税理士法人プライムパートナーズ

相続放棄しても生命保険金はもらえる?受取の条件と税金の注意点

2026-03-26
目次

ご家族が亡くなられ、借金などマイナスの財産が多いために「相続放棄」を考えているけれど、故人が遺してくれた生命保険金(死亡保険金)はどうなるのだろう…と不安に思っていませんか?
結論から言うと、相続放棄をしても生命保険金は受け取れる場合がほとんどです。ただし、契約内容によっては受け取れない例外があったり、受け取った保険金に思わぬ税金がかかったりすることもあります。この記事では、相続放棄と生命保険金の関係について、受け取れる条件から税金の注意点まで、わかりやすく解説していきます。

なぜ相続放棄をしても生命保険金は受け取れるの?

相続放棄とは、亡くなった方(被相続人)のプラスの財産(預貯金や不動産など)もマイナスの財産(借金など)も、すべて引き継がない手続きのことです。それなのに、なぜ生命保険金は受け取れるのでしょうか。その理由は、生命保険金が「相続財産」とは考えられていないからです。

生命保険金は「受取人固有の財産」

民法では、相続の対象となる財産は「亡くなった方の財産に属した一切の権利義務」とされています。しかし、生命保険金は、保険契約に基づいて、指定された受取人が保険会社から直接受け取るお金です。そのため、亡くなった方の財産ではなく、「受取人自身の固有の財産」とみなされるのです。
例えば、夫が自分を被保険者として生命保険に加入し、受取人を妻に指定していた場合、夫が亡くなったときに妻が受け取る死亡保険金は、妻自身の財産となります。亡くなった夫の財産ではないため、妻は夫の借金などを理由に相続放棄をしても、この保険金は問題なく受け取ることができます。

保険金を受け取った後でも相続放棄できる?

はい、原則として可能です。生命保険金が受取人固有の財産であるため、これを受け取る行為は「相続財産の処分」にはあたりません。相続財産を一部でも使ってしまうと「相続を承認した」とみなされ(単純承認)、相続放棄ができなくなってしまいますが、受取人として指定された保険金を受け取るだけなら、その後に家庭裁判所で相続放棄の手続きを進めることができます。

相続放棄で生命保険金が受け取れない例外的なケース

ほとんどの場合は受け取れますが、保険の契約内容によっては生命保険金が相続財産とみなされ、相続放棄をすると受け取れなくなってしまうケースもあります。保険証券などで契約内容をしっかり確認することが大切です。

保険金の受取人が「亡くなった本人(被相続人)」の場合

生命保険金の受取人が、亡くなったご本人に指定されているケースです。例えば、医療保険の入院給付金などがこれにあたります。この場合、保険金は一度亡くなった方の財産として扱われるため、相続財産となります。したがって、相続放棄をすると、この保険金を受け取ることはできません。

保険契約の「契約者」が亡くなった場合(解約返戻金)

亡くなった方が「契約者」であり、「被保険者」が別の人(例えば、妻が契約者で、被保険者が子)という契約の場合、亡くなったのは契約者である妻なので死亡保険金は支払われません。この場合、相続の対象となるのは、その保険契約を解約した場合に戻ってくる「解約返戻金」を受け取る権利です。この権利は契約者の財産、つまり相続財産に含まれるため、相続放棄をすると引き継ぐことはできません。

受け取れるケース 受取人として自分の名前が指定されている死亡保険金
受け取れないケース 受取人が亡くなった本人に指定されている保険金(入院給付金など)
契約者が亡くなった場合の解約返戻金

相続放棄して受け取った保険金にかかる税金

相続放棄をして無事に生命保険金を受け取れても、それで終わりではありません。受け取った保険金には税金がかかる可能性があります。「相続放棄したから関係ない」と思っていると、後から税務署の指摘を受ける可能性もあるので注意が必要です。

原則として「相続税」の対象になる

生命保険金は民法上では相続財産ではありませんが、税法上では「みなし相続財産」として扱われます。これは、「被相続人の死亡を原因として受け取る財産」であり、実質的に相続で得た財産と同じ経済的価値があるためです。したがって、保険料を亡くなった方が負担していた場合、受け取った保険金は原則として相続税の課税対象となります。

【重要】相続放棄すると生命保険金の非課税枠は使えない

相続税の計算において、生命保険金には「残された家族の生活保障」という大切な役割があるため、特別な非課税枠が設けられています。その金額は以下の計算式で求められます。

500万円 × 法定相続人の数 = 生命保険金の非課税限度額

しかし、この非課税枠を使えるのは「相続人」だけです。相続放棄をした人は、法律上「初めから相続人ではなかった」とみなされるため、この非課税枠を一切利用することができません。

例えば、法定相続人が妻・長男・次男の3人で、次男が相続放棄をしたケースで考えてみましょう。

非課税枠の計算 法定相続人の数は、相続放棄がなかったものとして3人で計算します。
→ 非課税限度額は「500万円 × 3人 = 1,500万円」となります。
非課税枠の適用 相続人である妻と長男は、受け取った保険金の合計1,500万円まで非課税になります。
一方、相続放棄をした次男は、受け取った保険金に対して非課税枠を全く使えません。

相続税の基礎控除は適用される

生命保険金の非課税枠は使えませんが、相続税全体の計算で適用される「基礎控除」は利用できます。基礎控除の額は以下の通りです。

3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

この計算式に出てくる「法定相続人の数」には、相続放棄した人も含めて計算します。受け取った生命保険金やその他の「みなし相続財産」の合計額がこの基礎控除額の範囲内であれば、結果的に相続税はかからず、申告も不要です。

契約内容によっては所得税・贈与税がかかることも

生命保険金にかかる税金は、必ずしも相続税だけとは限りません。「誰が保険料を負担し(契約者)、誰に保険がかけられ(被保険者)、誰が保険金を受け取ったか(受取人)」という関係性によって、かかる税金の種類が変わります。

所得税がかかるケース

保険料の負担者(契約者)と保険金の受取人が同じ人の場合、その保険金は「一時所得」として所得税の対象になります。自分で保険料を払い込み、それを受け取る形になるため、相続とは関係のない個人の所得とみなされるわけです。

贈与税がかかるケース

保険料の負担者(契約者)、被保険者、保険金の受取人がすべて別人の場合、その保険金は「贈与税」の対象となります。これは、保険料を負担した人から、保険金受取人へ生命保険という形を使って財産が贈与された、とみなされるためです。

税金の種類 契約関係(保険料負担者・被保険者・受取人)
相続税 保険料負担者:父、被保険者:父、受取人:子
所得税(一時所得) 保険料負担者:子、被保険者:父、受取人:子
贈与税 保険料負担者:母、被保険者:父、受取人:子

相続放棄をしても受け取れるその他の財産

生命保険金以外にも、相続放棄をしても受け取ることができる財産があります。これらも「受取人固有の財産」と考えられるものです。

死亡退職金

亡くなった方の勤務先の退職金規程などで、死亡退職金の受取人が「配偶者」や「子」など具体的に遺族として定められている場合、その死亡退職金は受取人固有の財産となり、相続放棄をしても受け取れます。ただし、明確な規程がなく、相続財産として扱われる場合は受け取れません。

遺族年金などの公的給付

遺族基礎年金や遺族厚生年金、健康保険から支給される埋葬料(費)などは、法律に基づいて遺族の生活を保障するために支給されるものです。これらは相続財産には全く含まれないため、相続放棄をしても問題なく受け取ることができます。

まとめ

相続放棄をした場合でも、自分が受取人に指定されている生命保険金は、原則として受け取ることができます。これは、保険金が相続財産ではなく「受取人固有の財産」だからです。ただし、契約内容によっては受け取れない例外があるため、保険証券の確認は必ず行いましょう。
また、受け取った保険金には税金がかかる点にも注意が必要です。特に、相続税の対象となる場合、相続放棄をすると生命保険金の非課税枠が使えなくなるという大きなデメリットがあります。ご自身のケースでどの税金がかかるのか、申告が必要かどうかを正しく判断することが大切です。もし少しでも不安な点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

国税庁 No.1750 死亡保険金を受け取ったとき

相続放棄と保険金の受け取りに関するよくある質問

Q.相続放棄をしても、死亡保険金は受け取れますか?

A.はい、受け取れます。死亡保険金は、保険契約に基づき受取人が受け取る「固有の財産」のため、相続財産には含まれません。そのため、相続放棄をしても保険金を受け取ることが可能です。

Q.死亡保険金を受け取ると、相続放棄ができなくなりますか?

A.いいえ、原則として相続放棄は可能です。死亡保険金は相続財産ではないため、これを受け取っても単純承認したことにはなりません。ただし、受取人が「被相続人(亡くなった方)」自身に指定されている場合は相続財産となり、受け取ると相続放棄ができなくなるため注意が必要です。

Q.相続放棄した場合、受け取った死亡保険金に税金はかかりますか?

A.はい、相続税の課税対象となります。相続放棄をしても、保険金は税法上「みなし相続財産」として扱われます。ただし、「500万円 × 法定相続人の数」という生命保険の非課税枠が適用される場合があります。

Q.保険金の受取人が「被相続人(亡くなった方)」の場合はどうなりますか?

A.その保険金は「相続財産」として扱われます。そのため、保険金を受け取ってしまうと財産を相続したとみなされ、相続放棄ができなくなる可能性が非常に高いです。この場合は、保険金を受け取らずに相続放棄の手続きを進める必要があります。

Q.相続放棄をすると、入院給付金なども受け取れませんか?

A.被相続人が生前に受け取るべきだった未請求の入院給付金などは相続財産に含まれます。これを相続人が受け取ると、相続放棄ができなくなる可能性があります。契約内容によって扱いが異なる場合があるため、保険会社や専門家にご確認ください。

Q.相続放棄と保険金の手続きで、一番注意すべき点は何ですか?

A.最も重要なのは「保険金の受取人が誰になっているか」を確認することです。受取人がご自身であれば問題ありませんが、被相続人本人になっている場合は相続財産となります。手続きを進める前に、必ず保険証券などで受取人を確認してください。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /
士業の先生向け専門家AI
士業AI【税務】
\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /