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相続・贈与された株式売却時の取得価額はいつ?税金で損しない知識

2025-12-01
目次

親から相続し、さらに家族へ贈与した大切な上場株式。いざ売却するとき、税金の計算はどうなるのでしょうか?実は、売却時の税金を計算するうえでとても大切な「取得価額」には、特別なルールがあるんです。このルールを知らないと、思わぬところで税金が高くなってしまうかもしれません。今回は、相続や贈与で受け継いだ上場株式を売却するときの取得価額の考え方と、その確認方法について、わかりやすく解説していきますね。

相続・贈与された株式の取得価額の基本ルール

ご家族から受け継いだ上場株式を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益に対して所得税と住民税がかかります。この利益を計算するために、売却した金額から差し引くのが「取得価額」です。そして、相続や贈与で受け取った株式の場合、「元の所有者(この場合は親御さん)が株式を購入したときの価格」が、そのまま取得価額として引き継がれる、という大切なルールがあります。これを取得費の引継ぎと呼びます。

なぜ相続や贈与の時の価格ではないの?

「相続した時や贈与された時の株価が取得価額になるのでは?」と思う方も多いかもしれませんね。しかし、税法では、株式を相続・贈与した場合、その株式が持っていた価値(値上がり益や値下がり損)も一緒に引き継がれると考えます。もし相続や贈与のたびに取得価額がその時の時価にリセットされてしまうと、本来課税されるべきだった値上がり益がなかったことになってしまいます。そのため、一番最初に株式を購入した方の取得価額を最後まで引き継ぐというルールになっているのです。

譲渡所得の計算式

実際に株式を売却したときの譲渡所得は、以下の式で計算されます。この計算結果に、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%の税率がかけられます。

譲渡所得 = 売却価格 -(親が取得した価額 + 売却経費)

それぞれの項目は以下の通りです。

売却価格 株式を売却して実際に手にした金額です。
親が取得した価額(取得費) 親御さんがその株式を最初に購入したときの価格です。ここが最も重要なポイントになります。
売却経費 売却時に証券会社に支払った手数料などです。

取得費を引き継ぐことのメリット・デメリット

この「取得費の引継ぎ」は、状況によって有利にも不利にもなります。例えば、親御さんが株価が非常に安い時期に100万円で購入した株式が、現在500万円の価値になっているとします。この株式を売却すると、利益は約400万円となり、税金も大きくなります。逆に、親御さんが高値で500万円で買った株が、現在300万円になっている場合、売却しても利益は出ず、税金はかかりません。このように、親御さんの購入価格が、将来の税額に大きく影響するのです。

どうやって親の取得価額を確認するの?

譲渡所得を正しく計算するためには、親御さんがいつ、いくらでその株式を購入したかを知る必要があります。そのための確認方法をいくつかご紹介します。

証券会社の「取引報告書」や「取引残高報告書」を探す

最も確実なのは、親御さんが株式を購入したときに証券会社から発行された取引報告書約定通知書です。これには、購入日、銘柄、株数、単価、手数料などが正確に記載されています。また、定期的に送られてくる取引残高報告書にも、取得価額が記載されている場合があります。まずは親御さんに、こうした書類が残っていないか確認してみましょう。

証券会社に問い合わせる

もし書類が見つからない場合は、親御さんが取引していた証券会社に問い合わせてみましょう。「顧客勘定元帳」という書類の写しを発行してもらうことで、過去の取引履歴を確認できる場合があります。ただし、証券会社の帳簿の保存期間は法律で10年と定められているため、あまりにも古い取引だと記録が残っていない可能性もあります。また、発行には手数料がかかる場合が一般的です。

その他の手掛かりを探す

上記の書類がない場合でも、諦めるのはまだ早いです。親御さんの預金通帳に株式購入代金の出金記録が残っていたり、日記やメモに取引の記録があったりすれば、それが取得価額を証明する手掛かりになる可能性もあります。どんな些細な情報でも、税務署に事情を説明する際の助けになることがあります。

取得価額がどうしても分からない場合は?

あらゆる手を尽くしても、親御さんの取得価額を証明できる資料が見つからない…。そんな場合に備えて、最終的な手段が用意されています。

最終手段「概算取得費」

取得価額が不明な場合、売却価格の5%を「概算取得費」として計算することが認められています。例えば、株式を1,000万円で売却した場合、取得費は50万円(1,000万円 × 5%)となります。残りの950万円が譲渡所得として課税対象になるわけです。

概算取得費を使うと不利になる可能性が高い

この概算取得費は、あくまで最終手段です。実際の取得価額が売却価格の5%よりも高いケースがほとんどだからです。先ほどの例で、もし実際の取得価額が200万円だったとすると、本来の譲渡所得は800万円(1,000万円 – 200万円)です。しかし、概算取得費を使うと譲渡所得が950万円になってしまい、課税対象が150万円も増えてしまいます。これでは、本来払う必要のない税金まで納めることになり、課税上、非常に不利になってしまいます。安易に概算取得費を使わず、できる限り元の取得価額を探す努力をすることが大切です。

相続税を支払っている場合の特例「取得費加算の特例」

もし、親御さんから株式を相続した際に相続税を納めていた場合、税金の負担を少しだけ軽くできる特例があります。

取得費加算の特例とは?

「取得費加算の特例」とは、相続した財産を相続開始のあった日の翌日から3年10か月以内に売却した場合、その財産を相続するために支払った相続税の一部を、売却時の取得費に上乗せできる制度です。取得費が増えるということは、その分、譲渡所得が減り、結果として所得税や住民税が安くなるというメリットがあります。

特例の適用要件と注意点

この特例を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

対象者 相続や遺贈によって財産を取得し、相続税を納めた人
譲渡期限 相続開始のあった日の翌日から3年10か月(相続税の申告期限の翌日から3年)以内に売却すること

注意点として、この特例はあくまで相続税を支払った方が対象です。今回のキーワードのケースのように、親から子へ「相続」され、その子がさらに孫へ「贈与」した場合、孫は相続税を支払っていないため、この特例を利用することはできません。子が相続した株式を期限内に売却する場合に適用できる制度だと覚えておきましょう。

具体的な事例で税額を比べてみよう

取得価額が分かる場合と分からない場合で、どれくらい税金が変わるのか、具体的な数字で見てみましょう。

ケース1:親の取得価額が分かっている場合

親が100万円で購入した株式を、子が相続し、孫に贈与。その後、孫が500万円で売却したケースです。(売却経費は5万円とします)

  • 譲渡所得:500万円 – (100万円 + 5万円) = 395万円
  • 税額:395万円 × 20.315% ≒ 802,800円

ケース2:取得価額が不明で概算取得費を使う場合

同じく500万円で売却しましたが、取得価額が不明で概算取得費を使ったケースです。

  • 概算取得費:500万円 × 5% = 25万円
  • 譲渡所得:500万円 – (25万円 + 5万円) = 470万円
  • 税額:470万円 × 20.315% ≒ 954,800円

このように、取得価額が分からないだけで、納税額に約15万円もの差が出てしまうのです。

まとめ

親から子、そして孫へと受け継がれた大切な株式。その価値をしっかり受け取るためにも、売却時の税金の仕組みを理解しておくことは非常に重要です。今回のポイントを最後におさらいしましょう。

  • 相続・贈与で受け継いだ上場株式の取得価額は、元の所有者(親御さん)が購入したときの価格が引き継がれる。
  • 取得価額を証明するためには、取引報告書などの書類が何よりも大切。
  • どうしても取得価額が不明な場合は、売却額の5%を「概算取得費」として申告できるが、税金が高くなる可能性が高いため注意が必要。
  • まずは、親御さんが株式を購入したときの記録を探すことから始めましょう。

古い書類を探すのは大変な作業かもしれませんが、そのひと手間が、将来の納税額を大きく左右します。もしご自身で判断に迷うことがあれば、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.1464 譲渡した株式等の取得費

国税庁 上場株式等の取得価額の確認方法

国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続・贈与株式の売却と取得価額に関するよくある質問

Q.親から相続し妻に贈与した株式を売却しました。取得価額はいつの時点の価格になりますか?

A.取得価額は、最初に株式を購入した「親の取得価額」が引き継がれます。相続時や贈与時の株価(時価)ではないためご注意ください。

Q.贈与された株式を売却する際の譲渡所得はどのように計算しますか?

A.譲渡所得は「売却価格 -(大元の所有者である親の取得価額 + 売却経費)」で計算します。

Q.祖父の代から引き継いだ株式で、元の取得価額がわかりません。どうなりますか?

A.購入時の記録がどうしても見つからない場合、売却価格の5%を「概算取得費」として計算します。多くの場合、実際の取得価額より低くなり税負担が増える可能性があります。

Q.概算取得費(売却額の5%)を使うと、なぜ税金が高くなるのですか?

A.取得費が低いほど、利益である譲渡所得が大きくなるためです。概算取得費は実際の購入額より大幅に低くなるケースが多く、その結果、課税対象額が増えてしまいます。

Q.親の取得価額を証明するには、どのような書類が必要ですか?

A.親が株式を購入した際の「取引報告書」や「約定通知書」、証券会社の「取引残高報告書」など、購入価額と日付がわかる公的な書類が必要です。

Q.相続や贈与を何代か繰り返した株式でも、取得価額の考え方は同じですか?

A.はい、同じです。所有者が何人変わっても、取得価額は最初にその株式を購入した大元の所有者の取得価額が引き継がれます。

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