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もしもの時に愛するペットを守る。飼い主ができる相続対策と3つの備え

2025-11-28
目次

ペットは、私たちにとってかけがえのない家族の一員ですよね。しかし、もし飼い主である自分に万が一のことがあったら、この子はどうなってしまうのだろう…と不安に思ったことはありませんか?実は、愛情だけではペットの未来を守れない現実があります。法的な問題やお金の問題で、大切なペットが路頭に迷ってしまう悲しいケースも少なくありません。この記事では、そんな悲劇を防ぐために、今からできる具体的な備えについて、優しく、そして詳しく解説していきます。

なぜ「もしもの時」の備えが必要なのでしょうか?

「きっと誰かが面倒を見てくれるはず」と思っていても、現実にはさまざまな課題があります。まずは、ペットを取り巻く法的な立場と、そこに潜むリスクについて知っておきましょう。

法律上、ペットは「モノ」として扱われます

とても寂しいことですが、日本の法律では、ペットは家族ではなく「モノ(動産)」として扱われます。そのため、どれだけ愛情を注いでいても、ペット自身が財産を相続することはできません。「この子に財産を残したい」と遺言書に書いても、法的な効力は認められないのです。これが、ペットの相続対策を考える上での大前提となります。

思わぬ相続トラブルに発展するリスク

飼い主さんが亡くなると、ペットは現金や不動産と同じように「相続財産」の一部と見なされます。そして、遺産分割協議が終わるまでは、相続人全員の共有財産となります。このとき、「誰がペットを引き取って世話をするのか」「飼育費用は誰が負担するのか」といった問題で、親族間での話し合いがまとまらず、トラブルに発展してしまうケースが後を絶ちません。誰もが「かわいい」と思っていても、実際に生涯の世話をするとなると、責任や費用の問題が重くのしかかってくるのです。

最悪の場合、行き場を失ってしまう可能性も

相続人の間で引き取り手が見つからなかった場合、ペットは行き場を失ってしまいます。公的な動物保護センターや保健所では、飼い主が亡くなったペットの引き取りを原則として行っていない自治体も多く、受け入れ先を探すのは非常に困難です。特に、飼い主さんがご高齢の単身世帯だった場合、このリスクはさらに高まります。大切な家族がそんな悲しい結末を迎えないよう、元気なうちから備えておくことが飼い主の最後の責任と言えるでしょう。

今日から始められる!ペットの未来を守る3つの具体的な備え

では、具体的にどのような準備をすればよいのでしょうか。ここでは、安心してペットの未来を託すための3つのステップをご紹介します。どれか一つだけでなく、できる限り組み合わせて対策することで、より確実な安心につながります。

【ステップ1】引き取り先の確保と意思確認をする

何よりもまず、あなたにもしものことがあった際に、ペットのお世話をお願いできる人を見つけておくことが大切です。

信頼できるご家族やご友人に、「万が一のとき、この子の面倒を見てもらえないか」と具体的に相談し、事前に承諾を得ておきましょう。その際は、相手の生活環境や経済状況、アレルギーの有無なども考慮することが重要です。一方的なお願いではなく、相手が快く引き受けられるか、しっかりと話し合う時間を持ってください。

そして、お互いが合意したら、その内容を書面に残しておくことをおすすめします。口約束だけでは、時間が経つと忘れてしまったり、他の相続人から反対されたりする可能性があります。「ペットの飼育に関する覚書」といった形で、誰に何を託すのかを明記しておくと、いざという時にスムーズに引き継ぎができます。

【ステップ2】法的な仕組みを活用して想いを形にする

引き取り先を決めたら、その約束をより確実なものにするために、法的な制度を活用しましょう。口約束や覚書だけでは法的な強制力がないため、これらの制度を併用することで安心感が高まります。

対策方法 内容とポイント
遺言 遺言書で「ペットは長男の〇〇に託す」というように、お世話をお願いする人を明確に指定できます。最も手軽で基本的な方法ですが、指定された人が拒否する可能性は残ります。
負担付遺贈(ふたんつきいぞう) 「ペットの生涯の世話をすることを条件に、預金300万円を遺贈する」といったように、特定の義務(負担)を条件に財産を譲る仕組みです。ペットのお世話と飼育費用をセットで託せるメリットがありますが、受遺者(財産を受け取る人)が遺贈自体を放棄する可能性があります。また、受け取った財産が必ずしもペットのために使われるとは限らないというデメリットもあります。
民事信託(ペット信託) 最も確実性が高い方法です。信頼できる人(受託者)に飼育資金を託し、飼い主の死後、その資金を使って新しい飼い主(受益者)にペットの世話をしてもらう制度です。財産の使い道をペットの飼育費に限定できるため、資金が他の目的に使われる心配がありません。ただし、契約書の作成などに専門家のサポートが必要で、初期費用として30万円~100万円程度、管理費用も発生します。

どの方法が最適かは、ご自身の状況や財産、引き取り手との関係性によって異なります。専門家と相談しながら、最適な方法を選ぶと良いでしょう。

【ステップ3】安心して託せるように飼育資金を確保する

新しい飼い主さんに、経済的な負担まで背負わせてしまうのは避けたいですよね。愛情があっても、お金の問題が原因で飼育が困難になることもあります。感謝の気持ちとともに、十分な飼育資金を準備しておくことは非常に重要です。

ペットの一生にかかる費用を見積もる

まずは、ご自身のペットが一生を終えるまでに、どれくらいの費用がかかるかを具体的に計算してみましょう。

  • 食費・消耗品費:フード、おやつ、トイレシート、猫砂など
  • 医療費:ワクチン接種、健康診断、フィラリア予防、病気やケガの治療費、ペット保険料など
  • その他:トリミング代、ペットホテル代、おもちゃ代など

一般的に、犬の生涯費用は約200万円、猫は約150万円とも言われています。ペットの年齢や健康状態を考慮して、少し多めに見積もっておくと安心です。

資金の準備方法

見積もりができたら、具体的な資金準備に取り掛かりましょう。

  • 生命保険の活用:生命保険金の受取人を、ペットのお世話をお願いする人に指定する方法です。相続財産とは別枠で確実に資金を渡すことができます。
  • 専用の預金口座:ペットのための資金として、別の口座にお金を分けて管理しておく方法です。遺言書でこの口座を飼育担当者に遺贈する旨を記載しておきましょう。

資金をきちんと準備しておくことで、新しい飼い主さんは経済的な心配なく、ペットのお世話に集中することができます。

まとめ

大切なペットの未来を守るためには、飼い主であるあなたが元気なうちに、愛情だけでなく、法的な知識と具体的な準備を持って行動することが不可欠です。「引き取り手の確保」「法的な手続き」「飼育資金の準備」という3つの柱をしっかりと立てておくことで、あなたにもしものことがあっても、ペットは安心して幸せな生涯を送り続けることができるでしょう。自分の終活を考えるのと同じように、愛するペットの「ペット終活」についても考え始めることが、これからの時代に求められる飼い主の新しい責任の形なのかもしれません。

参考文献

国税庁|信託受益権の評価について

法務省|自筆証書遺言の保管制度について

ペット相続のよくある質問まとめ

Q.飼い主が亡くなった後、ペットはどうなりますか?

A.法律上、ペットは「モノ」として扱われ、飼い主の「相続財産」の一部となります。相続人の間で引き取り手が決まらない場合、行き場を失ってしまう可能性があります。

Q.ペットに直接、財産を相続させることはできますか?

A.いいえ、できません。ペットは法律上「モノ」扱いのため、直接財産を相続する権利はありません。そのため、ペットの世話をしてくれる人に財産を託す必要があります。

Q.もしもの時のために、ペットの引き取り先はどうやって決めればいいですか?

A.信頼できるご家族や友人に事前に相談し、引き受けてもらえるか意思確認をしておくことが重要です。口約束だけでなく、その内容を書面に残しておくとより安心です。

Q.遺言書でペットの世話をお願いすることはできますか?

A.はい、できます。遺言書で「誰にペットを託すか」を明確に指定することができます。また、ペットの世話を条件に財産を遺す「負担付遺贈」という方法も有効です。

Q.「ペット信託」とはどのような制度ですか?

A.飼い主が元気なうちに、信頼できる人に飼育資金を託し、自分の死後、その資金を使ってペットの世話をしてもらう制度です。お金の使い道をペットのために限定できるメリットがあります。

Q.ペットの飼育費用を遺すには、どのような方法がありますか?

A.ペットの一生にかかる費用を計算し、その資金を準備しておくことが大切です。例えば、生命保険の受取人をペットの世話をしてくれる人に指定したり、専用の預金口座を用意したりする方法があります。

事務所概要
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