ご家族から相続した土地が「市街化調整区域」にあると、どう評価したら良いか悩んでしまいますよね。特に、市街化区域依存型集落や都市計画法34条11号といった言葉が出てくると、専門的で難しく感じるかもしれません。でも、ご安心ください。これらの土地は特別なルールで評価されるため、正しく理解すれば相続税を適切に計算できます。この記事では、この特別な区域にある土地の評価方法について、一つひとつ丁寧に解説していきますね。
そもそも「市街化区域依存型集落」とは?
まずは、言葉の意味から優しくひも解いていきましょう。「市街化区域依存型集落」とは、一般的に都市計画法第34条11号に定められた区域のことを指します。少し難しい言葉ですが、特徴を知ればイメージが湧きますよ。
都市計画法第34条11号区域の主な特徴
この区域は、本来は建物の建築が厳しく制限される市街化調整区域の中にありますが、例外的に開発が認められる特別なエリアです。なぜなら、次のような特徴を持っているからです。
| 区域の場所 | 市街化区域に隣接していたり、とても近かったりする場所です。 |
| 地域の様子 | すでに50戸以上の建物が約50m以内の間隔で連なっていて、市街化区域と一体の日常生活圏と認められる地域です。 |
| 法律上の扱い | 都道府県などが条例で指定した区域(通称「条例指定区域」)で、一定の条件を満たせば、誰でも住宅などを建てることが可能です。 |
つまり、「市街化調整区域だけど、実態はほとんど市街化区域と変わらない暮らしをしている集落」というイメージですね。このため、他の市街化調整区域の土地とは違う、特別な評価方法が必要になるんです。
自分の土地が該当するか調べるには?
ご自身の土地がこの区域に該当するかどうかは、とても重要です。確認するためには、土地がある市町村役場の都市計画担当の課(都市計画課など)に問い合わせるのが最も確実です。地番を伝えれば、該当するかどうかを教えてもらえますよ。
市街化調整区域における土地評価の基本
都市計画法34条11号区域の評価を理解するために、まずは市街化調整区域全体の土地評価の基本ルールを知っておきましょう。市街化調整区域内の土地(雑種地など)は、多くの場合、その土地がもし宅地だったら…と仮定して評価する「宅地比準方式」という方法が使われます。
なぜ評価額を割り引けるの?「しんしゃく割合」の考え方
市街化調整区域は、市街化区域の宅地と比べて建物を建てるのに厳しい制限がありますよね。その利用価値の低さを評価額に反映させるために「しんしゃく割合」という考え方があります。これは、いわば「土地の価値の割引率」のようなものです。
例えば、近隣の宅地の評価額が1平方メートルあたり10万円だったとしても、建築制限が厳しい市街化調整区域の土地は、そこから一定割合を割り引いて評価することができる、という仕組みです。
しんしゃく割合とは?3つの割引パターンを理解しよう
この「しんしゃく割合」は、建築制限の厳しさに応じて、国税庁の指針により大きく3つのパターンに分けられています。どのパターンに当てはまるかで、土地の評価額が大きく変わってきます。
建築制限の度合いによる「しんしゃく割合」の目安
| しんしゃく割合(割引率) | 土地の状況 |
| 50% | 原則として、建物の建築が一切できない土地。駐車場や資材置き場としての利用に限られるような場合です。 |
| 30% | 建物の建築はできるものの、用途や規模に制限がある土地。例えば「地域住民のための小規模店舗」や「幹線道路沿いのコンビニ」など、特定の建物しか建てられない場合です。 |
| 0% | 原則として建築に制限がなく、宅地とほぼ同じように扱える土地。市街化区域の土地と同じように開発や売買ができるような場合です。 |
このように、建物を自由に建てられる土地ほど割引率は小さく(0%に近く)なり、逆に制限が厳しいほど割引率は大きく(50%に近く)なります。
都市計画法34条11号区域の「個別評価」のポイント
ここからが本題です。国税庁の指針では、都市計画法第34条11号に規定される区域については、上記で説明した割合の表によらず「個別に判定する」とされています。これが、この区域の評価が難しいと言われる理由です。
なぜ「個別評価」が必要なの?
11号区域は、法律上は開発が許可されていますが、その実態は地域によって様々だからです。すでに郊外型の店舗が立ち並び、活発に取引されている地域もあれば、昔ながらの集落で静かな環境が保たれている地域もあります。そのため、画一的な割引率を当てはめるのではなく、その土地の個別の状況をしっかり見て評価する必要があるのです。
しんしゃく割合0%が基本になる理由
個別評価といっても、多くの場合、11号区域の土地はしんしゃく割合0%、つまり割引なしで評価されるのが基本となります。その理由は、この区域が宅地分譲のような開発も可能で、建築の自由度が高く、市街化区域の宅地と価値が変わらないと判断されることが多いためです。
特に、周辺で宅地並みの価格で取引されている実績がある場合や、商業施設が多く利便性が高い地域では、割引を適用するのは難しいでしょう。
それでも減額の可能性があるケース
ただし、「個別評価」ですから、必ずしも0%と決まっているわけではありません。例えば、以下のようなケースでは、30%などの割引が認められる可能性もゼロではありません。
- 自治体の条例によって、建てられる建物の用途がかなり厳しく制限されている場合。
- 土地の形状が悪く、開発する際に通常以上の造成費用(擁壁工事など)が必要になると客観的に認められる場合。
このような事情がある場合は、その点を具体的に主張して評価額を下げられるか、専門家と相談しながら慎重に検討する必要があります。
「地積規模の大きな宅地」の評価は適用できる?
市街化調整区域の土地評価でもう一つ重要なのが、「地積規模の大きな宅地の評価」という特例です。これは、一定面積以上の広い土地について評価額を減額できる制度ですが、原則として市街化調整区域の土地は対象外です。
しかし、ここでも都市計画法第34条11号区域は例外です。この区域内にある土地は、市街化調整区域でありながら「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となるのです。
適用要件の概要
| 三大都市圏(首都圏など) | 500平方メートル以上の地積の宅地 |
| それ以外の地域 | 1,000平方メートル以上の地積の宅地 |
もし相続した土地がこの面積要件を満たし、かつ他の細かな要件もクリアすれば、しんしゃく割合とは別に、さらに評価額を下げられる可能性があります。これは非常に大きな節税につながる可能性があるため、必ず確認したいポイントです。
まとめ
最後に、市街化区域依存型集落(都市計画法34条11号区域)の土地評価のポイントを整理しましょう。
- この区域は市街化調整区域の中でも特別で、「個別評価」が必要になります。
- 建築の自由度が高いため、基本的には割引のない「しんしゃく割合0%」で評価されることが多いです。
- ただし、条例による厳しい用途制限など、個別の事情によっては減額できる可能性も残されています。
- 市街化調整区域では珍しく、「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象となる可能性があります。
- 評価の判断には、役所調査や周辺の取引事例の確認が不可欠で、専門的な知識が求められます。
この区域の土地評価は非常に複雑で、判断を誤ると相続税を払い過ぎてしまうリスクがあります。少しでも不安に感じたら、土地評価に詳しい税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。正しい評価で、安心して相続手続きを進めてくださいね。
参考文献
市街化区域依存型集落の土地評価に関するよくある質問まとめ
Q.そもそも「市街化区域依存型集落」とは何ですか?
A.市街化調整区域内にありながら、実質的に市街化区域と一体的な日常生活圏を形成している集落のことです。公共施設やインフラを市街化区域に依存している特徴があり、自治体が条例で指定しています。
Q.都市計画法34条11号とは、どのような制度ですか?
A.市街化調整区域内でも、自治体が条例で指定した区域(11号区域)においては、一定の要件を満たせば自己用住宅などの建築が許可される制度です。これにより、土地の利用価値が大きく変わることがあります。
Q.なぜ市街化区域依存型集落の土地評価は難しいのですか?
A.市街化調整区域という建築制限が厳しいエリアにありながら、34条11号の適用により建築が可能になる場合があるためです。この「建築できる可能性」をどう評価に反映させるかが難しく、画一的な評価ではなく個別具体的な判断が必要になります。
Q.34条11号区域の土地は、どのように評価されるのですか?
A.建築が全くできない市街化調整区域の土地とは異なり、宅地としての利用価値が考慮されます。近隣の市街化区域内の宅地価格を基準としつつ、建築できる建物の種類や規模の制限、インフラの整備状況などを加味して減価(評価額を調整)する個別評価が行われるのが一般的です。
Q.相続税評価の場合、34条11号区域の土地評価はどうなりますか?
A.宅地としての利用が見込めるため、近隣の宅地価額を基に評価されることが多いです。ただし、誰でも建築できるわけではない等の制限があるため、専門家は不動産鑑定評価などを参考に、一定の減価率(斟酌率)を適用して最終的な評価額を算出します。
Q.市街化区域依存型集落の土地を売却する際の注意点は?
A.買主が誰でも家を建てられるわけではない、という建築主の要件(属人性の要件)を正確に伝えることが最も重要です。この制限が売却価格に大きく影響するため、事前に自治体の都市計画担当課で建築要件を確認しておく必要があります。