会社を経営していると、自分の会社は順調でも、取引先が突然倒産してしまう…なんていう不測の事態も起こりえますよね。そんな「もしも」のときに、中小企業を連鎖倒産から守ってくれる心強い味方が経営セーフティ共済です。正式名称は「中小企業倒産防止共済制度」といいます。この記事では、経営者なら知っておきたい経営セーフティ共済の仕組みやメリット・デメリットを、わかりやすく解説していきますね。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)ってどんな制度?
経営セーフティ共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営する共済制度です。取引先事業者が倒産した際に、積み立てた掛金に応じて融資が受けられ、中小企業が連鎖倒産や経営難に陥るのを防ぐことを目的としています。いざという時のための「お守り」のような制度なんですよ。
制度の4つの大きなポイント
この制度には、経営者にとって嬉しい4つの大きなポイントがあります。どのような特徴があるのか、見ていきましょう。
| 無担保・無保証人で借入れOK | 取引先が倒産した場合、積み立てた掛金総額の10倍(上限8,000万円)まで、無担保・無保証人で借入れができます。 |
| 迅速な借入れが可能 | 取引先が倒産して売掛金などの回収が困難になった場合、スピーディーに資金を借り入れることができます。 |
| 掛金は税法上、経費にできる | 支払った掛金は、法人の場合は損金に、個人事業主の場合は必要経費に算入できるため、高い節税効果が期待できます。 |
| 解約手当金が受け取れる | 40か月以上掛金を納めていれば、自己都合で解約しても掛金の全額(100%)が戻ってきます。 |
誰が加入できるの?加入資格をチェック
経営セーフティ共済に加入するには、事業を1年以上継続していることが基本条件です。その上で、業種ごとに資本金や従業員数の条件が定められています。ご自身の会社が当てはまるか、確認してみてくださいね。
| 業種 | 資本金の額または出資の総額 / 常時使用する従業員数 |
| 製造業、建設業、運輸業など | 3億円以下 / 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 / 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 / 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 / 50人以下 |
※上記の「資本金」または「従業員数」のどちらかの条件を満たしていれば加入できます。
加入できないケースもあるので注意
残念ながら、誰でも加入できるわけではありません。例えば、以下のようなケースでは加入が認められないので注意が必要です。
- 事業を始めてから1年未満の場合
- 納付すべき税金(法人税や所得税)を滞納している場合
- 事業の経理内容が不明瞭な場合
- 住所や主たる事業の変更を繰り返しており、取引状況の把握が難しい場合
- すでに加入している場合(重複加入はできません)
メリットを詳しく解説!節税効果と安心の備え
経営セーフティ共済には、万が一の備えだけでなく、経営者にとって嬉しいメリットがたくさんあります。ここでは、その魅力をさらに詳しく見ていきましょう。
掛金は全額、損金または必要経費にできる
最大のメリットは、掛金の全額を経費にできることです。月々の掛金は最高20万円なので、年間で最大240万円を損金または必要経費として計上できます。これにより、課税対象となる所得を圧縮し、法人税や所得税の負担を軽減することができます。掛金の総額は800万円まで積み立てられるので、計画的に活用すれば大きな節税につながりますよ。
無担保・無保証人で最高8,000万円まで借入れ可能
取引先が倒産してしまった場合、無担保・無保証人でスピーディーに資金を借り入れることができます。借入限度額は、「回収が困難になった売掛金債権などの額」か「納付した掛金総額の10倍の額」の、いずれか少ない方の金額となります。ただし、上限は8,000万円です。急な資金ショートのリスクに備えられるのは、経営者にとって大きな安心材料ですよね。
取引先が倒産していなくても借入れできる「一時貸付金」
「取引先は倒産していないけれど、急に事業資金が必要になった…」そんなときでも大丈夫です。経営セーフティ共済には、一時貸付金制度があります。これは、解約手当金の95%を上限として、事業資金の借入れができる制度です。使い道に制限はなく、決算対策や急な設備投資など、さまざまな場面で活用できます。
知っておきたいデメリットと注意点
メリットが多い経営セーフティ共済ですが、加入する前に知っておくべき注意点もいくつかあります。後で「知らなかった!」と後悔しないように、しっかり確認しておきましょう。
12か月未満の解約は元本割れ(掛け捨て)に
もし共済契約を解約する場合、掛金の納付月数に応じて解約手当金が支払われます。しかし、納付月数が12か月未満の場合、解約手当金は一切支払われません。つまり、全額が掛け捨てになってしまうんです。最低でも1年以上は継続する前提で加入を検討することが大切です。
解約手当金は課税対象!出口戦略が重要
掛金を支払うときは経費になりますが、解約して解約手当金を受け取ると、その全額が雑収入(法人の場合は益金)として課税対象になります。例えば、掛金上限の800万円を積み立てて解約した場合、その年の利益が800万円増えることになり、多額の税金が発生する可能性があります。そのため、役員の退職金を支払う年や、大きな設備投資を行う年など、他の経費と相殺できるタイミングで解約するといった「出口戦略」をあらかじめ考えておくことが非常に重要です。
令和6年10月からの改正点【再加入の制限】
これまで、解約して解約手当金を受け取った後、すぐに再加入して節税に活用する方法がありましたが、制度の趣旨から外れる利用を防ぐため、ルールが変更されました。令和6年10月1日以降に共済契約を解約して再加入する場合、解約日から2年間は、支払った掛金を損金または必要経費に算入できなくなります。短期間での加入と解約を繰り返す節税策はできなくなるので、ご注意ください。
掛金について知りたい!金額設定と納付方法
ここでは、毎月支払う掛金の具体的なルールについて解説します。無理のない範囲で計画的に積み立てていきましょう。
掛金の月額は5,000円から20万円まで自由に選べる
掛金の月額は、5,000円から20万円の範囲内で、5,000円単位で自由に設定できます。会社の資金繰りに合わせて、途中で増額することも可能です。ただし、掛金を減額するには、事業経営の著しい悪化など一定の要件が必要になるため、最初の金額設定は慎重に行いましょう。
掛金の総額は800万円まで積み立て可能
積み立てられる掛金の総額は800万円が上限です。この上限に達すると、掛金の支払いは自動的にストップします。掛金の支払いが止まっても、共済契約は継続し、万が一のときの保障はそのまま続きますのでご安心ください。
納付方法は口座振替。前納もできる
掛金の納付は、毎月27日に指定の金融機関口座から自動で引き落とされます。また、希望すれば掛金を1年分まとめて支払う「前納」も可能です。前納をすると、その年に支払った全額を損金または必要経費に算入できるため、決算前に大きな利益が出そうな場合に節税対策として活用できます。
実際に利用するときの流れは?
制度の概要がわかったところで、実際に加入したり、貸付けを受けたりする際の手続きの流れを簡単にご紹介します。
加入手続きの方法
経営セーフティ共済への加入は、中小機構が業務を委託している金融機関の窓口や、商工会・商工会議所などで行うことができます。申込用紙に必要事項を記入し、確定申告書や登記事項証明書などの必要書類と一緒に提出します。手続きはそれほど難しくないので、まずは取引のある金融機関に相談してみるとスムーズですよ。
共済金の貸付けを受けるには
万が一、取引先が倒産してしまった場合は、まず中小機構に共済金の貸付けを請求します。倒産した事実を証明する書類などが必要になりますが、手続きが完了すれば、無担保・無保証人で迅速に資金を借り入れることができます。いざというときに慌てないためにも、手続きの流れを頭の片隅に入れておくと安心です。
まとめ
経営セーフティ共済は、取引先の倒産という不測の事態から会社を守るための大切なセーフティネットです。万が一のときの資金調達手段としてだけでなく、掛金が全額経費になるという大きな節税メリットも魅力です。ただし、解約手当金が課税対象になるなどの注意点もあるため、メリットとデメリットの両方をしっかり理解した上で、計画的に活用することが大切です。将来の安心と節税のために、ぜひ加入を検討してみてはいかがでしょうか。
参考文献
経営セーフティ共済のよくある質問まとめ
Q.経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは何ですか?
A.取引先の倒産といった不測の事態に備え、国が運営する共済制度です。無担保・無保証人で借入れができ、掛金は税法上の経費(損金または必要経費)に算入できるため、節税対策としても活用されます。
Q.加入するメリットは何ですか?
A.主に2つあります。1つ目は、支払った掛金の全額を経費にできる高い節税効果です。2つ目は、取引先が倒産した際に、積み立てた掛金総額の最大10倍(上限8,000万円)までスピーディーに借入れができることです。
Q.デメリットや注意点はありますか?
A.解約時に受け取る解約手当金は、全額が課税対象(益金または事業所得)となります。また、加入から40ヶ月未満で任意解約をすると、掛金の合計額を下回る「元本割れ」が起こる点に注意が必要です。
Q.掛金はいくらまでかけられますか?
A.掛金の月額は5,000円から20万円の範囲で自由に設定でき、掛金の総額が800万円になるまで積み立てることが可能です。途中で増額や減額もできます。
Q.掛金は本当に全額経費(損金)になりますか?
A.はい、支払った掛金は法人の場合は全額「損金」、個人事業主の場合は全額「必要経費」として計上することが認められています。
Q.誰でも加入できますか?
A.継続して1年以上事業を行っている中小企業者であれば、業種ごとに定められた資本金や従業員数の条件を満たすことで、法人・個人事業主を問わず加入できます。