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愛人やその子に相続権は?突然の相続トラブルに備える全知識

2026-04-27
目次

「夫が亡くなった後、突然愛人を名乗る女性や、知らない子どもが現れた…」そんなドラマのような話が、もし現実に起こったらどうしますか?大切な財産をめぐるトラブルは避けたいですよね。この記事では、愛人やその子どもに相続権があるのか、もしもの時にどう対処すれば良いのかを、法律のルールに基づいて優しく解説していきます。

愛人に相続権はあるの?原則と例外

まず結論からお伝えすると、原則として愛人には相続権がありません。法律上の夫婦関係、つまり婚姻届を提出している「配偶者」だけが、相続人として財産を受け取る権利を持っています。そのため、どんなに長く一緒に暮らしていても、内縁関係や愛人という立場では、法律上の相続人にはなれないんですね。

しかし、全く財産を受け取れないわけではありません。例外的なケースがいくつか存在しますので、詳しく見ていきましょう。

遺言書があれば愛人も財産を受け取れる

亡くなった方(被相続人)が「愛人に財産を遺す」という内容の遺言書を作成していた場合、その遺言は法的に有効です。遺言書の内容は、法律で定められた相続のルール(法定相続)よりも優先されるため、愛人も財産を受け取ることができます。これを「遺贈(いぞう)」と呼びます。例えば、「預貯金のうち500万円を愛人に遺贈する」といった内容が考えられます。

死因贈与契約という方法も

もう一つの方法として、死因贈与契約(しいんぞうよけいやく)があります。これは、「私が死んだら、この財産をあなたにあげます」という内容の契約を、生前のうちに愛人との間で結んでおくものです。遺言が一方的な意思表示であるのに対し、死因贈与契約は双方の合意に基づく「契約」である点が特徴です。この契約が有効であれば、愛人は契約内容に従って財産を受け取ることができます。

生命保険の受取人になっているケース

亡くなった方が加入していた生命保険の受取人が愛人に指定されている場合、その保険金は相続財産とは別に、愛人が直接受け取ることになります。ただし、近年では保険会社が受取人を配偶者や2親等以内の親族に限定することが多いため、このケースは少なくなってきています。

愛人の子(隠し子)の相続権は?

愛人本人に相続権はありませんが、愛人との間に生まれた子ども(非嫡出子)については話が別です。子どもの相続権には、ある重要なポイントが関係してきます。

「認知」されていれば相続権がある

亡くなった父親が、その子どもを「認知」していれば、法律上の親子関係が認められ、正式な相続人となります。認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子を、父親が「自分の子である」と法的に認める手続きのことです。認知されていれば、戸籍上の配偶者との間に生まれた子ども(嫡出子)と全く同じ立場で相続権を持つことになります。

認知の方法には種類がある

認知にはいくつかの方法があります。

認知の種類 内容
任意認知 父親が自分の意思で、役所に認知届を提出する方法です。生前に行われるのが一般的です。
遺言認知 遺言書の中で「あの子を私の子として認知する」と記載する方法です。亡くなった後に効力が発生します。
死後認知 父親が亡くなった後、子どもやその母親が家庭裁判所に訴えを起こして認知を求める方法です。父親の死亡後3年以内という期限があります。DNA鑑定などで親子関係が証明されれば、認知が認められます。

相続手続きの途中で戸籍を調べてみたら、知らない子どもが認知されていた、というケースも実際にあります。

愛人の子の相続分は?

認知された愛人の子の相続分は、配偶者との間に生まれた子と全く同じです。以前は非嫡出子の相続分は嫡出子の半分とされていましたが、法律が改正され、現在は平等に扱われます。

例えば、相続人が配偶者、配偶者との子1人、愛人の子1人の合計3人で、遺産が6,000万円だった場合の法定相続分は以下のようになります。

相続人 法定相続分
配偶者 3,000万円(1/2)
配偶者との子 1,500万円(1/4)
愛人の子 1,500万円(1/4)

愛人に財産が渡る!でも取り戻せる?

「夫の財産がすべて愛人に渡ってしまうなんて納得できない!」そう思われるのは当然です。たとえ遺言書があっても、法律上の相続人がすべての財産を諦める必要はありません。法律は、残された家族の生活を守るための権利を保障しています。

遺留分侵害額請求という最後の砦

配偶者や子ども(直系卑属)、親(直系尊属)には、「遺留分(いりゅうぶん)」という、最低限保障された遺産の取り分があります。遺言によってこの遺留分が侵害された場合、侵害された分のお金を、財産を多く受け取った愛人などに対して請求することができます。これを「遺留分侵害額請求」と呼びます。

遺留分の割合は、法定相続分の半分(親だけが相続人の場合は3分の1)が基本です。例えば、相続人が配偶者と子ども1人の場合、それぞれの遺留分は遺産全体の4分の1ずつになります。この請求は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与や遺贈があったことを知った時から1年以内に行う必要があります。

遺言の無効を主張する

もう一つの方法は、遺言そのものの無効を裁判所に訴えることです。無効が認められれば、遺言はなかったことになり、法律に基づいた相続が行われます。無効を主張できる主なケースは以下の通りです。

  • 形式の不備: 遺言書の日付がない、署名・押印がないなど、法律で定められた形式を守っていない場合。
  • 公序良俗違反: 愛人関係の維持を目的として財産を遺贈し、それが残された家族の生活を著しく脅かすような場合、公序良俗に反するとして無効と判断される可能性があります。ただし、単に愛人に財産を遺すというだけでは無効になりにくく、ハードルは高いのが実情です。

突然、愛人やその子が現れた時の対処法

相続手続きを進めている最中や終わった後に、突然愛人やその子どもが現れたら、冷静な対応が求められます。感情的にならず、まずは事実確認から始めましょう。

まずは戸籍で事実確認を

まずは、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取得し、他に子どもがいないかを確認します。もし認知された子どもがいれば、その子も交えて遺産分割協議を行わなければなりません。その子を無視して進めた遺産分割協議は無効になってしまいます。

話し合いが難しい場合は専門家へ

これまで会ったこともない愛人の子と、いきなり遺産分割の話をするのは精神的にも大きな負担です。話し合いがこじれてしまうと、家庭裁判所での調停や審판に発展し、解決までに長い時間がかかってしまいます。当事者同士での解決が難しいと感じたら、なるべく早い段階で弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家が間に入ることで、冷静かつ法的に適切な解決を目指すことができます。

愛人やその子に財産を渡さないための生前対策

将来の相続トラブルを避けるためには、生前の対策が非常に重要です。もしご自身に配偶者以外のパートナーやお子さんがいる場合は、残される家族のために準備をしておきましょう。

遺言書を作成しておく

誰に、どの財産を、どれだけ渡すのかを明確にするために、遺言書を作成しておくことが最も有効な対策です。ただし、遺留分を無視した内容の遺言書は、かえってトラブルの原因になります。全ての相続人の遺留分に配慮した内容にすることで、争いを未然に防ぐことができます。

生前贈与を活用する

生きているうちに財産を渡しておく生前贈与も一つの方法です。ただし、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかります。また、相続開始前3年以内(2024年1月1日以降の贈与は7年以内に段階的に延長)の贈与は相続財産に持ち戻されるルールがあるため、税金の専門家である税理士に相談しながら計画的に進めることが大切です。

まとめ

今回は、愛人やその子どもと相続の問題について解説しました。ポイントをまとめます。

  • 愛人本人に相続権はないが、遺言書や死因贈与契約があれば財産を受け取れる。
  • 愛人の子は、父親に認知されていれば正式な相続人となり、配偶者の子と同じ相続分を持つ。
  • 遺言で財産が愛人に渡っても、法定相続人は遺留分侵害額請求で一部を取り戻せる可能性がある。
  • 愛人やその子が現れたら、まずは戸籍を確認し、当事者での解決が難しければ速やかに専門家に相談することが重要。
  • 将来のトラブルを防ぐには、遺留分に配慮した遺言書の作成などの生前対策が不可欠。

相続は、法律や税金が複雑に絡み合うデリケートな問題です。特に、愛人や認知していない子どもが関わるケースは、感情的な対立も生まれやすくなります。もしもの時に慌てないためにも、正しい知識を身につけ、必要であれば専門家の力を借りるようにしましょう。

参考文献

遺留分侵害額の請求調停

愛人や愛人の子の相続に関するよくある質問まとめ

Q.愛人(内縁の妻)に相続権はありますか?

A.法律上の配偶者ではないため、原則として相続権はありません。ただし、遺言書によって財産を遺贈することは可能です。

Q.愛人との間に生まれた子に相続権はありますか?

A.父親がその子を認知していれば、法律上の子(非嫡出子)として相続権が発生します。認知されていない場合は相続権はありません。

Q.認知された愛人の子の相続分は、法律上の妻の子と同じですか?

A.はい、同じです。法改正により、結婚している夫婦の間に生まれた子(嫡出子)と、そうでない子(非嫡出子)の法定相続分は同等になりました。

Q.遺言書で愛人に全財産を遺すことはできますか?

A.可能ですが、配偶者や子など他の法定相続人には、最低限の取り分である「遺留分」があります。遺留分を侵害された相続人は、その分の金銭を請求することができます。

Q.亡くなった後に、愛人の子だと名乗る人が現れたらどうなりますか?

A.相手が家庭裁判所に「死後認知の訴え」を起こし、DNA鑑定などで親子関係が証明されると、その子にも相続権が認められます。遺産分割協議のやり直しが必要になる場合もあります。

Q.愛人への相続でトラブルを防ぐにはどうすればいいですか?

A.他の相続人の遺留分に配慮した内容の公正証書遺言を作成しておくことが最も有効な対策です。なぜその内容にしたのか想いを付言事項として残すことも、トラブル防止につながります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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