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準工業地域の土地、相続税評価はどうなる?評価額への影響を解説

2025-09-01
目次

親から土地を相続したとき、その土地が「準工業地域」という聞き慣れない場所にあったら、「住宅地と何が違うの?」「相続税評価額は高くなるの?安くなるの?」と心配になりますよね。実は、準工業地域はその特性から、土地の評価額が大きく変わる可能性があるんです。この記事では、準工業地域とはどんな場所なのか、そして土地の相続税評価額にどのように影響するのかを、専門用語をなるべく使わずに、優しく解説していきますね。

そもそも準工業地域ってどんな場所?

まずは、「準工業地域」がどのような場所なのかを知ることから始めましょう。普段の生活ではあまり意識しない言葉かもしれませんが、土地の価値を考える上でとても大切なポイントになります。

準工業地域の定義と目的

準工業地域とは、都市計画法という法律で定められた「用途地域」のひとつです。用途地域は、街を住宅地、商業地、工業地など、目的別に分けて計画的に利用するために設定されています。その中でも準工業地域は、「主に環境の悪化をもたらすおそれのない工業の利便を図る地域」とされています。簡単に言うと、危険性が低く、周りの環境をあまり悪くしないような工場と、住宅や商店などが混在しているエリアのことです。大きな工場の煙突がもくもく…というよりは、町工場や小規模な作業所と住宅が共存しているイメージですね。

準工業地域に建てられるもの・建てられないもの

準工業地域が他の地域とどう違うのか、具体的に建てられるものと建てられないものを見てみると分かりやすいですよ。実は、かなり幅広い種類の建物を建てることができるんです。

建てられるものの例 住宅、共同住宅、店舗、飲食店、事務所、学校、病院、ホテル、カラオケボックス、小規模な工場(危険性や環境悪化の恐れが少ないもの)など
建てられないものの例 個室付浴場(ソープランドなど)、危険物の貯蔵・処理量が特に多い工場、環境を著しく悪化させる可能性のある工場など

このように、住宅やお店も建てられますし、ほとんどの種類の工場も建てられるため、非常に用途が広い地域だと言えます。

他の工業系地域との違い(工業地域・工業専用地域)

工業系の用途地域には、準工業地域の他に「工業地域」と「工業専用地域」があります。これらの違い、特に住宅が建てられるかどうかは大きなポイントです。

用途地域 特徴
準工業地域 住宅や店舗も建てられる、比較的軽めの工業地域。
工業地域 どんな工場でも建てられるが、住宅や店舗も建てられる。ただし、学校や病院、ホテルなどは建てられない。
工業専用地域 工場のための地域。住宅、店舗、学校、病院などは一切建てられない。

相続した土地がどの地域にあるかで、土地の活用方法や価値が大きく変わってくることがわかりますね。

準工業地域の土地の相続税評価額の基本

それでは、本題の相続税評価額について見ていきましょう。土地の相続税評価額は、国税庁が定めたルールに基づいて計算されます。準工業地域だからといって特別な計算方法があるわけではなく、基本的には他の地域と同じ「路線価方式」または「倍率方式」で評価されます。

路線価方式での評価方法

市街地にある多くの土地は、この路線価方式で評価されます。道路に「路線価」という1平方メートルあたりの価格が設定されており、それを基に計算します。
計算式: 路線価 × 各種補正率 × 土地の面積(地積)
「各種補正率」とは、土地の形が不整形だったり、間口が狭かったりする場合に評価額を調整するためのものです。

倍率方式での評価方法

路線価が設定されていない郊外や農村部の土地は、倍率方式で評価されます。こちらは固定資産税評価額を基に計算します。
計算式: 固定資産税評価額 × 評価倍率
評価倍率は、国税庁のホームページで確認できます。

自分の土地がどちらの方式か調べる方法

ご自身の土地がどちらの方式で評価されるかは、国税庁のウェブサイトにある「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。住所を入力して検索し、路線価図が表示されれば路線価方式、倍率表が表示されれば倍率方式となります。

準工業地域ならではの相続税評価への影響とは?

ここからが準工業地域ならではのポイントです。準工業地域にある土地は、ある特定の評価減の特例を受けられる可能性があり、それが相続税額に大きく影響することがあります。

「地積規模の大きな宅地の評価」で評価額が下がる可能性

特に注目したいのが、「地積規模の大きな宅地の評価」という制度です。これは、平成30年1月1日から始まった制度で、一定の面積以上の広大な土地について、評価額を減額できるというものです。広い土地は、そのままでは売りにくかったり、開発する際に道路を作る必要があったりするため、その分価値を下げて評価しようという考え方に基づいています。

「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件

この特例を適用するには、いくつかの要件をクリアする必要があります。準工業地域はこの要件を満たしやすいケースがあるのです。

要件 内容
面積要件 三大都市圏(首都圏、近畿圏、中部圏)内なら500㎡以上、それ以外の地域なら1,000㎡以上の土地であること。
用途地域要件 工業専用地域ではないこと。(準工業地域はOKです!)
区域要件 市街化調整区域ではないこと。(一部例外あり)
容積率要件 指定容積率が400%(東京23区内は300%)未満であること。
地区区分要件
(路線価地域の場合)
普通住宅地区、または普通商業・併用住宅地区であること。

重要なのは「工業専用地域ではない」という点です。これにより、工業地域や準工業地域にある広い土地は、この特例の対象になる可能性があります。

準工業地域で適用を受けやすい理由

なぜ準工業地域がこの特例を受けやすいかというと、もともと工場や倉庫などが建っていた土地は、一般的な住宅地と比べて面積が広いことが多いからです。親が営んでいた工場の跡地などを相続した場合、面積要件をクリアして「地積規模の大きな宅地の評価」を適用できれば、相続税評価額を大幅に引き下げられる可能性があります。

その他の評価額に影響する要因

用途地域以外にも、土地の評価額に影響を与える個別の要因はたくさんあります。これらをきちんと反映させることで、適正な評価額を算出することができます。

土地の形状や接道状況による補正

土地の評価は、その使いやすさも考慮されます。例えば、いびつな形をした土地(不整形地)や、道路に接している間口が狭い土地、逆に奥行きが長すぎる土地などは、使い勝手が悪いと判断され、評価額が減額されます。これを「画地補正」といいます。

都市計画道路予定地になっている場合

もし相続した土地の一部が、将来道路を建設する計画(都市計画道路)の予定地になっている場合、その部分には建物を建てる際に制限(例:木造2階建てまでしか建てられないなど)がかかります。そのため、土地全体の利用が制限されるとして、評価額が減額されることになります。

土地を貸している場合(貸宅地・貸家建付地)

相続した土地を誰かに貸している場合も評価額は変わります。他人に土地を貸してその人が家を建てている場合(貸宅地)や、土地の上にアパートなどを建てて部屋を貸している場合(貸家建付地)は、所有者であっても土地を自由に使えないため、更地の状態(自用地)よりも評価額が低くなります。

準工業地域の土地で使える可能性のある特例

土地の評価額を計算した上で、さらに相続税の負担を軽減できる強力な特例があります。準工業地域の土地でも使える可能性がありますので、ぜひ知っておきましょう。

課税価格を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」

小規模宅地等の特例」は、亡くなった方(被相続人)が住んでいた土地や事業をしていた土地などを相続した場合に、その土地の評価額を最大で80%も減額できる、非常に効果の大きい特例です。相続税対策の要とも言える制度です。

準工業地域の工場やアパート敷地での適用ケース

準工業地域にある土地が、この特例の対象になるケースも考えられます。具体的には、以下のようなケースです。

宅地の種類 内容と減額割合
特定事業用宅地等 被相続人が工場や店舗など、貸付以外の事業に使っていた土地。400㎡まで評価額を80%減額できます。
貸付事業用宅地等 被相続人がアパートや駐車場など、不動産貸付事業に使っていた土地。200㎡まで評価額を50%減額できます。

例えば、親が準工業地域で営んでいた工場の敷地を相続し、事業を引き継ぐ場合には「特定事業用宅地等」として80%の減額が受けられる可能性があります。この特例が使えるかどうかで、納税額がゼロになるケースもあるほどです。

まとめ

今回は、準工業地域にある土地の相続税評価額について解説しました。ポイントをまとめますね。

  • 準工業地域は、住宅や店舗、工場などが混在する、用途の広い地域です。
  • 相続税評価額の計算方法は、他の地域と同じく「路線価方式」か「倍率方式」が基本です。
  • 準工業地域にある広い土地(三大都市圏で500㎡以上など)は、「地積規模の大きな宅地の評価」が適用でき、評価額が大きく下がる可能性があります。
  • 工場やアパートの敷地であれば、「小規模宅地等の特例」によって評価額を最大80%減額できるケースもあります。

準工業地域の土地の評価は、適用できる特例が多く、判断が複雑になることがあります。評価額を少しでも抑えるためには、これらの制度を正しく理解し、適用することが不可欠です。ご自身での判断が難しいと感じた場合は、相続税に詳しい税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

国税庁 「地積規模の大きな宅地の評価」が新設されました

準工業地域の土地と相続税評価額に関するよくある質問

Q.そもそも準工業地域とはどんな地域ですか?

A.準工業地域とは、都市計画法で定められた用途地域の一つです。主に軽工業の工場やサービス施設などが立地する地域で、危険性や環境悪化の恐れが大きい工場は建てられませんが、住宅や店舗も建てられるなど、比較的幅広い用途の建物が混在しています。

Q.準工業地域の土地は、相続税評価額が高くなりやすいですか?

A.一概には言えませんが、商業地域などに比べると地価が低めな傾向があるため、相続税評価額も低くなる可能性があります。しかし、幹線道路沿いや駅に近いなど利便性が高い場合は、評価額が高くなることもあります。

Q.準工業地域の土地の相続税評価額はどのように計算されますか?

A.主に「路線価方式」または「倍率方式」で評価されます。路線価が定められている地域では、土地が面する道路の路線価を基に計算します。路線価がない地域では、固定資産税評価額に国税庁が定める倍率を掛けて計算します。

Q.準工業地域にある工場や倉庫の敷地は、相続税で特別な評価方法はありますか?

A.はい、「貸家建付地」や「小規模宅地等の特例」が適用できる場合があります。例えば、土地を貸し付けてその上に工場が建っている場合は貸家建付地として評価額が減額されたり、被相続人が事業用に使っていた土地であれば小規模宅地等の特例により最大80%の評価減を受けられる可能性があります。

Q.準工業地域の土地を相続しましたが、活用方法に困っています。相続税評価額に影響はありますか?

A.相続開始時点での土地の利用状況で評価額が決まるため、相続後の活用方法は直接影響しません。しかし、空き地のままでは固定資産税の負担が大きくなる可能性があります。売却や賃貸など、その土地の特性に合った活用法を検討することが重要です。

Q.準工業地域の土地を評価する際の注意点は何ですか?

A.土地の形状(不整形地など)、接道状況、騒音や振動といった周辺環境などが評価額に影響を与える可能性があります。これらの要因は評価額の減額につながることもあるため、専門家に相談し、現地の状況を正確に把握することが重要です。

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