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遺贈と特別縁故者への財産分与|相続人がいなくても財産を渡せる方法

2025-04-11
目次

「自分には子どもや兄弟がいないから、亡くなったら財産は国に納めるしかないのかな…」「長年お世話になったあの人に、少しでも財産を遺したい」。そんなふうに考えていらっしゃる方はいませんか?実は、法律で定められた相続人(法定相続人)がいない場合でも、大切な人に財産を渡す方法があります。それが、遺言による「遺贈」と、「特別縁故者への財産分与」という制度です。この二つの方法について、手続きの流れや税金の注意点などを、わかりやすく解説していきますね。

遺贈って何?相続との違いを知ろう

まず、大切な人に財産を遺す方法として最も一般的な「遺贈」について見ていきましょう。「相続」とよく似ていますが、実は大きな違いがあるんですよ。

遺贈と相続の基本的な違い

「相続」は、亡くなった方(被相続人)の配偶者やお子さんなど、法律で定められた「法定相続人」が財産を受け継ぐことを指します。一方、「遺贈」は、遺言書によって、法定相続人以外の人や法人にも財産を譲り渡すことができます。つまり、遺言書があれば、ご自身の意思で自由に財産を渡す相手を決めることができるのです。お世話になったご友人や、NPO法人などに財産を寄付することも可能です。

遺贈の2つの種類

遺贈には、財産の渡し方によって2つの種類があります。ご自身の希望に合わせて選ぶことができますよ。

包括遺贈 「財産の3分の1をAさんに遺贈する」というように、財産の割合を指定して遺贈する方法です。プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もその割合に応じて引き継ぐことになります。
特定遺贈 「〇〇銀行の預金500万円をBさんに遺贈する」「自宅の土地建物をCさんに遺贈する」というように、特定の財産を指定して遺贈する方法です。指定された財産だけを引き継ぎます。

遺贈を確実に行うためのポイント

遺贈を行うには、法的に有効な遺言書が不可欠です。ご自身の想いを確実に実現するためには、専門家である公証人が作成に関与する「公正証書遺言」をおすすめします。自筆で書く「自筆証書遺言」も有効ですが、形式に不備があると無効になってしまうリスクがあるため注意が必要です。遺贈は、財産を受け取る側(受遺者)が「いりません」と放棄することもできますので、事前に相手の意向を確認しておくと、よりスムーズに進むでしょう。

特別縁故者ってどんな人?

では、遺言書がない場合は、もう財産を渡すことはできないのでしょうか。そんな時に登場するのが「特別縁故者」という制度です。

特別縁故者(とくべつえんこしゃ)とは、亡くなった方に法定相続人が一人もいない場合に、家庭裁判所への申立てによって、その財産を受け取ることが認められる人のことを言います。遺言書がなくても、亡くなった方と特別な関係にあったことが認められれば、財産を引き継げる可能性があるのです。

特別縁故者と認められる3つのケース

特別縁故者として家庭裁判所に認めてもらうためには、次の3つのうち、いずれかに当てはまる必要があります。

被相続人と生計を同じくしていた人 事実婚のパートナー(内縁の配偶者)や、事実上の養子など、亡くなった方と一緒の家計で生活していた方が当てはまります。
被相続人の療養看護に努めた人 亡くなった方の介護を献身的に行っていた親族や友人などが該当します。ただし、仕事として報酬を得ていた介護士や看護師の場合、報酬に見合う以上の特別な貢献があったと認められる必要があります。
その他、特別の縁故があった人 上記以外でも、長年にわたり親子同然の付き合いをしていた友人や、亡くなった方が経済的に支援していた人、お世話になっていた法人などが認められる可能性があります。

特別縁故者として認められない場合

どんなに親しい間柄であっても、特別縁故者として財産を受け取れないケースもあります。最も重要なのは、法定相続人が一人でもいる場合です。たとえ何十年も音信不通の親族であっても、法律上の相続人がいる限り、特別縁故者の制度は利用できません。また、亡くなった方の財産に借金が多く、債権者への支払いを終えると財産が残らない場合も、財産分与は行われません。

特別縁故者への財産分与、手続きの流れ

特別縁故者として財産を受け取るための手続きは、ご自身で簡単に行えるものではなく、時間も費用もかかります。専門的な手続きが必要になることを知っておきましょう。

相続財産清算人の選任申立て

まず最初に行うのが、家庭裁判所に対して「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」を選任してもらうための申立てです。相続財産清算人は、弁護士などの専門家が選ばれることが多く、亡くなった方の財産を管理・調査し、清算手続きを進める役割を担います。この申立てには、収入印紙800円や郵便切手代のほかに、手続き費用として数十万円程度の予納金が必要になる場合があります。

相続人の捜索と債権者への支払い

相続財産清算人が選任されると、本当に法定相続人がいないかを確認するため、官報という国の新聞のようなものに6ヶ月以上の期間、公告が出されます。この期間に相続人が現れなければ、次に亡くなった方にお金を貸していた人(債権者)や、遺言で財産を受け取る予定だった人(受遺者)を探し、支払い手続きを進めます。

特別縁故者への財産分与の申立て

すべての清算手続きが終わり、それでも財産が残った場合、ようやく特別縁故者への財産分与の手続きに進むことができます。相続人がいないことが確定してから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ「相続財産分与の申立て」を行わなければなりません。この期限は非常に短いので注意が必要です。申立て後、家庭裁判所が亡くなった方との関係性を審理し、特別縁故者として認めるか、また、いくら財産を分与するかを決定します。

遺贈や財産分与で受け取った財産と税金

遺贈や特別縁故者への財産分与によって財産を受け取った場合、「相続税」の対象となる可能性があります。通常の相続とは異なる点がいくつかあるので、しっかり確認しておきましょう。

相続税の基礎控除額は3,000万円

相続税には「これまでは税金がかからない」という非課税の枠(基礎控除)があります。通常は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算しますが、遺贈や特別縁故者のケースでは法定相続人がいないため、基礎控除額は3,000万円となります。受け取った財産の価値が3,000万円を超えなければ、相続税の申告も納税も必要ありません。

相続税の2割加算に注意!

もし相続税がかかる場合、注意したいのが「相続税の2割加算」というルールです。亡くなった方の配偶者や親子、両親(一親等の血族)以外の人が財産を受け取ると、計算された相続税額が2割増しになります。遺贈を受けた友人や、特別縁故者として財産を受け取った方は、この2割加算の対象となります。

使えない控除や特例

通常の相続で利用できる税負担を軽減する制度、例えば「配偶者の税額軽減」や、自宅の土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」などは、法定相続人ではない特別縁故者や受遺者は利用することができません。そのため、税金の負担が大きくなる可能性があることを覚えておきましょう。

相続税の申告期限が異なります

相続税の申告と納税には期限があります。通常の相続では「亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」ですが、特別縁故者の場合は「家庭裁判所から財産分与の決定があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と、起算日が異なりますので間違えないようにしましょう。

お世話になった人に確実に財産を遺すには?

これまで見てきたように、特別縁故者の制度は手続きが複雑で時間もかかり、必ずしも財産を受け取れるとは限りません。お世話になった人に確実に財産を遺したいと考えるなら、生前の対策が何よりも大切です。

最も確実な方法は「遺言書(遺贈)」です

ご自身の意思を確実に、そして相手に負担をかけずに実現する最善の方法は、生前に「遺言書」を作成しておくことです。遺言書で「誰に」「どの財産を」遺贈するのかを明確に記しておけば、亡くなった後に家庭裁判所での複雑な手続きを経ることなく、スムーズに財産を渡すことができます。特に、専門家が関与して作成する公正証書遺言は、法的な不備の心配がなく、最も確実な方法と言えるでしょう。

養子縁組や生前贈与という選択肢も

もし相手が内縁の配偶者など、家族同然の間柄であれば、「養子縁組」をして法律上の親子になるという方法もあります。養子になれば法定相続人として財産を相続する権利が生まれます。また、元気なうちに財産を贈与する「生前贈与」も一つの方法ですが、贈与税がかかる場合があるので、計画的に行うことが大切です。

まとめ

法定相続人がいらっしゃらない方でも、大切な人に財産を遺す方法はあります。ご自身の意思を反映させる「遺贈」と、特別な関係を認めてもらう「特別縁故者への財産分与」です。しかし、特別縁故者の制度は最終手段ともいえるもので、時間も費用もかかり、不確実な面も否定できません。ご自身の想いを確実に、そして大切な人の負担を軽くするためにも、ぜひ元気なうちに遺言書の作成を検討してみてくださいね。どの方法がご自身にとって最適か、一度専門家に相談してみるのも良いでしょう。

参考文献

遺贈・特別縁故者のよくある質問まとめ

Q. 遺贈と相続の違いは何ですか?

A. 相続は法律で定められた相続人(法定相続人)が財産を受け継ぐことですが、遺贈は遺言によって法定相続人以外の人や団体にも財産を渡すことができる制度です。

Q. 特別縁故者とは、どのような人がなれるのですか?

A. 相続人がいない場合に、故人と生計を同じくしていた人、療養看護に努めた人など、故人と特別な縁があったと家庭裁判所に認められた人のことです。

Q. 内縁の妻や夫は、特別縁故者として財産を受け取れますか?

A. はい、長年連れ添い生計を共にしていたなどの事実があれば、特別縁故者として認められ、財産分与を受けられる可能性が高いです。

Q. 特別縁故者になるには、どのような手続きが必要ですか?

A. 相続人がいないことが確定してから3ヶ月以内に、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に「相続財産分与の申立て」を行う必要があります。

Q. 遺贈や特別縁故者への財産分与には税金がかかりますか?

A. はい、どちらの場合も相続税の課税対象となります。特に法定相続人以外が財産を受け取る場合、相続税額が2割加算される点に注意が必要です。

Q. ペットに財産を遺贈することはできますか?

A. ペット自身に直接財産を遺贈することはできません。信頼できる人や団体に、ペットの世話をすることを条件に財産を渡す「負担付遺贈」という方法があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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