大切な土地を誰かに貸すとき、「地代はいくらが妥当なんだろう?」と悩みますよね。「更地価額の6%」という話もあれば、「固定資産税評価額の3~5%」という話も耳にします。一体どちらを基準に考えれば良いのでしょうか。この記事では、この2つの考え方の違いや、どんなケースでどちらを使うべきかを、分かりやすく解説していきます。それぞれの特徴を理解して、あなたに合った合理的な地代設定を見つけましょう。
「更地価額の6%」という考え方(相当の地代)
まず、よく耳にする「更地価額の6%」という基準について見ていきましょう。これは主に税金の計算で使われる「相当の地代」という考え方に基づいています。
「相当の地代」とは?
「相当の地代」とは、土地を貸すときに権利金を受け取らない代わりに、地主が受け取るべきとされる適正な地代のことです。国税庁によると、この「相当の地代」は、その土地の更地価額(時価)のおおむね年6%とされています。
通常、土地を貸す際には借主から地主へ「権利金」という一時金が支払われる慣習があります。しかし、例えば親族間での貸し借りなど、権利金のやり取りをしないケースも多いですよね。そういった場合に、あまりにも安い地代だと「権利金分の利益を贈与した」とみなされ、贈与税などが課税されるリスクがあるんです。この税務上のリスクを避けるために設定された目安が「相当の地代」、つまり「更地価額の6%」というわけです。
どんなケースで使われるの?
この考え方は、特に税務上の問題をクリアにしたい場合に重要になります。具体的には、以下のようなケースでよく用いられます。
- 親族間で土地を無償または低い地代で貸す場合
- 自分の経営する会社(同族会社)に土地を貸す場合
- 権利金の授受なしに事業用定期借地権を設定する場合
これらのケースでは、税務署から「実質的な贈与ではないか」と指摘されないよう、「相当の地代」を意識して地代を設定することが大切になります。
簡単な計算例
実際に計算してみましょう。例えば、更地としての時価が3,000万円の土地があったとします。
3,000万円(更地価額) × 6% = 180万円(年額)
この場合、年間の地代は180万円、月額にすると15万円が「相当の地代」の目安となります。権利金を受け取らない代わりにこの地代を受け取っていれば、税務上は問題ないと判断されやすくなります。
「固定資産税評価額の3~5%」という考え方
次に、もう一方の「固定資産税評価額の3~5%」という考え方です。こちらは、より実務的な地代の目安として広く使われています。
固定資産税・都市計画税を基準にする考え方
土地の所有者には、毎年固定資産税や都市計画税(公租公課)の支払い義務があります。土地を貸すからには、少なくともこの税金の負担分は地代で賄いたいと考えるのが自然ですよね。この考え方をベースにしたのが、「公租公課の〇倍」という計算方法です。
一般的に、年間の地代の目安は以下のよう言われています。
| 住宅地の場合 | 固定資産税・都市計画税の合計額の3倍~5倍 |
| 商業地の場合 | 固定資産税・都市計画税の合計額の5倍~8倍 |
固定資産税評価額は時価よりも低く設定されていることが多いため、「固定資産税評価額の3~5%」という表現も、結果的にこの「公租公課の〇倍」に近い水準になることが多いです。
どんなケースで使われるの?
この方法は、地主が負担するコストを基準にしているため、貸主・借主の双方にとって分かりやすく、交渉の出発点として使われることが多いです。特に、以下のような一般的な土地の賃貸借で参考にされます。
- 個人に住宅地として土地を貸す場合
- 事業者に店舗や事務所の用地として土地を貸す場合
- 地代の相場観をざっくりと把握したい場合
税務上の厳密な基準というよりは、市場での実態に近い、現実的な相場観を知るための便利な指標と言えるでしょう。
簡単な計算例
こちらも計算してみましょう。例えば、固定資産税評価額が2,000万円の住宅地で、年間の固定資産税・都市計画税の合計が34万円だったとします。(税率を合計1.7%と仮定)
34万円(年間の固定資産税・都市計画税) × 3~5倍 = 102万円~170万円(年額)
この場合、年間の地代は102万円から170万円あたりが一つの目安となります。月額にすると8.5万円~約14.2万円ですね。
どちらが合理的?2つの考え方を比較
さて、2つの考え方を見てきましたが、結局どちらが合理的で、どちらを優先すべきなのでしょうか。結論から言うと、「どちらもそれぞれの場面で合理的であり、ケースによって使い分けるべき」となります。
目的と背景の違いを理解しよう
2つの考え方の最も大きな違いは、その目的と背景です。
- 更地価額の6%:主に税務上のリスク回避を目的とした、国税庁が示す基準。
- 固定資産税評価額の3~5%:地主のコスト負担を基にした、実務上の相場観を把握するための目安。
つまり、片方は「税法上のルール」、もう片方は「市場での慣習」に近いものと考えると分かりやすいかもしれません。どちらか一方が絶対的に正しいというわけではないのです。
比較表で一目瞭然!2つの考え方の違い
ここで、2つの考え方の違いを表にまとめてみましょう。
| 項目 | 更地価額の6%(相当の地代) |
| 根拠 | 税法上の考え方(贈与税等の課税リスク回避) |
| 計算の基準 | 更地価額(時価) |
| 主な利用シーン | 親族間・同族会社間の取引、権利金なしの契約 |
| 特徴 | 比較的地代は高額になりやすい |
| 項目 | 固定資産税評価額の3~5% |
| 根拠 | 実務上の慣習(公租公課がベース) |
| 計算の基準 | 固定資産税・都市計画税の額 |
| 主な利用シーン | 一般的な土地の賃貸借、相場観の把握 |
| 特徴 | 現実的な交渉ラインとして使われやすい |
結論:何を重視するかで優先順位は変わる
結局、どちらを優先すべきかは、あなたが「何を最も重視するか」によって決まります。
もし、親族に土地を貸すなど、税務署からの指摘を絶対に避けたいのであれば、「更地価額の6%」を強く意識する必要があります。一方で、第三者と一般的な賃貸借契約を結ぶのであれば、「固定資産税評価額の3~5%」を基準に、周辺の相場や土地の個別性を考慮して交渉を進めるのが現実的でしょう。
ケース別!どちらの考え方を使うべき?
具体的なケースを想定して、どちらの考え方を参考にすべきか見ていきましょう。
ケース1:息子夫婦に家を建てるための土地を貸す場合
この場合は、「更地価額の6%」を優先して考えるべきです。権利金なしで、相場より著しく低い地代で貸してしまうと、差額分が親から子への贈与とみなされる可能性があります。「相当の地代」をきちんと受け取っていれば、そうした心配をせずに済みます。
ケース2:事業者に店舗用地として貸す場合
事業者向けの賃貸では、複数の考え方を総合的に判断します。「更地価額の6%」は権利金なしの場合の一つの上限の目安になりますし、「固定資産税の5~8倍」は交渉のベースになります。さらに、その土地でどれくらいの収益が見込めるか(収益性)も重要な要素となるため、一概には言えません。両方の計算方法を参考にしつつ、周辺の事業用地の賃料相場を調べることが重要です。
ケース3:赤の他人に住宅用地として貸す場合
このケースでは、「固定資産税の3~5倍」が最も現実的なスタートラインになります。この額を基準に、土地の形、日当たり、駅からの距離といった個別性を加味して、最終的な地代を借主と交渉して決めていくのが一般的な流れです。
他にもある!知っておきたい地代の計算方法
実は、地代の考え方はこの2つだけではありません。不動産鑑定士などが使う専門的な計算方法もいくつかあります。参考までに知っておくと、より多角的に地代を考えられるようになりますよ。
積算法
土地の更地価格に、投資として期待される利回り(期待利回り)を掛けて、さらに固定資産税などの必要経費を足して地代を計算する方法です。地主の投資目線での合理的な地代を算出する際に使われます。
賃貸事例比較法
貸したい土地の近隣で、条件が似ている土地の賃貸事例をいくつか集め、それらを比較して地代を算出する方法です。最も市場の実態に近い価格を把握しやすいですが、都合の良い類似事例を見つけるのが難しい場合もあります。
まとめ
「更地価額の6%」と「固定資産税評価額の3~5%」という地代の考え方について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。どちらか一方が絶対というわけではなく、土地を貸す相手や目的によって、どちらの考え方がより合理的かが変わってきます。
大切なのは、これらの計算方法を「絶対的な正解」としてではなく、「合理的な地代を決めるための道具」として使うことです。まずは両方の方法でご自身の土地の地代を計算してみて、相場観を掴むことが第一歩です。その上で、貸す相手との関係性や土地の個別の事情を考慮し、お互いが納得できる地代を決めることが、長期的に良好な関係を築くための鍵となります。もし判断に迷う場合は、不動産に詳しい専門家に相談するのも一つの有効な手段ですよ。
参考文献
土地の地代設定に関するよくある質問まとめ
Q.そもそも「更地価額の6%」と「固定資産税評価額の3~5%」って何が違うの?
A.基準となる価格が違います。「更地価額」は実際の市場取引価格(時価)に近い価格で、「固定資産税評価額」は市町村が税金計算のために評価した公的な価格です。一般的に更地価額の方が高くなります。
Q.地代を決める上で、どちらの計算方法がより合理的と言えるの?
A.一概には言えませんが、市場の実勢を反映しやすい「更地価額の6%」の方が、経済的な合理性は高いと考えられます。ただし、計算の基準となる更地価額の把握が難しい場合があります。
Q.2つの計算方法、どちらを優先して考えればいい?
A.当事者間の合意が最も優先されます。どちらか一方に固執するのではなく、両方の方法で算出した金額や近隣の地代相場を参考に、お互いが納得できる金額を協議して決めることが重要です。
Q.「更地価額の6%」は、どんなケースで使うことが多い?
A.商業地や事業用の土地など、収益性が高い土地を貸す場合に参考にされることが多いです。貸主側としては、土地の資産価値に見合った収益を確保したい場合に、この考え方を用いる傾向があります。
Q.「固定資産税評価額の3~5%」は、どんなケースで使うのが適している?
A.固定資産税評価額は公的な数値で分かりやすいため、個人間の賃貸借や住宅用の土地、既存の契約の地代改定交渉など、簡便な基準が求められる場面で参考にされることが多いです。
Q.最終的に、地代はどのように決めるのがベストなの?
A.どちらかの計算方法だけを基準にするのではなく、両方で試算し、周辺の地代相場も調査しましょう。その上で、土地にかかる固定資産税・都市計画税(公租公課)も考慮し、貸主と借主双方で話し合って決定するのが最も円満な方法です。