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【法人向け】消費税の申告が不要なケースとは?免税事業者の条件を解説

2024-11-30
目次

「会社を設立したけど、消費税の申告って必ず必要なの?」と疑問に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。実は、すべての法人が消費税の申告と納税をしなければならないわけではないんです。特定の条件を満たすことで、その義務が免除されるケースがあります。この記事では、どのような法人が消費税の申告を行わなくてもよいのか、その具体的な条件について、優しく丁寧に解説していきます。

消費税の申告義務がある法人・ない法人

まず、消費税について考えるとき、法人は大きく2つのグループに分けられます。一つは消費税の申告と納税の義務がある「課税事業者」、もう一つはその義務が免除される「免税事業者」です。ご自身の会社がどちらに当てはまるのかを知ることが、最初のステップになります。

課税事業者とは?

課税事業者とは、お客様から商品やサービスの対価として預かった消費税を、国に納める義務がある法人のことです。課税事業者に該当する場合、事業年度ごとに消費税の計算を行い、税務署へ申告・納税する必要があります。多くの法人がこの課税事業者に該当します。

免税事業者とは?

一方、免税事業者とは、その名の通り、消費税の納税義務が免除されている法人のことです。免税事業者であれば、お客様から消費税を預かっていたとしても、それを国に納める必要はなく、消費税の申告も不要となります。ただし、免税事業者でいられるのには、いくつかの条件があります。

どうやって決まるの?「基準期間」がカギ

法人が課税事業者になるか、それとも免税事業者でいられるかは、主に「基準期間」という特定の期間における課税売上高によって判定されます。この基準期間の売上高が一定の金額を超えるかどうかで、納税義務の有無が決まる仕組みになっているんです。それでは、その具体的な条件を詳しく見ていきましょう。

消費税の申告が不要になる具体的な条件

消費税の申告が不要な「免税事業者」になるためには、どのような条件をクリアすれば良いのでしょうか。ここでは、具体的な金額や期間を交えて、その条件を一つずつ確認していきます。

条件①:基準期間の課税売上高が1,000万円以下

最も基本的な条件は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることです。法人の場合、この「基準期間」とは、原則として前々事業年度を指します。例えば、2024年4月1日から2025年3月31日までの事業年度について判定する場合、基準期間は2022年4月1日から2023年3月31日までの事業年度となります。この期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として免税事業者となります。

条件②:特定期間の課税売上高が1,000万円以下

基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、次に紹介する「特定期間」の条件に当てはまると課税事業者になってしまうので注意が必要です。「特定期間」とは、原則として前事業年度の開始の日以後6ヶ月の期間を指します。この特定期間中の判定は、少しだけ複雑です。

判定項目 内容
特定期間の課税売上高 この金額が1,000万円を超えること
特定期間の給与等支払額 この金額も1,000万円を超えること

上記の両方の条件を満たした場合に、課税事業者となります。つまり、課税売上高か給与等支払額のどちらか一方でも1,000万円以下であれば、この条件では課税事業者にはならず、免税事業者のままでいられます。

新しく設立した法人の場合

会社を設立したばかりの時期は、どうなるのでしょうか。新設法人の場合、設立1期目と2期目は、判定の元となる基準期間(前々事業年度)や特定期間(前事業年度)が存在しません。そのため、原則として設立から2年間は免税事業者となり、消費税の申告は不要です。これは、新しく事業を始めた法人にとって大きなメリットと言えるでしょう。

注意!免税事業者になれない例外ケース

ここまでの条件を見ると「うちは売上も少ないし、設立したばかりだから大丈夫」と思われるかもしれません。しかし、課税売上高が1,000万円以下でも、免税事業者になれない例外的なケースがいくつか存在します。思わぬところで申告義務が発生しないように、しっかりと確認しておきましょう。

資本金が1,000万円以上の新設法人

設立したばかりの法人でも、その事業年度の開始の日における資本金の額が1,000万円以上である場合は、設立1期目から自動的に課税事業者となります。この場合、基準期間の売上高にかかわらず、消費税の申告と納税の義務が発生しますので、注意が必要です。

特定新規設立法人に該当する場合

資本金が1,000万円未満であっても、「特定新規設立法人」に該当すると課税事業者になることがあります。これは、例えば他の事業者によって50%を超える株式を直接または間接に保有されており、かつその事業者の基準期間における課税売上高が5億円を超える場合などが該当します。少し複雑な要件ですが、親会社がある場合などは確認しておくと安心です。

課税事業者を選択している場合

免税事業者の条件に当てはまる法人でも、自らの意思で課税事業者になることを選択できます。税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出することで、あえて課税事業者になることが可能です。なぜこのような選択をするのかは、次のインボイス制度が大きく関係しています。

インボイス制度で変わったこと

2023年10月1日から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、多くの免税事業者にとって大きな転換点となりました。この制度が、消費税の申告を行うかどうかの判断にどのような影響を与えているのかを見ていきましょう。

インボイス(適格請求書)を発行できるのは課税事業者だけ

インボイス制度のもとでは、取引先(買い手)が仕入にかかった消費税を差し引く「仕入税額控除」という手続きを行うために、「適格請求書(インボイス)」が必要になります。そして、このインボイスを発行できるのは、税務署に登録申請を行った課税事業者だけです。免税事業者はインボイスを発行することができません。

免税事業者のままでいることのデメリット

もしあなたの会社が免税事業者で、取引先が課税事業者だった場合、あなたの会社はインボイスを発行できません。すると、取引先はあなたの会社との取引で支払った消費税分を仕入税額控除できず、その分多くの消費税を納めることになってしまいます。これが、取引先にとって負担となり、取引価格の見直しや、最悪の場合、取引の停止につながる可能性が指摘されています。

売上1,000万円以下でも課税事業者になる選択

こうした背景から、主要な取引先が課税事業者である場合、取引関係を円滑に維持するために、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、あえて免税事業者のメリットを放棄し、課税事業者となってインボイス発行事業者になるという選択をする法人が増えています。会社の状況や取引先との関係性を考慮して、慎重に判断することが重要です。

消費税の申告が必要になったら?

もし、あなたの会社が課税事業者になったり、課税事業者を選択したりした場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。ここでは、申告・納税の基本的な流れを簡単にご紹介します。

必要な届出

基準期間や特定期間の条件に当てはまり課税事業者になった場合は、速やかに「消費税課税事業者届出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。自ら課税事業者を選択する場合は、前述の「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。

申告と納税の期限

法人の消費税の確定申告と納税の期限は、原則として課税期間の末日(事業年度終了の日)の翌日から2ヶ月以内と定められています。例えば、3月決算の法人であれば、5月31日が申告・納税の期限となります。期限に遅れるとペナルティが発生する場合があるので、計画的に進めましょう。

納税額の計算方法

納める消費税額の計算方法には、主に「一般課税(原則課税)」と「簡易課税」の2種類があります。どちらを選択するかで納税額が変わることもあるため、自社にとって有利な方法を選ぶことが大切です。

計算方法 概要
一般課税 売上で預かった消費税額から、仕入や経費で支払った消費税額を差し引いて計算する方法です。
簡易課税 預かった消費税額に、事業の種類ごとに決められた「みなし仕入率」を掛けて支払った消費税額を計算する方法です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者のみ選択できます。

まとめ

今回は、「消費税の申告を行わない法人はあるか?」というテーマについて解説しました。ポイントをまとめると以下のようになります。

原則として、基準期間(前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の法人は「免税事業者」となり、消費税の申告は不要です。ただし、設立時の資本金が1,000万円以上であったり、特定期間の売上高と給与支払額が共に1,000万円を超えたりするなど、例外的なケースもありますので注意が必要です。

また、インボイス制度の導入により、取引先との関係から、売上規模が小さくてもあえて課税事業者を選択する法人が増えています。自社の状況を正しく把握し、将来の事業展開も見据えながら、最適な選択をすることがとても大切です。もし判断に迷うことがあれば、税理士などの専門家に相談してみるのも良いでしょう。

参考文献

国税庁 No.6501 納税義務の免除

国税庁 No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例

国税庁 インボイス制度の概要

消費税の申告義務に関するよくある質問まとめ

Q.消費税の申告をしなくても良い法人はありますか?

A.はい、あります。基準期間(通常は2年前の事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の法人は、原則として消費税の納税義務が免除される「免税事業者」となり、申告は不要です。

Q.新しく設立したばかりの法人は消費税の申告が必要ですか?

A.設立1期目と2期目は、原則として基準期間が存在しないため免税事業者となります。ただし、資本金が1,000万円以上の場合や、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合などは、課税事業者となり申告が必要です。

Q.売上が1,000万円を超えたらすぐに申告が必要ですか?

A.基準期間(2年前の事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えた場合、その年度から課税事業者となり申告と納税の義務が生じます。すぐに義務が発生するわけではありません。

Q.免税事業者でも消費税を申告することはできますか?

A.はい、「消費税課税事業者選択届出書」を提出することで、任意で課税事業者になることができます。設備投資などで支払った消費税が多い場合、還付を受けられるメリットがあります。

Q.インボイス制度が始まって、免税事業者に何か影響はありますか?

A.大きな影響があります。免税事業者のままだとインボイス(適格請求書)を発行できず、取引先が仕入税額控除を受けられない可能性があります。そのため、取引維持のために課税事業者(インボイス発行事業者)になることを選択する法人が増えています。

Q.一度課税事業者になったら、もう免税事業者には戻れませんか?

A.いいえ、戻ることは可能です。基準期間の課税売上高が1,000万円以下になるなど免税事業者の要件を満たし、「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出することで、再び免税事業者に戻ることができます。ただし、事業年度の開始前に提出が必要です。

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