「家が古くなったのに、固定資産税が思ったように安くならない…」「耐用年数を過ぎたら、固定資産税はゼロになるんじゃないの?」こんな疑問をお持ちではありませんか?実は、建物の固定資産税は、耐用年数が過ぎてもゼロにはなりません。それどころか、評価額がなかなか下がらないこともあります。この記事では、耐用年数を経過した建物の固定資産税評価額がどのように決まるのか、その仕組みと評価方法について、わかりやすく解説していきます。
建物の固定資産税評価額の基本
まずは、建物の固定資産税評価額がどのように決まるのか、基本的な仕組みから見ていきましょう。この基本を知っておくことが、耐用年数経過後の評価を理解する第一歩になりますよ。
固定資産税評価額はどうやって決まる?
建物の固定資産税評価額は、総務大臣が定めた「固定資産評価基準」に基づいて、各市町村が個別に決定します。具体的には、「再建築価格方式」という方法で計算されます。これは、「評価の対象となる建物と全く同じものを、評価の時点でもう一度建てるとしたらいくらかかるか(再建築価格)」を基準に評価額を算出する方法です。新築時の建築費そのものではなく、現在の物価水準で計算されるのがポイントです。一般的に、実際の建築費用の50%~70%程度が目安とされています。
評価額は毎年見直されるわけではない
固定資産税評価額は、毎年見直されるわけではありません。原則として3年に1度、「評価替え」というタイミングで見直されます。この評価替えの際には、建物の劣化具合だけでなく、建築資材の価格変動なども考慮されるため、評価額が必ずしも下がるとは限らないのです。
耐用年数と固定資産税評価額の関係
次に、多くの方が疑問に思う「耐用年数」と固定資産税評価額の関係について見ていきましょう。「耐用年数」と聞くと、税金の計算で使われる減価償却のイメージが強いかもしれませんね。固定資産税の評価でも、この考え方は使われますが、少し仕組みが異なります。
会計上の「法定耐用年数」との違い
所得税や法人税の計算で使われる「法定耐用年数」は、資産を使用できる期間として法律で定められた年数です。この期間で減価償却を行い、最終的に資産価値は1円(備忘価額)になります。一方、固定資産税の評価で使われるのは「経年減点補正率」という考え方です。これは、建物の経過年数による価値の減少を反映させるための補正率です。
なぜ評価額はゼロにならない?「経年減点補正率」の仕組み
固定資産税の評価額がゼロにならない最大の理由は、この「経年減点補正率」に下限が設けられているからです。建物は年数が経つにつれて劣化しますが、完全に価値がなくなるわけではないと考えられています。そのため、経年減点補正率の下限は20%(0.2)と定められています。つまり、どんなに古い建物でも、最低でも再建築価格の20%の価値は残るとして評価されるのです。これが、耐用年数を過ぎても固定資産税がかかり続ける理由です。
| 建物の構造 | 法定耐用年数(住宅用) |
|---|---|
| 木造 | 22年 |
| 軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm以下) | 19年 |
| 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 | 47年 |
※上記は法定耐用年数の一例です。固定資産税の評価では、この年数を経過しても評価額は再建築価格の20%を下回ることはありません。
耐用年数経過後も評価額が下がらない理由
「耐用年数を過ぎて20%で下げ止まるのはわかったけど、それにしても評価額が高いままなのはなぜ?」と感じる方もいるでしょう。その理由を2つのポイントから解説します。
建築物価の上昇による影響
3年に1度の評価替えでは、「再建築費評点補正率」というものが考慮されます。これは、前回の評価替えからの3年間で建築物価がどれだけ変動したかを示す率です。近年、人件費や資材価格の高騰により、建築コストは上昇傾向にあります。この物価上昇が、建物の経年劣化による価値の減少(経年減点補正)を上回ってしまうと、評価額が下がらない、あるいは上がってしまうという現象が起こるのです。
評価額が上がった場合の据え置き措置
もし、物価上昇の影響で計算上の評価額が前年度の評価額を上回ってしまった場合でも、すぐに税金が上がるわけではありません。納税者の負担が急に増えるのを避けるため、評価額は前年度の価額に据え置かれるという措置が取られます。その結果、評価額が何年も変わらないという状況が生まれることがあるのです。
相続税評価額との違いに注意
建物を相続した場合、その評価額は原則として固定資産税評価額と同額になります。しかし、耐用年数を大幅に超えた古い家屋など、市場価値が固定資産税評価額(再建築価格の20%)よりも明らかに低いケースもありますよね。
固定資産税評価額が時価と乖離する場合
相続税の財産評価の基本は「時価」です。通常、建物の時価の算定は複雑なため、固定資産税評価額をそのまま用いるのが一般的です。しかし、耐用年数を経過した建物の場合、固定資産税評価額の20%という下限ルールにより、実際の売買価格(時価)とかけ離れてしまうことがあります。例えば、解体費用を考えると実質的な価値がほとんどないような家屋でも、固定資産税評価額は数百万円になっている、というケースです。
別の評価方法が認められる可能性
このような場合、不動産鑑定士による鑑定評価や、専門家と相談の上、別の合理的な評価方法(例えば、建物の再建築価額から経過年数に応じた減価償却費を控除する方法など)を用いて相続税の申告を行うことで、評価額を下げられる可能性があります。特に古い建物を相続した場合は、固定資産税評価額をそのまま使うのではなく、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
評価額に疑問がある場合の対処法
毎年送られてくる固定資産税の納税通知書を見て、「この評価額は本当に正しいのだろうか?」と疑問に思うこともあるかもしれません。そんな時は、確認したり不服を申し立てたりする制度があります。
固定資産課税台帳の閲覧
まずは、ご自身の資産がどのように評価されているかを確認しましょう。市町村の税務課などで「固定資産課税台帳」を閲覧することができます。評価額の根拠となる情報が記載されているので、内容を確認してみましょう。
審査の申出(不服申し立て)
固定資産課税台帳の内容を確認しても評価額に納得できない場合は、「固定資産評価審査委員会」に対して審査の申出をすることができます。ただし、申出ができるのは原則として評価替えの年度のみで、納税通知書を受け取った日から3か月以内という期限がありますので注意が必要です。
まとめ
今回は、耐用年数を経過した建物の固定資産税評価額について解説しました。ポイントをまとめます。
- 建物の固定資産税評価額は、再建築価格(同じものを今建てたらいくらか)を基準に計算される。
- 評価は3年に1度見直されるが、建築物価の上昇により評価額が下がらないことがある。
- 所得税の計算とは異なり、固定資産税の評価額は再建築価格の20%を下限として下げ止まるため、ゼロにはならない。
- 耐用年数経過後の古い家屋を相続した場合、相続税評価額は固定資産税評価額以外の方法で評価できる可能性がある。
- 評価額に疑問がある場合は、市町村の窓口で確認したり、審査の申出をしたりすることができる。
建物の固定資産税は、古くなっても一定の負担が続くものです。その仕組みを正しく理解し、ご自身の資産状況を把握しておくことが大切ですね。
参考文献
国税庁 No.3261 建物の取得費の計算
国税庁 No.2105 旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)
国税庁 No.5404 中古資産の耐用年数
建物の固定資産税と耐用年数に関するよくある質問まとめ
Q.建物の法定耐用年数を過ぎたら、固定資産税はゼロになりますか?
A.いいえ、ゼロにはなりません。建物が存在する限り、固定資産税の評価額が完全にゼロになることはありません。評価額には下限が設けられているため、価値が残っていると見なされ課税され続けます。
Q.なぜ耐用年数が過ぎても固定資産税評価額はゼロにならないのですか?
A.固定資産税評価額の計算で使われる「経年減点補正率」に下限値(通常は20%)が設定されているためです。これにより、建物は最低でも再建築価格の20%の価値があると評価され、課税対象となります。
Q.固定資産税の「耐用年数」と、所得税の「法定耐用年数」は同じですか?
A.異なります。固定資産税の評価で考慮される年数と、所得税の減価償却計算で使われる法定耐用年数は、根拠となる法律や目的が違うため、同じ建物の種類でも年数が一致しない場合があります。
Q.耐用年数経過後の固定資産税評価額は、ずっと同じ金額ですか?
A.評価額が下限に達した後は基本的に大きく変動しません。しかし、3年ごとに行われる「評価替え」で、建築物価の変動などが反映され、評価額がわずかに上下する可能性はあります。
Q.古い家の固定資産税は、いつまで支払う必要がありますか?
A.建物が登記されている限り、固定資産税は支払い続ける必要があります。家屋を取り壊して法務局で「建物滅失登記」の手続きをしない限り、課税は継続します。
Q.耐用年数経過後の評価額を安くする方法はありますか?
A.評価額がすでに下限に達している場合、それ以上下げることは困難です。ただし、評価額に疑問がある場合は、市町村の担当窓口に評価の根拠を確認したり、固定資産課税台帳の縦覧期間中に内容を確認したりすることができます。