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借地の権利金が不要に?土地の無償返還の約束で節税する仕組み

2024-11-30
目次

土地を借りて事業を始めたい、家を建てたいと考えたとき、「権利金」という初期費用が気になりますよね。特に同族会社で社長の土地を使う場合など、権利金の支払いを避けたいケースは多いでしょう。実は、「将来、土地を無償で返します」と約束することで、この権利金が不要になる方法があるんです。この記事では、その仕組みとメリット、そして重要な注意点をわかりやすく解説します。

そもそも権利金とは?なぜ支払う必要があるの?

土地を借りるときに登場する「権利金」。まずは、この権利金がどういうものなのか、なぜ支払う必要があるのかを理解しましょう。これが分かると、「土地の無償返還」の仕組みがよりクリアになりますよ。

権利金は「借地権」の対価

権利金とは、建物を建てる目的で土地を借りる際、借地権を設定する対価として、借主(借地人)から貸主(地主)へ支払われる一時金のことです。借地借家法によって借主の権利は強く守られており、一度土地を貸すと半永久的に戻ってこない可能性もあるため、地主はその対価として権利金を受け取るのが一般的です。これは、礼金に似た性質を持つお金と考えると分かりやすいかもしれません。

権利金を支払わないとどうなる?「認定課税」のリスク

では、もし権利金を支払わずに土地を借りたらどうなるのでしょうか。特に、貸主か借主のどちらかが法人の場合、税務署は「権利金相当額の利益を贈与された」とみなし、借主である法人に法人税が課税されます。これを「権利金の認定課税」と呼びます。例えば、本来5,000万円の権利金が必要な土地を無償で借りた場合、会社は5,000万円の利益(受贈益)があったとみなされ、その利益に対して法人税が課せられてしまうのです。これは、特に社長個人の土地を会社が借りる「同族会社」などで問題になりやすい点です。

権利金の相場はどれくらい?

権利金の額に法的な決まりはありませんが、一般的には土地の更地価格の60%~70%程度が相場とされています。これは、その土地の借地権割合(相続税路線価図で確認できます)を参考に決められることが多いです。例えば、更地価格が1億円で借地権割合が60%の地域であれば、権利金の目安は6,000万円となります。かなりの高額になることが分かりますね。

「土地の無償返還に関する届出書」で権利金が不要になる仕組み

高額な権利金や認定課税を避けるための有効な手段が、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することです。この届出書が、なぜ権利金を不要にする魔法の書類になるのか、その仕組みを詳しく見ていきましょう。

「将来無償で返す」約束がカギ

この届出書は、貸主と借主が連名で「将来、この土地は無償で返還します」と税務署に約束する書類です。この約束をすることで、「借地権という財産的な価値のある権利は発生していない」とみなされます。権利金は借地権の対価ですから、借地権が発生しないのであれば、その対価である権利金を支払う必要も、受け取っていない権利金に対して課税される(認定課税)必要もなくなる、という理屈です。

認定課税を回避するもう一つの方法「相当の地代」

実は、認定課税を避ける方法はもう一つあります。それは「相当の地代」を支払う方法です。相当の地代とは、その土地の更地価格のおおむね年間6%に相当する地代を支払うことです。例えば、更地価格5,000万円の土地であれば、年間300万円(月額25万円)もの地代を支払う必要があります。これを毎年支払い続けるのは、多くの場合、現実的ではありません。そのため、多くのケースで「土地の無償返還に関する届出書」を提出する方法が選ばれるのです。

認定課税の回避方法 内容
土地の無償返還に関する届出書 将来土地を無償で返還することを約束し、届出書を提出する。権利金の支払いは不要。
相当の地代の支払い 土地の更地価格の年6%程度の高額な地代を支払う。権利金の支払いは不要。

無償返還の届出をするメリット

この届出書を提出することは、単に権利金が不要になるだけではありません。貸主(地主)と借主(法人)の双方にとって、税金面で大きなメリットがあります。どのようなメリットがあるのか、具体的に見ていきましょう。

借主(法人)のメリット:権利金の支払いと認定課税を回避

借主にとって最大のメリットは、高額な権利金を支払う必要がなくなることです。これにより、事業開始時の初期費用を大幅に抑えることができます。また、権利金の授受がないことによる「認定課税」のリスクもなくなるため、安心して土地を借りることができます。

貸主(個人地主)のメリット①:所得税の負担軽減

もし貸主が権利金や相当の地代を受け取ると、それらは不動産所得となり、高額な所得税が課せられます。しかし、この届出書を提出し、後述する「通常の地代」を受け取る形にすれば、受け取る地代収入が抑えられるため、所得税の負担も軽くなります

貸主(個人地主)のメリット②:相続税評価額の減額

貸主である個人に相続が発生した際、この届出を提出している土地は「貸宅地(かしたくち)」として評価されます。貸宅地は、他人に貸していることで利用に制限があるため、自分で自由に使える土地(自用地)よりも評価額が低くなります。具体的には、自用地評価額から借地権割合を控除した金額で評価されます。例えば、自用地評価額が1億円、借地権割合が60%の土地の場合、相続税評価額は「1億円 × (1 – 60%) = 4,000万円」となり、相続税の計算対象となる財産額を大幅に圧縮できる可能性があるのです。ただし、これは後述する一定の地代を収受している「賃貸借」であることが前提です。

無償返還の届出をする際の4つの重要注意点

メリットの大きい「土地の無償返還に関する届出書」ですが、適用を受けるためにはいくつかの重要な注意点があります。これを守らないと、せっかくの手続きが無駄になってしまう可能性もあるので、しっかり確認しておきましょう。

注意点①:当事者の一方が法人であること

この制度は法人税法に基づくものであるため、貸主か借主のどちらかが法人でなければ利用できません。個人間の土地の貸し借り(例えば、親の土地に子供が家を建てるケースなど)では、この届出書は提出できず、一般的に「使用貸借」として扱われ、税務上の取り扱いも異なります。

注意点②:権利金等の授受は一切行わない

この制度の前提は「借地権の設定がない」ことです。そのため、権利金はもちろん、更新料や一時金など、権利設定の対価とみなされるような金銭のやり取りは一切行ってはいけません。もし少しでも受け取ってしまうと、この届出は適用できなくなります。

注意点③:賃貸借契約書に「無償返還」を明記する

税務署に届出書を提出する際には、賃貸借契約書の写しを添付する必要があります。その契約書の中に、「契約終了時には、借主は建物を収去し、土地を原状回復して無償で貸主に返還する」という旨の条項を必ず記載してください。この記載がないと、届出は受理されません。

注意点④:地代は「固定資産税等の2~3倍以上」に設定する

これが非常に重要なポイントです。地代を完全に無償にしたり、固定資産税と同額程度の低い金額にしたりすると、税務上「使用貸借」(ただで貸し借りしている状態)とみなされてしまいます。使用貸借と判断されると、相続時に「貸宅地」としての評価減が認められず、自用地(更地)と同じ100%の評価額になってしまいます。相続税のメリットも受けるためには、契約を「賃貸借」と認めさせる必要があります。その目安となるのが、年間の地代をその土地の固定資産税・都市計画税の合計額の2~3倍以上に設定することです。これを「通常の地代」と呼びます。

契約の種類 地代の水準
賃貸借 固定資産税等の年額の2~3倍以上(相続時に貸宅地評価
使用貸借 無償または固定資産税等の年額と同程度(相続時に自用地評価

届出書の手続き方法

それでは、実際に「土地の無償返還に関する届出書」を提出する際の手続きについて解説します。難しい手続きではありませんが、ポイントを押さえておきましょう。

提出書類と提出先

提出する書類は以下の2点です。
1. 土地の無償返還に関する届出書(貸主と借主の連名で作成)
2. 土地の賃貸借契約書の写し(無償返還の旨が記載されたもの)
これらの書類を、貸主(土地の所有者)の納税地を管轄する税務署に提出します。

提出期限はいつまで?

提出期限は「土地を無償で返還することが定められた後、遅滞なく」とされています。明確な日付はありませんが、実務上は、賃貸借契約を締結した事業年度の法人税の確定申告期限までに提出するのが一般的です。忘れないように、契約を結んだら速やかに手続きを進めましょう。

まとめ

今回は、「土地の無償返還を約束するとなぜ権利金が不要になるのか」というテーマについて解説しました。ポイントを振り返ってみましょう。

  • 権利金は「借地権」の対価であり、支払わないと法人には認定課税のリスクがある。
  • 土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出することで、借地権は発生しないとみなされ、権利金や認定課税が不要になる。
  • この届出には、借主の初期費用削減だけでなく、貸主の所得税・相続税の節税につながる大きなメリットがある。
  • メリットを最大限に活かすには、「当事者の一方が法人」「権利金の授受なし」「契約書への無償返還の明記」「固定資産税等の2~3倍以上の地代設定」という4つの注意点を守ることが不可欠。

特に、同族会社とその社長との間の土地の貸し借りなどでは、非常に有効な節税対策となります。ただし、地代の設定や契約書の内容など、税務上の判断が関わる部分も多いため、手続きを進める際は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.5730 権利金の認定課税について

国税庁 土地の無償返還に関する届出書

借地の権利金と無償返還に関するよくある質問まとめ

Q.借地契約で土地の無償返還を約束すると、なぜ権利金が不要になるのですか?

A.将来、借主が土地を更地にして無償で返還することを約束すると、借地権の価値が実質的にゼロとみなされるためです。権利金は借地権設定の対価ですので、価値がないものに対しては権利金も発生しない、という考え方に基づいています。

Q.「土地の無償返還に関する届出書」とは何ですか?

A.土地の貸主と借主が、将来土地を無償で返還することを約束した内容を税務署に届け出るための書類です。この届出書を提出することで、権利金の授受がなくても税務上の問題(認定課税)が発生するのを防ぐことができます。

Q.権利金を支払わないと、借主に税金がかかる(認定課税される)のですか?

A.通常、権利金を支払わずに土地を借りると、権利金相当額の利益を受けたとみなされ、借主に贈与税などが課税される可能性があります。しかし、「土地の無償返還に関する届出書」を税務署に提出すれば、この認定課税を避けることができます。

Q.無償返還の約束をした場合、地代は通常より高くなりますか?

A.はい、高くなるのが一般的です。権利金の授受がない代わりに、貸主は「相当の地代」(その土地の更地価額のおおむね年6%程度)を受け取ります。これにより、貸主側も権利金を受け取らなかったことによる税務上の問題を回避できます。

Q.土地の無償返還を約束する借地契約のメリット・デメリットは何ですか?

A.借主のメリットは、契約時に高額な権利金が不要な点です。デメリットは、月々の地代が割高になることと、契約終了時に建物を解体して更地で返還する必要がある点です。貸主にとっては、安定した地代収入が見込めるメリットがあります。

Q.親子間での土地の貸し借りでも、無償返還の届出は必要ですか?

A.はい、特に重要です。親子間や同族会社間など特別な関係にある者同士の土地の貸し借りでは、権利金の授受がないと贈与とみなされやすいためです。「土地の無償返還に関する届出書」を提出することで、予期せぬ課税を確実に回避できます。

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