大切な方が亡くなった後、遺された遺産はいつから使えるのか、気になりますよね。すぐに使えると思っていると、手続きが終わるまで使えないことも。この記事では、遺産を自由に使えるようになるまでの流れと、それぞれのステップにかかる期間を分かりやすく解説します。相続で慌てないために、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
遺産が自由に使えるようになるのはいつ?
結論から言うと、遺産が自由に使えるようになるのは「遺産分割協議が完了し、名義変更などの手続きが終わった後」です。相続人全員で誰がどの財産を受け取るか話し合い(遺産分割協議)、その内容に基づいて預金口座や不動産の名義を故人から自分に変更して初めて、自由に使えるようになります。それまでは故人の財産のままなので、勝手に引き出したり使ったりすることはできません。
なぜすぐ使えないの?故人の口座は凍結される
金融機関は、口座名義人が亡くなったことを知ると、その口座を凍結します。これは、一部の相続人が勝手にお金を引き出してしまい、後で相続トラブルになるのを防ぐための大切な措置なんです。口座が凍結されると、預金の引き出しはもちろん、公共料金の引き落としなども含め、一切の入出金ができなくなります。
勝手に使うとどうなる?相続放棄できなくなるリスク
故人に借金がある場合、相続放棄を検討することがあります。しかし、遺産分割協議が終わる前に故人の預金を使ってしまうと、「相続する意思がある(単純承認)」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性が非常に高いです。プラスの財産だけでなく、借金も一緒に引き継ぐことになってしまうので、絶対にやめましょう。
例外的に引き出せる「預貯金の仮払い制度」
とはいえ、葬儀費用や当面の生活費の支払いなど、どうしてもお金が必要な場合がありますよね。そのために2019年から「預貯金の仮払い制度」が始まりました。この制度を使えば、遺産分割協議が終わる前でも、一定額までなら金融機関の窓口で預金を引き出すことができます。
| 制度の種類 | 引き出せる金額の上限 |
| 金融機関での払戻し | 「相続開始時の預金残高 × 1/3 × あなたの法定相続分」まで。ただし、一つの金融機関からの払戻しは150万円が上限です。 |
| 家庭裁判所での手続 | 金融機関での払戻しでは足りない場合など、家庭裁判所に申し立てることで、その判断により必要な金額の仮払いが認められることがあります。 |
遺産を使えるようになるまでの5ステップと期間
実際に遺産を使えるようになるまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。すべての手続きがスムーズに進んでも最低3ヶ月程度はかかると考えておきましょう。もし相続人間で意見が対立してしまうと、数年単位の時間がかかることもあります。全体の流れを把握して、計画的に進めていきましょう。
ステップ1:遺言書の確認
まずは故人が遺言書を遺していないか探しましょう。もし自筆で書かれた遺言書(自筆証書遺言)が見つかった場合、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。これは遺言書の偽造などを防ぐための手続きで、申し立てから完了まで1ヶ月ほどかかることがあります。なお、公証役場で作成した公正証書遺言や、法務局で保管されていた遺言書は検認の必要はありません。
ステップ2:相続人の調査・確定
誰が法的な相続人になるのかをはっきりさせるため、故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本をすべて集めます。本籍地が何度も変わっていると、各市区町村役場に請求する必要があり、1ヶ月以上かかることも。この調査で、これまで知らなかった相続人が見つかるケースもあるため、非常に重要なステップです。
ステップ3:相続財産の調査
預貯金、不動産、株式といったプラスの財産だけでなく、借金やローン、未払いの税金といったマイナスの財産もすべてリストアップします。故人の通帳や郵便物、不動産の権利証などを手がかりに、漏れなく調査しましょう。この調査も、財産の多さによっては1ヶ月以上かかることがあります。
ステップ4:遺産分割協議
相続人全員で、誰がどの財産をどれだけ相続するのかを話し合います。全員の意見がまとまったら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、全員が実印を押印します。話し合いがスムーズに進めば1日で終わることもありますが、意見がまとまらない場合は家庭裁判所での調停や審判に移行し、解決まで数年かかることもあります。
ステップ5:名義変更・財産の受け取り
遺産分割協議書や戸籍謄本など必要な書類を揃えて、各財産の名義変更手続きを行います。この手続きが完了して、ようやく遺産を自由に使えるようになります。
| 財産の種類 | 手続きにかかる期間の目安 |
| 預貯金(口座解約・払戻し) | 金融機関に書類を提出してから約1~2週間 |
| 株式など有価証券(移管) | 証券会社に書類を提出してから約1ヶ月 |
| 不動産(相続登記) | 法務局に申請してから約10日~2週間 |
期限に注意!相続に関する手続き
相続手続きの中には、法律で期限が厳しく定められているものがあります。期限を過ぎると不利益を被ることがあるので、しっかり確認しておきましょう。
相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)
故人に借金が多い場合など、相続そのものをしたくない場合は、家庭裁判所に「相続放棄」の申立てをします。この期限は、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内です。この期間を過ぎてしまうと、原則として借金もすべて相続することになりますので、特に注意が必要です。
準確定申告(4ヶ月以内)
故人が生前に事業をしていたり、不動産収入があったりした場合、亡くなった年の所得税の確定申告(準確定申告)を相続人が代わりに行う必要があります。期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内です。
相続税申告・納税(10ヶ月以内)
相続した財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告と納税が必要です。この期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。遺産分割協議がこの日までに終わらない場合でも、一度法定相続分で仮の申告を行い、後から修正する必要があります。
まとめ
遺産を自由に使えるようになるまでには、多くの手続きと時間が必要です。基本的には、相続人全員での遺産分割協議が終わり、各財産の名義変更が完了してから使えるようになると覚えておきましょう。焦って故人の財産に手をつけてしまうと、相続放棄ができなくなるなどの大きなリスクが伴います。相続手続きには期限が設けられているものも多いので、専門家への相談も視野に入れながら、計画的に進めていくことが大切です。
参考文献
遺産相続の時期に関するよくある質問まとめ
Q.亡くなった人の預金は、いつから引き出せるようになりますか?
A.金融機関が死亡の事実を知ると口座は凍結されます。遺産分割協議が完了し、必要書類(遺産分割協議書、戸籍謄本など)を金融機関に提出して、名義変更や解約手続きが完了した後、引き出せるようになります。
Q.遺産分割協議は、いつまでに行う必要がありますか?
A.遺産分割協議自体には法律上の期限はありません。しかし、相続税の申告・納付は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があるため、それまでに協議を終えるのが一般的です。
Q.不動産(家や土地)の相続手続きは、いつから始められますか?
A.相続の開始後(被相続人の死亡後)であれば、いつでも手続きを開始できます。遺産分割協議で誰が不動産を相続するかを決めた後、法務局で所有権移転登記(相続登記)を行います。相続登記は現在義務化されています。
Q.遺言書が見つかった場合、遺産はすぐに使えますか?
A.遺言書の種類によります。自筆証書遺言の場合は、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。公正証書遺言の場合は検認は不要です。遺言の内容に従って名義変更などの手続きが完了すれば、遺産を使えるようになります。
Q.相続手続きがすべて終わるまで、どれくらいの期間がかかりますか?
A.遺産の内容や相続人の数によって大きく異なりますが、一般的には数ヶ月から1年以上かかることが多いです。特に、相続人間で話し合いがまとまらない場合は、さらに長期間を要することがあります。
Q.相続税の申告と納付はいつまでに行えばよいですか?
A.相続税の申告と納付は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、延滞税などのペナルティが発生する可能性があります。