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通常の地代と相当の地代、その違いは?相続税評価額への影響を解説

2025-10-25
目次

土地を借りて家を建てている、あるいはご家族に土地を貸しているという方、地主さんに支払う「地代」には種類があることをご存知でしょうか?実は、この地代の種類によって、将来の相続税が大きく変わってしまう可能性があるんです。この記事では、「通常の地代」と「相当の地代」という2つの地代の違いと、それが借地権の相続税評価にどう影響するのかを、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

「通常の地代」と「相当の地代」の基本

土地の貸し借りにおける地代には、大きく分けて「通常の地代」と「相当の地代」の2種類があります。この2つの違いを理解する上で大切なキーワードが「権利金」です。まずは、この権利金から見ていきましょう。

権利金とは?

権利金とは、借地契約を結ぶときに、土地を借りる人(借地人)が土地の持ち主(地主)に支払う一時金のことです。この権利金を支払うことで、借地人はその土地に自分の建物を建てて利用する権利、つまり「借地権」を得ることができます。礼金のようなイメージに近いかもしれませんね。

通常の地代とは

通常の地代とは、契約時に権利金を支払った場合に、月々(または年ごと)に支払う地代のことです。権利金を支払うことで「借地権」部分の対価はすでに支払っていると考えられるため、残りの「底地(そこち)」と呼ばれる地主さんの所有権部分に対する使用料として地代を支払います。そのため、地代は比較的安価になるのが特徴です。

税務上の計算式は以下のようになります。

通常の地代(年額)= 土地の価額 ×(1-借地権割合)× 6%

相当の地代とは

相当の地代とは、契約時に権利金を支払わなかった場合に支払う地代のことです。権利金の支払いがない代わりに、借地権部分も含めた土地全体の利用料として地代を支払うことになります。そのため、通常の地代よりも高額になります。特に、親族間で土地を貸し借りする場合など、権利金のやり取りをしないケースで見られます。

税務上の計算式は以下の通りです。

相当の地代(年額)= 土地の価額 × 6%

2つの地代をシミュレーションで比較

言葉だけだと少し分かりにくいかもしれませんので、具体的な数字を使って比較してみましょう。以下の条件で、年間の地代がどれくらい変わるのか計算してみます。

  • 土地の価額(自用地評価額):5,000万円
  • 借地権割合:70%
地代の種類 計算式と年額
通常の地代 5,000万円 × (1 – 70%) × 6% = 90万円
相当の地代 5,000万円 × 6% = 300万円

このように、権利金を支払わない場合の「相当の地代」は、「通常の地代」と比べてかなり高額になることがお分かりいただけると思います。

地代の種類で借地権の相続税評価額が変わる!

ここからが特に重要なポイントです。相続が発生したとき、土地を借りる権利である「借地権」も相続財産として評価され、相続税の対象となります。この借地権の評価額は、支払っている地代の種類や金額によって大きく変わるため、注意が必要です。

権利金を支払い、「通常の地代」を払っている場合

借地契約で最も一般的なケースです。契約時に権利金を支払って借地権を得ているため、借地権は財産として明確に評価されます。評価額は以下の式で計算します。

借地権の評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合

例えば、自用地評価額が5,000万円、借地権割合が70%の土地であれば、借地権の評価額は 5,000万円 × 70% = 3,500万円 となります。

権利金を支払わず、「相当の地代」を払っている場合

権利金を支払っていない代わりに、土地全体の価値に見合った「相当の地代」を支払っている場合はどうでしょうか。この場合、借地権の価値は毎年の地代に含まれて支払われていると考えられるため、税務上、借地権の財産価値はゼロとして扱われます。

借地権の評価額 = 0円

相続税の計算上、借地権の評価額が0円になるのは大きな違いですね。ただし、この場合、地主さん側の土地(底地)の評価額は、更地評価額の80%に減額されるというルールがあります。

【要注意】権利金なしで、地代が安い場合

親族間での貸し借りなどで、権利金のやり取りがなく、さらに支払っている地代が「相当の地代」よりも安い、というケースは特に注意が必要です。税務署からは「地代が安すぎる分、利益を得ている(借り得)」と見なされ、その利益部分が借地権として評価されてしまうのです。

支払っている地代の状況 借地権の評価
相当の地代以上 0円
通常の地代より高く、相当の地代より低い 自用地評価額×借地権割合×調整割合(※)
通常の地代以下(固定資産税等よりは高い) 自用地評価額×借地権割合
固定資産税等以下(使用貸借) 0円(借地権とは認められない)

(※)調整割合は、実際の地代が相当の地代にどれだけ近いかに応じて計算されます。

このように、権利金の授受がない場合は、支払っている地代の金額によって借地権の評価が複雑に変わります。

法人と個人の間の土地賃貸借における注意点

これまでの説明は、主に個人と個人の間の土地の貸し借りを前提としています。もし、貸主か借主のどちらかが法人の場合、税務上の考え方が少し異なり、さらに注意が必要になります。

権利金の認定課税

例えば、会社(法人)が社長(個人)に会社の土地を貸す際に、権利金を受け取らず、地代も相当の地代より安い場合、税務署は「法人は受け取るべきだった権利金相当額の利益を得た」とみなし、法人税を課税することがあります。これを権利金の認定課税といいます。

「土地の無償返還に関する届出書」の活用

この認定課税を避けるための手続きとして、「土地の無償返還に関する届出書」というものがあります。これは、「将来、この土地を無償で会社に返還します」ということを、貸主である法人と借主である個人の連名で税務署に届け出るものです。この届出書を契約後すみやかに提出すれば、権利金の認定課税は行われません。ただし、地代が安すぎる場合は、その差額分が役員賞与などと見なされる可能性は残ります。

借地権でも使える「小規模宅地等の特例」

相続税の負担を大きく軽減できる制度に「小規模宅地等の特例」があります。これは、亡くなった方が住んでいた土地や事業をしていた土地の評価額を、一定の要件のもとで最大80%減額できるという非常に強力な制度です。

この特例は、自分で所有している土地(自用地)だけでなく、借地権にも適用することができます。ご自宅が借地の上に建っている場合でも、要件を満たせば借地権の評価額を大幅に下げることができ、相続税の節税に繋がります。適用要件は複雑ですので、専門家への相談をおすすめします。

まとめ

「通常の地代」と「相当の地代」の最も大きな違いは、契約時の権利金の有無にあります。そして、実際に支払っている地代が税務上どのように扱われるかによって、相続時の借地権の評価額、ひいては相続税額が大きく変わってきます。

特に親族間で土地を貸し借りしている場合は、「権利金をもらっていないから」「身内だから」と安易に地代を決めてしまうと、将来、思わぬ形で相続税の負担が増えてしまう可能性があります。ご自身の状況がどちらに当てはまるか、現在の地代設定で問題がないか、一度確認しておくことが大切です。もし判断が難しい場合や、今後の相続対策に不安がある場合は、早めに税理士などの専門家に相談しましょう。

参考文献

通常の地代と相当の地代に関するよくある質問まとめ

Q.通常の地代と相当の地代の最も大きな違いは何ですか?

A.通常の地代は権利金の支払いが前提ですが、相当の地代は権利金の授受を行わない代わりに、土地の更地価格を基準とした比較的高額な地代を支払うものです。主に同族会社と役員間の土地賃貸借で用いられます。

Q.相当の地代はどのように計算するのですか?

A.原則として「その土地の更地価額(相続税評価額など)のおおむね年6%」に相当する金額とされています。この計算により、権利金の授受がなくても税務上の問題が生じないようにします。

Q.相当の地代を支払うメリットは何ですか?

A.会社が役員個人の土地を借りる際に、権利金の授受が不要になる点です。通常、権利金を授受しないと会社側に受贈益課税が発生しますが、相当の地代を支払うことでこの課税を回避できます。

Q.相当の地代を支払っていれば、権利金は不要なのですか?

A.はい、不要です。相当の地代は、権利金の代わりに高めの地代を支払うという考え方に基づいています。そのため、相当の地代を授受する契約では、権利金の支払いは行われません。

Q.なぜ同族会社間の取引で相当の地代が使われるのですか?

A.同族会社と役員(社長など)の間では、資金的な問題から権利金の授受が難しいケースが多いためです。相当の地代を用いることで、権利金を実際にやり取りすることなく、税務上適正な土地の賃貸借契約を結ぶことができます。

Q.相当の地代で土地を貸していると、相続税に影響はありますか?

A.はい、影響があります。相当の地代で土地を貸している場合、その土地の相続税評価額は借地権を考慮せず、自用地(更地)評価額の80%で評価されます。通常の地代で貸すよりも評価額が高くなる傾向があるため注意が必要です。

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