共働き世帯が増え、夫婦で協力してマイホームを購入する「ペアローン」が人気ですね。でも、ペアローンを組むときに悩みがちなのが「団体信用生命保険(団信)」、特に「がん団信」に加入すべきかという問題です。万が一への備えは大切ですが、金利も上乗せされるので迷ってしまうのも当然です。この記事では、ペアローンのがん団信について、メリット・デメリットから選び方のポイントまで、わかりやすく解説していきますね。
そもそもペアローンと団信の基本をおさらい
まずは、ペアローンと団信の基本的な仕組みについて、簡単におさらいしておきましょう。この基本を理解することが、がん団信の必要性を考える上でとても大切になります。
ペアローンとは?収入合算との違い
ペアローンは、夫婦や親子などがそれぞれ住宅ローンを契約して、1つの物件を購入する方法です。お互いが相手のローンの連帯保証人になります。似たような方法に「収入合算」がありますが、こちらは主となる契約者の収入に、パートナーの収入を合算して1本のローンを組む方法です。それぞれの特徴を比べてみましょう。
| 項目 | ペアローン |
| 契約形態 | 夫婦それぞれがローンを契約(ローンは2本) |
| 団信の加入 | 夫婦それぞれが加入 |
| 住宅ローン控除 | 夫婦それぞれが利用可能 |
| 項目 | 収入合算(連帯保証型) |
| 契約形態 | 主債務者1名がローンを契約(ローンは1本) |
| 団信の加入 | 主債務者のみ加入 |
| 住宅ローン控除 | 主債務者のみ利用可能 |
このように、ペアローンは夫婦それぞれがローン控除を使えるなど税制面のメリットがありますが、団信もそれぞれで加入する必要があるのが特徴です。
団体信用生命保険(団信)の役割
団体信用生命保険(団信)は、住宅ローンの返済中に契約者が亡くなったり、所定の高度障害状態になったりした場合に、生命保険会社から支払われる保険金で住宅ローンの残高が完済される仕組みの保険です。ほとんどの民間金融機関では、住宅ローンを組む際に団信への加入が必須条件となっています。これは、残されたご家族に返済の負担を残さないための、とても大切な保障なんです。
ペアローンにおける通常の団信の注意点
ペアローンで通常の団信にそれぞれ加入した場合、一つ大きな注意点があります。それは、万が一のことがあっても、保障されるのはその人のローン残高のみという点です。
例えば、夫2,500万円、妻1,500万円のペアローンを組んでいて、夫が亡くなったとします。この場合、団信によって夫の2,500万円のローンは完済されます。しかし、妻の1,500万円のローンはそのまま残ってしまうのです。パートナーを失った悲しみの中で、これまで通りの収入を維持しながら一人で返済を続けていくのは、精神的にも経済的にも大きな負担になる可能性があります。
ペアローン向け「夫婦連生団信」とは?
先ほどお話ししたペアローンの団信における注意点。このリスクをカバーするために登場したのが「夫婦連生団信(れんせいだんしん)」や「ペア団信」と呼ばれるものです。最近、取り扱う金融機関が増えてきています。
夫婦連生団信の仕組み
夫婦連生団信の最大の特徴は、夫婦のどちらか一方に万が一のことがあった場合、お二人分の住宅ローン残高がまとめてゼロになるという点です。通常の団信では片方のローンしか保障されませんでしたが、この団信に加入していれば、残されたパートナーは住宅ローンの返済を心配することなく、その家に住み続けることができます。まさに、ペアローンのための心強い保険と言えますね。
がん保障付きの夫婦連生団信(がん団信)
さらに手厚い保障として、この夫婦連生団信に「がん保障」を付けたタイプがあります。これが「ペアローンのがん団信」です。
死亡や高度障害だけでなく、夫婦のどちらかが所定のがんと診断された時点で、お二人の住宅ローン残高がすべて完済されるというものです。生涯で日本人の2人に1人ががんにかかると言われる時代です。住宅ローンという長期にわたる返済期間中のがんリスクに備えたいと考える方にとって、非常に魅力的な選択肢となります。
ペアローンのがん団信に加入するメリット
では、具体的にペアローンでがん団信に加入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。主な3つのポイントを見ていきましょう。
経済的な安心感が大きい
がんの治療には、先進医療などで高額な費用がかかることがあります。また、治療に専念するために仕事を休んだり、働き方を変えたりすることで収入が減少してしまうケースも少なくありません。そんな時に、数千万円にもなる住宅ローンの返済がなくなることは、計り知れないほどの経済的な支えになります。お金の心配をせずに、安心して治療に専念できる環境を整えられるのが最大のメリットです。
どちらか一方ががんに罹患する確率は高い
「自分は大丈夫」と思っていても、リスクは考えておく必要があります。1人が生涯でがんに罹患する確率は約50%ですが、夫婦2人のうちどちらかが罹患する確率はそれよりも高くなります。特に、住宅ローンを返済する30代、40代は、がんの罹患率が少しずつ上がり始める年代です。二人で支え合って返済していくペアローンだからこそ、どちらか一方に何かあった時のリスクに備えることの価値は大きいと言えるでしょう。
既存の生命保険を見直せる
もし、がん団信に加入すれば、住宅ローンという大きな負債に対する備えは万全になります。そのため、現在加入している民間の死亡保険やがん保険の保障内容を見直すことができます。例えば、死亡保障額を減らしたり、がん診断給付金の額を調整したりすることで、月々の保険料を節約できる可能性があります。がん団信の保険料(金利上乗せ分)と、節約できる保険料を比較して、トータルで家計の負担を考えることが大切です。
ペアローンのがん団信に加入するデメリットと注意点
もちろん、良いことばかりではありません。がん団信に加入する前には、デメリットや注意点もしっかりと理解しておく必要があります。後悔しないためにも、きちんと確認しておきましょう。
金利が上乗せされる
最も大きなデメリットは、費用がかかることです。がん団信のような手厚い保障を付ける場合、通常の住宅ローン金利に年0.1%~0.4%程度の金利が上乗せされるのが一般的です。ほんのわずかな差に感じるかもしれませんが、住宅ローンは借入額が大きく返済期間も長いため、総返済額には大きな影響が出ます。
| 条件 | 借入額4,000万円、35年返済、元利均等返済の場合 |
| 通常金利(年0.5%) | 月々返済額:約103,836円 |
| がん団信付き(年0.7%) | 月々返済額:約107,458円 |
| 差額 | 月々:約3,622円 / 総返済額:約152万円 |
※上記はシミュレーション上の参考値です。
この負担を「安心料」として許容できるかどうかが、判断の大きなポイントになります。
保険金が「一時所得」とみなされる可能性
これは少し専門的な話になりますが、非常に重要な注意点です。夫婦連生団信で、がんと診断された本人ではない、健康なパートナーの分のローンが保険金で完済された場合、その金額が「一時所得」とみなされ、所得税の課税対象になる可能性があります。
例えば、妻ががんと診断され、夫のローン残高2,000万円も完済された場合、この2,000万円を元に計算された金額に対して税金がかかることがあるのです。非課税になるわけではない点は、必ず覚えておきましょう。詳しくは税務署や税理士などの専門家にご確認ください。
加入には健康状態の告知が必要
団信は生命保険の一種なので、加入する際には健康状態を告知する義務があります。過去の病歴や現在の健康状態によっては、がん団信どころか、通常の団信にさえ加入できないケースもあります。住宅ローンを検討し始めたら、まずはご自身の健康状態でも団信に加入できるかを確認しておくことが大切です。
【ケース別】がん団信は入るべき?判断のポイント
ここまでメリット・デメリットをお伝えしてきましたが、「結局、うちは入るべきなの?」と迷われる方も多いと思います。そこで、どのような方が加入を検討すべきか、ケース別に考えてみましょう。
がん団信への加入をおすすめするケース
- ご家族にがんの既往歴がある方:遺伝的なリスクを考慮し、備えを厚くしておくと安心です。
- 現在の貯蓄が少ないご家庭:万が一の際、治療費と住宅ローンの二重の負担に耐えるのが難しい場合に有効です。
- 夫婦のどちらかが自営業やフリーランス:会社員と比べて収入が不安定になりやすいため、働けなくなった時のリスクヘッジとして価値があります。
- とにかく心配事をなくして安心して暮らしたい方:金利上乗せ分を「安心料」と考えられるなら、精神的なメリットは非常に大きいです。
がん団信以外の選択肢を検討したいケース
- すでに手厚い民間の医療保険やがん保険に加入している方:保障が重複してしまう可能性があります。保険内容を見直した上で判断しましょう。
- 十分な貯蓄や資産があるご家庭:がん治療費や収入減少分を自己資金でカバーできる場合は、必ずしも必要ないかもしれません。
- 少しでも住宅ローンの総返済額を抑えたい方:金利上乗せによる約150万円以上の負担増を避けたい場合は、通常の団信を選ぶのも一つの手です。
まとめ
ペアローンのがん団信は、夫婦のどちらかががんと診断された場合に、二人の住宅ローンがなくなる非常に心強い保障です。治療への専念や、残されたパートナーの経済的負担を大きく軽減できるというメリットがあります。
一方で、金利が上乗せされることで総返済額が増えることや、税金の問題など、知っておくべき注意点も存在します。
大切なのは、ご夫婦で将来のライフプランやお金のこと、そして病気に対するリスクをどう考えるかをしっかりと話し合うことです。この記事でご紹介したメリット・デメリットを参考に、ご自身の家計状況や価値観に合った最適な選択をしてくださいね。
参考文献
ペアローンのがん団信に関するよくある質問まとめ
Q.ペアローンのがん団信、夫婦ふたりとも加入すべきですか?
A.必須ではありませんが、万が一のリスクに備えるなら、二人とも加入するのが理想的です。ただし、保険料は二人分かかるため、家計の状況や健康状態を考慮して、収入の多い方だけ加入するなどの選択も可能です。
Q.がん団信の保険料はどのくらいかかりますか?
A.金利に上乗せされるのが一般的で、通常は年0.1%~0.2%程度が目安です。借入額や金融機関によって異なるため、事前に確認が必要です。
Q.がん団信に加入しないという選択肢はありますか?
A.はい、あります。がん団信は任意加入の場合が多いです。別途、民間の生命保険やがん保険で備えるという方法もあります。保険料や保障内容を比較して、ご自身に合った方法を選びましょう。
Q.がんと診断されたら、すぐにローン残高はゼロになりますか?
A.金融機関や保険会社の規定によりますが、一般的には医師による「がん」の確定診断がなされた時点で保障の対象となります。診断書などの必要書類を提出し、審査を経て保険金が支払われます。
Q.ペアローンのがん団信は、どんな人におすすめですか?
A.夫婦共働きで、どちらか一方の収入が途絶えると返済が困難になるご家庭や、がん家系で将来に不安がある方、貯蓄がまだ十分でない若いご夫婦などにおすすめです。