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受取利息が多いと確定申告は必要?知っておきたい税金の基本

2025-12-03
目次

銀行預金の利息が増えると嬉しいものですが、「こんなに利息を受け取ったら、確定申告が必要になるのかな?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんね。結論から言うと、ほとんどの場合は確定申告は不要です。でも、いくつかの例外的なケースでは申告が必要になることも。この記事では、受取利息にかかる税金の仕組みから、確定申告が必要・不要なケース、そして扶養への影響まで、分かりやすく解説していきます。

受取利息にかかる税金のキホン

まず、なぜほとんどの場合で確定申告が不要なのか、その基本的な仕組みから見ていきましょう。日本の金融機関から受け取る利息には、特別な税金のルールが適用されています。

利息には「源泉分離課税」が適用される

私たちが国内の銀行や郵便局の預貯金で受け取る利息は、「源泉分離課税」という方法で税金が計算されます。これは、利息が支払われる時点で、金融機関が税金を天引き(源泉徴収)して国に納めてくれる仕組みです。
天引きされる税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%を合わせた合計20.315%です。この時点で税金の支払いが完了するため、他の所得と合算して確定申告をする必要がないのです。

確定申告が「不要」なケースがほとんど

上記の通り、日本の金融機関から受け取る預貯金の利子や、国債・地方債などの公社債の利子は、源泉分離課税の対象です。そのため、年間の受取利息がたとえ100万円、1,000万円とどんなに高額になったとしても、原則として確定申告は必要ありません。すでに税金が引かれた後の金額が、私たちの口座に入金されている、と考えてくださいね。

海外の銀行預金の利息は扱いが違う

注意したいのが、海外の金融機関に預けている預金の利息です。これは日本の源泉分離課税の対象外となります。海外で得た利息は「雑所得」として扱われ、他の所得と合算して税金を計算する「総合課税」の対象になります。そのため、一定の条件に当てはまる場合は確定申告が必要になるので、覚えておきましょう。

それでも受取利息で確定申告が必要になるケースとは?

原則不要と聞くと安心ですが、では具体的にどのような場合に確定申告が必要になるのでしょうか。いくつか特殊なケースを見ていきましょう。

同族会社の役員などが受け取る貸付金の利子

少し専門的な話になりますが、会社の役員などが自分が経営する会社(同族会社)にお金を貸し付け、その利息を受け取った場合、その利子は源泉徴収の対象とはならず、「雑所得」として扱われます。給与所得など他の所得と合わせて確定申告をする必要があります。

海外の金融機関から利息を受け取った場合

先ほども少し触れましたが、海外の金融機関の預金利息は確定申告が必要です。給与を一つの会社から受け取っている会社員の方の場合、給与所得や退職所得以外の所得(この場合は海外利息を含む雑所得)の合計額が年間20万円を超えると、確定申告をしなければなりません。すでに海外で税金を納めている場合は、「外国税額控除」という制度を利用して、二重課税を調整することができますよ。

個人間のお金の貸し借りで利息を受け取った場合

友人や知人にお金を貸して、そのお礼として利息を受け取った場合も注意が必要です。この利息も「雑所得」として総合課税の対象となり、他の所得と合わせて確定申告が必要になる可能性があります。こちらも、会社員の方なら他の所得との合計が年間20万円を超えるかが一つの目安になります。

確定申告をした方が「お得」になるケースもある?

確定申告は義務だけでなく、行うことで税金が戻ってくる(還付される)場合もあります。受取利息に関連して、申告した方が有利になる可能性があるケースをご紹介します。

損失と通算して税金の還付を受ける

通常、源泉分離課税である預貯金の利息は他の所得の損失と相殺(損益通算)することはできません。しかし、例えば国債や地方債などの「特定公社債」の利子については、申告分離課税を選択して確定申告をすることができます。
もし同じ年に、上場株式などの取引で損失(譲渡損失)が出ていた場合、この特定公社債の利子と損益通算ができます。その結果、利子から天引きされていた税金が還付される可能性があるのです。株式投資などで損失が出た年は、検討してみる価値があるかもしれません。

受取利息と他の所得との関係

「利息をたくさんもらうと、配偶者控除や扶養から外れてしまうのでは?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、受取利息と扶養の関係について解説します。

扶養の判定に受取利息は含まれる?

税法上の扶養(控除対象配偶者や扶養親族)に該当するかどうかは、年間の「合計所得金額」で判定されます。そして、この合計所得金額には、源泉分離課税の対象となる所得は含まれません。
つまり、国内の金融機関から受け取る預貯金の利息がいくら多くても、それは扶養を判定する際の所得にはカウントされないのです。そのため、利息収入が原因で扶養から外れることはありませんので、ご安心ください。

受取利息の種類と所得区分のまとめ

ここで、少し複雑だった利息の種類と税金の区分を、分かりやすく表にまとめてみましょう。

利息の種類 所得区分と課税方式
国内の銀行・郵便局の預貯金利子 利子所得(源泉分離課税) → 確定申告は原則不要
国債、地方債などの公社債の利子 利子所得(源泉分離課税) → 確定申告は原則不要 ※申告分離課税を選択することも可能
海外の金融機関の預金利子 雑所得(総合課税) → 確定申告が必要な場合がある
個人間の金銭貸借の利子 雑所得(総合課税) → 確定申告が必要な場合がある
同族会社の役員などが会社から受け取る貸付金の利子 雑所得(総合課税) → 確定申告が必要

確定申告が必要になった場合の手続き

もしご自身が確定申告が必要なケースに当てはまる場合、どのように手続きを進めればよいのでしょうか。簡単な流れをご説明します。

申告期間と申告方法

確定申告は、所得があった年の翌年2月16日から3月15日までの期間に行います。申告方法は、インターネットを利用する「e-Tax」、税務署の窓口に直接提出、または郵送といった方法があります。近年はスマートフォンからでも申告ができるようになり、とても便利になっています。

必要書類について

申告には、確定申告書のほか、利息の金額がわかる「支払調書」や「年間取引報告書」などが必要になります。これらは通常、金融機関から送付されます。また、マイナンバーカードなどの本人確認書類や、還付金を受け取るための口座情報も準備しておきましょう。

まとめ

今回は、受取利息と確定申告の関係について詳しく見てきました。最後にポイントを振り返ってみましょう。

  • 国内の銀行預金の利息は源泉分離課税のため、いくら多くても確定申告は原則不要です。
  • 海外の預金利息や、個人間のお金の貸し借りで得た利息などは「雑所得」となり、確定申告が必要になる場合があります。
  • 源泉分離課税の利息は、税法上の扶養を判定する際の合計所得金額には含まれません。
  • 株式投資の損失などがある場合、あえて確定申告をすることで税金が戻ってくる可能性もあります。

基本的には何もしなくて良いケースがほとんどですが、ご自身の状況が例外に当てはまらないか一度確認してみると安心ですね。もし判断に迷うことがあれば、お近くの税務署や税理士などの専門家に相談してみてください。

参考文献

国税庁 No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得)

国税庁 No.1500 雑所得

受取利息と確定申告のよくある質問まとめ

Q. 普通預金や定期預金の利息は確定申告が必要ですか?

A. いいえ、通常は不要です。日本の銀行の預金利息は、利息が支払われる際に20.315%が源泉徴収される「源泉分離課税」の対象であり、確定申告は原則不要です。

Q. どのような場合に受取利息の確定申告が必要になりますか?

A. 海外の銀行預金の利息や、源泉徴収されない特定の社債の利息など、総合課税の対象となる利子所得がある場合は、他の所得と合算して確定申告が必要です。

Q. 受取利息がいくらから確定申告が必要ですか?

A. 国内の銀行預金の利息は金額にかかわらず確定申告不要です。総合課税の利子所得と他の所得の合計が一定額(例:給与所得者で20万円)を超える場合に確定申告が必要になります。

Q. 源泉分離課税とは何ですか?

A. 他の所得とは合算せず、所得を受け取る時点で税金が天引きされ納税が完了する課税方式です。国内の預金利息などがこれに該当し、確定申告は不要です。

Q. 確定申告が不要な受取利息でも、申告した方が得な場合はありますか?

A. 源泉分離課税の対象となる利息は申告できません。しかし、特定の公社債の利子などで、申告分離課税を選択して確定申告することで還付を受けられる可能性があります。

Q. 個人事業主ですが、事業用の預金口座の利息は確定申告が必要ですか?

A. いいえ、個人事業主でも国内銀行の預金利息は源泉分離課税の対象のため、事業所得とは別に扱われ、確定申告は不要です。会計処理上は事業主借として記帳します。

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