親御さんの土地(借地)にお子さんが家を建てる、そんな時によく耳にする「借地権の使用貸借に関する確認書」。この書類、実はとても重要で、提出を忘れてしまうと、思いがけず高額な贈与税がかかってしまう可能性があるんです。今回は、この確認書がどんな役割を持つのか、どんな時に必要なのか、書き方のポイントや注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきますね。
そもそも「借地権の使用貸借」って何?
まずは、「借地権の使用貸借」という言葉から見ていきましょう。少し難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言うと「親子などの間で、借地権を無料で貸し借りすること」を指します。通常、他人の土地を借りて建物を建てる際には「借地権」という権利が発生し、地代や権利金を支払うのが一般的です。しかし、親子間などでは権利金や地代を支払わずに土地を使わせてもらうケースが多いですよね。これが税法上の「使用貸借」にあたります。
使用貸借と賃貸借の違い
「使用貸借」と似た言葉に「賃貸借」があります。この二つの大きな違いは、「対価(お金)の支払いがあるかどうか」です。それぞれの特徴を表で見てみましょう。
| 契約の種類 | 特徴 |
| 使用貸借 | 無償(無料)での貸し借りです。主に親子間など特別な関係で行われます。 |
| 賃貸借 | 有償(有料)での貸し借りです。地代などの支払いが発生します。 |
土地の固定資産税(年間数万円~数十万円程度)に相当する金額のやり取りであれば、使用貸借とみなされることが一般的です。しかし、それを超える地代の授受があると賃貸借と判断され、税金の扱いが変わってくる可能性があるので注意が必要です。
なぜ贈与税がかかる可能性があるの?
権利金などを支払わずに親の借地を使えるということは、お子さんは「権利金相当分の経済的な利益を得ている」ことになります。税務署はこれを「親から子へ借地権が贈与された」とみなし、「みなし贈与」として贈与税を課税することがあるのです。借地権は数百万~数千万円と高額になることが多いため、贈与税もかなりの金額になる可能性があります。
「借地権の使用貸借に関する確認書」の役割
そこで登場するのが「借地権の使用貸借に関する確認書」です。この書類を税務署に提出することで、「これは贈与ではなく、あくまで無償で貸しているだけ(使用貸借)です。借地権という権利は親にありますよ」ということを、地主・借地権者(親)・建物の所有者(子)の三者で確認し、税務署に表明する役割を果たします。これにより、贈与税の課税を回避することができるのです。
確認書の提出が必要になる4つのケース
では、具体的にどのような場面でこの確認書の提出が必要になるのでしょうか。主に以下の4つのケースが考えられます。ご自身の状況が当てはまるか確認してみてください。
親から子に建物を譲渡(売買)した場合
親が所有していた借地上の建物を、お子さんが適正な価格で買い取ったケースです。建物の所有者はお子さんに変わりますが、借地権の対価を支払っていない場合、この確認書を提出しないと借地権の贈与とみなされる可能性があります。
親から子に建物を贈与した場合
建物を無償でお子さんに譲った(贈与した)場合も同様です。この場合、建物の評価額に応じた贈与税がかかる可能性がありますが、それとは別に、借地権の贈与税がかかるのを防ぐために確認書が必要になります。
子が新たに建物を建築した場合
親の借地上に、お子さんが自分のお金で新しく家を建てたケースです。もともとあった親の建物を取り壊して建て替える場合も、空いているスペースに建てる場合も含まれます。これは親子間で非常によくあるパターンですね。
相続で建物と借地権を別々の人が取得した場合
例えば、お父様が亡くなり、遺産分割協議で「借地権はお母様」「建物は長男」というように、別々の人が相続するケースです。この場合も、お母様から長男へ借地権の使用貸借が行われている状態になるため、税務上の関係を明確にするために確認書の提出が推奨されます。
確認書の提出方法と期限
いざ提出するとなると、誰が、どこに、いつまでに提出すればよいのでしょうか。基本的なルールをしっかり確認しておきましょう。
提出する人・提出先
| 提出する人 | 使用貸借で土地を借りる人(例:建物を建てた子) |
| 提出先 | 借りる人(子)の住所地を管轄する税務署 |
間違えやすいポイントですが、貸す側(親)や地主さんの住所地の税務署ではなく、実際に土地を借りて利益を受ける側(子)の税務署に提出します。
提出期限
提出期限は、法律で「すみやかに」と定められています。これは「〇月〇日まで」といった明確な期日ではありませんが、建物の所有権がお子さんに移った後、できるだけ早く提出するのが望ましいとされています。忘れないうちに手続きを済ませてしまいましょう。
確認書の書き方【記載例付き】
確認書の様式は国税庁のホームページからダウンロードできます。ここでは、父(甲)が借地権者で、その土地に子(乙)が建物を建築した場合を例に、書き方のポイントを解説します。
記載のポイント
- 貸主(甲):借地権を持っている人(例:父)の住所、氏名などを記載します。
- 借主(乙):土地を借りて建物を所有する人(例:子)の住所、氏名などを記載します。
- 土地の所有者(丙):土地の地主さんの住所、氏名などを記載します。
- 使用貸借に係る土地の表示:土地の所在地番や面積などを、登記簿謄本(登記事項証明書)の通りに正確に記載します。
- 使用貸借契約の内容:「建物の所有を目的とする」ことや「無償である」ことなど、契約の主旨を簡潔に記載します。
- 署名・押印:甲(父)、乙(子)、丙(地主)の三者がそれぞれ署名・押印します。地主さんの協力が不可欠な点が重要なポイントです。事前に事情を説明し、理解を得ておきましょう。
例えば、「使用貸借契約の内容」の欄には、「上記の土地につき、甲を貸主、乙を借主として、乙が所有する建物の敷地として無償で使用させる旨の使用貸借契約を締結したことを確認します。」といった文言を記載します。全員の合意のもと、正確に記入することが大切です。
よくある質問(Q&A)
ここでは、借地権の使用貸借に関してよく寄せられる質問にお答えします。
地代は誰が地主さんに支払うべきですか?
確認書を提出しても、借地権者はあくまで親(貸主)のままです。そのため、地主さんとの土地賃貸借契約の名義人は親のままであり、地代も引き続き親が支払うのが基本です。ただし、親子間の取り決めとして、お子さんが地代相当額を親に渡すこと自体は問題ありません。
親が亡くなった場合、この借地権はどうなりますか?
この確認書は「借地権は親のもの」ということを税務署に対して証明する書類です。そのため、将来、親が亡くなった際には、その借地権は親の相続財産に含まれます。何年も前に提出した書類だとその事実を忘れてしまい、相続税の申告から漏れてしまうケースが見受けられますので、ご家族で情報を共有しておくことが非常に重要です。
確認書を提出しないまま10年経ってしまいました。どうすればいいですか?
本来であれば、お子さんが建物を建てた時点で贈与があったとみなされる可能性があります。しかし、贈与税の時効は原則として6年です。もし10年前に実質的な借地権の贈与があったと判断される場合、すでに贈与税の時効が成立している可能性が高いです。ただし、個別の状況によって税務署の判断が異なる場合もあるため、一度、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
今回は「借地権の使用貸借に関する確認書」について詳しく解説しました。この書類は、親子間などで借地の貸し借りをする際に、予期せぬ贈与税を防ぐための非常に重要な手続きです。
最後にポイントをまとめます。
- 親の借地に子が家を建てるなど、対価なく借地権を使用する場合は「使用貸借」にあたります。
- 何もしないと「みなし贈与」として高額な贈与税が課されるリスクがあります。
- 「借地権の使用貸借に関する確認書」を税務署に提出することで、贈与税課税を回避できます。
- 提出は、借りる側(子)の住所地を管轄する税務署へ、建物の所有者になった後すみやかに行いましょう。
- 将来、親が亡くなった際には、その借地権は相続財産になることを忘れないようにしてください。
手続き自体はそれほど複雑ではありませんが、地主さんの協力も必要になります。ご自身の状況が当てはまる場合は、関係者とよく話し合い、忘れずに手続きを行いましょう。もし不安な点があれば、税務署や税理士に相談してみてくださいね。
参考文献
国税庁 [手続名]借地権の使用貸借であることの確認手続(借地権の使用貸借に関する確認書)
借地権の使用貸借に関する確認書のよくある質問まとめ
Q.「借地権の使用貸借に関する確認書」とは何ですか?
A.土地の貸し借りが地代の発生しない「使用貸借」であることを税務署に対して明確にするための書類です。これにより、将来の相続時に借地権価額をゼロとして扱うことができ、相続税の課税リスクを避ける目的で作成されます。
Q.なぜこの確認書を作成する必要があるのですか?
A.親子間などで土地を無償で貸し借りしていても、税務上は借地権が発生していると見なされ、高額な相続税がかかる可能性があります。この確認書を提出することで、無償の使用貸借であることを証明し、予期せぬ課税を回避するために必要となります。
Q.「使用貸借」と「賃貸借」の主な違いは何ですか?
A.最も大きな違いは、賃料(地代)の有無です。「使用貸借」は無償(タダ)での貸し借りであるのに対し、「賃貸借」は賃料が発生する有償の契約です。この違いが、税金の計算に大きく影響します。
Q.確認書はいつ、どこに提出するのですか?
A.決まった提出期限はありませんが、使用貸借契約が開始された後、なるべく速やかに土地の所有者(貸主)の所轄税務署に提出することが一般的です。相続が発生する前に提出しておくことが重要です。
Q.「土地の無償返還に関する届出書」とは違うものですか?
A.はい、異なります。「無償返還の届出書」は主に法人が個人から土地を借りる際に、権利金の認定課税を避けるために使われます。一方、「使用貸借の確認書」は主に個人間の無償の貸し借りで、相続税対策として用いられる点で目的が異なります。
Q.この確認書を提出しなかった場合、どんなリスクがありますか?
A.確認書がない場合、税務署から実質的な賃貸借契約とみなされ、借地権の存在を認定されるリスクがあります。その結果、相続が発生した際に、想定外の高額な相続税が課せられてしまう可能性があります。