ご所有の土地の近くに線路があったり、周りの土地と比べて大きな高低差があったりすると、「相続税を計算するときの評価額は安くなるのかな?」と気になりますよね。実際に、利用価値が著しく低下している土地は、相続税評価額が減額される可能性があります。しかし、「路線価や固定資産税評価額に、その状況がすでに考慮されている場合は評価減ができない」という大切なルールがあるんです。この記事では、この複雑なルールについて、どういう場合に評価減ができて、どういう場合はできないのか、その見分け方などを優しく解説していきます。
「利用価値が著しく低下している宅地」の評価減とは?
まず基本として、土地の利用価値が周辺の土地と比べて著しく低いと認められる場合、相続税の評価額を10%減額できるという特例があります。これは、土地を相続した方が不公平にならないようにするための制度なんです。どんな土地が対象になるのか、具体的に見ていきましょう。
対象となる土地の具体例
国税庁では、利用価値が著しく低下している宅地として、以下のような例を挙げています。ご自身の土地が当てはまるかチェックしてみてくださいね。
| 土地の状況 | 具体例 |
| 高低差 | 道路よりも著しく高い、または低い位置にある土地 |
| 地盤 | 地盤にひどい凹凸がある土地 |
| 振動 | 線路沿いや幹線道路沿いなどで、振動がひどい土地 |
| 環境要因 | 騒音、日照阻害、悪臭、忌み施設(墓地、ごみ処理場など)が近くにあることで、取引金額に影響が出ると認められる土地 |
これらの要因によって、土地の使い勝手が悪かったり、住環境が悪かったりする場合に対象となる可能性があります。
評価額の計算方法
評価減が適用される場合、計算はとてもシンプルです。まず、利用価値が低下していないものとして通常通りに土地の評価額を計算します。そして、その評価額から10%を控除します。
例えば、通常の方法で計算した評価額が3,000万円だった場合、
3,000万円 × 10% = 300万円
この300万円を元の評価額から差し引くので、最終的な評価額は2,700万円となります。相続税において、この差はとても大きいですよね。
【最重要】評価減が認められないケース
「うちの土地は線路沿いだから10%減額できる!」と考えるのは、少し早いかもしれません。この特例には、「ただし、路線価、固定資産税評価額または倍率が、利用価値の著しく低下している状況を考慮して付されている場合にはしんしゃくしません。」という重要なただし書きがあります。これこそが、今回のテーマの核心部分です。
路線価にすでに価値の低下が反映されているとは?
路線価とは、主に市街地にある土地の評価に使われるもので、道路に面する宅地1平方メートルあたりの価格のことです。この路線価は、土地の利便性や周辺環境などを総合的に考慮して設定されます。
例えば、線路沿いのエリア全体が騒音の影響を受けている場合、その地域の路線価は、線路から離れた静かなエリアの路線価よりももともと低く設定されていることがあります。この場合、騒音というマイナス要因は「すでに路線価に織り込み済み」と判断され、そこからさらに10%の評価減をすることは認められないのです。
固定資産税評価額や倍率に反映されている場合
路線価が設定されていない地域では、土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて相続税評価額を計算します(倍率方式)。
この固定資産税評価額も、市町村が土地の現況を調査して決定するものです。例えば、土地の評価において「鉄道騒音補正率」といったものが適用され、もともとの評価額が低くされていることがあります。このような場合も、すでに価値の低下が考慮されているため、相続税評価で重ねて10%の評価減をすることはできません。
評価額に価値低下が考慮済みかを見分けるポイント
では、自分の土地の路線価や固定資産税評価額に、価値の低下が反映されているかどうかは、どうすれば確認できるのでしょうか。専門的な判断が必要ですが、ご自身で確認できるポイントをいくつかご紹介します。
周辺の路線価図と比較する
路線価方式の地域であれば、国税庁のウェブサイトで公開されている「路線価図」を見てみましょう。評価したい土地が面している道路の路線価と、少し離れた場所や環境の良い場所の路線価を比べてみてください。
もし、ご自身の土地の路線価が周辺に比べて明らかに低い場合(例えば、1本隣の通りは30万円/㎡なのに、線路沿いの自分の土地の通りは27万円/㎡など)、騒音などの要因がすでに価格に反映されている可能性が高いと考えられます。
固定資産税の課税明細書を確認する
毎年春ごろに市町村から送られてくる「固定資産税の課税明細書」を確認してみましょう。土地の評価額が計算される過程で、何らかの補正率(例:画地計算法における騒音減価など)が適用されている記載があれば、それは価値の低下が考慮されている証拠になります。
詳細がわからない場合は、市町村の資産税課などで評価の根拠を確認することも可能です。
専門家による現地調査と総合的な判断
最終的な判断は、書類だけでできるものではありません。実際に現地を訪れ、騒音や振動のレベル、日照の状態、周辺環境との比較などを詳細に調査する必要があります。また、過去の裁決事例などを基に、税務署に対して評価減の妥当性を客観的に説明できる根拠を集めなければなりません。
こうした調査や判断は非常に専門性が高いため、土地評価に詳しい税理士などの専門家に依頼することが不可欠です。
具体的なケースで考えてみよう
ここでは、よくあるケースについて、評価減が認められる可能性と、すでに考慮済みと判断される可能性を整理してみましょう。
| 状況 | 10%評価減が認められる可能性が高いケース |
| 線路沿いの土地 | 同じ路線価が設定されている道路沿いの他の土地と比べて、自分の土地だけが特に線路に近く、騒音・振動の影響を強く受けている。周辺の路線価と比較しても、特に騒音に対する価格調整がされている様子がない。 |
| 高低差のある土地 | 周辺は平坦な土地ばかりなのに、自分の土地だけが道路と2メートル以上の擁壁で隔てられており、造成に多額の費用がかかることが明らか。路線価は周辺と同じ価格が設定されている。 |
| 墓地に隣接 | 路線価図を見ると、墓地から離れた土地と隣接する土地で路線価に差がない。しかし、不動産取引市場では明らかに墓地隣接地は敬遠され、取引価格が低いという客観的なデータがある。 |
| 状況 | 路線価等に考慮済みで評価減が難しいケース |
| 線路沿いの土地 | 線路沿いの道路全体の路線価が、並行する1本奥の道路の路線価よりも1割程度低く設定されている。固定資産税の評価で「鉄道騒音補正」が適用されている。 |
| 高低差のある土地 | その地域一帯が丘陵地で、どの土地にもある程度の高低差があるのが当たり前。高低差があることを前提として路線価が設定されている。 |
| 墓地に隣接 | 昔からの寺町などで、墓地があるのが一般的な環境。周辺の路線価も、墓地に近いことを考慮して全体的に調整されている。 |
専門家への相談が何よりも大切
ここまで見てきたように、「利用価値が著しく低下している宅地」の評価、特に路線価等への反映状況の判断は、非常に複雑で専門的な知識が求められます。
もし、ご自身で「評価減できるはず」と判断して申告しても、税務署から「その要因はすでに路線価に反映されています」と指摘され、申告を否認されてしまう可能性があります。その場合、追加の相続税と延滞税、場合によっては過少申告加算税まで課されてしまうリスクがあるのです。
相続財産に土地が含まれる場合、特にその土地にマイナス要因があると感じる場合は、必ず相続税に強く、土地評価の実績が豊富な税理士に相談することをお勧めします。専門家であれば、適切な現地調査と評価を行い、税務署に認められる申告書を作成してくれます。
まとめ
今回は、「利用価値が著しく低下している宅地」の評価減が、路線価などにすでに反映されている場合には適用できない、というルールについて詳しく解説しました。
ポイントをまとめると以下の通りです。
- 騒音、振動、高低差など利用価値が著しく低い土地は、評価額が10%減額できる可能性がある。
- しかし、そのマイナス要因が路線価や固定資産税評価額にすでに反映されている場合、この特例は使えない。
- 反映済みかどうかは、周辺の路線価との比較や固定資産税の課税明細書の確認などが手がかりになる。
- 最終的な判断は非常に専門的であり、誤ると追徴課税のリスクがあるため、必ず税理士などの専門家に相談することが重要。
土地の評価は相続税額を大きく左右します。正しい評価で、損のない、そして安心できる相続税申告をしてくださいね。
参考文献
国税庁 タックスアンサー No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価
利用価値が著しく低下した土地の評価に関するよくある質問まとめ
Q. 「利用価値が著しく低下している土地」とは、具体的にどのような土地ですか?
A. 例えば、道路との高低差が著しい、線路に隣接し騒音・振動がひどい、墓地に隣接している、日照が著しく阻害されているなど、周辺の標準的な土地と比べて利用上の制約が大きい土地を指します。
Q. 路線価や固定資産税評価額が、すでに利用価値の低下を考慮しているか確認する方法はありますか?
A. 路線価図に付された地区区分(例:普通住宅地区、繁華街地区など)や各種補正率を確認します。また、固定資産税の評価証明書や名寄帳で、評価額の算定根拠に特別な減価要因が記載されているかを確認する方法がありますが、専門的な判断が必要です。
Q. 利用価値の低下が路線価などに考慮されていない場合、どのように評価するのですか?
A. 財産評価基本通達に基づき、その土地の利用価値が低下している状況を考慮して、路線価などで評価した価額から10%を控除して評価することができます。
Q. 10%の評価減を適用するために必要なものは何ですか?
A. 評価減の根拠を客観的に示す資料が必要です。例えば、土地の高低差を示す測量図、騒音・振動の測定データ、現地の写真、周辺環境がわかる地図など、税務署に対して説得力のある資料を準備することが重要です。
Q. 倍率地域にある土地でも、利用価値の低下による評価減は可能ですか?
A. はい、可能です。倍率方式で評価する場合も、その基礎となる固定資産税評価額が利用価値の低下を考慮していないと判断されれば、同様に10%の評価減を検討することができます。
Q. このような土地の評価は素人でもできますか?
A. 利用価値の低下が評価額に織り込み済みかどうかの判断や、10%評価減の適否は非常に専門的です。税務調査で否認されるリスクを避けるためにも、土地評価に精通した税理士や不動産鑑定士などの専門家へ相談することをおすすめします。