「養子縁組を解消したいけれど、手続きはどうすればいいの?」「相続権や税金はどうなるんだろう?」そんなお悩みはありませんか。養子縁組の解消は、正式には「離縁(りえん)」と呼ばれ、法的な親子関係をなくすための大切な手続きです。特に、再婚相手の連れ子と養子縁組をしたけれど、その後離婚してしまった場合などに検討されることが多いようです。この手続きを行うと、相続権や扶養の義務など、様々な関係が変化します。この記事では、養子縁組を解消した場合に何が変わるのか、具体的な手続きの流れ、そして気になる税金の注意点について、優しく丁寧に解説していきますね。
養子縁組の解消(離縁)とは?
養子縁組の解消(離縁)とは、養子縁組によって法的に作られた親子関係を、将来に向かってなくす手続きのことです。離縁が成立すると、養親と養子の間には法律上の親子関係がなくなります。例えば、結婚相手の連れ子と養子縁組をした後、離婚した場合、夫婦関係は解消されても、養子との親子関係は自動的にはなくなりません。そのため、親子関係を解消したい場合には、別途、離縁の手続きが必要になるんです。
離縁が認められるのは「普通養子縁組」だけ
養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、離縁ができるのは原則として「普通養子縁組」の場合だけです。この2つは目的や要件が大きく異なります。
| 普通養子縁組 | 家の存続や相続対策などを目的とし、実の親との親子関係も継続します。当事者の合意があれば、比較的自由に離縁ができます。 |
| 特別養子縁組 | 子どもの福祉を最優先に考え、実の親との法的な親子関係を完全に断ち切り、養親と実の子と同じ関係を築く制度です。そのため、養親による虐待など、よほどの事情がない限り、原則として離縁は認められません。 |
養子縁組を解消したらどうなる?5つの大きな変化
養子縁組を解消すると、養親と養子の関係にいくつかの法的な変化が生じます。具体的にどのようなことが変わるのか、一つずつ見ていきましょう。
相続権がなくなる
離縁が成立すると、お互いの相続権がなくなります。養子縁組をしている間、養子は実の子どもと同じように「法定相続人」となります。しかし、離縁をするとその権利が消滅するため、養親が亡くなっても養子が遺産を相続することはありません。反対に、養子が亡くなった場合に養親が相続することもなくなります。
扶養義務がなくなる
離縁によって、お互いを経済的に支え合う「扶養義務」もなくなります。民法では、親子や兄弟姉妹などの直系血族は、お互いに扶養する義務があると定められています。養子縁組中は、養親と養子の間にもこの扶養義務がありますが、離縁をすればその義務から解放されます。
養育費の支払い義務もなくなる
離婚に伴って連れ子との養子縁組を解消した場合、養親が養子に養育費を支払う義務もなくなります。養育費は、親が子に対して負う扶養義務に基づいています。離縁によって法的な親子関係と扶養義務がなくなるため、養育費の支払い義務も消滅するのです。
苗字(氏)や戸籍が変わる
離縁をすると、養子の苗字や戸籍にも変更があります。
- 苗字(氏):原則として、養子縁組をする前の苗字に戻ります(これを「復氏」といいます)。ただし、養子縁組の期間が7年を超えている場合、離縁後3か月以内に届け出をすれば、養子縁組中の苗字を使い続けることも可能です。
- 戸籍:養子は養親の戸籍から抜けて、原則として縁組前の戸籍に戻ります。元の戸籍がなくなっている場合は、新しい戸籍が作られます。
養子縁組を解消する4つの手続き方法
養子縁組を解消するには、法的な手続きが必要です。基本的には当事者同士の話し合いから始めますが、それが難しい場合は、家庭裁判所での手続きへと進んでいきます。いきなり裁判を起こすことはできず、段階を踏む必要があることを覚えておきましょう。
協議離縁|当事者の話し合いで解決
最も簡単な方法が、当事者間の話し合いで離縁に合意する「協議離縁」です。養親と養子(養子が15歳未満の場合は、その法定代理人である実親など)が離縁に合意したら、「養子離縁届」を作成し、成人の証人2名の署名をもらって市区町村役場に提出します。書類に不備がなければ、これで離縁が成立します。
調停離縁|家庭裁判所での話し合い
話し合いがまとまらない場合や、相手が話し合いに応じてくれない場合は、家庭裁判所に「離縁調停」を申し立てます。調停では、裁判官や調停委員という中立な立場の人が間に入って、双方の意見を聞きながら話し合いを進めてくれます。あくまで話し合いでの解決を目指す手続きです。
| 申立先 | 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所 |
| 費用 | 収入印紙1,200円分と、連絡用の郵便切手代(数千円程度) |
調停で合意に至ると「調停調書」が作成され、その謄本を役所に提出することで離縁が成立します。
審判離縁|家庭裁判所による判断
調停でほとんど合意できているのに、些細な点で対立している場合や、相手が急に来られなくなった場合など、家庭裁判所が「離縁させることが妥当だ」と判断したときに、審判によって離縁を成立させることがあります。これを「審判離縁」といいますが、実務上、この方法が取られることは稀です。
裁判離縁|訴訟で離縁を求める最終手段
調停でも話がまとまらなかった場合の最終手段が、訴訟を起こして裁判官に判断を委ねる「裁判離縁」です。ただし、裁判で離縁を認めてもらうには、法律で定められた理由(法定離縁事由)が必要です。
- 相手から悪意で遺棄されたとき(生活費を渡さない、同居を拒否するなど)
- 相手の生死が3年以上不明なとき
- その他、縁組を継続しがたい重大な事由があるとき
単に「離婚したから」「相続させたくないから」という理由だけでは、裁判で離縁が認められるのは難しいかもしれません。
養子縁組の解消で注意したいポイント
養子縁組の解消を進める際には、いくつか知っておくべき注意点があります。トラブルを避けるためにも、事前に確認しておきましょう。
一方的に離縁することはできない
相手の合意がないのに、勝手に「養子離縁届」を作成して提出することは絶対にやめてください。これは有印私文書偽造罪や公正証書原本不実記載等罪といった犯罪にあたる可能性があります。必ず、正式な手続きを踏んで離縁を進めるようにしましょう。
相手と連絡が取れない・拒否された場合の対処法
相手と連絡が取れず話し合いができない場合は、相手の本籍地で「戸籍の附票」を取得すると、現在の住所を調べることができます。住所がわかったら、まずは手紙などで連絡を取ってみましょう。それでも話し合いを拒否された場合は、前述したように家庭裁判所での「離縁調停」を申し立てることになります。
養親か養子が亡くなった後の「死後離縁」
養親か養子のどちらかが亡くなった後でも、残された側が家庭裁判所の許可を得て離縁することができます。これを「死後離縁」といいます。これにより、亡くなった相手の親族との関係を解消することができます。ただし、注意点として、死後離縁をしても、既に発生した相続の権利はなくなりません。あくまで、死後離縁が成立した時点から将来に向かってのみ、親族関係が解消されます。
【税務】養子縁組の解消が相続税や贈与税に与える影響
養子縁組中に贈与などを行っていた場合、離縁によって税金の扱いに影響が出ることがあります。特に注意したい3つのポイントを見ていきましょう。
暦年贈与を受けていた場合
年間110万円までの贈与が非課税になる「暦年贈与」ですが、亡くなる前3年~7年以内(2024年以降の贈与から段階的に延長)の贈与は相続財産に持ち戻して相続税を計算する「生前贈与加算」というルールがあります。離縁後、元養親が亡くなった場合、このルールが適用されるかどうかは、「元養子が遺産を受け取ったか」で決まります。遺言などで遺産を受け取った場合は持ち戻しの対象になりますが、何も受け取っていない場合は対象外となります。
相続時精算課税制度を利用していた場合
2,500万円までの贈与が非課税になる「相続時精算課税制度」は、一度選択すると撤回できません。そのため、養子縁組を解消しても、この制度の適用関係は続きます。つまり、元養親が亡くなったときには、この制度を使って贈与された財産を相続財産に加算して相続税を計算する必要があるのです。
離縁後は相続税の2割加算の対象になる
相続税には、配偶者と一親等の血族(子や父母)以外の方が財産を相続した場合、相続税額が2割増しになる「2割加算」というルールがあります。養子は一親等の血族として扱われるため、このルールの対象外です。しかし、離縁すると他人になるため、もし遺言などで元養親から財産を受け取った場合には、相続税が2割加算されてしまいます。
まとめ
養子縁組の解消(離縁)は、法的な親子関係をなくすための重要な手続きです。離縁をすると、相続権や扶養義務がなくなり、苗字や戸籍も変わります。手続きは、まずは当事者同士の「協議離縁」から始め、合意できない場合は家庭裁判所での「調停離縁」「裁判離縁」へと進んでいきます。また、養子縁組中に贈与を受けていた場合は、相続税や贈与税の扱いに影響が出る可能性もあるため注意が必要です。もし手続きでわからないことや、相手との話し合いが難航している場合は、弁護士などの専門家に相談することも検討してみてくださいね。
参考文献
国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
養子縁組の解消(離縁)に関するよくある質問まとめ
Q.養子縁組を解消(離縁)するには、どのような手続きが必要ですか?
A.当事者間の話し合いで合意できれば「協議離縁」として市区町村役場に離縁届を提出します。合意できない場合は、家庭裁判所に離縁調停や裁判を申し立てることになります。
Q.離縁すると戸籍や氏はどうなりますか?
A.離縁により、養子は養親の戸籍から除かれ、原則として縁組前の氏(旧姓)に戻り、元の戸籍に戻るか新しい戸籍が作られます。
Q.離縁したら、養親の財産を相続する権利はなくなりますか?
A.はい、離縁が成立すると法律上の親子関係が終了するため、お互いに相続権はなくなります。法定相続人ではなくなるため、遺産を受け取ることはできません。
Q.養親が亡くなった後でも離縁はできますか?
A.はい、可能です。養親の死亡後、養子が家庭裁判所の許可を得ることで離縁(死後離縁)ができます。これにより、養親側の親族との関係を終了させることができます。
Q.離縁にともない、慰謝料は請求できますか?
A.離縁の原因が、相手方による暴力や悪意の遺棄など、法律上の不法行為にあたる場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。
Q.離縁は相続税にどのような影響がありますか?
A.離縁によって相続権がなくなるため、将来発生するはずだった相続税の納税義務がなくなります。また、相続税の基礎控除額や生命保険金の非課税枠の計算で、法定相続人の数に影響が出ます。