税理士法人プライムパートナーズ

代償分割とは?相続トラブルを防ぐ代償金の決め方と相続税を解説

2026-05-01
目次

ご家族が亡くなられて相続が発生したとき、遺産が不動産や自社株など、簡単には分けられないものばかりだと困ってしまいますよね。そんなときに役立つのが「代償分割(だいしょうぶんかつ)」という方法です。これは、特定の相続人が財産を多く受け取る代わりに、他の相続人へお金(代償金)を支払うことで、相続人間の公平を保つための遺産分割方法です。この記事では、代償分割の基本的な仕組みから、トラブルになりがちな代償金の決め方、そして気になる相続税の計算方法まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。相続を円満に進めるためのヒントとして、ぜひ最後までお読みください。

代償分割とは?他の遺産分割方法との違い

まずは、代償分割がどのようなものか、他の遺産分割方法と比較しながら見ていきましょう。遺産の分け方には、主に4つの方法があります。

代償分割は「代償金」で不公平をなくす方法

代償分割とは、特定の相続人が法定相続分を超える財産(例えば、実家の土地建物)を取得するかわりに、他の相続人に対して不足分を現金などで支払う方法です。これにより、財産そのものを分けることなく、相続人それぞれの取り分を公平にすることができます。

例えば、相続人が長男と次男の2人で、遺産が評価額5,000万円の自宅不動産と1,000万円の預貯金だったとします。法定相続分はそれぞれ3,000万円ずつです。長男が自宅を相続し、次男が預貯金を相続した場合、長男は2,000万円多く取得することになります。この不公平をなくすため、長男が自分の財産から次男へ2,000万円の代償金を支払うのが代償分割です。

他の遺産分割方法

代償分割以外の方法も知っておくことで、ご自身の状況に最も合った分割方法を選ぶことができます。それぞれの特徴を比べてみましょう。

分割方法 概要
現物分割(げんぶつぶんかつ) 遺産をそのままの形で「土地は長男に、預貯金は次男に」というように、個々の財産を各相続人に割り振る方法です。最もシンプルですが、財産の価値が異なると不公平になりやすいです。
換価分割(かんかぶんかつ) 不動産などの遺産を売却して現金に換え、その現金を相続人間で分ける方法です。公平に分けやすいですが、大切な財産を手放すことになります。
共有分割(きょうゆうぶんかつ) 一つの不動産などを、複数の相続人の共有名義にする方法です。一旦は公平に分けられますが、将来その不動産を売却したり活用したりする際に、共有者全員の同意が必要となり、トラブルの原因になりやすいという大きなデメリットがあります。

代償分割のメリット・デメリット

代償分割はとても便利な方法ですが、良い点と注意すべき点があります。両方を理解したうえで検討することが大切です。

メリット:財産を手放さず公平に分けられる

代償分割には、主に以下のようなメリットがあります。

  • 思い出の家や事業用の財産を残せる:換価分割のように不動産を売却する必要がないため、先祖代々の土地や、事業を引き継ぐために必要な工場などを手元に残すことができます。
  • 公平な遺産分割がしやすい:代償金を支払うことで、各相続人の取得額を法定相続分通りに調整しやすく、不公平感をなくすことができます。
  • 不動産の共有状態を避けられる:共有名義は将来のトラブルの火種になりがちです。代償分割で一人の名義にすることで、権利関係がシンプルになり、後の管理や処分がしやすくなります。
  • 相続税の負担を軽減できる可能性がある:例えば、被相続人と同居していた相続人が自宅を相続する場合、「小規模宅地等の特例」を適用できる可能性があります。この特例が使えれば、土地の評価額が最大80%も減額され、相続税を大幅に抑えることができます。換価分割ではこの特例は使えません。

デメリット:代償金を支払う資力が必要

一方で、代償分割には注意すべきデメリットもあります。

  • 代償金を支払うための資金力が必要:不動産などの価値の高い財産を相続する相続人には、他の相続人に支払うための十分な現金(預貯金)が必要です。代償金は数百万円、数千万円になることもあり、準備できない場合はこの方法を選べません。
  • 不動産の評価額でトラブルになりやすい:代償金の額は、不動産の評価額を基に計算します。代償金を支払う側は評価額を低くしたいと考え、受け取る側は高くしたいと考えるため、評価方法をめぐって意見が対立し、話がまとまらないことがあります。

代償金の決め方【トラブル回避のポイント】

代償分割で最も揉めやすいのが「代償金の決め方」です。ここでは、どのように金額を決めていけばよいのか、その基準とポイントを解説します。

不動産の評価額が基準になる

代償金の算定には、まず対象となる不動産などの財産をいくらと評価するのかを決める必要があります。評価方法は一つではないため、どの方法を使うか相続人全員で話し合って合意することが不可欠です。

評価方法 特徴
時価(実勢価格) 実際に市場で売買されるときの価格です。最も公平な評価とされ、遺産分割協議ではこの時価を基準にするのが一般的です。複数の不動産会社に査定を依頼して、その平均額を参考にすることが多いです。
相続税評価額(路線価) 相続税を計算するために国税庁が定めた価格で、時価の約8割が目安です。代償金を支払う側にとっては、この評価額を使うと支払額を抑えられます。
固定資産税評価額 固定資産税の基準となる価格で、時価の約7割が目安です。相続税評価額と同様に、時価よりも低くなる傾向があります。

どの評価方法を選ぶかで代償金の額が大きく変わるため、それぞれの立場から意見が対立しがちです。相続人全員が納得できる方法を、冷静に話し合って決めることが重要です。どうしても話がまとまらない場合は、不動産鑑定士に鑑定を依頼するという方法もあります。

法定相続分を目安に金額を計算する

不動産の評価額が決まったら、次はその評価額を基に、各相続人の法定相続分と実際の取得額との差額を計算します。この差額が、支払うべき代償金の目安となります。

例えば、相続財産が評価額6,000万円の不動産のみで、相続人が子供3人(法定相続分は各1/3で2,000万円)だったとします。長男がこの不動産をすべて相続する場合、次男と三男は何も受け取れません。そこで、長男は次男と三男にそれぞれの法定相続分である2,000万円ずつ、合計4,000万円の代償金を支払うことで公平を保ちます。

もちろん、相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる金額で代償分割を行うことも可能です。ただし、あまりにも法定相続分とかけ離れた金額を設定すると、後述する贈与税の問題が生じる可能性があるので注意が必要です。

代償分割にかかる税金【相続税・贈与税・所得税】

代償分割を行う際には、いくつかの税金が関係してきます。思わぬ税負担で後悔しないよう、事前にしっかり確認しておきましょう。

相続税の計算方法

代償分割を行った場合、相続税の計算では、支払った代償金と受け取った代償金をそれぞれ考慮します。基本的な計算方法は以下の通りです。

  • 代償金を支払った人:相続した財産の価額 - 支払った代償金の額
  • 代償金を受け取った人:相続した財産の価額 + 受け取った代償金の額

【計算例】
相続人が長男と次男の2人で、長男が相続税評価額4,000万円の土地を相続し、次男に代償金として2,000万円を支払った場合。

  • 長男の課税価格:4,000万円 - 2,000万円 = 2,000万円
  • 次男の課税価格:0円 + 2,000万円 = 2,000万円

ただし、代償金の算定基準が「時価」であった場合など、少し計算が複雑になるケースもあります。詳しくは国税庁のウェブサイトで確認するか、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

贈与税はかかる?

代償金の支払いは、あくまで遺産分割の一環なので、原則として贈与税はかかりません。しかし、以下のケースでは贈与とみなされ、贈与税が課税されるリスクがあります。

  • 遺産分割協議書に代償分割であることが明記されていない場合:単なる個人間のお金のやり取りと見なされる可能性があります。
  • 支払われた代償金が法定相続分に比べて著しく多い場合:法定相続分を超える部分は、財産を多くもらった相続人からの贈与と判断されることがあります。

こうした事態を避けるためにも、遺産分割協議書には代償分割の事実を正確に記載することが非常に重要です。

所得税(譲渡所得税)がかかるケース

代償金は現金で支払うのが基本ですが、もし支払う側に現金がなく、代わりに自身がもともと所有していた不動産などで支払う場合(これを代物弁済といいます)、注意が必要です。この場合、代償金を支払った人は、その不動産を時価で売却したとみなされ、取得時からの値上がり益に対して譲渡所得税が課される可能性があります。

例えば、2,000万円の代償金の代わりに、取得費1,500万円・時価2,000万円の土地を渡した場合、差額の500万円が譲渡所得として課税対象になります。余計な税金を避けるためにも、代償金はできるだけ現金で支払うのが望ましいでしょう。

代償分割をスムーズに進めるための注意点

最後に、代償分割を円満に進めるための重要な注意点をまとめます。

遺産分割協議書に代償分割の内容を必ず明記する

これが最も重要なポイントです。後々のトラブル防止や、税務署からの指摘を避けるため、遺産分割協議書には以下の内容を明確に記載しましょう。

  • どの財産を誰が取得するのか
  • その財産の取得の代償として、誰が誰にいくらの代償金を支払うのか
  • 支払いの方法(一括か分割か、振込口座など)
  • 支払いの期限

【記載例】
「相続人〇〇は、下記不動産を相続する代償として、相続人△△に対し、金2,000万円を令和〇年〇月〇日までに、△△名義の下記銀行口座へ振り込む方法により支払う。」

代償金は現金で支払うのが基本

前述の通り、不動産などで代償金を支払うと、支払った側に譲渡所得税がかかる可能性があります。また、不動産を受け取った側も不動産取得税や登録免許税といった費用がかかります。特別な事情がない限り、代償金は現金で支払うのが最もシンプルでトラブルが少ない方法です。

代償金が支払えない場合の対処法

高額な代償金を一括で支払うのが難しい場合もあるでしょう。その場合は、他の相続人の同意を得て、分割払いにすることも可能です。分割払いにする際は、支払い回数や毎月の支払額、支払いが滞った場合の取り決めなどを遺産分割協議書に詳しく記載しておきましょう。また、金融機関の不動産担保ローンを利用して資金を調達する方法も考えられます。

まとめ

代償分割は、不動産のように分けにくい財産がある場合に、相続人間の公平を保ちながら円満に遺産分割を進めるための有効な手段です。財産を売却せずに手元に残したい場合や、事業承継の場面などで特に力を発揮します。しかし、代償金を支払うための資金が必要であることや、代償金の額を決める際の不動産評価で揉めやすいといった注意点もあります。また、相続税の計算や贈与税のリスクなど、税金の問題も正しく理解しておくことが不可欠です。代償分割を検討する際は、相続人同士でよく話し合うことはもちろん、必要に応じて税理士や弁護士などの専門家に相談し、最適な方法を見つけることをお勧めします。

参考文献

代償分割に関するよくある質問まとめ

Q.代償分割とは何ですか?

A.代償分割とは、特定の相続人が不動産など分けにくい遺産を相続する代わりに、他の相続人に対して自己の財産から金銭(代償金)を支払う遺産分割方法です。これにより、相続人間の公平性を保ちます。

Q.代償金の金額はどのように決めるのですか?

A.代償金の金額に法的な決まりはなく、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)で決定します。不動産の場合は、相続開始時の時価を基準に、相続分に応じて公平に算出するのが一般的です。

Q.代償分割で支払う代償金に相続税はかかりますか?

A.代償金を支払う側には相続税はかかりません。受け取る側は、相続財産として代償金を受け取るため、その金額を含めて相続税が計算されます。ただし、相続財産を超える過大な代償金は贈与税の対象となる可能性があります。

Q.代償金を支払えない場合はどうすればよいですか?

A.一括で支払えない場合、分割払いの交渉や、相続した不動産を担保に金融機関から融資を受けるなどの方法があります。それでも困難な場合は、代償分割以外の分割方法(換価分割など)を再検討する必要があります。

Q.代償分割のメリット・デメリットは何ですか?

A.メリットは、不動産などの財産を売却せずに特定の相続人が引き継げる点です。デメリットは、代償金を支払う相続人に十分な資力が必要な点や、代償金の金額で揉める可能性がある点です。

Q.代償分割を行う場合、遺産分割協議書にはどのように記載すればよいですか?

A.遺産分割協議書には、「誰がどの財産を相続するか」「誰が誰に代償金としていくらを支払うか」「支払期日と支払方法」を明確に記載する必要があります。後のトラブルを避けるため、正確に作成することが重要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /
士業の先生向け専門家AI
士業AI【税務】
\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /