親や祖父母から株式などの有価証券をプレゼントしてもらう「贈与」。とてもありがたいことですが、その有価証券を売却してお金に換えたいと考えたとき、「税金ってどうなるの?」と不安になりますよね。実は、贈与された有価証券を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税」という税金がかかります。この記事では、その計算方法や注意点について、特に大切なポイントを中心に分かりやすく解説していきますね。
譲渡所得税の基本をおさえよう
まずは、有価証券を売却したときにかかる税金の基本について、一緒に確認していきましょう。少し難しい言葉も出てきますが、かみ砕いて説明しますので安心してくださいね。
有価証券を売った利益は「譲渡所得」
株式などの有価証券を売却して得た利益は、税法上「譲渡所得」という種類に分類されます。これは、お給料でもらう「給与所得」などとは分けて計算されるのが特徴です。これを「申告分離課税」と呼び、他の所得とは合算せずに、譲渡所得だけで税額を計算する仕組みになっています。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得の金額は、シンプルな計算式で求められます。基本の式は以下の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用)
それぞれの言葉の意味は次のようになります。
| 売却価格(譲渡価額) | 有価証券を売って、実際に手にした金額のことです。 |
| 取得費 | その有価証券を手に入れるためにかかった費用のことです。贈与の場合は、この「取得費」が最大のポイントになります。(詳しくは後ほど解説しますね) |
| 譲渡費用 | 売却するために証券会社などに支払った手数料などのことです。 |
つまり、単純な売却額そのものではなく、そこから元手(取得費)と経費(譲渡費用)を差し引いた「純粋な利益」に対して税金がかかる、と覚えておきましょう。
譲渡所得税の税率
譲渡所得にかかる税率は、所得の金額にかかわらず一定です。所得税、復興特別所得税、住民税を合わせて、合計で20.315%となります。
| 所得税 | 15% |
| 復興特別所得税 | 0.315% |
| 住民税 | 5% |
| 合計 | 20.315% |
贈与された有価証券の「取得費」が最重要ポイント
さて、ここからが本題です。贈与された有価証券を売却する場合、計算式の中でも特に「取得費」をどう考えるかが一番重要で、少し複雑な部分です。ここを間違えると、税額が大きく変わってしまう可能性があるので、しっかり理解しておきましょう。
取得費は「贈与者(あげた人)」の購入価格を引き継ぐ
通常、自分で購入した株を売る場合、取得費は「自分が買ったときの価格」になります。しかし、贈与で受け取った場合は違います。贈与してくれた人(贈与者)が、その有価証券を最初に購入したときの価格や手数料を、そのまま引き継ぐことになります。
例えば、お父さんから100万円で買った株を贈与された場合、あなたがその株を売るときの取得費は100万円になる、ということです。あなたがタダでもらったからといって、取得費が0円になるわけではないので注意してくださいね。
贈与者の取得費がわからない場合
「昔に買った株らしくて、いくらで買ったか分からない…」というケースも少なくありません。贈与者が購入したときの取引報告書などがなく、取得費がどうしても不明な場合はどうすればよいのでしょうか。
その場合は、「概算取得費」というルールを使うことができます。これは、「売却価格の5%」を取得費とみなす方法です。
例えば、300万円で売却した場合、その5%である15万円を取得費として計算します。これは便利な救済措置ですが、実際の取得費よりもかなり低くなることが多く、結果的に譲渡所得が大きくなり、税金が高くなってしまう可能性が高いというデメリットも覚えておきましょう。
取得費を確認する方法
税金を正しく計算するためにも、まずは贈与者に取得費を確認することが第一です。もし贈与者も覚えていない場合は、購入した証券会社の取引報告書や取引履歴を探してもらうようお願いしてみましょう。少し手間はかかりますが、余分な税金を払わないためにも、できる限り実際の取得費を調べることが大切です。
具体的な計算例でシミュレーション
それでは、具体的な数字を使って、どれくらい税金がかかるのかをシミュレーションしてみましょう。ここでは、譲渡費用(売却手数料)として5万円かかったと仮定します。
ケース1:贈与者の取得費がわかっている場合
お父さんが50万円で購入した株式を贈与され、あなたが300万円で売却したケースを考えてみましょう。
- 取得費: 50万円(お父さんの購入価格を引き継ぎ)
- 譲渡所得の計算:
300万円(売却価格) – (50万円(取得費) + 5万円(譲渡費用)) = 245万円 - 譲渡所得税の計算:
245万円 × 20.315% = 497,717円
この場合、納める税金は約49.8万円となります。
ケース2:贈与者の取得費がわからない場合
次に、同じく300万円で売却したものの、取得費がどうしても分からなかったケースです。この場合は「売却価格の5%」を概算取得費とします。
- 取得費(概算取得費): 300万円 × 5% = 15万円
- 譲渡所得の計算:
300万円(売却価格) – (15万円(取得費) + 5万円(譲渡費用)) = 280万円 - 譲渡所得税の計算:
280万円 × 20.315% = 568,820円
この場合、納める税金は約56.9万円となり、ケース1に比べて約7万円も高くなってしまうことが分かりますね。いかに実際の取得費を把握することが重要か、お分かりいただけたかと思います。
売却したら確定申告を忘れずに
贈与された有価証券を売却して利益が出た場合、原則として確定申告が必要です。会社員の方でも、年末調整とは別に自分で申告手続きを行う必要がありますので、忘れないようにしましょう。
確定申告が必要になるケース
基本的には、有価証券を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に確定申告が必要です。ただし、証券会社の「特定口座(源泉徴収あり)」で取引している場合は、証券会社が税金を計算して代わりに納めてくれるため、原則として確定申告は不要です。しかし、贈与された有価証券は多くの場合「一般口座」で管理されるため、自分で申告が必要になるケースがほとんどです。
確定申告の時期と方法
確定申告は、有価証券を売却した翌年の2月16日から3月15日までに行います。申告方法は、インターネットを通じて行える「e-Tax」が便利ですが、必要書類を揃えてお住まいの地域を管轄する税務署に直接提出したり、郵送したりすることも可能です。
知っておきたい注意点
最後に、贈与された有価証券を扱う上で、知っておくと役立つ注意点をいくつかご紹介します。
もらった時の「贈与税」との関係
この記事では「売却したとき」の譲渡所得税に焦点を当てていますが、そもそも有価証券を「もらったとき」に贈与税がかかる可能性があります。贈与税には年間110万円の基礎控除があり、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下であれば贈与税はかからず、申告も不要です。しかし、110万円を超える価値の有価証券をもらった場合は、贈与税の申告が必要になるので注意しましょう。
相続で取得した場合との違い
似たようなケースで、親などが亡くなって有価証券を「相続」する場合があります。相続の場合は、一定の要件を満たせば、支払った相続税の一部を取得費に上乗せできる「取得費加算の特例」という制度があります。しかし、生前の贈与で受け取った場合には、この特例は使えません。この点も、相続と贈与の大きな違いの一つです。
まとめ
今回は、贈与された有価証券を売却したときの譲渡所得税について解説しました。内容が少し難しかったかもしれませんが、大切なポイントは以下の通りです。
- 贈与された有価証券の売却益には譲渡所得税(税率20.315%)がかかります。
- 計算で最も重要なのは「取得費」で、贈与者(あげた人)の購入価格を引き継ぎます。
- 取得費が不明な場合は、売却価格の5%で計算できますが、税金が高くなる傾向があります。
- 利益が出たら、翌年に確定申告が必要です。
- そもそも有価証券をもらったときに贈与税がかかるケースもあるので、そちらも確認しておきましょう。
税金の計算は複雑に感じるかもしれませんが、基本のルールさえ押さえれば大丈夫です。もし不安な点があれば、税務署や税理士などの専門家に相談してみてくださいね。
参考文献
受贈した有価証券の売却に関する税金のよくある質問まとめ
Q.親などから贈与された有価証券(株式など)を売却した場合、税金はかかりますか?
A.はい、売却して利益(譲渡所得)が出た場合、譲渡所得税がかかります。贈与税とは別に、売却益に対して課税されます。
Q.贈与された有価証券の「取得費(取得価額)」はどうなりますか?
A.贈与した人(贈与者)がその有価証券を取得したときの価額と取得日を引き継ぎます。贈与された時点の時価ではないので注意が必要です。
Q.贈与者の取得費がわからない場合はどうすればいいですか?
A.取得費が不明な場合、売却代金の5%を概算取得費として計算します。ただし、実際の取得費が証明できる場合はその金額を使います。
Q.譲渡所得の計算方法を教えてください。
A.譲渡所得は「売却価格 – (取得費 + 売却手数料)」で計算します。この取得費には、贈与者が購入したときの価格を使います。
Q.支払った贈与税額は、売却時の取得費に加算できますか?
A.はい、一定の要件のもと、支払った贈与税額の一部を取得費に加算できる特例があります。これにより、譲渡所得税の負担を軽減できる場合があります。
Q.受贈した有価証券を売却した場合、確定申告は必要ですか?
A.はい、原則として確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収あり)で売却した場合でも、贈与者の取得費を基に再計算する必要があるため、確定申告を行うのが一般的です。