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一人っ子相続のメリット・デメリットを解説!知っておきたい相続税対策とは

2026-01-12
目次

「うちは一人っ子だから相続でもめることはないだろう」そう思っていませんか?確かに、兄弟姉妹がいないことで遺産分割がスムーズに進むメリットは大きいですよね。でも、実は一人っ子ならではのデメリットや注意点もあるんです。特に相続税の負担が大きくなりやすい点は、見過ごせないポイントかもしれません。この記事では、一人っ子相続のメリット・デメリットから、具体的な手続きの流れ、そして知っておきたい節税対策まで、わかりやすく解説していきます。

一人っ子が相続するメリット

相続人が少ない一人っ子の相続には、兄弟姉妹がいる場合と比べて、手続きや精神的な面でいくつかのメリットがあります。具体的にどんな良い点があるのか、一緒に見ていきましょう。

相続トラブルになるリスクが低い

一人っ子相続の最大のメリットは、遺産分割で揉める可能性が極めて低いことです。兄弟姉妹がいる場合、「誰がどの財産を相続するか」で意見が対立し、いわゆる「争族」に発展することも少なくありません。しかし、相続人が一人っ子(と配偶者)だけの場合、話し合う相手が限られるため、スムーズに合意形成しやすいのです。もしご両親が既に他界していれば、相続人は自分一人だけ。誰と争うこともなく、故人の遺産をそのまま受け継ぐことができます。

相続手続きが簡単に進められる

相続人が少ないと、相続手続きに必要な書類集めや署名・捺印の手間が大幅に軽減されます。例えば、銀行預金の解約や不動産の名義変更(相続登記)では、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書が必要です。兄弟姉妹が複数いて、それぞれ遠方に住んでいる場合、書類のやり取りだけでも大変な時間と労力がかかります。一人っ子であれば、自分のペースで手続きを進められるため、精神的な負担も少ないでしょう。

一人っ子が相続するデメリット

メリットがある一方で、一人っ子だからこそ直面するデメリットも存在します。特に、税金面や手続きの負担については、あらかじめ理解しておくことが大切です。

相続税が高くなる可能性がある

一人っ子相続の最も注意すべきデメリットは、相続税の負担が大きくなりやすい点です。相続税には「基礎控除」という非課税枠があり、この金額は法定相続人の数によって決まります。
計算式は「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」です。
法定相続人が一人っ子のみの場合と、兄弟姉妹がいる場合で基礎控除額がどう変わるか見てみましょう。

法定相続人の構成 基礎控除額
配偶者 + 一人っ子(計2人) 3,000万円 + (600万円 × 2人) = 4,200万円
一人っ子のみ(計1人) 3,000万円 + (600万円 × 1人) = 3,600万円
配偶者 + 子供2人(計3人) 3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円

このように、相続人が少ないと基礎控除額が減り、課税対象となる遺産額が増えてしまうのです。また、生命保険金の非課税枠も「500万円 × 法定相続人の数」で計算されるため、同様に非課税枠が少なくなります。

一人ですべての手続きを担う必要がある

メリットの裏返しになりますが、相続に関するすべての手続きを一人でやらなければならない、という負担があります。戸籍謄本の収集、財産調査、金融機関での手続き、相続税申告など、やるべきことはたくさんあります。兄弟姉妹がいれば、作業を分担したり、わからないことを相談したりできますが、一人っ子の場合はその助けが得られません。精神的にも物理的にも、大きな負担となる可能性があります。

親と意見が対立する可能性がある

例えば、お父様が亡くなり、お母様と一人っ子が相続人になるケースを考えてみましょう。この場合、お二人の間で遺産の分け方について意見が合わない可能性もゼロではありません。「お母さんは老後のために多くの財産が欲しい」「子供は将来のために家を相続したい」といった希望がぶつかることも。兄弟姉妹がいれば間に入ってくれるかもしれませんが、当事者二人だけだと、かえって話し合いがこじれてしまうことも考えられます。

一人っ子がスムーズに相続するための手続きの流れ

いざ相続が発生したときに慌てないよう、手続きの全体像を把握しておくことが大切です。特に相続税の申告には期限があるので、計画的に進めましょう。

遺言書の有無を確認する

まずは、故人が遺言書を遺していないか確認します。遺言書があれば、原則としてその内容に従って遺産を分けることになります。遺言書は、自宅の金庫や法務局(自筆証書遺言保管制度)、公証役場(公正証書遺言)などで保管されている可能性があります。特に自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所での「検認」という手続きが必要になるので注意してください(法務局保管の自筆証書遺言は検認不要です)。

相続人を確定させる

「一人っ子だから相続人は自分だけ」と思い込まず、必ず戸籍調査を行いましょう。故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本)を取得することで、他に相続人がいないか(例えば、認知した子や異母・異父兄弟がいないか)を法的に確認できます。これは、後の金融機関の手続きなどでも必須となる重要な作業です。

相続財産を調査する

故人が遺した財産をすべて洗い出します。預貯金や不動産、有価証券といったプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も調査対象です。通帳や郵便物、不動産の権利証、固定資産税の納税通知書などが手がかりになります。財産の総額が基礎控除額を超えるかどうかで、相続税申告の要否が決まります。

相続税の申告と納税

財産調査の結果、遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。申告と納税の期限は、故人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です。この期限に遅れると、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課される可能性があるため、早めに準備を始めましょう。

名義変更などの相続手続き

相続税申告が終わったら(または不要な場合は財産調査が終わったら)、各財産の名義変更手続きを行います。預貯金は金融機関で、不動産は法務局で相続登記を行います。これらの手続きには、戸籍謄本一式や遺産分割協議書(相続人が複数の場合)、遺言書などが必要になります。

一人っ子のための相続税対策3選

相続税の負担が大きくなりがちな一人っ子。ご両親が元気なうちから対策を始めることで、将来の負担を大きく減らすことができます。ここでは、代表的な3つの対策をご紹介します。

暦年贈与でコツコツ財産を移す

生前贈与の中でも最も手軽なのが「暦年贈与」です。これは、1年間(1月1日~12月31日)に110万円までであれば、贈与税がかからずに財産を贈与できる制度です。毎年コツコツと贈与を続けることで、将来の相続財産を減らし、相続税を節税できます。ただし、毎年同じ時期に同じ金額を贈与していると「定期贈与」とみなされ、贈与税の対象となる可能性があるので、贈与契約書を作成するなど工夫が必要です。また、2024年からの税制改正で、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されることになった点にも注意しましょう。

教育資金の一括贈与の特例を利用する

もしご自身にお子さん(故人から見てお孫さん)がいるなら、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」の活用も有効です。これは、30歳未満の子や孫へ教育資金として一括で贈与する場合、最大1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。この制度を利用するには金融機関での専用口座開設が必要で、期間は令和8年(2026年)3月31日までとなっています。

二次相続まで見据えた遺産分割を

ご両親のどちらかがご健在の場合、今回の相続(一次相続)だけでなく、次のお母様(またはお父様)が亡くなった時の相続(二次相続)まで考えて遺産分割をすることが重要です。一次相続では、配偶者が使える「配偶者の税額の軽減」という非常に強力な特例があります。これは、配偶者が相続した財産が1億6,000万円または法定相続分のどちらか多い金額までであれば、相続税がかからないというものです。

しかし、この特例を最大限に利用して配偶者が多くの財産を相続すると、その配偶者が亡くなった二次相続の際に、一人っ子が相続する財産が大きくなり、結果的に多額の相続税を支払うことになる可能性があります。二次相続では配偶者がいないため、この特例は使えません。一次相続と二次相続のトータルで納税額が最も少なくなるような分割割合をシミュレーションすることが大切です。

マイナスの財産が多い場合は「相続放棄」も選択肢に

相続財産を調査した結果、預貯金などのプラスの財産よりも借金などのマイナスの財産の方が多いことが判明するケースもあります。その場合は「相続放棄」を検討しましょう。

相続放棄とは?

相続放棄とは、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続しないという意思表示のことです。相続放棄をすれば、故人の借金を返済する義務はなくなります。ただし、不動産や預貯金など、価値のある財産も一切受け取れなくなるので、慎重な判断が必要です。

手続きの期限は3ヶ月

相続放棄の手続きは、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述する必要があります。この3ヶ月という期間は「熟慮期間」と呼ばれ、財産調査に時間がかかって期間内に判断ができない場合は、家庭裁判所に申し立てることで期間を延長してもらえることもあります。期間を過ぎてしまうと、原則として単純承認(すべての財産を相続すること)したとみなされてしまうので注意が必要です。

まとめ

一人っ子の相続は、兄弟姉妹間のトラブルがないという大きなメリットがある一方で、手続きの負担が一人に集中する点や、相続税が高額になりやすいというデメリットがあります。特に、相続税については、ご両親が元気なうちから生前贈与などの対策を計画的に進めておくことが、将来の負担を軽減する鍵となります。いざという時に慌てないためにも、相続の基本的な流れや注意点を理解し、必要であれば専門家への相談も検討しながら、早めに準備を始めることをおすすめします。

参考文献

国税庁「No.4152 相続税の計算」

国税庁「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」

国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」

国税庁「No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」

一人っ子相続に関するよくある質問まとめ

Q.一人っ子だと相続手続きは簡単になりますか?

A.はい、兄弟姉妹がいないため遺産分割協議が不要となり、相続手続きは大幅に簡素化されます。相続人同士のトラブルがなく、スムーズに進むのが最大のメリットです。

Q.一人っ子相続のデメリットは何ですか?

A.プラスの財産だけでなく借金などのマイナスの財産もすべて一人で引き継ぐ点です。また、手続きや判断を一人で抱え込む精神的な負担もデメリットと言えます。

Q.一人っ子だと相続税は高くなりますか?

A.高くなる可能性があります。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で決まるため、相続人が一人だと控除額が少なくなり、税負担が重くなることがあります。

Q.親に借金があった場合、一人っ子はどうすればいいですか?

A.財産より借金が多い場合は「相続放棄」を検討します。家庭裁判所で手続きをすることで、借金を引き継がずに済みます。相続の開始を知った時から3ヶ月以内という期限があるので注意が必要です。

Q.一人っ子の場合、遺言書は必要ないですか?

A.遺産分割で揉めることはありませんが、遺言書があれば不動産の名義変更などの手続きがよりスムーズになります。また、お世話になった人など、子以外に財産を渡したい場合に必要です。

Q.一人っ子相続で他に注意すべき点はありますか?

A.親が亡くなった後の空き家の管理や、遠方の不動産の処分など、物理的な負担が一人に集中します。生前のうちに親子で財産の状況や希望について話し合っておくことが大切です。

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