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【相続税】相当の地代を払う借地権の評価は?贈与税の扱いも解説

2024-11-18
目次

ご両親が地主さんから土地を借りて家を建てている場合、その「土地を借りる権利」である借地権も、大切な財産として相続や贈与の対象になります。実は、地主さんに支払っている「地代」の金額によって、この借地権の相続税評価額が大きく変わることがあるのをご存知でしょうか?特に「相当の地代」を支払っているケースでは、評価額がゼロになる可能性もあります。この記事では、地代の金額による借地権の税務上の取扱いの違いや、具体的な評価方法について、分かりやすく解説していきます。

借地権の相続税・贈与税の基本的な考え方

まずは、一般的な借地権がどのように評価され、税金がかかるのか基本を押さえておきましょう。借地権は財産的な価値が非常に高いため、相続税や贈与税の計算では無視できない存在です。

そもそも借地権とは?

借地権とは、建物を建てる目的で、地主さんから土地を借りる権利のことです。土地の所有権そのものではありませんが、その土地を利用できる非常に強い権利であり、財産として売買されたり、相続・贈与の対象になったりします。借地権がある土地では、土地の価値が「地主さんが持つ権利(底地権)」と「借りている人が持つ権利(借地権)」に分かれているイメージです。

通常の借地権の評価方法

相続税や贈与税を計算する際の借地権の価額は、以下の計算式で求められます。これが基本の形です。

借地権の評価額 = 自用地としての評価額 × 借地権割合

「自用地としての評価額」とは、その土地が更地だった場合の評価額のことで、一般的に国税庁が定める「路線価」を使って計算します。「借地権割合」も路線価図にアルファベット(A~G)で記されており、地域によって30%~90%と定められています。例えば、土地の評価額が5,000万円で、借地権割合が60%の地域なら、借地権の評価額は3,000万円にもなるのです。

権利金の授受がないと贈与税がかかる?

親の土地に子が家を建てるような場合、権利金(借地権を設定する対価)を支払わないことが多いですよね。権利金を支払う慣習がある地域で、権利金の支払いなしに借地権が設定されると、権利金相当額の利益を親から子へ贈与したとみなされ、贈与税がかかる可能性があります。ただし、地代も権利金も支払わない「使用貸借」の場合は、税務上の取扱が異なりますので注意が必要です。

「相当の地代」を支払っている場合の特別な取扱い

ここからが本題です。もし地主さんに「相当の地代」を支払っている場合、これまで説明した基本的な評価方法とは全く異なる取扱いがされます。

「相当の地代」とは?

「相当の地代」とは、その土地の価額に対して見合った、いわば適正な地代のことです。税務上では、過去3年間の平均の更地価額のおおむね年6%に相当する金額とされています。例えば、土地の価額が5,000万円であれば、年間の地代が300万円(5,000万円 × 6%)程度となります。これは、一般的な地代(固定資産税の2~3倍程度)と比べると、かなり高額になることが多いです。

相当の地代を支払う借地権の評価額は「ゼロ」

もし、権利金の支払いがなく、地主さんへ「相当の地代」を支払っている場合、その借地権の相続税評価額はゼロとして取り扱われます。つまり、相続税や贈与税の計算上、その借地権の価値はないものとして扱われるのです。これは非常に大きな違いですよね。

地代の種類 借地権の評価額
通常の地代 自用地評価額 × 借地権割合
相当の地代(年6%程度) ゼロ

なぜ評価額がゼロになるかというと、「本来であれば最初に支払うべき権利金に代わって、毎年の地代で土地の価値に見合った対価を十分に支払っているため、借地人側に特別な経済的利益は生じていない」と考えられるからです。

「通常の地代」と「相当の地代」の中間的な地代を支払っている場合

では、支払っている地代が「通常の地代」よりは高いけれど、「相当の地代(年6%)」には満たない場合はどうなるのでしょうか。この場合も、特別な計算方法が用意されています。

評価額が減額されるケース

権利金の支払いがなく、地代が「相当の地代」に満たないものの、「通常の地代(固定資産税等の3倍程度)」は超えているようなケースでは、借地権の評価額が一定の計算式に基づいて減額されます。評価額がゼロにはなりませんが、本来の評価額よりは低く評価される可能性があります。

評価額の計算方法

この場合の評価額は、本来の借地権評価額から、実際に支払っている地代と相当の地代との差額などに基づいて計算された金額を控除する方法がとられます。計算は少し複雑になりますが、簡単に言うと「本来の借地権の価値から、通常より多く地代を支払っている分を差し引く」というイメージです。正確な評価額を知りたい場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

地代の支払い状況による評価方法まとめ

これまで解説した内容を、地代の支払い状況ごとに表でまとめてみましょう。

地代の支払い状況 借地権の評価方法
権利金の支払いあり・通常の地代 自用地評価額 × 借地権割合 (原則的な評価)
権利金の支払いなし・相当の地代(年6%程度) 評価額はゼロ
権利金の支払いなし・通常の地代以上、相当の地代未満 本来の評価額から一定額を控除(評価減)
権利金の支払いなし・通常の地代 原則、自用地評価額 × 借地権割合。ただし、権利金の贈与認定のリスクあり

相続・贈与にあたっての注意点

借地権の相続や贈与を考える際には、税金以外にも注意すべき点があります。

地主の承諾は必要?

借地権を誰かに譲り渡す場合、原則として地主さんの承諾が必要です。しかし、相続の場合は、包括的な権利の承継なので地主さんの承諾は不要です。ただし、今後も良好な関係を続けるために、相続が発生した旨はきちんと報告しておきましょう。一方で、生前贈与の場合は、第三者への譲渡と同じ扱いになるため、地主さんの承諾が必要です。無断で贈与すると契約解除の原因にもなりかねないので、必ず事前に相談しましょう。承諾の際には、名義書換料(承諾料)として借地権価格の10%程度を支払うのが一般的です。

使用貸借との違いを理解する

親子間などで地代を一切支払わずに土地を借りている場合、それは「使用貸借」と呼ばれます。使用貸借の場合、借りている側に借地権という権利は発生せず、税務上の評価額もゼロです。しかし、親が亡くなった際には、その土地は借地権の負担がない「自用地」として評価されるため、貸宅地として評価が下がるケースに比べて相続税が高くなる可能性があります。支払っている地代の有無や金額が、税務上の取扱いに大きく影響する点をしっかり覚えておきましょう。

まとめ

今回は、支払っている地代の金額による借地権の相続税・贈与税の取扱いの違いについて解説しました。ポイントは以下の通りです。

  • 通常の借地権は「自用地評価額 × 借地権割合」で評価される。
  • 土地の更地価額の年6%程度の「相当の地代」を支払っている場合、借地権の評価額はゼロになる。
  • 通常の地代以上、相当の地代未満の地代を支払っている場合は、評価額が減額される可能性がある。
  • 相続と贈与では、地主さんの承諾の要否など手続きが異なる。

ご自身のケースがどれに当てはまるかを確認するためには、まず地主さんとの間で交わされている土地賃貸借契約書の内容や、毎年の地代の金額をしっかりと確認することが第一歩です。その上で、評価額の計算や申告手続きに不安がある場合は、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

No.4611 借地権の評価|国税庁

相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて|国税庁

No.4552 親の土地に子供が家を建てたとき|国税庁

相当の地代と借地権の税金に関するよくある質問まとめ

Q.「相当の地代」とは何ですか?相続税に関係ありますか?

A.相当の地代とは、土地の自用地評価額のおおむね年6%に相当する地代のことです。これを支払っている場合、借地権の価額はゼロとして扱われ、相続税や贈与税の課税対象とならないという大きなメリットがあります。

Q.相当の地代を支払っていれば、借地権の相続税はかからないのですか?

A.はい、原則としてかかりません。相当の地代を地主(貸主)に支払っている場合、その借地権の相続税評価額はゼロとして扱われるため、相続税の課税対象にはなりません。

Q.「通常の地代」を支払っている場合の借地権の評価はどうなりますか?

A.通常の地代(固定資産税等の3倍程度)を支払っている場合、借地権は相続財産として評価され、相続税の課税対象となります。評価額は、土地の自用地評価額に借地権割合を乗じて計算されます。

Q.親子間で土地を貸し借りしています。相当の地代を払わないと贈与税がかかりますか?

A.はい、贈与税がかかる可能性があります。権利金などを支払わず、かつ相当の地代よりも低い地代(または無償)で土地を借りた場合、借地権相当額の贈与があったとみなされ、贈与税の対象となることがあります。

Q.相当の地代の計算方法を教えてください。

A.相当の地代は、原則として「その土地の自用地としての価額のおおむね年6%」で計算されます。例えば、自用地評価額が5,000万円の土地であれば、年間の相当地代は300万円(5,000万円×6%)となります。

Q.途中で通常の地代から相当の地代に切り替えることはできますか?

A.可能です。ただし、地代を改定する際には地主との合意が必要です。また、地代の変更が税務上どのように扱われるかについては複雑な点もあるため、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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