に大きな工場ができてしまったり、道が狭くて消防車が入れなかったり、公園や学校のない不便な街になってしまいますよね。そうした事態を防ぎ、道路や公園、下水道などのインフラを整備し、住みやすい環境を整えるために、都市計画法は存在しています。

都市計画の3つのエリア

都市計画法では、まず日本全国の土地を大きく3つのエリアに分けて、街づくりの方針を決めています。

都市計画区域 すでに市街地であるか、これから計画的に街づくりを進めていくエリアです。多くの人が住む市街地がこれにあたります。
準都市計画区域 都市計画区域ではありませんが、将来的に市街地化する可能性があり、ある程度の建築ルールを設けておいた方が良いと判断されたエリアです。
都市計画区域外 上記以外のエリアで、基本的には山林や田園地帯など、今のところ積極的に街づくりを行う計画がない場所です。

区域区分とは?街の大きなゾーニング

次に、先ほどの「都市計画区域」の中を、さらに大きな方針で分けたものが「区域区分」です。これは「線引き」とも呼ばれていて、街を「積極的に発展させるエリア」と「むやみに開発しないエリア」に分ける、とても重要な役割を持っています。

市街化区域:街をどんどん発展させるエリア

市街化区域」とは、すでに家やお店などがたくさん建ち並んでいる市街地や、今後おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を進めていくべきエリアのことです。インフラ整備も積極的に行われ、人々が住んだり働いたりするための開発が奨励されています。私たちが普段生活している街の多くは、この市街化区域にあります。

市街化調整区域:開発を抑えるエリア

一方、「市街化調整区域」は、街が無秩序に広がりすぎるのを防ぐためのエリアです。豊かな自然環境や農地などを守ることを目的としており、原則として、新たに住宅や商業施設などを建てることはできません。ただし、農家さんの住宅など、特定の条件を満たせば建築が許可される場合もありますが、開発には厳しい制限がかけられています。

非線引区域:まだ決まっていないエリア

「非線引区域(ひせんびきくいき)」とは、市街化区域にも市街化調整区域にも分けられていない、いわば「どちらでもない」エリアです。都市計画区域内ではあるものの、すぐに市街化を進めるか、それとも抑制するかの方針がまだ定まっていない地域を指します。地方の都市部などに見られます。

用途地域とは?もっと細かい土地の使い方のルール

そして、主に「市街化区域」の中を、さらに細かく土地の使い方で分類したものが「用途地域」です。例えば、「ここは静かな住宅街にしましょう」「ここは商業施設が集まる賑やかな場所にしましょう」「ここは工場を建てるための場所にしましょう」といったように、それぞれの土地の使い道(用途)を具体的に定めたルールです。

用途地域は全部で13種類

用途地域は、大きく分けて「住居系」「商業系」「工業系」の3つのグループに分類され、さらに全部で13種類に細分化されています。この種類によって、建てられる建物の種類や大きさ、高さなどが細かく決められているんですよ。

住居系の用途地域(8種類)

住むことを主な目的としたエリアです。静かな環境を守るための厳しい制限がある地域から、お店や事務所も建てられる便利な地域まで、8つの種類があります。

第一種低層住居専用地域 最も規制が厳しい、低層住宅のための閑静な住宅街です。小規模な店舗や事務所を兼ねた住宅も建てられますが、コンビニなどは建てられません。
第二種低層住居専用地域 主に低層住宅のための地域です。第一種より少し規制が緩やかで、150㎡までのコンビニなどの店舗が建てられます。
第一種中高層住居専用地域 中高層のマンションなどが中心の住宅街です。病院や大学、500㎡までの店舗などが建てられます。
第二種中高層住居専用地域 主に中高層住宅のための地域です。1,500㎡までの店舗や事務所も建てられ、より利便性が高まります。
第一種住居地域 住環境を守るための地域ですが、3,000㎡までの店舗や事務所、ホテルなども建てられます。
第二種住居地域 主に住環境を守るための地域です。カラオケボックスやパチンコ店なども建てられるようになり、商業的な色合いが強まります。
準住居地域 幹線道路沿いなどに見られ、自動車関連施設などと住居が調和して立地する地域です。
田園住居地域 農業の利便性を高めつつ、低層住宅の良好な環境を守るための地域です。農産物の直売所などが建てられます。

商業系の用途地域(2種類)

多くの人が集まり、買い物をしたり楽しんだりするためのエリアです。

近隣商業地域 周辺に住む人々が日用品の買い物をするための商店街などが想定される地域です。
商業地域 デパートや映画館、銀行などが集まる、いわゆる都心や駅前の繁華街です。

工業系の用途地域(3種類)

工場の操業を主な目的としたエリアです。

準工業地域 主に軽工業の工場やサービス施設が立地する地域です。危険性の高い工場でなければ、ほとんどの種類の建物を建てられます。
工業地域 どんな工場でも建てられる地域です。住宅も建てられますが、学校や病院、ホテルなどは建てられません。
工業専用地域 工場専用の地域です。住宅や店舗、学校などを建てることはできません。

区域区分と用途地域の違いを整理

ここまで見てきたように、区域区分用途地域は、どちらも都市計画法に基づく土地利用のルールですが、その役割やスケールが異なります。ここで一度、両者の違いを整理してみましょう。

階層構造で理解しよう

この2つの関係は、大きな箱と、その中の小さな仕切りでイメージすると分かりやすいですよ。

まず「都市計画区域」という大きな枠組みがあります。
その中を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分ける大きな仕切りが、区域区分です。
そして、「市街化区域」という仕切りの中を、さらに13種類の部屋に細かく分けるのが用途地域、というわけです。

つまり、区域区分という大きな方針のもとで、用途地域という具体的なルールが定められている、という階層構造になっています。

目的と決定者の違い

目的や誰が決めるかにも違いがあります。

区域区分 目的は「市街化を促進するか、抑制するか」という広域的な視点での方針決定です。そのため、主に都道府県が決定します。
用途地域 目的は「土地の具体的な使い方(建物の種類など)」を定めることです。より地域の実情に合わせた計画が必要なため、主に市町村が決定します。

自分の土地の区域区分や用途地域を調べる方法

ご自身の土地や、これから購入を考えている土地がどの区域区分用途地域に指定されているかを知ることはとても大切です。調べる方法は主に2つあります。

市区町村の役所で確認する

最も確実な方法は、その土地がある市区町村役場の「都市計画課」や「まちづくり課」といった担当部署の窓口で確認することです。訪れる際は、土地の住所や地番がわかるもの(登記簿謄本や地図など)を持っていくと、お話がスムーズに進みますよ。

インターネットで調べる

最近では、多くの自治体がホームページ上で都市計画図や用途地域マップを公開しています。「〇〇市 用途地域」のように検索すれば、簡単に見つけられることが多いです。手軽に確認できるので、まずはこちらで調べてみるのも良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。区域区分用途地域の違いについて、お分かりいただけましたか?

簡単にまとめると、

  • 区域区分は、街を「発展させる場所」と「守る場所」に分ける、大きな方針。
  • 用途地域は、「発展させる場所」の中をさらに細かく分け、「どんな建物を建てられるか」を決める具体的なルール。

ということになります。これらのルールは、私たちの住環境や、土地の価値にも大きく関わってきます。不動産の購入や売却、相続などで土地に関わる際には、その土地がどのようなルールのもとにあるのかをしっかりと把握しておくことが、とても大切になりますね。

参考文献

国税庁 No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除

国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

区域区分と用途地域のよくある質問まとめ

Q.区域区分と用途地域の根本的な違いは何ですか?

A.区域区分は都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分ける大枠の線引きです。一方、用途地域は市街化区域内をさらに細かく分け、建てられる建物の種類や規模を具体的に定めたルールです。区域区分が「まちづくりの大きな方針」、用途地域が「具体的な土地利用のルール」と考えると分かりやすいです。

Q.そもそも区域区分とは何のためにあるのですか?

A.区域区分は、無秩序な市街化を防ぎ、計画的なまちづくりを進めるためにあります。「市街化区域」に開発を集中させ、「市街化調整区域」では原則として開発を抑制することで、効率的な公共施設の整備や自然環境の保全を図るのが目的です。

Q.用途地域にはどんな種類があるのですか?

A.用途地域は、住居系、商業系、工業系の3つに大きく分けられ、さらに全13種類に細分化されています。例えば、「第一種低層住居専用地域」は閑静な住宅街、「商業地域」は店舗やオフィスが集まるエリア、「工業専用地域」は工場が立地するエリアといったように、土地の利用目的が定められています。

Q.自分の土地の区域区分や用途地域はどうやって調べられますか?

A.お住まいの市区町村の役所(都市計画課など)で確認できます。多くの場合、役所のウェブサイトで公開されている都市計画図やGIS(地理情報システム)を使ってオンラインで手軽に調べることも可能です。

Q.市街化調整区域では、本当に家を建てられないのですか?

A.原則として、市街化を抑制する区域なので、一般的な住宅の新築や建て替えは制限されています。ただし、特定の条件(農林漁業者の住宅など)を満たせば建築が許可される場合もあります。詳しい条件は自治体によって異なるため、必ず役所に確認が必要です。

Q.土地を買うときに、区域区分と用途地域のどちらをより重視すべきですか?

A.両方とも非常に重要ですが、まずは「区域区分」を確認することが先決です。市街化調整区域であれば、そもそも建物を建てられない可能性が高いからです。建物を建てられる「市街化区域」であることを確認した上で、次に「用途地域」を見て、自分の建てたい建物の種類や希望する周辺環境に合っているかを確認する、という順番で考えるのが一般的です。

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