帝王切開での出産を控えている方、またはその可能性がある方へ。手術への不安や疑問がたくさんあるかと思います。この記事では、帝王切開とはどんなお産なのか、手術の流れから費用、術後の過ごし方まで、ママと赤ちゃんのために知っておきたい情報をわかりやすくまとめました。安心してその日を迎えられるよう、一緒に準備していきましょう。
帝王切開ってどんなお産?
帝王切開は、経腟分娩が難しいと判断された場合に、お腹と子宮を切開して赤ちゃんを出産する方法です。お母さんや赤ちゃんの安全を最優先に考えた、大切な出産方法のひとつなんですよ。最近では、約5人に1人が帝王切開で出産していると言われており、決して珍しいことではありません。ママと赤ちゃんの命を守るための、立派なお産であることを知っておいてくださいね。
予定帝王切開と緊急帝王切開
帝王切開には、あらかじめ計画して行う「予定帝王切開」と、お産の途中で急遽決まる「緊急帝王切開」の2種類があります。予定帝王切開は、逆子(骨盤位)や多胎妊娠、前置胎盤などで、経腟分娩のリスクが高いと判断された場合に、妊娠38週ごろに手術日が設定されることが一般的です。一方、緊急帝王切開は、お産の途中で赤ちゃんの元気がなくなってしまったり、お産がうまく進まなかったりした場合に、母子の安全のために行われます。
帝王切開になる主な理由
帝王切開が選択される理由はさまざまです。お母さん側の理由もあれば、赤ちゃん側の理由もあります。具体的にどんな場合に帝王切開になるのか、代表的な例をまとめてみました。
| ママ側の理由 | 赤ちゃん側の理由 |
| ・前置胎盤 ・常位胎盤早期剥離 ・重度の妊娠高血圧症候群 ・前回帝王切開だった ・子宮筋腫などの合併症がある |
・逆子(骨盤位) ・多胎妊娠(双子など) ・胎児機能不全(赤ちゃんの元気がなくなること) ・お産が長時間進まない(遷延分娩) |
手術のおおまかな流れ
帝王切開の手術は、一般的に30分から1時間程度で終わります。手術室に入って麻酔をかけ、お腹の消毒などを済ませた後、実際にお腹を切り始めてから赤ちゃんが誕生するまでは、なんと5分から10分ほど。あっという間に元気な産声を聞くことができますよ。その後、胎盤を取り出し、切開した子宮とお腹を丁寧に縫い合わせて手術は終了です。
入院から退院までのスケジュール
帝王切開の場合、入院から退院までの流れはどのようになるのでしょうか。一般的なスケジュールを知っておくことで、心の準備がしやすくなりますよ。もちろん、病院や個人の回復状況によってスケジュールは異なりますので、あくまで目安として参考にしてくださいね。
手術前日・当日
手術の前日に入院するのが一般的です。入院後は、血液検査や心電図などの最終チェック、手術や麻酔に関する詳しい説明を受けます。夕食後からは絶食・絶飲となり、手術に備えます。手術当日は、朝から点滴が始まり、手術着に着替えます。尿道に管(カテーテル)を入れる処置もありますが、麻酔が効いてから行う病院も多いです。準備が整ったら、いよいよ手術室へ向かいます。
手術中
手術室では、まず麻酔が行われます。多くの場合は、下半身だけに効く「脊髄くも膜下麻酔」や「硬膜外麻酔」が用いられます。この麻酔の良いところは、意識がはっきりしているため、赤ちゃんの産声を直接聞くことができる点です。お腹の切開方法には、傷跡が下着に隠れて目立ちにくい「横切り」と、緊急時に素早く赤ちゃんを取り出せる「縦切り」があります。どちらの方法になるかは、状況に応じて医師が判断します。
手術後から退院まで
手術が終わると、数時間は回復室で過ごし、その後病室に戻ります。術後1日目は、傷の痛みが最も強い時期ですが、痛み止めでしっかりコントロールしてもらえます。この日から少しずつ水分を摂ったり、歩く練習を始めたりします。2日目以降は、尿道のカテーテルが抜け、本格的に歩行を開始し、赤ちゃんのお世話も始まります。入院期間は経腟分娩よりも少し長く、術後7日から10日程度で退院となることが多いです。
帝王切開にかかる費用と公的制度
出産にかかる費用は、大きな心配事のひとつですよね。帝王切開は医療行為にあたるため、健康保険が適用されます。さらに、さまざまな公的制度を活用することで、自己負担額を大きく抑えることができますので、しっかり確認しておきましょう。
帝王切開の費用相場
帝王切開の費用は、正常分娩の出産費用に加えて、手術や投薬、追加の入院費などが発生します。正常分娩の平均費用が約50万円なので、そこに10万円から20万円ほど上乗せされるイメージです。つまり、合計で50万円から70万円程度が目安となります。ただし、この金額は病院の設備や個室の利用、入院日数によって変動します。
活用できる公的制度
高額になりがちな出産費用ですが、ママの負担を軽くするための制度が用意されています。これらを賢く利用しましょう。
| 出産育児一時金 | 健康保険から赤ちゃん一人につき50万円(2023年4月以降)が支給されます。病院の窓口で直接支払う医療費に充当できる「直接支払制度」を利用すると、退院時の支払いが差額だけで済み、大変便利です。 |
| 高額療養費制度 | 1ヶ月の医療費の自己負担額が上限を超えた場合に、その超えた分が払い戻される制度です。事前に入院が分かっている場合は、「限度額適用認定証」を申請しておきましょう。これを提示すれば、窓口での支払いが自己負担限度額までで済みます。限度額は所得によって異なり、例えば標準的な所得の方(標準報酬月額28万~50万円)で約8万円です。 |
| 医療費控除 | 家族全員の年間の医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合に、確定申告をすることで税金が還付される制度です。帝王切開の手術費用はもちろん、妊娠中の定期健診や通院にかかった交通費も対象になります。 |
帝王切開の術後の痛みとケア
手術後の痛みは、帝王切開を経験する多くのママが不安に感じることです。痛みの種類や対処法を知っておくことで、少しでも安心して過ごせるようになります。また、気になる傷跡のケアについてもご紹介します。
術後の痛み「後陣痛」と「傷の痛み」
術後の痛みには、大きく分けて2種類あります。ひとつは「後陣痛(こうじんつう)」。これは、妊娠中に大きくなった子宮が、元の大きさに戻ろうと収縮する時に起こる痛みです。特に授乳中は強く感じることがあります。もうひとつが、お腹を切ったことによる「傷の痛み」です。咳やくしゃみ、笑ったり、寝返りをうったりする時に響くような痛みで、術後1日から3日目がピークと言われています。
痛みを乗り切るためのポイント
術後の痛みは、我慢する必要はありません。遠慮せずに看護師さんや助産師さんに伝え、痛み止めを処方してもらいましょう。また、腹帯や産後用のガードルで傷口を固定すると、動いた時の痛みが和らぎ楽になります。ベッドから起き上がる際は、急に起き上がらず、まず横向きになって腕の力を使ってゆっくりと身体を起こすのがコツです。クッションをお腹にあてて授乳するなど、工夫次第で痛みはかなり軽減できますよ。
傷跡のケア方法
傷跡がなるべくきれいに治るように、退院後からセルフケアを始めるのがおすすめです。傷が完全にふさがったことを医師に確認してから、傷跡専用の保護テープを貼りましょう。テープを貼ることで、下着との摩擦や皮膚が引っ張られるのを防ぎ、ケロイドや肥厚性瘢痕といった傷跡の盛り上がりを予防する効果が期待できます。紫外線は傷跡の色素沈着の原因になるので、傷が治った後もしっかリガードしましょう。
次の妊娠・出産について
帝王切開で出産した後、次の妊娠や出産はどうなるのか、気になる方も多いでしょう。大切な身体のことなので、正しい知識を持っておくことが重要です。
次の妊娠までの期間
帝王切開で切開した子宮の壁は、時間とともに回復していきます。しかし、傷が十分に癒える前に次の妊娠をすると、子宮破裂などのリスクが高まる可能性があります。そのため、多くの医師は、次の妊娠まで最低でも1年は期間を空けることを推奨しています。焦らず、まずはご自身の身体の回復を第一に考えてくださいね。具体的な時期については、必ずかかりつけの医師と相談しましょう。
VBAC(帝王切開後の経腟分娩)とは?
一度帝王切開で出産した人が、次の出産で経腟分娩に挑戦することを「VBAC(ブイバック)」と言います。身体への負担が少なく、回復が早いといったメリットがありますが、一方で最も心配されるのが「子宮破裂」のリスクです。約0.5%と頻度は低いものの、起こると母子ともに危険な状態になる可能性があります。そのため、VBACを実施できるのは、緊急時に対応できる設備が整った病院に限られ、ママや赤ちゃんの状態にも厳しい条件が設けられています。
まとめ
帝王切開は、不安や疑問も多いかもしれませんが、ママと赤ちゃんの安全を第一に考えた素晴らしいお産の方法です。手術の流れや費用、術後のケアについて事前に知っておくことで、心構えができ、安心してその日を迎えられるはずです。帝王切開は、赤ちゃんに会うためのひとつの道。痛みを乗り越えて会えた我が子は、本当に愛おしいですよ。一人で抱え込まず、医師や助産師、家族に頼りながら、素敵な出産を迎えてくださいね。
参考文献
No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例|国税庁
帝王切開のよくある質問まとめ
Q.帝王切開の術後の痛みはいつまで続きますか?
A.術後の痛みは個人差が大きいですが、強い痛みは術後2〜3日がピークで、その後は徐々に和らぎます。鎮痛剤を使いながら、1週間ほどで日常生活に支障が少ない程度に回復することが多いです。
Q.帝王切開の傷跡はきれいに治りますか?
A.傷跡の治り方には個人差があります。最近は医療用テープやジェルシートなど、傷跡をきれいに保つためのケア用品も多くあります。気になる場合は医師に相談してみましょう。
Q.帝王切開の費用はどれくらいかかりますか?保険は適用されますか?
A.帝王切開は医療行為のため、健康保険が適用されます。高額療養費制度の対象にもなります。また、民間の医療保険に加入している場合は、手術給付金が受け取れることが多いです。
Q.帝王切開の術後、食事はいつから食べられますか?
A.一般的に、手術当日は絶食で、翌日から水分や流動食が始まり、腸の動きが戻るにつれて徐々に普通の食事に戻っていきます。医師や助産師の指示に従いましょう。
Q.2人目も帝王切開になりますか?
A.1人目が帝王切開の場合、2人目も帝王切開を選択することが多いです(予定帝王切開)。前回帝王切開の理由や子宮の状態によっては、経腟分娩(VBAC)が可能な場合もありますので、医師との相談が必要です。
Q.帝王切開の入院期間はどのくらいですか?
A.病院の方針や術後の経過によって異なりますが、一般的には術後5日〜7日程度の入院となることが多いです。経腟分娩よりは少し長くなる傾向にあります。