フリーランスの方や不動産オーナーの方なら、一度は「支払調書」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんね。これは、報酬を支払った側が「誰に、何を、いくら支払ったか」を税務署に報告するための大切な書類です。この記事では、支払調書とは何か、どんな種類があるのか、誰がいつまでに提出する必要があるのかといった基本を、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
支払調書とは?基本のキを理解しよう
支払調書は、法律で税務署への提出が定められている「法定調書」という書類の一種です。簡単に言うと、企業や個人事業主が、外部のフリーランスや弁護士といった個人・法人に報酬を支払った際に、「この人に、こんな内容で、年間これだけ支払いましたよ」と税務署へ報告するための書類です。税務署はこの情報をもとに、報酬を受け取った人がきちんと所得を申告しているかを確認するんですね。
支払調書って、なんのためにあるの?
一番の目的は、税務署が個人の所得を正確に把握するためです。報酬を支払った側から提出される支払調書と、報酬を受け取った側が提出する確定申告書の内容を照らし合わせる(突合する)ことで、申告漏れや間違いがないかを確認しています。私たちのお金に関わる大切な仕組みの一つ、というわけですね。
支払調書と源泉徴収票の違いは?
「支払調書」とよく似た書類に「源泉徴収票」があります。どちらも支払いに関する書類ですが、対象となる相手が違います。大きな違いは、支払い相手と雇用契約を結んでいるかどうかです。
| 書類の種類 | 対象となる相手 |
| 支払調書 | 業務委託契約などを結んだ外部の個人事業主(フリーランス)や法人など |
| 源泉徴収票 | 雇用契約を結んでいる従業員(会社員やアルバイト) |
簡単に言うと、会社員の方が会社からもらうのが「源泉徴収票」、フリーランスの方が取引先から受け取ることがあるのが「支払調書」と覚えておくと分かりやすいですよ。
支払調書は誰が作成して、誰に渡すの?
支払調書の作成と税務署への提出義務は、報酬を支払った側の事業者にあります。一方で、報酬を受け取った側(フリーランスなど)に支払調書を渡すことは、法律上の義務ではありません。ただし、慣習として「これだけ支払いましたよ」という確認のために交付してくれる企業が多いのが実情です。もし手元に届かなくても、確定申告はご自身の売上記録をもとに行えますので、安心してくださいね。
主な支払調書の種類と提出が必要なケース
支払調書と一言でいっても、実は全部で60種類以上もあります。ここでは、特に皆さんが関わることの多い代表的な4つの支払調書について、どんな場合に提出が必要になるのかを見ていきましょう。
報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
フリーランスや個人事業主の方に最も関係が深いのが、この支払調書です。例えば、以下のような報酬を支払った場合に、一定の金額を超えると提出義務が発生します。
| 報酬の具体例 | 提出が必要になる年間の支払金額 |
| 弁護士・税理士などへの報酬、ライターへの原稿料、デザイナーへのデザイン料、講演料など | 同一人に対して年間5万円を超える場合 |
| 外交員、集金人、プロボクサー、バー・キャバレーのホステスなどへの報酬、広告宣伝のための賞金 | 同一人に対して年間50万円を超える場合 |
不動産の使用料等の支払調書
法人や不動産業を営む個人が、事務所の家賃や権利金、更新料などを支払った場合に提出が必要となる支払調書です。同一の相手(大家さんなど)への年間の支払額の合計が15万円を超える場合に提出義務があります。ただし、相手が法人の場合、家賃や地代だけを支払っている場合は提出不要で、権利金や更新料などを支払った場合のみ対象となります。
不動産の譲り受けの対価の支払調書
土地や建物といった不動産を購入したり、交換したりした場合に、支払い側が提出する支払調書です。同一の相手からの譲り受け対価が、年間で100万円を超える場合に提出が必要になります。
不動産等の売買または貸付けのあっせん手数料の支払調書
不動産の売買や賃貸の際に、不動産会社などに仲介手数料(あっせん手数料)を支払った場合に提出が必要になります。同一の相手への年間の支払額が15万円を超える場合に提出義務が発生します。
支払調書の書き方を具体的に見てみよう(報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書の場合)
ここでは、最も一般的な「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を例に、どこに何を書くのかを簡単にご紹介します。
支払を受ける者
報酬を受け取った人の「住所」「氏名」「個人番号(マイナンバー)」を記載します。マイナンバーは非常に大切な個人情報なので、取り扱いには細心の注意が必要です。なお、報酬を受け取った本人に写しを渡す場合は、マイナンバーを記載してはいけない決まりになっています。
区分・細目
「区分」の欄には、「原稿料」「講演料」「税理士報酬」といった報酬の種類を書きます。「細目」には、区分の内容をより具体的に書きます。例えば、講演料であれば講演の名称、弁護士報酬であれば関わった事件名などを記載します。
支払金額・源泉徴収税額
「支払金額」には、その年の1月1日から12月31日までに支払いが確定した金額の合計を記載します。消費税を含んだ金額を記載するのが一般的です。まだ支払っていない未払金があっても、支払うことが確定していれば、その金額も含める必要があります。
「源泉徴収税額」には、支払金額から源泉徴収した所得税と復興特別所得税の合計額を記載します。
摘要・支払者
「摘要」欄は、特別な事情がある場合に記載する欄です。例えば、広告宣伝の賞金が金品以外のものであった場合などに、その詳細を記載します。「支払者」の欄には、報酬を支払った事業者(会社名や個人事業主名、住所、法人番号など)の情報を記載します。
支払調書の提出期限と提出方法
支払調書は、いつまでに、どのように提出すればよいのでしょうか。大事なポイントなのでしっかり確認しておきましょう。
いつまでに提出すればいいの?
支払調書の提出期限は、原則として、報酬を支払った年の翌年1月31日までです。例えば、2024年中に支払った報酬に関する支払調書は、2025年1月31日までに税務署へ提出する必要があります。
提出方法にはどんなものがある?
提出方法には、主に3つの方法があります。
- 書面で提出:税務署の窓口に直接持参するか、郵送で提出する方法です。
- e-Taxで提出:国税電子申告・納税システム(e-Tax)を利用して、オンラインで提出する方法です。
- 光ディスク等で提出:CDやDVDなどにデータを入れて提出する方法です。
なお、注意点として、法定調書の種類ごとに、前々年に提出した枚数が100枚以上だった場合、e-Taxか光ディスク等での電子提出が義務付けられています。
支払調書を作成・受領するときの注意点
最後に、支払調書を扱う上での注意点を、支払う側と受け取る側それぞれの視点から解説します。
【支払う側】マイナンバーの取り扱いに注意!
支払調書を作成する際には、支払い相手のマイナンバー(個人番号)が必要になります。マイナンバーは重要な個人情報ですので、収集する際は利用目的をきちんと伝え、漏洩などがないように厳重に管理しなければなりません。安易にメールなどで送ってもらうのは避け、セキュリティが確保された方法で提供してもらうようにしましょう。
【受け取る側】支払調書が届かない!確定申告はどうする?
先ほども触れましたが、事業者から報酬を受け取る側へ支払調書を交付することは法律上の義務ではありません。そのため、「確定申告の時期になっても支払調書が届かない」ということもあり得ます。ですが、心配はいりません。ご自身で管理している帳簿や請求書の控えをもとに、年間の売上金額と源泉徴収された税額を正確に計算できれば、問題なく確定申告は行えます。支払調書は、あくまでご自身の計算が合っているかを確認するための書類と捉えておきましょう。
まとめ
今回は「支払調書」について、その役割や種類、書き方、提出方法などを詳しく解説しました。支払調書は、報酬を支払う事業者が、税務署に対して正確な支払情報を報告するための非常に重要な書類です。特に個人で事業をされている方は、支払う側にも受け取る側にもなる可能性があります。この記事を参考に、支払調書の基本をしっかりと理解して、いざという時に慌てないように準備しておきましょう。
参考文献
支払調書に関するよくある質問まとめ
Q.支払調書とは何ですか?
A.企業が特定の支払い(報酬、料金など)を誰にいくら支払ったかを税務署に報告するための法定調書です。フリーランスや個人事業主への支払いが主な対象です。
Q.支払調書はいつもらえますか?
A.支払調書は、支払いを行った企業が翌年の1月31日までに税務署へ提出するものです。支払い先への交付は法律上の義務ではないため、発行されない場合もあります。
Q.支払調書がもらえない場合はどうすればいいですか?
A.支払調書の発行は義務ではないため、もらえなくても問題ありません。確定申告は、ご自身で管理している売上や経費の記録(帳簿や請求書、銀行の入出金明細など)をもとに行うことができます。
Q.支払調書は確定申告に必要ですか?
A.確定申告書への添付義務はありません。支払調書はあくまで企業が税務署に提出する書類です。申告の際は、ご自身の売上記録と照合するための参考資料として活用できます。
Q.支払調書と源泉徴収票の違いは何ですか?
A.支払調書は主にフリーランスや個人事業主への報酬支払いを記載するのに対し、源泉徴収票は会社員などの給与所得者に対して発行されるものです。対象となる人と所得の種類が異なります。
Q.支払調書の発行は義務ですか?
A.税務署への提出は法律で義務付けられていますが、支払い先(フリーランスなど)への交付は義務ではありません。ただし、慣習として交付する企業は多くあります。