大切なご家族が亡くなられた後、悲しみに暮れる間もなく、さまざまな手続きに追われることになりますよね。その中でも、公的年金の手続きは期限が短かったり、種類が多くて複雑だったりと、特に戸惑う方が多いのではないでしょうか。手続きを忘れてしまうと、もらえるはずのお金が受け取れなくなったり、逆に不正受給とみなされて返金を求められたりするケースもあります。この記事では、死亡後に行うべき公的年金の手続きを、大きく3つのステップに分けて、誰にでも分かるように優しく解説していきます。
年金の受給を止める手続き(年金受給権者死亡届)
まず最初に行うべき、最も重要な手続きが「年金受給権者死亡届」の提出です。これは、亡くなった方が受け取っていた年金の支給を停止するためのものです。この届出をしないと、亡くなった後も年金が振り込まれ続けてしまい、後から返還を求められることになります。意図的でなくても「不正受給」の状態になってしまうため、最優先で手続きを行いましょう。
手続きの期限はとても短いので注意が必要です
この手続きは、提出期限が非常に短いのが特徴です。年金の種類によって期限が異なりますので、しっかり確認してくださいね。
| 年金の種類 | 提出期限 |
| 国民年金 | 死亡日から14日以内 |
| 厚生年金・共済年金 | 死亡日から10日以内 |
葬儀などで心身ともにお忙しい時期ですが、忘れないように速やかに手続きを進めることが大切です。
提出が不要になるケースもあります
ただし、例外として届出が不要になる場合があります。それは、日本年金機構にマイナンバーが登録されている場合です。マイナンバーが登録されていれば、市区町村役場への死亡届の情報が連携されるため、原則として年金受給権者死亡届の提出は省略できます。ご自身のマイナンバー登録状況は、ねんきんネットや年金事務所で確認できますよ。
どこに、何を提出すればいいの?
手続きは、お近くの年金事務所または街角の年金相談センターで行います。提出する際には、主に以下の書類が必要になります。
- 年金受給権者死亡届(報告書)
- 亡くなった方の年金証書
- 死亡の事実を明らかにできる書類(戸籍抄本、死亡診断書のコピーなど)
事前に準備しておくと、手続きがスムーズに進みます。
もらい忘れた年金を受け取る(未支給年金請求)
公的年金は、偶数月の15日に前月と前々月の2ヶ月分が振り込まれる「後払い」の仕組みです。そのため、亡くなったタイミングにかかわらず、まだ受け取っていない年金、いわゆる「未支給年金」が必ず発生します。例えば、4月15日に振り込まれるのは2月・3月分です。もし3月中に亡くなった場合でも、3月分の年金を受け取る権利はあります。この未支給年金は、ご遺族が請求することできちんと受け取ることができますので、忘れずに手続きをしましょう。
誰が受け取れるの?
未支給年金を受け取れるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族に限られ、受け取れる順番(優先順位)も決められています。自分は対象になるか、下の表で確認してみてくださいね。
| 優先順位 | 対象となる遺族 |
| 1位 | 配偶者 |
| 2位 | 子 |
| 3位 | 父母 |
| 4位 | 孫 |
| 5位 | 祖父母 |
| 6位 | 兄弟姉妹 |
| 7位 | 上記以外の3親等内の親族 |
例えば、優先順位が高い配偶者がいる場合は、子が請求することはできません。
手続きの期限と必要書類
未支給年金の請求期限は、死亡日の翌々月の初日から5年以内とされています。期間は長めですが、通常は先ほどの「年金受給権者死亡届」と一緒に手続きを済ませるのが一般的です。手続きには、主に以下の書類が必要となります。
- 未支給年金・保険給付請求書
- 亡くなった方の年金証書
- 亡くなった方と請求者の続柄が確認できる書類(戸籍謄本など)
- 亡くなった方と請求者が生計を同じくしていたことがわかる書類(住民票の除票、請求者の世帯全員の住民票など)
- 受け取りを希望する金融機関の通帳
残された家族のための遺族年金
一家の働き手を亡くされたご家族の生活を支えるために、「遺族年金」という制度があります。これは、亡くなった方の年金の加入状況や、残されたご家族の年齢や構成によって、いくつかの種類に分かれます。ご自身がどの年金を受け取れる可能性があるのか、確認してみましょう。
遺族基礎年金
亡くなった方が国民年金の被保険者であった場合などに、その方によって生計を維持されていた「18歳年度末までの子がいる配偶者」または「子」が受け取ることができます。年金額は定額で、令和6年度の場合、基本額は816,000円です。さらに、子の人数に応じて加算があります。
遺族厚生年金
亡くなった方が厚生年金の被保険者であった場合に、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取ることができます。遺族基礎年金よりも対象となる遺族の範囲が広く、子のいない配偶者や父母なども一定の要件を満たせば対象となります。受け取れる年金額は、亡くなった方の生前の給与(標準報酬月額)や厚生年金の加入期間によって計算されます。
寡婦年金と死亡一時金
遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れない場合に、選択肢となるのがこの2つです。
寡婦年金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を10年以上納めた夫が亡くなった場合に、10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた妻が、60歳から65歳になるまでの間受け取れる年金です。
死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者として保険料を36月(3年)以上納めた方が、老齢基礎年金や障害基礎年金を受け取らずに亡くなった場合に、生計を同じくしていた遺族に支給される一時金です。支給額は保険料を納めた月数に応じて120,000円から320,000円となります。寡婦年金と死亡一時金の両方の受給要件を満たす場合は、どちらか一方を選択することになります。
年金手続きの必要書類一覧
ここまでご紹介した手続きで必要となる主な書類を一覧にまとめました。手続きを始める前に、一度チェックリストとしてご活用ください。もちろん、状況によって追加の書類が必要になる場合もありますので、詳しくは年金事務所にご確認くださいね。
| 手続きの種類 | 主な必要書類 |
| 年金受給停止 | 年金受給権者死亡届、亡くなった方の年金証書、死亡の事実がわかる書類(戸籍抄本、死亡診断書のコピー等) |
| 未支給年金請求 | 未支給年金請求書、亡くなった方の年金証書、続柄がわかる戸籍謄本、生計同一を証明する書類(住民票等)、受取金融機関の通帳 |
| 遺族年金請求 | 年金請求書、亡くなった方の年金手帳または基礎年金番号通知書、戸籍謄本、世帯全員の住民票、請求者の収入が確認できる書類、死亡診断書のコピー等 |
知っておきたい年金と税金の話
受け取った年金が税金の対象になるのかどうかも、気になるポイントですよね。種類によって扱いが異なりますので、簡単に解説します。
未支給年金は「一時所得」
亡くなった方の代わりに受け取った未支給年金は、相続財産ではなく、受け取った遺族の「一時所得」として所得税の課税対象になります。ただし、一時所得には年間50万円の特別控除があるため、他に一時所得がなければ、未支給年金の額が50万円以下の場合、実質的に税金はかかりません。
遺族年金は「非課税」
遺族基礎年金や遺族厚生年金は、残されたご遺族の生活保障という大切な目的があるため、所得税も相続税も課税されない「非課税」となっています。確定申告の必要もありませんので、安心してくださいね。
準確定申告が必要な場合も
亡くなった方が生前に受け取っていた年金は、ご本人の「雑所得」です。そのため、年間の公的年金等の収入が400万円を超えていた場合や、年金以外の所得が20万円を超えていた場合などは、死亡後4ヶ月以内に相続人が代わりに確定申告を行う「準確定申告」が必要になります。医療費控除などで税金の還付を受けたい場合も、この準確定申告を行います。
まとめ
ご家族が亡くなられた後の公的年金の手続きは、精神的にも時間的にも大変なことが多いかと思います。しかし、大切な手続きを漏らしてしまうと、ご遺族が不利益を被ってしまう可能性もあります。最後に、今日お話しした3つの重要なステップをもう一度確認しましょう。
- 【止める】年金受給権者死亡届を提出する(期限厳守!)
- 【もらう】未支給年金を請求する
- 【支える】ご自身が対象となる遺族年金を請求する
手続きで分からないことがあれば、一人で抱え込まずに年金事務所や専門家に相談することも考えてみてください。この記事が、少しでも皆さまのお役に立てれば幸いです。
参考文献
国税庁「No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)」
死亡後の年金手続きに関するよくある質問まとめ
Q.誰かが亡くなったら、年金の手続きは必ず必要ですか?
A.はい、必要です。年金を受給していた方が亡くなった場合、「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出が必要です。提出が遅れると年金が過払いとなり、返還を求められることがあります。
Q.遺族が受け取れる年金にはどんな種類がありますか?
A.主に「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」があります。亡くなった方の年金加入状況や、遺族の年齢、子の有無などによって、受け取れる年金の種類や金額が異なります。
Q.亡くなった人がまだ受け取っていない年金はどうなりますか?
A.「未支給年金」として、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族が請求できます。請求できる遺族には順位があり、配偶者、子、父母、孫、祖父母の順となります。
Q.年金の手続きはどこで行えばよいですか?
A.亡くなった方が受給していた年金の種類によって窓口が異なります。主に、お近くの年金事務所または街角の年金相談センター、国民年金のみの場合は市区町村役場となります。
Q.年金の手続きに期限はありますか?
A.はい、あります。「年金受給権者死亡届」は厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です。未支給年金や遺族年金の請求権は5年で時効となりますが、速やかな手続きをおすすめします。
Q.遺族年金が受け取れない場合でも、もらえるお金はありますか?
A.国民年金の第1号被保険者として保険料を一定期間納めた方が亡くなった場合など、要件を満たせば「寡婦年金」や「死亡一時金」を受け取れることがあります。