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インボイス制度の消費税2割特例とは?いつまで使えるか計算方法も解説

2025-12-05
目次

2023年10月から始まったインボイス制度。これまで消費税を納めていなかった個人事業主やフリーランスの方にとって、消費税の納税は大きな関心事ですよね。そんな事業者の皆さんの負担を軽くするために設けられたのが「消費税の2割特例」という特別な措置です。この制度を上手に活用すれば、納税額をぐっと抑え、経理の手間も減らすことができるんですよ。この記事では、2割特例がどんな制度なのか、いつまで利用できるのか、そして具体的な計算方法まで、初心者の方にも分かりやすく、丁寧にお話ししていきますね。

消費税の2割特例ってどんな制度?

インボイス制度の開始に伴い、これまで消費税の納税が免除されていた事業者(免税事業者)が、取引先のためにインボイスを発行できるよう課税事業者になるケースが増えています。しかし、急に消費税の負担が増えるのは大変ですよね。そこで、そんな事業者の負担を軽くするために作られた特別な措置が「2割特例」なんです。これは、インボイス制度への移行をスムーズにするための「激変緩和措置」として位置づけられています。

納税額が売上税額の「2割」になるって本当?

はい、その通りなんです。通常、消費税の納税額は「売上で預かった消費税」から「仕入れや経費で支払った消費税」を差し引いて計算します。これを「一般課税(本則課税)」と言います。しかし、2割特例を使うと、この複雑な計算は一切不要になります。なんと、納税額は「売上で預かった消費税」の2割だけで済むのです。とてもシンプルで、多くの場合、納税額もかなり抑えることができるんですよ。

2割特例のメリットは?

2割特例には、事業者にとって嬉しいメリットがたくさんあります。一番の魅力は、やはり納税額を大幅に抑えられることでしょう。それに加えて、経理の手間がぐっと楽になるのも大きなポイントです。主なメリットをまとめてみました。

メリット 具体的な内容
納税額の軽減 売上にかかる消費税額の2割だけを納めればOKです。特に、ウェブデザイナーやライターなど、大きな仕入れや経費がかからない業種の方には大きな節税効果が期待できます。
事務負担の軽減 仕入れや経費にかかった消費税を一つひとつ計算して帳簿につける必要がありません。売上の金額さえしっかり把握していれば納税額を計算できるので、経理作業がとても楽になります。
事前の届出が不要 この特例を使うために、事前に税務署へ特別な届出をする必要はありません。確定申告の時に、申告書に「2割特例を適用します」という意思表示をするだけで大丈夫です。

2割特例は誰がいつまで使えるの?

とってもお得に感じられる2割特例ですが、残念ながら誰でも、そしていつまでも使えるわけではありません。対象となる事業者と、利用できる期間がきちんと決まっていますので、ご自身が当てはまるかどうか、ここでしっかり確認しておきましょう。

対象となる事業者

2割特例の対象となるのは、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者(インボイス発行事業者)になった方です。具体的には、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • もともと消費税の納税義務が免除される免税事業者であったこと
  • インボイス発行事業者の登録をしたことで、新たに課税事業者になったこと
  • 基準期間(個人の場合は2年前、法人の場合は2事業年度前)の課税売上高が1,000万円以下であること

例えば、2022年の課税売上高が1,000万円を超えていて、2024年から元々課税事業者になる予定だった方などは対象外となるので注意してくださいね。

適用できる期間はいつまで?

2割特例は期間限定の制度です。この特例を適用できるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日を含む課税期間と定められています。

個人事業主の方(課税期間:1月1日〜12月31日)の場合、具体的には以下の期間の申告で利用できます。

申告対象年 適用可否
令和5年分(2023年) はい(10月〜12月分が対象)
令和6年分(2024年) はい
令和7年分(2025年) はい
令和8年分(2026年) はい

この期間を過ぎると2割特例は使えなくなります。特例が終了した後にどうするか、今のうちから少し考えておくと安心ですね。

2割特例の具体的な計算方法

それでは、実際に2割特例を使った場合の納税額を計算してみましょう。計算式は驚くほどシンプルなので、すぐに「なるほど!」と思っていただけるはずです。電卓片手に、ご自身の売上でシミュレーションしてみるのもいいかもしれませんね。

計算式とシミュレーション

消費税の納税額は、次のとても簡単な式で計算します。
納税額 = 売上にかかる消費税額 × 20%

例えば、1年間の課税売上高(税抜)が600万円だった場合で考えてみましょう。(消費税率は10%とします)

  1. まず、売上で預かった消費税額を計算します。
    600万円 × 10% = 60万円
  2. 次に、その消費税額に20%を掛けます。
    60万円 × 20% = 12万円

この場合、納める消費税額は12万円となります。もし経費が110万円(うち消費税10万円)かかっていたとしても、納税額は変わりません。売上の情報だけで計算できるのが大きな特徴です。

2割特例と簡易課税、どっちがお得?

消費税の計算を簡単にする方法には、2割特例のほかに「簡易課税制度」というものもあります。どちらも経理の手間を減らすための制度ですが、どちらを選ぶかによって納税額が変わることがあります。どちらがご自身にとって有利なのか、比べてみましょう。

簡易課税制度とは?

簡易課税制度とは、売上にかかる消費税額に、事業の種類ごとに法律で決められた「みなし仕入率」を掛けることで、仕入れにかかった消費税額を計算する方法です。こちらも事前の届出が必要ですが、経理の手間を減らせる制度として以前から利用されています。

有利な方の選び方

2割特例と簡易課税は、申告のたびに有利な方を選ぶことができます。一般的には、ほとんどの業種で2割特例の方が納税額は少なくなる傾向にあります。下の表で確認してみましょう。

事業区分 みなし仕入率(簡易課税
第1種事業(卸売業) 90%
第2種事業(小売業、農業、漁業など) 80%
第3種事業(製造業、建設業など) 70%
第4種事業(飲食店など) 60%
第5種事業(サービス業、運輸通信業など) 50%
第6種事業(不動産業) 40%

簡易課税の場合、納税額は「売上税額 × (1 – みなし仕入率)」で計算します。例えば、みなし仕入率が80%の小売業なら、納税額は売上税額の20%(=2割)となり、2割特例を使った場合と同じになります。しかし、それ以外の業種では、2割特例の方が有利になることが分かりますね。ただし、簡易課税を利用したい場合は、事前に「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があるので注意しましょう。

2割特例を利用する際の注意点

とても便利な2割特例ですが、利用する際にはいくつか知っておきたい注意点があります。後で「知らなかった!」と慌てないように、事前にポイントを押さえておきましょう。

適用期間が終了したらどうする?

2割特例が使えるのは令和8年9月30日までです。この期間が終わったら、原則の計算方法(一般課税)か、簡易課税制度のどちらかを選んで消費税を申告することになります。特例期間中に、ご自身の事業の経費がどれくらいかかるのかを把握し、特例が終了した後のことも考えて帳簿の付け方などを準備しておくと安心ですね。

期間の途中で対象外になるケース

2割特例の適用期間中であっても、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間から2割特例の対象外となります。売上が順調に伸びている方は、2年前の売上を常に意識しておくことが大切です。

手続きは確定申告書に記載するだけ

2割特例の適用に事前の届出は不要ですが、確定申告の際には忘れずに手続きを行う必要があります。消費税の確定申告書の「税額控除に係る経過措置の適用(2割特例)」といった趣旨の記載がある欄にチェックを入れるだけで適用されます。とても簡単ですが、忘れないようにしましょう。

まとめ

今回は、インボイス制度の負担を軽くする消費税の2割特例について詳しく解説しました。この特例は、インボイス制度の開始を機に課税事業者になった方にとって、税金の負担と経理の手間を大きく減らしてくれる、とても心強い味方です。

  • 2割特例は、納税額を売上にかかる消費税額の2割にできる制度です。
  • 対象者は、インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった方です。
  • 適用期間は令和8年9月30日までの期間限定措置です。
  • 事前の届出は不要で、確定申告時に適用するかどうかを選択できます。

使える期間は限られていますが、非常に有利な制度ですので、対象となる方はぜひ活用を検討してみてくださいね。ご自身の状況に合わせて、賢くインボイス制度と向き合っていきましょう。

参考文献

国税庁 インボイス制度の概要

国税庁 2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要

財務省 インボイス制度、支援措置があるって本当!?

インボイス制度「2割特例」のよくある質問まとめ

Q.2割特例とは何ですか?

A.インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった方向けの負担軽減措置です。売上にかかる消費税額の2割を納付すればよいという特例で、事前の届出は不要で申告時に選択できます。

Q.2割特例は誰が使えますか?

A.インボイス制度の開始をきっかけに、免税事業者からインボイス発行事業者(課税事業者)になった事業者が対象です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下などの要件があります。

Q.2割特例はいつまで適用できますか?

A.2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間が対象です。個人事業主の場合、2023年10月~12月分から2026年分までの申告で適用できます。

Q.2割特例の適用に事前の届出は必要ですか?

A.事前の届出は不要です。消費税の確定申告書に2割特例の適用を受ける旨を付記して申告するだけで適用を受けられます。

Q.簡易課税と2割特例はどちらがお得ですか?

A.多くの業種で2割特例の方が納税額は少なくなります。2割特例は売上税額の8割を控除できますが、簡易課税の控除割合(みなし仕入率)は事業区分により4割~9割と異なるため、卸売業など一部の業種では簡易課税が有利になる場合があります。

Q.2割特例を選択した場合、インボイスの保存は不要ですか?

A.いいえ、不要にはなりません。2割特例を適用すると仕入税額控除の計算は不要になりますが、交付したインボイスの写しや、受け取ったインボイスを保存する義務はあります。

事務所概要
社名
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対応責任者
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