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「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」で贈与税を回避!提出しないとどうなる?

2025-09-15
目次

「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」、この名前を聞いたことがありますか?多くの方にとっては、あまり馴染みのない書類かもしれませんね。でも、実はこの申出書、知らずにいると数千万円もの高額な贈与税がかかってしまうかもしれない、とても大切な書類なんです。今回は、この「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」とは何か、なぜ必要なのか、そしてどんな時に提出するのかを、わかりやすくお話ししていきますね。

「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」とは?

この申出書は、一言でいうと「土地の貸し借りの関係は変わったけれど、借地権は元の人のままですよ」と税務署に伝えるための書類です。これを提出しないと、税務署から「借地権がプレゼント(贈与)されたのですね」と見なされてしまい、思いがけず高額な贈与税の対象になる可能性があるのです。この「プレゼントされたと見なされる」ことを、税法上「みなし贈与」と呼びます。

なぜ贈与税がかかるの?「みなし贈与」の仕組み

例えば、お父様が第三者から土地を借りて家を建てて住んでいるとします。この土地の所有権(底地)を、お子様が買い取ったとしましょう。これからは地主がお子様になるので、親子間で「地代の支払いはもういいよ」となることが多いですよね。この地代の支払いがない状態を、法律上「使用貸借」といいます。
税務上、この「使用貸借」に切り替わった時点で、「お父様が持っていた借地権という価値ある権利が、お子様に無償で移った(贈与された)」と判断されてしまうのです。

仮に、土地全体の評価額が6,000万円で、借地権の価値がその60%(借地権割合)だとすると、3,600万円分の借地権が贈与されたとみなされます。この場合、贈与税額はなんと約1,350万円にもなってしまう可能性があるのです。
(計算式:(3,600万円 – 基礎控除110万円) × 50% – 控除額250万円 = 1,495万円)
※税率は2024年時点のものです。
このような、予期せぬ多額の税金を防ぐために、この申出書が必要になります。

申出書を提出するとどうなるの?

この申出書を税務署に提出することで、「地代の支払いがなくなったのは、使用貸借になったからではありません。あくまで賃貸借契約は続いていますが、地主である子が親への地代を免除しているだけです。ですから、借地権は変わらず父のものです」という意思表示になります。これにより、みなし贈与とは判断されず、贈与税がかかるのを防ぐことができるのです。

申出書の提出が必要になる具体的なケース

では、具体的にどのような状況でこの申出書が必要になるのでしょうか。代表的な2つのケースをご紹介しますね。

ケース1:借地権者(親)の土地の底地を子(親族)が買い取った

これが最もよくあるパターンです。

  1. お父様がAさん(第三者)から土地を借り、その上に家を建てて住んでいる(お父様が借地権者)。
  2. 地主のAさんが土地を売りたいと言ってきたが、お父様には資金がなかった。
  3. そこでお子様が、お父様に代わってAさんから土地の所有権(底地)を買い取った。
  4. 土地の所有者がお子様になったため、お父様はお子様への地代の支払いをやめた(使用貸借の状態になった)。

この流れに当てはまる場合、お子様から税務署へ申出書を提出する必要があります。

ケース2:地主(親)の土地の借地権を子(親族)が買い取った

こちらはケース1とは逆のパターンです。

  1. お父様がBさん(第三者)に土地を貸している(お父様が地主)。
  2. Bさんが持っている借地権と建物を、お子様が買い取った。
  3. 土地の借主がお子様になったため、お父様は「地代は払わなくていいよ」と言った(使用貸借の状態になった)。

この場合、お子様からお父様へ借地権が贈与されたとみなされる可能性があります。これを防ぐために、お子様から税務署へ申出書を提出します。

申出書の手続き方法

実際に申出書を提出する際の手続きについて、具体的に見ていきましょう。

誰が、どこに提出するの?

提出する人と提出先は、状況によって決まっています。基本的には、土地や借地権を新たに取得した人が、その人の住所地を管轄する税務署に提出します。

状況 提出する人・提出先
ケース1:子が底地を買い取った場合 提出者:底地を買い取った
提出先:子の住所地を管轄する税務署
ケース2:子が借地権を買い取った場合 提出者:借地権を買い取った
提出先:子の住所地を管轄する税務署

いつまでに提出すればいいの?

提出期限は、法律で「〇日以内」と明確に決まっているわけではなく、「すみやかに」とされています。
この「すみやかに」というのは、少し曖昧な表現ですよね。一般的には、底地や借地権を取得してから、あまり時間を置かずに提出することが望ましいとされています。数ヶ月以上経ってしまった場合でも受け付けてもらえる可能性はありますが、忘れないうちに早めに手続きを済ませておくと安心です。

申出書の書き方と入手方法

申出書の様式は、国税庁のホームページからダウンロードすることができます。PDFファイルなので、印刷して使いましょう。記載にあたっては、土地の所在地や面積、当事者の氏名・住所などを記入し、土地の所有者(子)と借地権者(親)の連署(両方の署名・押印)が必要になります。書き方で分からないことがあれば、提出先の税務署に問い合わせてみましょう。

申出書を提出した後の注意点【相続との関係】

申出書を提出して「これで一安心」と安心するのは、まだ早いかもしれません。この手続きは、将来の相続にも影響してくる大切なポイントがあります。

借地権者の相続:借地権を相続財産に含めること!

ケース1(子が底地を買った)の例で、将来、借地権者であるお父様が亡くなられた時のことを考えてみましょう。申出書を提出したことで、借地権はお父様の財産として残り続けています。そのため、お父様の相続が発生した際には、この借地権を忘れずに相続財産として申告しなければなりません。
この申出書を提出したことを忘れていると、相続財産から漏れてしまい、後から税務調査で指摘され、追加の相続税(延滞税や加算税も含む)を支払うことになりかねないので、十分注意が必要です。

地主の相続:土地の評価は「底地」として評価すること!

今度は、地主であるお子様が亡くなられた時の話です。この土地は、借地権が設定されている土地なので、相続税評価額を計算する際は、借地権の価値を差し引いた「底地(貸宅地)」として評価します。これを忘れて、借地権のない「自用地(更地)」として評価してしまうと、評価額が本来より高くなり、相続税を払い過ぎてしまうことになります。税務署は払い過ぎを親切に教えてはくれませんので、こちらも注意しましょう。

よくある質問(Q&A)

最後に、この申出書に関するよくあるご質問にお答えします。

Q. 提出を忘れていました。後からでも提出できますか?

A. はい、気づいた時点ですぐに税務署に相談してみましょう。明確な提出期限が定められていないため、事情を説明すれば後からでも受け付けてもらえる可能性は高いです。ただし、贈与があったとみなされてから時間が経ちすぎている場合や、税務調査で指摘された後では難しくなることも考えられます。できるだけ早く行動することが大切です。

Q. 借地権者である父が亡くなってしまいました。今から提出できますか?

A. これは非常に難しいケースです。申出書は当事者双方の連署が必要なため、原則として亡くなられた後での提出は困難とされています。しかし、生前に親子間で「借地権は父のままである」という合意があったことを客観的に証明できる資料などがあれば、認められる可能性もゼロではありません。このような場合は、税理士などの専門家や税務署に個別に相談することをおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」は、少し複雑に感じるかもしれませんが、親族間で土地の貸し借りがあり、地代の支払いがなくなった場合に、予期せぬ高額な贈与税を防ぐために不可欠な手続きです。
大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 親子間などで地代の支払いがなくなると「みなし贈与」として贈与税がかかるリスクがある。
  • この申出書を提出することで、贈与税の課税を回避できる。
  • 申出書は、土地や借地権を取得した人が「すみやかに」税務署へ提出する。
  • 提出後も、将来の相続で借地権や底地の評価を間違えないよう、家族で情報を共有し、記録を残しておくことが重要。

この手続きは、ご家族の大切な財産を守るために非常に重要です。もしご自身の状況が当てはまるかもしれないと少しでも感じたら、お早めに税務署や税理士などの専門家にご相談くださいね。

参考文献

借地権者の地位に変更がない旨の申出書のよくある質問まとめ

Q.「借地権者の地位に変更がない旨の申出書」とは、どのような書類ですか?

A.借地権を相続などで取得した新しい借地権者が、地主に対し、賃貸借契約の内容を変更せずにそのまま引き継ぐことを申し出るための書類です。地主との良好な関係を維持する目的で提出されます。

Q.この申出書は、いつ提出する必要がありますか?

A.主に、借地権を相続した際に提出します。法的な提出期限はありませんが、相続が発生した後、できるだけ速やかに地主へ提出することが推奨されます。また、相続税申告で必要になる場合もあります。

Q.この申出書を提出しないと、何か罰則はありますか?

A.法的な提出義務や罰則はありません。しかし、提出しないと地主との間で認識のズレが生じ、将来の契約更新や建て替えなどの際にトラブルになる可能性があるため、提出しておくことが望ましいです。

Q.申出書の書式(フォーマット)は決まっていますか?

A.公的に定められた書式はありません。そのため、ご自身で作成するか、インターネット上のテンプレートを利用したり、弁護士や司法書士などの専門家に作成を依頼したりするのが一般的です。

Q.申出書には、どのような内容を記載すればよいですか?

A.主に、①土地の表示、②旧借地権者(被相続人)と新借地権者(相続人)の氏名・住所、③相続により借地権を取得した旨、④賃貸借契約の内容を今後も遵守する旨、などを記載します。

Q.申出書の提出にあたり、地主に承諾料(名義書換料)は必要ですか?

A.相続による借地権の承継は、地主の承諾を必要としないため、原則として承諾料(名義書換料)の支払いは不要です。ただし、売買や贈与の場合は地主の承諾が必要となり、承諾料が発生するのが一般的です。

事務所概要
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