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準住居地域の土地相続、相続税評価額はどう変わる?計算方法を解説

2025-08-23
目次

ご家族から土地を相続したとき、その土地が「準住居地域」にあったら、相続税の評価額はどうなるんだろう?と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。準住居地域は建てられる建物に特徴があり、それが土地の価値、つまり相続税評価額にも影響してきます。この記事では、準住居地域とはどんな場所なのか、そしてそれが土地の相続税評価額にどう影響するのかを、わかりやすく解説していきます。

そもそも準住居地域ってどんな場所?

土地の価値を考える上で、その土地がどの「用途地域」に指定されているかは非常に重要です。ここでは、相続した土地が「準住居地域」だった場合を想定して、その特徴を見ていきましょう。

準住居地域の特徴と建てられる建物

準住居地域は、都市計画法で定められた13種類の用途地域のうちの一つです。主に、幹線道路の沿道などで、住居の環境を守りつつ、自動車関連施設などとの調和を図る地域とされています。
この地域では、住宅やマンションはもちろん、店舗や事務所、ホテル、ボーリング場、小規模な工場、自動車車庫(3階以上または300㎡超のもの)なども建てることができます。いろいろな種類の建物が混在しているのが特徴で、利便性が高い反面、静かな住環境を求める方には少し賑やかに感じられるかもしれません。

他の住居系用途地域との違い

住居系の用途地域はいくつか種類がありますが、準住居地域は特に許容される建物の範囲が広いのが特徴です。他の地域と比べてみましょう。

用途地域 建てられるものの特徴
第一種住居地域 3,000㎡以下の店舗や事務所、ホテルなどは建てられるが、カラオケボックスやパチンコ店などは建てられない。比較的大きな建物が立つ、住居中心の地域。
準住居地域 第一種住居地域で建てられるものに加え、小規模な映画館や劇場、自動車修理工場なども建てられる。住居と商業・業務施設が混在する利便性の高い地域。
近隣商業地域 準住居地域で建てられるものに加え、延床面積の制限なく店舗や事務所が建てられる。より商業的な性格が強い地域。

このように、準住居地域は土地の利用の自由度が高いため、一般的に他の多くの住居系地域よりも土地の経済的価値が高く評価される傾向にあります。

準住居地域の調べ方

ご自身の土地がどの用途地域に指定されているかを知りたい場合は、その土地がある市区町村の役所(都市計画課など)で確認することができます。最近では、多くの自治体がウェブサイトで都市計画図を公開していますので、「〇〇市 用途地域」や「〇〇区 都市計画図」といったキーワードで検索してみるのが手軽でおすすめですよ。

準住居地域が土地の相続税評価額に与える影響

では、準住居地域という特性は、具体的に相続税の評価額にどのように影響するのでしょうか。土地の評価の基本から見ていきましょう。

土地の評価の基本「路線価方式」と「倍率方式」

相続税を計算する際の土地の評価方法は、主に2つあります。

  • 路線価方式:市街地的な地域で、道路(路線)ごとに設定された1㎡あたりの価格(路線価)を基に評価する方法。
  • 倍率方式:路線価が定められていない地域で、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価する方法。

準住居地域のように都市計画が定められているエリアは、ほとんどの場合、路線価方式で評価されます。評価額の基本的な計算式は「路線価 × 土地の面積(地積)」となり、これに土地の形などに応じた補正が加わります。

準住居地域の「容積率」が評価額の鍵

土地の価値を左右する非常に重要な要素が「容積率」です。容積率とは、敷地面積に対する建物の延床面積の割合のことで、この数値が大きいほど、より大規模な建物を建てることができます。つまり、容積率が高い土地は収益性や利用価値が高いと判断され、路線価も高く設定される傾向にあります。
準住居地域は、第一種・第二種低層住居専用地域などと比べて高い容積率が設定されることが多く、これが相続税評価額に影響を与える大きな要因となります。

「指定容積率」と「基準容積率」とは?

相続税評価で用いる容積率は、単純に都市計画で定められた数値を使えばよいわけではありません。2つの容積率を比べる必要があります。

容積率の種類 説  明
指定容積率 都市計画法に基づき、その地域ごとに定められた容積率の上限値です。例えば「準住居地域 300%」のように決められています。
基準容積率 土地の前面道路の幅員が12m未満の場合に適用される、建築基準法上の制限です。計算式は「前面道路の幅員(m) × 法定乗数」となります。

準住居地域の場合、基準容積率を計算する際の法定乗数は、原則として4/10(40%)です。(特定行政庁が指定する区域では6/10の場合もあります。)
そして、実際に土地の評価で考慮される容積率は、この「指定容積率」と「基準容積率」を比べて、いずれか低い方の数値が適用されることになります。この点を間違えると評価額が大きく変わってしまうので注意が必要です。

【重要】容積率が異なる地域にまたがる土地の評価

相続した土地が、ちょうど用途地域の境目に位置しているケースもあります。例えば、土地の一部が「準住居地域(容積率300%)」で、残りの部分が「第一種住居地域(容積率200%)」といった場合です。このような特殊なケースの評価方法を見ていきましょう。

複数の用途地域にまたがる土地の評価の考え方

1つの土地が、容積率の異なる2つ以上の地域にまたがっている場合、正面の道路に設定された路線価だけで土地全体を評価すると、実態にそぐわない評価額になってしまう可能性があります。例えば、正面路線価が高い容積率(400%)を基準に設定されているのに、土地の奥は低い容積率(200%)の地域だった場合、土地全体の価値を過大評価してしまうことになります。
そこで、このような場合には、容積率の違いを考慮して評価額を減額する調整が認められています。

評価額が減額されるケースの計算方法

この減額調整は、正面路線価の基となっている容積率よりも、土地全体の実際の容積率(各地域の容積率を面積で加重平均したもの)が低い場合に適用されます。
減額割合は、以下の計算式で求められる「容積率の格差による減額調整率」を用いて計算します。

調整後の1㎡あたり価額 = 路線価 × 奥行価格補正率等 × (1 – 容積率の格差による減額調整率)

この減額調整率の計算には、「容積率が価額に及ぼす影響度」という係数を使います。この係数は、土地がどの地区にあるかによって変わります。

地区区分 影響度
高度商業地区・繁華街地区 0.8
普通商業・併用住宅地区 0.5
普通住宅地区 0.1

準住居地域は「普通商業・併用住宅地区」や「普通住宅地区」に該当することが多いです。計算は複雑になりますが、この調整を適用できるかどうかで評価額が大きく変わる可能性があります。

減額調整ができない注意すべきケース

ただし、いつでも減額調整ができるわけではありません。注意すべき点が2つあります。
1つ目は、容積率の違いがすでに路線価に反映されている場合です。異なる容積率の地域それぞれに面して道路があり、それぞれの路線価が設定されていれば、調整は不要です。
2つ目は、減額調整をした結果、正面路線の評価額が、裏面や側面の路線価よりも低くなってしまう場合です。この「逆転現象」が起きる場合は、減額調整は行わず、他の路線価の高い方を正面路線とみなして評価をやり直すことになります。

準住居地域の土地評価で使える特例

土地の評価額が高額になりがちな準住居地域ですが、相続税の負担を大きく軽減できる「小規模宅地等の特例」という制度があります。適用できれば非常に効果的なので、必ず確認しましょう。

小規模宅地等の特例とは?

小規模宅地等の特例とは、亡くなった方(被相続人)が住んでいたり、事業を営んでいたりした土地を相続した場合に、その土地の評価額を最大で80%減額できる制度です。相続税の節税対策として最も重要な特例の一つです。

準住居地域の土地で特例を適用するための要件

準住居地域の土地は、その利用状況によって適用できる特例の種類が変わってきます。

  • 特定居住用宅地等:被相続人が自宅として使っていた土地。配偶者や同居していた親族などが相続する場合に適用できます。330㎡を上限に評価額を80%減額できます。
  • 特定事業用宅地等:被相続人が事業を営んでいた土地。事業を引き継ぐ親族が相続する場合に適用できます。400㎡を上限に評価額を80%減額できます。
  • 貸付事業用宅地等:被相続人がアパートや駐車場など、不動産貸付業を営んでいた土地。事業を引き継ぐ親族が相続する場合に適用できます。200㎡を上限に評価額を50%減額できます。

どの特例が適用できるかは、土地の利用状況と相続する人の要件によって決まります。要件は細かく定められているため、専門家への確認が不可欠です。

特例を使った場合の減額効果シミュレーション

この特例の効果は絶大です。簡単な例で見てみましょう。

【例】
相続した準住居地域の土地(被相続人の自宅敷地)
・相続税評価額:5,000万円
・面積:200㎡(限度面積330㎡以内)

この土地を配偶者が相続し、特定居住用宅地等の特例を適用できた場合、
減額される金額:5,000万円 × 80% = 4,000万円
相続税の課税対象となる金額:5,000万円 – 4,000万円 = 1,000万円

このように、課税対象額を大幅に圧縮することができます。

準住居地域の土地を相続する際の注意点

最後に、準住居地域の土地を相続し、ご自身で評価を試みる際の注意点をお伝えします。

路線価図で「地区区分」を確認しよう

土地の評価に使う路線価図には、価格だけでなく、その道路がどの「地区区分」に属するかが記号で示されています。地区区分は「ビル街地区」「高度商業地区」「普通住宅地区」など7種類あり、この区分によって奥行価格補正率などの各種補正率や、前述した容積率の影響度が変わってきます。路線価の数字だけでなく、この地区区分の確認も忘れないようにしましょう。

専門家への相談も検討しよう

ここまで見てきたように、土地の相続税評価は非常に専門的です。特に、準住居地域のように利用価値が高く、評価が複雑になりがちな土地や、複数の用途地域にまたがる土地、特例の適用を検討する場合には、専門的な知識が不可欠です。
評価額を誤ってしまうと、税金を納めすぎたり、逆に後の税務調査で追徴課税されたりするリスクがあります。少しでも不安に感じたら、相続案件に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は、準住居地域にある土地の相続税評価額について解説しました。ポイントをまとめます。

  • 準住居地域は利用の自由度が高く、土地の評価額も高くなる傾向があります。
  • 評価の鍵は「容積率」ですが、「指定容積率」と「基準容積率」の低い方を採用する点に注意が必要です。
  • 土地が複数の容積率の地域にまたがる場合、評価額を減額できる可能性があります。
  • 小規模宅地等の特例」を適用できれば、相続税の負担を大幅に軽減できます。
  • 正確で有利な評価を行うためには、専門的な知識が求められるため、税理士への相談が安心です。

土地の相続は、評価額一つで納税額が大きく変わります。正しい知識を身につけ、適切な申告を行いましょう。

参考文献

準住居地域と相続税評価額のよくある質問まとめ

Q. 準住居地域とはどのような地域ですか?

A. 準住居地域とは、道路の沿道において、自動車関連施設などと住宅が調和して立地する地域のことです。比較的広い範囲の商業施設や事務所、店舗なども建築可能なため、利便性が高いのが特徴です。

Q. 準住居地域の土地は相続税評価額が高くなりやすいですか?

A. はい、その傾向があります。準住居地域は利便性が高く、多様な用途に利用できるため、一般的に他の住居系地域に比べて土地の市場価値が高く、相続税路線価も高く設定されやすいです。

Q. 土地の相続税評価額はどのように決まるのですか?

A. 土地の相続税評価額は、主に「路線価方式」または「倍率方式」で計算されます。市街地にある土地の多くは、国税庁が定める「路線価」を基に評価されます。路線価は、その道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価額です。

Q. 準住居地域であることは、路線価にどう影響しますか?

A. 準住居地域は、店舗や事務所、マンションなど幅広い建築が可能なため、土地の活用度が高く評価されます。そのため、商業活動が制限される他の住居専用地域と比較して、路線価は高く設定される傾向にあります。

Q. 相続した土地が準住居地域にある場合、相続税を抑える方法はありますか?

A. はい、いくつかの特例が利用できる可能性があります。代表的なものに「小規模宅地等の特例」があります。この特例を適用できれば、土地の評価額を最大で80%減額できるため、相続税の負担を大幅に軽減できる場合があります。

Q. 準住居地域の土地を相続する際の注意点は何ですか?

A. 評価額が高くなりやすいため、相続税の納税資金を事前に準備しておくことが重要です。また、土地の形状や接道状況によっては評価額が補正されるため、専門家に相談して正確な評価額を把握することをおすすめします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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税理士 島本 雅史

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