相続で兄弟と不動産を共有することになったけど、どう活用するか意見がまとまらない…、固定資産税の負担だけが続いていて、どうにかこの共有状態を解消したい…。そんなお悩みはありませんか?共有者同士の話し合いで解決できない場合、「共有物分割請求訴訟」という法的な手続きで、不動産の共有関係を解消できる可能性があります。この記事では、共有物分割の訴えとは何か、手続きの流れや費用、メリット・デメリットについて、わかりやすく解説していきます。
共有物分割請求訴訟とは?
共有物分割請求訴訟とは、複数の人で共有している不動産などの財産(共有物)の共有状態を解消するために、裁判所にその分割方法を決めてもらう手続きのことです。共有者同士の話し合い(協議)で円満に解決するのが一番ですが、意見が対立したり、そもそも話し合いに応じてくれなかったりする場合に、最終手段として利用されます。この訴訟は、どちらかが勝ってどちらかが負ける、という一般的な訴訟とは少し異なり、裁判所が当事者全員にとって公平で妥当な分割方法を判断してくれるという特徴があります。
どんなときに検討すべき?
共有物分割請求訴訟は、具体的に以下のようなケースで検討されることが多いです。
- 共有者間で意見がまとまらない
「売却して現金化したい人」「そのまま住み続けたい人」「賃貸に出して収益を得たい人」など、共有者それぞれの希望が異なり、話し合いが平行線のまま進まないケースです。 - 特定の共有者が不動産を独占している
共有者の一人が不動産に一人で住み着いてしまい、他の共有者が利用できない、家賃なども支払われないといった不公平な状態を解消したい場合です。 - 話し合いができない
他の共有者が話し合いのテーブルについてくれない、連絡が取れない、あるいは行方不明といった、協議自体が不可能な状況です。
誰でも請求できるの?
はい、持分割合の大小にかかわらず、すべての共有者が請求できます。これは民法第256条1項で「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる」と定められている、共有者の正当な権利です。たとえご自身の持分が10分の1といったわずかな割合であっても、他の共有者全員に対して分割を請求することができます。
分割できないケースはある?
原則としていつでも請求できますが、例外的に分割が認められないケースもあります。それは、共有者全員の合意で「5年を超えない期間内は分割しない」という不分割特約を結んでいる場合です。この特約がある期間中は、分割を請求することはできません。また、相続した財産がまだ遺産分割協議を経ていない「遺産共有」の状態である場合、原則として先に遺産分割の手続きを行う必要があります。
共有物分割請求訴訟に至るまでの流れ
いきなり裁判を起こすわけではありません。訴訟はあくまで最終手段です。一般的には、以下のステップで手続きが進みます。
Step1. 共有者間での協議
まずは、共有者全員での話し合い(協議)から始めます。どのような方法で分割したいか、それぞれの希望を伝え合い、合意を目指します。もし全員が納得する形で話がまとまれば、その内容を「共有物分割協議書」という書面に残しておきましょう。この書面は、後のトラブルを防ぐためにも非常に重要です。
Step2. 共有物分割調停
協議で話がまとまらない場合や、相手が話し合いに応じてくれない場合は、裁判所に「共有物分割調停」を申し立てることができます。調停は、裁判官と調停委員という中立的な第三者が間に入り、当事者双方の意見を聞きながら、話し合いによる解決を目指す手続きです。訴訟と違って非公開で行われ、比較的柔軟な解決が期待できます。ここで合意に至れば、「調停調書」が作成され、その内容は判決と同じ効力を持ちます。
Step3. 共有物分割請求訴訟
調停でも解決しない(不成立となった)場合に、最終手段として地方裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起します。訴訟では、各共有者が自身の主張とそれを裏付ける証拠を提出し、最終的に裁判官が法律に基づいて最も妥当と考える分割方法を判決として下します。この判決には強制力があるため、すべての共有者はその内容に従わなければなりません。
共有物分割の3つの方法
裁判所が判決で命じる分割方法には、主に以下の3つの種類があります。どの方法が選ばれるかは、不動産の性質や共有者の希望などを総合的に考慮して判断されます。
現物分割
共有している不動産そのものを物理的に分ける方法です。例えば、広い土地を持分割合に応じて複数の土地に分筆(登記上で分けること)し、それぞれを各共有者が単独で所有するといったケースです。ただし、マンションの一室や一戸建ての建物のように、物理的に分けることが難しい不動産には適用しにくい方法です。
代償分割(価格賠償)
共有者の一人が不動産全体を取得する代わりに、他の共有者に対してその人の持分に相当するお金(代償金)を支払う方法です。例えば、兄弟で共有している実家に兄が住み続けたい場合、兄が弟の持分を買い取る形で利用されます。この方法をとるには、不動産を取得する側に代償金を支払うだけの十分な資力が必要となります。2023年4月の民法改正で、この方法が法律上も明確に位置づけられました。
代金分割(換価分割)
共有不動産を第三者に売却し、その売却代金を持分割合に応じて分配する方法です。現物分割が難しい場合や、代償分割を希望する人がいない(または資力がない)場合に選択されることが多いです。金銭で公平に分けられるというメリットがありますが、共有者全員が不動産を手放すことになります。裁判所の判断でこの方法が命じられ、売却方法で合意できない場合は、最終的に競売にかけられることがあります。
共有物分割請求訴訟のメリット・デメリット
訴訟を検討する際は、メリットとデメリットの両方をしっかり理解しておくことが大切です。
| メリット | デメリット |
| 強制的に解決できる 相手がどれだけ反対していても、裁判所の判決によって共有関係を最終的に解消できます。長年膠着状態だった問題を終わらせることができます。 |
時間と手間がかかる 訴訟の提起から判決まで、一般的に1年以上かかることも珍しくありません。書類の準備や裁判所への出廷など、労力も必要です。 |
| 公平な分割が期待できる 裁判所が不動産鑑定などを通じて客観的な価値を算出し、公平な分割方法を判断してくれます。不当に安い価格で買い叩かれるといったリスクを避けられます。 |
費用が高額になる可能性がある 弁護士費用や裁判所に納める印紙代、不動産鑑定費用など、まとまった費用がかかります。 |
| 相手の同意がなくても進められる 共有者の一人の意思だけで手続きを開始できます。相手が話し合いを拒否したり、行方不明だったりしても、訴訟を進めることが可能です。 |
人間関係が悪化しやすい 法廷で互いの主張をぶつけ合うことになるため、特に親族間の場合、関係に修復不可能な亀裂が入ってしまう可能性があります。 |
| 希望通りの結果になるとは限らない 最終的な判断を下すのは裁判官です。自分が希望していた分割方法(例えば代償分割)が認められず、競売による代金分割を命じられるリスクもあります。 |
共有物分割請求訴訟にかかる費用
訴訟には、主に以下のような費用がかかります。事案によって金額は大きく変動しますので、あくまで目安として参考にしてください。
| 費用の種類 | 費用の目安 |
| 弁護士費用 | 着手金:30万円~50万円程度 報酬金:経済的利益(不動産の価値など)の10%~20%程度 法律事務所の料金体系や事案の難易度によって異なります。 |
| 訴訟費用(実費) | 収入印紙代:数万円~数十万円 訴える不動産の固定資産税評価額によって決まります。 郵便切手代:数千円~1万円程度 裁判所からの書類送付に使われます。 |
| 不動産鑑定費用 | 30万円~50万円程度 裁判所が不動産の適正な価値を判断するために、不動産鑑定士による鑑定が必要と判断した場合に発生します。 |
まとめ
共有物分割請求訴訟は、当事者同士の話し合いでは解決できない共有不動産のトラブルを、法的な強制力をもって最終的に解決するための強力な手段です。他の共有者の協力が得られなくても、共有状態という悩ましい状況から抜け出すことができます。しかし、その一方で、解決までに長い時間と少なくない費用がかかり、共有者間の人間関係が悪化するリスクも伴います。訴訟はあくまで最終手段と考え、まずは協議や調停での解決を目指すことが大切です。どの方法がご自身の状況にとって最適なのかを判断するためにも、共有不動産の問題に直面したら、まずは法律の専門家である弁護士に相談してみることをお勧めします。
参考文献
共有物分割の訴えに関するよくある質問まとめ
Q. 共有物分割請求訴訟とは何ですか?
A. 共有者間の話し合いで不動産などの共有物の分け方が決まらない場合に、裁判所に分割方法を決めてもらうための法的な手続きです。
Q. 相手が共有物分割に同意しない場合はどうすればいいですか?
A. まずは協議(話し合い)を試みますが、合意できない場合は、地方裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することになります。
Q. 共有物分割にはどのような方法がありますか?
A. 主に3つの方法があります。①現物分割(土地を分筆するなど)、②代償分割(一人が単独で取得し、他の共有者にお金を支払う)、③換価分割(共有物を売却して代金を分ける)です。
Q. 共有物分割請求訴訟にかかる費用はどのくらいですか?
A. 裁判所に納める印紙代や郵券代などの実費と、弁護士に依頼する場合は弁護士費用がかかります。費用は共有物の価格や事案の複雑さによって異なります。
Q. 共有物分割請求訴訟の流れを教えてください。
A. 一般的には、「訴訟提起」→「口頭弁論(主張・反論)」→「判決」という流れで進みます。途中で裁判上の和解が成立することも多くあります。
Q. 訴訟にはどのくらいの期間がかかりますか?
A. 事案によりますが、争点が少ない簡単なケースで半年~1年程度、複雑なケースでは1年以上かかることもあります。