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退職金の有利な受け取り方|税金を抑えて手取りを最大化する3つの方法

2025-12-21
目次

長年勤め上げた証として受け取る大切な退職金。実は、その「受け取り方」ひとつで、手元に残る金額が大きく変わることをご存知でしょうか。何も知らずに選んでしまうと、思わぬ税金の負担で損をしてしまうかもしれません。この記事では、退職金の有利な受け取り方について、3つのパターンを比較しながら、それぞれのメリット・デメリット、税金の仕組みを分かりやすく解説します。あなたのライフプランにぴったりの方法を見つけるお手伝いができれば嬉しいです。

退職金の受け取り方は3パターン

退職金の受け取り方には、大きく分けて3つの選択肢があります。お勤めの会社の制度によって選べる方法は異なりますが、まずは基本的な3つのパターン「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」について、それぞれの特徴を理解しておきましょう。

一時金|税金の優遇が最も大きい

退職金を一括で全額受け取る方法です。最大のメリットは、税制面で非常に優遇されている「退職所得控除」が適用されることです。この控除額は勤続年数が長ければ長いほど大きくなるため、長年お勤めの方ほど税金の負担が軽くなります。

退職所得控除額は、勤続年数に応じて以下のように計算されます。

勤続年数(A) 退職所得控除額
20年以下 40万円 × A(80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (A – 20年)

例えば、勤続38年の方の場合、退職所得控除額は「800万円 + 70万円 × (38年 – 20年) = 2,060万円」となります。もし退職金が2,000万円であれば、全額が控除の範囲内に収まるため、所得税・住民税はかかりません。さらに、一時金で受け取った退職金は社会保険料の計算対象にもならないため、国民健康保険料などが増える心配もありません。ただし、一度にまとまったお金が手に入るため、計画的に使わないと老後資金が早く尽きてしまうリスクがある点には注意が必要です。

年金|計画的に使える安定収入

退職金を分割して、5年、10年といった一定期間にわたって定期的に受け取る方法です。毎月や毎年など、決まった額を受け取れるため、公的年金に上乗せする形で安定した収入源となり、計画的な資金管理がしやすいのがメリットです。一方で、税金面では注意が必要です。年金形式で受け取る退職金は「雑所得」として扱われ、「公的年金等控除」の対象となります。これは退職所得控除に比べて控除額が小さくなるケースが多く、また、毎年の公的年金や他の所得と合算して税額が計算されます。そのため、所得税や住民税の負担が一時金より重くなる傾向があります。さらに、所得額が増えることで、国民健康保険料や介護保険料といった社会保険料の負担も増える可能性があることを覚えておきましょう。

一時金と年金の併用|バランス型のいいとこ取り

退職金の一部を一時金として受け取り、残りを年金形式で受け取る方法です。「住宅ローンの残債を一括返済したいけど、老後の安定収入も確保したい」といった場合に有効な、柔軟な受け取り方と言えます。一時金で受け取った部分には「退職所得控除」が、年金で受け取る部分には「公的年金等控除」がそれぞれ適用されます。税金のメリットをある程度受けつつ、まとまった資金と定期的な収入の両方を確保できるのが魅力です。ただし、どのくらいの割合で分けるのが最適か、また、お勤め先の制度でこの方法が選択できるか、事前に確認することが大切です。

【徹底比較】どの受け取り方が一番お得?

結局のところ、どの受け取り方が一番手取り額が多くなるのでしょうか。これは、あなたの退職金の額、勤続年数、そして退職後のライフプランによって異なります。しかし、一般的には税金の優遇が非常に大きい「一時金」で受け取るのが最も有利になるケースが多いと言えます。

モデルケースで税負担をシミュレーション

具体的な数字で見てみましょう。ここでは「勤続38年、退職金2,000万円」というケースで考えてみます。

受け取り方 税金のポイント
一時金で受け取る場合 退職所得控除額が2,060万円となり、退職金2,000万円を全額カバーできます。そのため、所得税・住民税は0円です。手取り額はそのまま2,000万円となります。
年金で受け取る場合 仮に10年間に分けて年200万円ずつ受け取ると、毎年この200万円が公的年金などと合算され、雑所得として課税されます。税率や社会保険料は他の所得によって変動しますが、毎年一定の税金と社会保険料がかかり、10年間の合計手取り額は一時金に比べて数十万円から百万円以上少なくなる可能性があります。

このモデルケースでは、明らかに一時金で受け取る方が有利であることがわかります。ご自身の退職金と勤続年数で一度計算してみることをお勧めします。

ライフプランに合わせた選び方が重要

税金面だけで判断するのではなく、ご自身の退職後の生活設計、つまりライフプランに合った方法を選ぶことが何よりも大切です。

  • 一時金がおすすめな人
    住宅ローンの完済、自宅のリフォーム、子どもの結婚資金援助など、退職後すぐにまとまったお金が必要な方。また、ご自身で計画的に資産管理や運用ができる方にも向いています。
  • 年金がおすすめな人
    浪費が心配で、計画的な資金管理に自信がない方。公的年金だけでは毎月の生活費が少し心もとないと感じ、安定した収入を長く確保したい方におすすめです。
  • 併用がおすすめな人
    「ローン返済のためのお金は確保しつつ、残りは月々の生活費の足しにしたい」など、まとまった支出の予定と、安定収入の確保の両方を実現したい方に最適な方法です。

注意点|iDeCo(個人型確定拠出年金)との関係

最近では、会社の退職金制度とは別に、iDeCo(イデコ)に加入している方も多いでしょう。iDeCoを一時金で受け取る場合も「退職所得」として扱われるため、会社の退職金との受け取り方には注意が必要です。

退職所得控除の枠は合算される

もし会社の退職金とiDeCoの一時金を同じ年に受け取ると、それぞれの金額を合算した上で退職所得控除を計算します。例えば、退職所得控除の枠が2,060万円の人が、会社から退職金2,000万円、iDeCoで500万円を同じ年に一時金で受け取った場合、合計2,500万円となり、控除枠を440万円も超えてしまいます。この超えた部分(の1/2)に課税されてしまうため、税金の負担が大きくなってしまいます。

受け取り時期をずらす「5年ルール」(2025年まで。2026年以降10年に変更予定)

この問題を避けるための有効な方法が、受け取り時期をずらすことです。特に、iDeCoを先に受け取り、その5年以上後に会社の退職金を受け取ると、それぞれの勤続年数(iDeCoは加入期間)に基づいて計算した退職所得控除を、それぞれ満額利用できる可能性が高くなります。これにより、税負担を大きく軽減できる場合があります。退職のタイミングとiDeCoの受け取り開始時期を計画的に考えることが、手取りを最大化する鍵となります。

退職金を受け取るための手続き

退職金は自動的に振り込まれるわけではなく、ご自身で手続きを行う必要があります。特に重要なポイントを2つ押さえておきましょう。

退職金規程の確認

まずは、お勤め先の「就業規則」や「退職金規程」を必ず確認しましょう。ご自身の退職金額の計算方法、選択可能な受け取り方法、申請の時期や方法などが記載されています。不明な点があれば、人事や総務の担当部署に早めに問い合わせておくことが大切です。

「退職所得の受給に関する申告書」の提出

退職金を一時金で受け取る場合、この書類を退職日までに会社へ提出することが非常に重要です。この申告書を提出することで、会社側が退職所得控除を適用して正しい税額を計算し、源泉徴収してくれます。もし提出を忘れると、退職金の額面に対して一律20.42%という高い税率で源泉徴収されてしまいます。もちろん、後からご自身で確定申告をすれば払い過ぎた税金は戻ってきますが、一時的に手取りが大きく減ってしまい、手続きの手間もかかります。必ず忘れずに提出しましょう。

死亡退職金になった場合の注意点

万が一、在職中にお亡くなりになり、ご遺族が退職金を受け取る「死亡退職金」となった場合、これは所得税ではなく相続税の課税対象となります。この点も知っておくと安心です。

生命保険金とは別の非課税枠がある

死亡退職金には、相続税における生命保険金の非課税枠(500万円 × 法定相続人の数)とは別に、それと同額の非課税枠が設けられています。

死亡退職金の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

例えば、法定相続人が配偶者と子ども2人の合計3人いる場合、500万円 × 3人 = 1,500万円までが非課税となります。受け取った死亡退職金がこの金額の範囲内であれば、相続税はかかりません。この非課税枠は相続人が受け取った場合にのみ適用されることも覚えておきましょう。

まとめ

退職金の有利な受け取り方について解説してきましたが、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
退職金の受け取り方には「一時金」「年金」「併用」の3つの選択肢があります。税制面だけを見ると、多くの場合、大きな退職所得控除が使える「一時金」での受け取りが最も有利です。しかし、最も大切なのは、税金の損得だけでなく、ご自身の退職後のライフプランやお金の使い方に合った方法を選ぶことです。住宅ローンの返済など大きな支出があるか、計画的な資金管理は得意か、安定した収入は必要かなどをじっくり考え、最適な選択をしてください。また、iDeCoとの兼ね合いや、「退職所得の受給に関する申告書」の提出といった手続きも、手取り額を左右する重要な要素です。この記事が、あなたの豊かなセカンドライフへの第一歩となれば幸いです。

参考文献

国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

国税庁 No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金

国税庁 No.4123 相続税等の課税対象になる年金受給権

国税庁 No.2740 勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(短期退職手当等)

退職金の受け取り方に関するよくある質問まとめ

Q.退職金は「一時金」と「年金」、どちらで受け取るのがお得ですか?

A.一般的に、税制上有利な退職所得控除が使える「一時金」の方が手取り額が多くなる傾向にあります。ただし、運用しながら安定した収入を得たい場合は「年金」も選択肢となります。ご自身のライフプランに合わせて総合的に判断することが大切です。

Q.退職金を一時金で受け取る場合の税金のメリットは何ですか?

A.「退職所得控除」という大きな控除が適用され、さらに課税対象額が1/2になるため、税負担を大幅に軽減できます。勤続年数が長いほど控除額が大きくなるのが特徴です。

Q.退職金を年金形式で受け取る場合の注意点はありますか?

A.毎年受け取る年金は公的年金などと同じ「雑所得」となり、所得税・住民税の課税対象になります。他の所得と合算されるため、年間の所得総額によっては税率が高くなる可能性があります。

Q.退職金に税金がかからないことはありますか?

A.はい、あります。退職金の額が、勤続年数に応じて計算される「退職所得控除」の金額を下回る場合、所得税・住民税はかかりません。

Q.「退職所得の受給に関する申告書」はなぜ重要なのでしょうか?

A.この申告書を勤務先に提出することで、正しい税額が源泉徴収されます。提出しないと、一律20.42%の高い税率で徴収されてしまい、手取り額が大きく減ってしまうため、必ず提出しましょう。

Q.退職金を運用したい場合、どんな方法がありますか?

A.企業型DC(確定拠出年金)の資産は、iDeCo(個人型確定拠出年金)に移して非課税で運用を続けることができます。また、NISA(少額投資非課税制度)を活用して、受け取った一時金を投資に回す方法も人気です。

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