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資産管理会社の不動産を社宅に!節税になる条件と家賃設定を解説

2025-12-24
目次

資産管理会社で不動産を保有しているオーナー様の中には、「この物件を自分の社宅として使えないかな?」と考えたことがある方も多いのではないでしょうか。実は、一定の条件を満たせば、資産管理会社が保有する不動産を社宅として利用でき、大きな節税効果が期待できるんです。この記事では、そのための具体的な条件や家賃設定の方法、注意点まで、わかりやすく解説していきますね。

資産管理会社で社宅を利用するメリット

そもそもなぜ社宅にするとお得なのでしょうか。個人で家賃を支払う場合は単なる支出ですが、法人契約の社宅にすることで、支払う家賃の一部を会社の経費にできるためです。これにより、会社の利益を圧縮し、法人税を抑えることができます。また、役員個人にとっても、所得税や住民税、社会保険料の負担が軽くなるという大きなメリットがあるんですよ。

法人側のメリット:法人税の節税

会社が役員に社宅を貸し出す場合、会社が受け取る家賃(賃料相当額)と、会社が支払う経費(減価償却費や固定資産税、管理費、保険料など)との差額が損益となります。適切に設定された家賃を受け取ることで、不動産に関連する費用を経費として計上でき、法人税の課税対象となる所得を減らすことができます。結果として、法人税の節税につながるわけですね。

個人側のメリット:所得税・住民税・社会保険料の軽減

役員が個人で賃貸物件を借りる場合、家賃は給与(役員報酬)の中から支払います。しかし、社宅制度を利用すると、会社が計算した適正な家賃(賃料相当額)を給与から天引きする形になります。これは、役員報酬の一部が現物支給(住宅という利益)に置き換わるイメージです。結果的に、課税対象となる役員報酬の額面が下がるため、所得税や住民税、さらには社会保険料の負担まで軽減されるんです。手取り額が増えるのと同じ効果が期待できますよ。

社宅として認められるための絶対条件

資産管理会社の不動産を社宅として利用し、税務上のメリットを受けるためには、いくつかの重要なルールを守る必要があります。これらの条件を満たしていないと、社宅とは認められず、家賃相当額が役員への給与として課税されてしまう可能性があるので、しっかり確認しておきましょう。

会社名義で賃貸借契約を結ぶこと

最も基本的な条件は、資産管理会社と役員個人との間で賃貸借契約を締結することです。たとえオーナー社長であっても、口約束だけでは認められません。必ず契約書を作成し、会社が役員に物件を貸し付けているという形式を整える必要があります。もし、会社が別の不動産オーナーから物件を借り上げて社宅にする場合(いわゆる「借り上げ社宅」)も同様に、会社が貸主と契約を結ぶ必要があります。

役員から一定の家賃(賃料相当額)を受け取ること

社宅を無償で貸し出すことはできません。税法で定められた計算方法に基づいて「賃料相当額」を算出し、その金額を役員から毎月徴収する必要があります。この賃料相当額より低い家賃しか受け取っていない場合、その差額分が役員への給与とみなされ、所得税の課税対象となってしまいます。適切な家賃設定が節税の鍵となります。

適正な家賃(賃料相当額)の計算方法

では、役員からいくら家賃を受け取ればよいのでしょうか。この「賃料相当額」の計算方法は、社宅の規模によって異なります。国税庁が定める計算式に基づいて算出する必要があり、これを下回らない家賃を設定することが重要です。豪華社宅とみなされると計算方法が変わる点にも注意が必要です。

小規模な住宅の場合

一般的な社宅の多くはこちらに該当します。小規模な住宅とは、建物の法定耐用年数によって床面積の基準が異なります。

法定耐用年数が30年以下の建物 床面積132㎡以下
法定耐用年数が30年を超える建物 床面積99㎡以下

この場合の賃料相当額は、以下の3つの合計額となります。

(1) その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
(2) 12円 × (その建物の総床面積(㎡) ÷ 3.3㎡)
(3) その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

この計算で出た金額が、会社が役員から受け取るべき最低限の家賃となります。

小規模な住宅でない場合(自社所有)

上記の小規模な住宅の基準を超える社宅を、資産管理会社が所有している場合の計算方法です。以下の計算式で求められる年額を12で割った金額が、月々の賃料相当額になります。

A その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 12% (※)
B その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 6%

(※)建物の法定耐用年数が30年を超える場合は10%で計算します。

注意点:豪華社宅とみなされるケース

床面積が240㎡を超える場合や、プール付きなど社会通念上一般的でない設備がある住宅は「豪華社宅」と判断される可能性があります。この場合、上記の計算式は適用されず、時価(実際に賃貸した場合の相場家賃)が賃料相当額となります。もし時価よりも低い家賃しか支払っていないと、差額が給与として課税されるため注意が必要です。

従業員を住まわせる場合の条件は?

役員だけでなく、従業員に社宅を提供するケースもあるでしょう。従業員の場合は、役員よりも条件が少し緩和されています。ここをうまく活用することで、福利厚生を充実させ、従業員満足度を高めることにも繋がります。

従業員の賃料相当額の計算方法

従業員の場合、役員(小規模な住宅)と同じ計算式で「賃料相当額」を算出します。

(1) その年度の建物の固定資産税の課税標準額 × 0.2%
(2) 12円 × (その建物の総床面積(㎡) ÷ 3.3㎡)
(3) その年度の敷地の固定資産税の課税標準額 × 0.22%

従業員ならではの有利なルール

従業員が役員と大きく違うのは、算出した賃料相当額の50%以上を受け取っていれば、差額が給与として課税されないという点です。例えば、賃料相当額が月額3万円だった場合、従業員から1万5,000円以上の家賃を受け取っていれば問題ありません。役員の場合は賃料相当額の満額を受け取る必要があるため、従業員の方が有利な条件となっています。

社宅を利用する際の注意点

社宅制度は節税メリットが大きいですが、いくつか注意すべき点もあります。ルールを守らないと、かえって追徴課税などのペナルティを受けるリスクもあるため、事前にしっかり把握しておきましょう。

住宅手当との違い

会社が家賃補助として「住宅手当」を現金で支給する場合がありますが、これは全額が給与として課税対象になります。社宅制度のように、家賃の一部を経費にしたり、個人の所得税負担を軽くしたりする効果はありません。節税を目的とするなら、現金を支給するのではなく、会社が物件を契約し、そこから天引きする「社宅」の形をとることが不可欠です。

税務調査への備え

社宅の家賃設定は、税務調査でチェックされやすいポイントの一つです。特に同族経営の資産管理会社の場合、実態が伴っているか厳しく見られる傾向があります。賃貸借契約書の保管や、固定資産税の課税標準額がわかる書類(納税通知書など)を基に賃料相当額を正しく計算した根拠などを、いつでも提示できるように準備しておくことが大切です。

不動産の使用料等の支払調書

資産管理会社が役員や従業員から家賃を受け取る場合、その年中の支払金額の合計が15万円を超えるときは、税務署へ「不動産の使用料等の支払調書」を提出する必要があります。これは法定調書の一つで、提出義務があることを覚えておきましょう。

まとめ

資産管理会社が保有する不動産を社宅として利用することは、法人・個人双方にとって大きな節税効果が期待できる有効な手段です。成功の鍵は、「会社名義で契約する」「税法に基づいた適正な家賃(賃料相当額)を設定し、徴収する」という2つのルールを徹底することです。特に賃料相当額の計算は少し複雑なので、自信がない場合は税理士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。正しく制度を理解し、賢く活用して資産形成に役立てましょう。

参考文献

No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁

No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき|国税庁

No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等|国税庁

資産管理会社の社宅利用に関するよくある質問

Q.資産管理会社が所有する物件に、役員である自分が社宅として住むことはできますか?

A.はい、可能です。ただし、会社と役員個人との間で正式な賃貸借契約を結び、税法上定められた適切な家賃(賃貸料相当額)を役員が会社に支払う必要があります。

Q.役員が支払う家賃はいくらに設定すればよいですか?

A.税法で定められた「賃貸料相当額」以上の家賃を支払う必要があります。この金額より著しく低い家賃を設定すると、差額分が役員への給与とみなされ、所得税が課税される可能性があるため注意が必要です。

Q.家賃の基準となる「賃貸料相当額」はどのように計算しますか?

A.「賃貸料相当額」は、その物件の固定資産税の課税標準額や床面積などを用いて、国税庁が定める計算式に基づいて算出します。物件の規模によって計算方法が異なるため、専門家への確認をおすすめします。

Q.会社にとって、社宅にするメリットは何ですか?

A.役員から受け取る家賃が会社の収益になるほか、建物の減価償却費、固定資産税、火災保険料、修繕費などの維持管理費用を会社の経費として計上できるため、法人税の節税効果が期待できます。

Q.役員(入居者)にとってのメリットは何ですか?

A.一般的に、税法上の「賃貸料相当額」は周辺の家賃相場よりも安くなるケースが多いため、役員は市場価格より低い負担で居住でき、個人の可処分所得が増える効果があります。

Q.社宅として利用するために必要な手続きはありますか?

A.会社と入居する役員との間で「賃貸借契約書」を必ず作成・締結してください。また、家賃の支払い方法(給与天引きなど)を明確にし、毎月きちんと支払う記録を残すことが重要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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