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NISA口座の相続手続き完全ガイド|非課税引き継ぎは可能?必要書類も解説

2026-03-12
目次

NISA(ニーサ)を利用して資産運用をされている方が増えていますが、もし口座名義人が亡くなった場合、その資産はどうなるのでしょうか。「非課税のメリットは引き継げるの?」「手続きが複雑そう…」といった不安や疑問を感じる方も少なくないと思います。NISA口座の相続は、一般的な預貯金の相続とは少し異なるルールがあるため、事前に知っておくことが大切です。この記事では、NISA口座の相続に関する基本ルールから、具体的な手続きの流れ、必要書類、そして注意点まで、わかりやすく丁寧にご説明しますね。

NISA口座を相続する際の基本ルール

まずはじめに、NISA口座を相続するにあたって、絶対に知っておきたい3つの基本的なルールから見ていきましょう。ここを理解するだけで、相続手続きの全体像がぐっと掴みやすくなりますよ。

NISA口座の金融商品は相続税の課税対象?

はい、NISA口座で運用している株式や投資信託などの金融商品も、預貯金や不動産と同じく「相続財産」として扱われます。そのため、他の相続財産と合算した金額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合には、相続税の課税対象となります。NISA口座だからといって相続税が非課税になるわけではない、という点を覚えておいてくださいね。

死亡日までの運用益(含み益)は非課税!

ここがNISAの大きなメリットです。被相続人(亡くなった方)が亡くなった日(相続開始日)までにNISA口座内で発生していた運用益(含み益)については、所得税や住民税はかかりません。例えば、100万円で購入した株式が、亡くなった日に150万円に値上がりしていた場合、その利益である50万円分には税金がかからないのです。これはNISAならではの嬉しいポイントですね。

NISA口座の非課税メリットは引き継げない

最も重要な注意点がこちらです。残念ながら、被相続人のNISA口座の非課税枠や、非課税の恩恵を相続人がそのまま引き継ぐことはできません。被相続人の死亡と同時に、その方のNISA口座の非課税期間は終了します。相続する資産は、NISA口座から相続人名義の「課税口座(特定口座または一般口座)」へ移し替える手続きが必要になります。

NISA口座の相続手続きの流れと必要書類

それでは、実際に相続が発生した際の手続きはどのように進めればよいのでしょうか。金融機関によって多少の違いはありますが、おおまかな流れは同じです。ステップごとに必要書類と合わせて確認していきましょう。

STEP1:金融機関への連絡

まず最初に行うことは、被相続人がNISA口座を開設していた証券会社や銀行などの金融機関へ、口座名義人が亡くなったことを連絡することです。連絡をすると、金融機関から今後の手続きの流れや、必要な書類について詳しい案内があります。この時に「非課税口座開設者死亡届出書」などの相続手続きに必要な書類一式を送付してもらいましょう。また、相続税の計算に必要となるため、亡くなった日時点の「残高証明書」の発行も依頼しておくとスムーズです。

STEP2:必要書類の準備と提出

金融機関からの案内に従って、必要書類を準備します。一般的に必要となる書類は以下の通りです。漏れがないように、しっかりと確認しながら準備を進めましょう。

書類の種類 主な書類名
金融機関から取り寄せる書類 ・非課税口座開設者死亡届出書
・相続手続依頼書(金融機関所定の様式)
・相続上場株式等移管依頼書
ご自身で用意する書類 ・被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
・相続人全員の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
・遺産分割協議書(作成した場合)
・遺言書(ある場合)

STEP3:相続人名義の課税口座へ資産を移管

提出した書類に不備がなければ、金融機関での手続きが進められます。遺産分割協議などで誰がNISA口座の資産を相続するかが決まったら、その相続人の課税口座(特定口座または一般口座)へ資産が移管(移し替え)されます。この移管手続きが完了すれば、NISA口座の相続手続きは終了です。手続きには通常、書類提出後2~3週間程度かかります。

相続したNISA資産の評価額と取得価額はどうなる?

NISA口座の資産を相続する際には、「相続税を計算するための評価額」と、「将来その資産を売却する際の税金計算のもとになる取得価額」の2つが重要になります。これは少し専門的な話になりますが、とても大切なポイントなので、一緒に確認していきましょう。

相続税評価額の計算方法

相続税を計算する際のNISA口座内の上場株式や投資信託の評価額は、以下の4つの価格のうち、最も低い金額を選ぶことができます。

1. 相続開始日(亡くなった日)の終値
2. 相続開始月の毎日の終値の月平均額
3. 相続開始月の前月の毎日の終値の月平均額
4. 相続開始月の前々月の毎日の終値の月平均額

相続人にとって一番有利な価格で申告できるため、相続税の負担を少しでも軽くできる可能性がある、優しい仕組みになっています。

相続後の取得価額と取得日

相続した資産を将来売却する際には、その売却益に対して所得税がかかります。その計算の元となるのが「取得価額」と「取得日」です。NISA口座の相続では、ここが通常の課税口座の相続とは異なります。

口座の種類 相続後の取得価額・取得日
NISA口座の相続 取得日は「被相続人の死亡日」、取得価額は「死亡日の時価(終値)」となります。
通常の課税口座の相続 被相続人が最初に購入した日と、その時の購入価額が引き継がれます。

つまり、NISA口座の資産は、相続人が死亡日の価格で新たに購入したものとして扱われる、とイメージすると分かりやすいかもしれません。この取得価額が高いか低いかで、将来売却したときの税額が変わってきます。

NISA口座相続時の4つの注意点

NISA口座の相続手続きを進める上で、特に気をつけておきたい注意点を4つにまとめました。後から「知らなかった!」と困ることのないように、しっかり確認しておきましょう。

注意点1:NISA口座のまま相続はできない

何度かお伝えしましたが、これは最も重要なポイントです。相続人がNISA口座を持っていたとしても、被相続人のNISA口座内の資産を自分のNISA口座に移すことはできません。相続する資産は、必ず課税対象となる「特定口座」または「一般口座」で受け取ることになります。

注意点2:相続手続き中の利益や配当金は課税対象

被相続人が亡くなった時点でNISAの非課税の効力は失われます。そのため、亡くなった後から相続手続きが完了して資産が移管されるまでの間に発生した運用益や配当金・分配金は、非課税にはならず、課税対象(所得税・住民税合わせて20.315%)となりますので注意が必要です。

注意点3:移管先は同じ金融機関の口座のみ

被相続人のNISA口座にあった資産を移管できるのは、被相続人と同じ金融機関に開設した相続人名義の口座のみです。もし相続人がその金融機関に口座を持っていない場合は、相続手続きと並行して、新たに口座を開設する必要があります。別の金融機関の口座には移せないので、この点も覚えておきましょう。

注意点4:移管先は「特定口座(源泉徴収あり)」がおすすめ

資産の移管先には「一般口座」と「特定口座」がありますが、特にこだわりがなければ「特定口座(源泉徴収あり)」を選択することをおすすめします。こちらを選んでおくと、将来資産を売却して利益が出た際に、金融機関が税金の計算から納税までを代行してくれるため、ご自身で確定申告をする手間が省けてとても便利です。

生前贈与とNISAを活用した相続税対策

ここまで相続が発生した後の手続きについてお話ししてきましたが、生前の対策も非常に重要です。NISAと生前贈与を組み合わせることで、効果的な相続税対策が可能になります。

暦年贈与の非課税枠を活用する

贈与税には、年間110万円までなら税金がかからない「暦年贈与」という非課税枠があります。この制度を利用して、親から子や孫へ毎年110万円以内の資金を贈与し、贈与を受けた子や孫がその資金を元手にNISAで資産運用を始めるという方法です。これにより、将来の相続財産を計画的に減らしながら、受け取った側は非課税のメリットを活かして効率的に資産を増やすことができます。

生前贈与の注意点:相続開始前贈与の加算

生前贈与を行う際には注意点もあります。2024年1月1日以降の贈与については、相続開始前7年以内に行われた贈与は、相続財産に持ち戻して相続税を計算するルールに変更されました(それ以前は3年以内)。つまり、亡くなる直前の駆け込み贈与では節税効果が薄れてしまう可能性があります。相続税対策として生前贈与を考えるなら、できるだけ早くから計画的に進めることが大切です。

まとめ

今回は、NISA口座の相続について、手続きや注意点などを詳しくご説明しました。最後に大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

・NISA口座の資産は相続税の課税対象です。
・ただし、被相続人の死亡日までの運用益は非課税となります。
・NISAの非課税枠を相続人が引き継ぐことはできず、資産は課税口座へ移管されます。
・手続きは、金融機関への連絡から始まり、必要書類を提出して資産を移管するという流れです。
・生前の対策として、暦年贈与とNISAを組み合わせることで、相続税対策と資産形成を同時に進めることができます。

NISA口座の相続は少し複雑に感じるかもしれませんが、一つひとつのルールや手順を理解しておけば、いざという時に慌てずに対処できます。ご家族がNISAを利用している場合は、これを機に一度、相続について話し合っておくのも良いかもしれませんね。

参考文献

国税庁 NISA及びつみたてNISAの手続に関するQ&A

国税庁 No.1464 譲渡した株式等の取得費

NISA口座の相続に関するよくある質問まとめ

Q.NISA口座は相続できますか?非課税のまま引き継げますか?

A.NISA口座の金融商品を相続することは可能ですが、非課税の恩恵は引き継げません。相続人は課税口座(特定口座または一般口座)に移管して受け取ることになります。

Q.亡くなった人のNISA口座はどうなりますか?

A.相続が発生した時点でNISA口座は廃止されます。口座内の金融商品は、死亡日の時価で相続人の課税口座に移管され、その後の値上がり益や配当金は課税対象となります。

Q.NISA口座の相続手続きはどのように進めればよいですか?

A.まず、故人がNISA口座を開設していた金融機関に連絡します。その後、金融機関の案内に従い、「相続手続依頼書」などの書類を提出して手続きを進めます。

Q.NISA口座の相続に必要な書類は何ですか?

A.一般的に、故人の戸籍謄本(出生から死亡まで)、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、遺産分割協議書などが必要です。詳細は金融機関にご確認ください。

Q.NISA口座の金融商品は相続税の対象になりますか?

A.はい、NISA口座内の金融商品も相続財産の一部とみなされ、相続税の課税対象となります。評価額は、被相続人が亡くなった日の時価で計算されます。

Q.旧NISAと新NISAで相続の扱いに違いはありますか?

A.旧NISAも新NISAも、相続における基本的な扱いは同じです。どちらの制度であっても、非課税メリットは一代限りで、相続時に非課税のまま引き継ぐことはできません。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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