税理士法人プライムパートナーズ

特別用途地区とは?相続税の土地評価額への影響をわかりやすく解説

2025-08-24
目次

ご家族から相続した土地が「特別用途地区」に指定されていると知って、「これって一体何?相続税の計算にどう関係するの?」とご不安に思われていませんか。特別用途地区は、特定の目的のために建築物の用途や形態に制限が加えられるエリアで、その制限が土地の価値、つまり相続税評価額に影響を与えることがあるんです。この記事では、特別用途地区の基本から、土地の評価方法、そして相続税にどう影響するのかまで、専門的な内容を一つひとつ丁寧に解説していきますね。

特別用途地区ってなに?

まずは、「特別用途地区」がどのようなものなのか、基本から見ていきましょう。言葉は少し難しく聞こえるかもしれませんが、街の個性や利便性を守るための大切なルールなんですよ。

特別用途地区の目的と役割

特別用途地区は、都市計画法に基づいて、特定の目的のために定められる地域です。基本となる「用途地域」だけではカバーしきれない、より細やかな街づくりのために設けられています。例えば、「文教地区」として学校の周りに静かな環境を保ったり、「観光地区」として景観を守ったりするのがその役割です。これにより、地域ごとの特色ある街並みが守られ、私たちの暮らしやすさにつながっているんですね。

用途地域との違いは?

「用途地域」と「特別用途地区」は、どちらも土地の利用に関するルールですが、役割が少し違います。用途地域は、住居系、商業系、工業系といった大まかな土地利用のルールを日本全国で定めているものです。一方、特別用途地区は、その用途地域で定められたルールに追加して、特別な制限を加えたり、逆に一部を緩和したりするものです。つまり、用途地域というベースの上に、地域の実情に合わせて特別なルールを上乗せするのが特別用途地区、とイメージすると分かりやすいですよ。

表にまとめると、このようになります。

項目 内  容
用途地域 日本全国の土地を大まかな目的(住居、商業、工業など)で区分し、基本的な建築ルールを定めるもの。
特別用途地区 用途地域のルールに加えて、特定の目的(教育、観光、商業振興など)のために、さらに細かい制限や緩和を上乗せするもの。

具体的にどんな種類があるの?

特別用途地区には、その目的によって様々な種類があります。自治体ごとに独自の名称や内容で定められていますが、代表的なものには以下のような地区があります。

  • 文教地区:学校や図書館などの教育施設の周辺で、静かで良好な教育環境を守るため、パチンコ店や映画館などの建築を制限します。
  • 観光地区:観光地の景観や風情を守るため、建物の高さやデザイン、看板などに制限を設けます。
  • 商業・業務活性化地区:地域の商業を盛り上げるため、特定の店舗の出店を促したり、逆に大規模店舗の出店を制限したりします。
  • 研究開発地区:研究所や大学などが集まるエリアで、研究環境に適した土地利用を促します。

ご自身の土地がどの特別用途地区に指定されているかは、市役所や区役所の都市計画課などで確認することができますよ。

特別用途地区は土地の相続税評価額にどう影響する?

ここからが本題です。特別用途地区に指定されていることが、土地の相続税評価額にどのように影響するのかを具体的に見ていきましょう。ポイントは「利用価値」です。

評価額が下がる?上がる?基本的な考え方

基本的には、特別用途地区の指定によって建築できる建物の種類や規模に厳しい制限がかかる場合、土地の利用価値が低いと判断され、相続税評価額が下がる可能性があります。例えば、「住宅しか建てられない」という土地よりも、「店舗も事務所も建てられる」土地の方が一般的に価値は高くなりますよね。特別用途地区の制限によって、その「建てられるもの」の選択肢が狭まると、土地の価値もそれに伴って低く評価されることがある、というわけです。逆に、制限が緩やかであったり、地域のブランド価値を高めるような指定であったりする場合は、評価額に影響がない、あるいはプラスに働くことも考えられます。

評価額に影響を与える具体的な制限の例

相続税評価額に影響を与える可能性がある制限には、以下のようなものがあります。

  • 建築物の用途制限:「店舗は建てられない」「特定の業種の施設は禁止」など、建てられる建物の種類が限定されるケース。
  • 建物の高さ制限:周辺の景観を守るために、通常の用途地域よりも厳しい高さ制限が設けられているケース。
  • 容積率・建ぺい率の制限:建てられる建物の延床面積や建築面積がより厳しく制限されるケース。
  • 壁面後退(セットバック)の義務:道路や隣地から一定の距離を離して建物を建てなければならないなど、敷地の有効活用が難しくなるケース。

これらの制限が厳しければ厳しいほど、評価額が下がる可能性が高まります。

「利用価値が著しく低下している」かどうかがポイント

相続税評価額が減額されるかどうかの一番のポイントは、その土地が「その宅地の利用価値が付近にある他の宅地の利用価値に比べて著しく低下していると認められる」かどうかです。これは国税庁の財産評価基本通達に定められている基準です。単に「制限がある」というだけでは不十分で、その制限が周辺の同じような土地と比べて、明らかに不利な条件になっている場合に評価減が認められる可能性があります。この判断は専門的な知識が必要になるため、非常に重要なポイントとなります。

特別用途地区にある土地の評価方法

では、実際に特別用途地区にある土地はどのように評価されるのでしょうか。評価減が認められる場合の要件についても詳しく解説します。

路線価方式での評価が基本

相続税の土地評価は、原則として路線価方式または倍率方式で行われます。市街地にある多くの土地は路線価方式で評価され、道路に面した土地1平方メートルあたりの価格である「路線価」を基準に計算します。特別用途地区にある土地も、まずはこの路線価を基に評価額を算出することになります。

利用価値が低下している場合の評価減(10%減額)の要件

先ほどお伝えした「利用価値が著しく低下している」と認められる場合、財産評価基本通達に基づき、評価額を10%減額できる可能性があります。この評価減を受けるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

要件 内  容
建築基準法等の法令による制限 特別用途地区の指定など、法律や条例によって建築などに制限がかけられていること。
利用価値の著しい低下 その制限により、周辺の同じような土地(同一の路線価が設定されている地域内の宅地)と比較して、利用価値が明らかに劣っていると客観的に認められること。

例えば、周辺の土地では3階建ての店舗が建てられるのに、自分の土地だけが特別用途地区の指定で2階建ての住宅しか建てられない、といったケースが該当する可能性があります。

評価減を適用するための具体的な手続き

10%の評価減を適用するためには、自動的に減額されるわけではなく、相続税申告の際にこちらから主張する必要があります。具体的には、相続税申告書に添付する「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」に、評価減を適用する旨とその根拠を記載します。根拠としては、市役所などで取得した都市計画図や、特別用途地区に関する条例の写し、なぜ利用価値が著しく低下しているのかを説明する資料などを準備するとよいでしょう。税務署に納得してもらうための客観的な証拠を揃えることが大切です。

注意!特別用途地区でも評価減できないケース

特別用途地区に指定されていれば必ず評価が下がるわけではありません。評価減が認められないケースもあるので注意が必要です。

制限の程度が軽微な場合

建築物に対する制限が、ごくわずかなものである場合は「利用価値が著しく低下している」とは認められず、評価減の対象にはなりません。例えば、建物の外壁の色に一部制限がある、といった程度では、土地の利用価値そのものが大きく下がるとは考えにくいためです。

路線価に既に制限が織り込み済みの場合

そもそも、土地の評価の基準となる路線価は、その土地の様々な条件を考慮して設定されています。特別用途地区による制限も、その地域の標準的なものであれば、既に路線価に反映されていると考えられます。この場合、さらに10%の評価減を適用すると二重に減額することになってしまうため、認められません。あくまで、周辺の標準的な土地よりも「特に厳しい制限」が課されている場合に、評価減が検討されることになります。

専門家への相談が重要な理由

ここまで見てきたように、特別用途地区による評価減が認められるかどうかの判断は、非常に専門的です。「利用価値が著しく低下しているか」「路線価に織り込み済みか」といった判断は、一般の方がご自身で行うのは難しいのが実情です。もし評価減ができるのに見逃してしまうと、本来よりも高い相続税を納めることになりかねません。逆に、無理に評価減を主張して税務調査で否認されると、追徴課税や延滞税が発生するリスクもあります。そのため、相続財産に特別用途地区の土地が含まれる場合は、土地評価に詳しい税理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

他の地区・地域との関係性

土地の評価には、特別用途地区以外にも様々な制度が関係してきます。ここでは、関連する制度との関係について整理しておきましょう。

用途地域と地区区分の関係

相続税の土地評価では、「地区区分」というものが重要になります。これは国税庁が路線価図で定めているもので、「ビル街地区」「普通住宅地区」など7つの区分があります。この地区区分と、都市計画法で定められる「用途地域」、そして「特別用途地区」は、それぞれ別の制度ですが、互いに関連しあっています。

  • 用途地域:都市計画法に基づき、市町村が定めます。
  • 特別用途地区:用途地域に上乗せされる形で、市町村が定めます。
  • 地区区分:相続税評価のために、国税庁が路線価図上で定めます。用途地域などを参考に定められます。

土地の評価額は、この地区区分によって補正率などが変わってくるため、どの区分に該当するのかを正しく把握することが大切です。

地積規模の大きな宅地との関連性

一定の面積以上の広い土地(三大都市圏で500㎡以上など)は、「地積規模の大きな宅地の評価」という制度により評価額を減額できる可能性があります。この制度が適用できるのは、原則として「普通商業・併用住宅地区」または「普通住宅地区」にある土地です。特別用途地区の指定がある土地でも、これらの地区区分にあり、面積などの要件を満たせば、「地積規模の大きな宅地の評価」による減額と、特別用途地区による10%減額の両方を検討することになります。ただし、評価減の適用は複雑なため、専門家の判断が必要です。

小規模宅地等の特例との併用はできる?

小規模宅地等の特例は、亡くなった方が住んでいた土地や事業をしていた土地などを相続した場合に、評価額を最大で80%も減額できる非常に大きな特例です。特別用途地区による10%の評価減と、この小規模宅地等の特例は、併用することが可能です。まず、特別用途地区の制限を考慮して10%評価額を下げた後、その評価額を基に小規模宅地等の特例を適用するという流れになります。両方の要件を満たす場合は、大きな節税効果が期待できますよ。

まとめ

今回は、特別用途地区と、それが土地の相続税評価額に与える影響について解説しました。最後にポイントをまとめておきましょう。

  • 特別用途地区は、用途地域に上乗せされる形で、建築物の用途などに特別な制限をかける制度です。
  • その制限によって「利用価値が著しく低下している」と認められる場合、土地の相続税評価額を10%減額できる可能性があります。
  • ただし、制限が軽微な場合や、既に路線価に反映されている場合は評価減できません。
  • 評価減の適用判断は専門的で難しいため、土地評価に詳しい税理士への相談が不可欠です。
  • 小規模宅地等の特例など、他の制度との併用も可能です。

特別用途地区に指定された土地の相続は、評価が複雑になりがちです。ご自身だけで判断せず、まずは専門家に相談して、適正な評価額で申告できるように準備を進めてくださいね。

参考文献

特別用途地区と相続税評価額のよくある質問まとめ

Q.そもそも「特別用途地区」とは何ですか?

A.用途地域内の特定の地区で、その地区の特性にふさわしい土地利用の増進や環境保護などを目的として、地方公共団体が条例で建築物の用途を制限したり緩和したりする制度です。例えば「文教地区」や「商業地区」などがあります。

Q.特別用途地区に指定されると、土地の価値にどのような影響がありますか?

A.建築できる建物の種類や規模が制限されるため、土地の利用価値が下がり、市場価格が低くなる傾向があります。逆に、規制が緩和される場合は価値が上がる可能性もあります。

Q.特別用途地区は、土地の相続税評価額に直接影響しますか?

A.相続税評価額の基準となる路線価は、特別用途地区による個別の利用制限を直接反映しているわけではありません。そのため、路線価のまま評価すると、実際の価値より割高になってしまうことがあります。

Q.特別用途地区の指定で土地の利用が制限されている場合、相続税評価額を減額できますか?

A.はい、可能です。特別用途地区の指定により、土地の利用価値が著しく低下していると認められる場合、「利用価値が著しく低下している宅地の評価」として、評価額を10%減額できる可能性があります。

Q.相続税評価額の減額を受けるためには、どのような手続きが必要ですか?

A.相続税の申告時に、特別用途地区の指定によって土地の利用価値が著しく低下していることを示す資料(条例、公図など)を添付し、評価減を適用した評価明細書を提出する必要があります。専門家への相談をおすすめします。

Q.自分の土地が特別用途地区に指定されているか確認する方法は?

A.土地が所在する市区町村の役所(都市計画課など)で確認できます。多くの場合、自治体のホームページに掲載されている都市計画図でも確認することが可能です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。