「相続税の申告も、確定申告みたいにインターネットで手軽にできたらいいのに…」と思ったことはありませんか?実は、相続税申告もe-Tax(電子申告)を利用して、自宅のパソコンから手続きができるんです。税務署に行かずに済むのはとても便利ですよね。しかし、所得税の確定申告のように簡単というわけではなく、個人で利用するにはいくつか知っておくべきポイントや注意点があります。この記事では、相続税申告をe-Taxで行うメリット・デメリットから、具体的なやり方まで、わかりやすく解説していきますね。
e-Taxで相続税申告をするメリット
まずは、相続税申告でe-Taxを利用するメリットから見ていきましょう。時間や場所の制約が少なくなるのが大きな魅力です。
自宅から24時間いつでも申告できる
最大のメリットは、税務署の開庁時間(平日の午前8時30分から午後5時まで)を気にすることなく、24時間いつでも自宅のパソコンから申告手続きができる点です。日中お仕事で忙しい方や、申告期限が迫っている場合でも、自分の都合の良いタイミングで手続きを進められます。わざわざ税務署へ出向いたり、郵便局から書類を郵送したりする手間が省けるのは嬉しいですよね。
添付書類の原本提出が不要になる
相続税申告では、戸籍謄本や遺産分割協議書、印鑑証明書など、多くの添付書類が必要です。通常はこれらの書類の原本またはコピーを提出しますが、e-Taxの場合は、書類をスキャナで読み取って作成したイメージデータ(PDF形式)で提出できます。大切な原本を手元に残しておけるので、紛失のリスクもなく安心です。ただし、税務署から後日、提出を求められる可能性もあるため、申告後も一定期間はきちんと保管しておきましょう。
申告データをペーパーレスで管理・共有できる
e-Taxで申告したデータは、パソコンやクラウド上に保存しておくことができます。分厚い紙の控えを保管する必要がなくなり、ペーパーレスでスマートに管理できるのが魅力です。データ化しておけば、他の相続人と申告内容を共有するのもメールで送るだけで簡単になりますし、後から内容を確認したいときもすぐに見つけられて便利ですよ。
ダイレクト納付で納税もスムーズ
e-Taxで申告手続きをすると、納税もスムーズに行えます。「ダイレクト納付」という方法を使えば、事前に税務署へ届出をした預貯金口座から、簡単な操作で即時または期日を指定して口座引落としで納税が完了します。金融機関や税務署の窓口へ行く必要がなく、手数料もかからないため、とても便利な納税方法です。
個人がe-Taxで相続税申告するデメリット・注意点
便利なメリットがある一方で、個人の方がe-Taxで相続税申告を行うには、いくつかのデメリットや注意点があります。これを知らずに進めてしまうと、かえって手間がかかることもあるので、しっかり確認しておきましょう。
相続税に関する専門知識が必須
e-Taxはあくまで申告書を「提出」するためのシステムです。所得税の確定申告書等作成コーナーのように、質問に答えていくだけで申告書が完成するような機能はありません。相続財産の評価方法や、どの特例が使えるか、税額の計算方法など、相続税に関する専門的な知識がなければ、申告書を正しく作成するのは非常に困難です。もし計算を間違えたり、使える特例を見逃してしまったりすると、税金を払い過ぎてしまったり、逆に少なく申告して後から加算税を課されたりするリスクがあります。
税額の自動計算機能はない
e-Taxソフトには、相続税額を自動で計算してくれる機能はありません。財産一つひとつの評価額を算出し、それらを合計して課税遺産総額を求め、相続税の総額を計算し、各相続人の納税額を算出する…という複雑な計算をすべて自分自身で行う必要があります。計算ミスが起こりやすいポイントなので、特に注意が必要です。
複数の相続人がいると手続きが煩雑に
相続税申告は、相続人全員が共同で1つの申告書を提出するのが一般的ですが、e-Taxでは相続人がそれぞれ個別に申告データを作成して送信する必要があります。相続人全員が、後述する利用者識別番号や電子証明書(マイナンバーカード)を用意しなければなりません。一人が代表して全員分をまとめて…というわけにはいかないため、相続人の人数が多いほど手続きが煩雑になります。
利用できるパソコン環境に制限がある
相続税申告に使用する「e-Taxソフト」は、残念ながらMacOSには対応していません。利用できるのはWindowsのパソコンのみです。また、添付書類をイメージデータで提出する際には、1回に送信できるデータ容量に上限(合計14.0MBまでなど)があるため、書類が多い場合は複数回に分けて送信する手間がかかります。
e-Taxで相続税申告するための3つの事前準備
e-Taxで相続税申告を始める前に、いくつか準備が必要です。スムーズに手続きを進めるために、あらかじめ用意しておきましょう。
利用者識別番号を取得する
e-Taxを利用するためには、「利用者識別番号」という16桁の番号が必要です。これは、e-Tax上のIDのようなものです。e-Taxのホームページからオンラインで取得するか、税務署で発行してもらうことができます。過去に確定申告などでe-Taxを利用したことがあり、すでに番号を持っている場合は、その番号をそのまま使えます。
電子証明書(マイナンバーカード)を用意する
申告データが本当に本人から送信されたものであることを証明するために、電子証明書が格納されたマイナンバーカードが必要です。マイナンバーカードを読み取るためのICカードリーダライタ、または読み取り機能に対応したスマートフォンも準備しておきましょう。
パソコンにe-Taxソフトをインストールする
相続税申告は、Webブラウザ上で完結する「e-Taxソフト(WEB版)」ではできず、パソコンに専用の「e-Taxソフト」をインストールする必要があります。国税庁のe-Taxホームページにあるダウンロードコーナーから、ご自身のパソコン(Windowsのみ)にインストールしてください。
e-Taxを使った相続税申告のやり方・手順
事前準備が整ったら、いよいよ申告書の作成です。大まかな流れを掴んでおきましょう。
e-Taxソフトで申告データを作成する
インストールしたe-Taxソフトを起動し、まずは被相続人(亡くなった方)や相続人(財産を取得した人)の氏名や住所などの基本情報を入力します。その後、申告書の作成に入りますが、相続税申告書は第9表~第15表といった財産や債務に関する明細書から先に作成し、最後にそれらを集計して第1表(納付税額)や第2表(相続税の総額)を作成するという流れになります。
添付書類をイメージデータ化して組み込む
戸籍謄本や遺産分割協議書、金融機関の残高証明書など、申告に必要な添付書類をスキャナで読み取り、PDFファイルを作成します。作成したPDFファイルを、e-Taxソフトの「添付書類」メニューから申告データに組み込みます。書類ごとに分かりやすくファイル名を付けておくと管理しやすいですよ。
電子署名を付与してデータを送信する
すべての申告書と添付書類のデータが完成したら、マイナンバーカードを使って「電子署名」を行います。これが、紙の申告書における押印の代わりになります。電子署名を付与したら、データをe-Taxの受付システムに送信します。送信後、正常に受け付けられたか「受信通知」を必ず確認しましょう。
(複数の相続人がいる場合)参照作成機能を活用する
相続人が複数いる場合、一人目が作成した申告データを「参照作成機能」を使って他の相続人が取り込むことができます。財産の明細など共通する部分はそのまま利用し、各相続人が取得した財産の割合など異なる部分だけを修正すればよいため、全員がゼロから作成する手間を省くことができます。
e-Taxでの相続税申告に関するよくある質問
ここでは、e-Taxでの相続税申告についてよく寄せられる質問にお答えします。
修正申告はe-Taxでできますか?
はい、できます。ただし、令和元年(2019年)1月1日以降に開始した相続に関する申告が対象です。申告期限内に間違いに気づいて訂正申告をする場合も、期限後に税額を増やす修正申告をする場合も、e-Taxで行うことが可能です。
申告書の提出先はどこになりますか?
相続税の申告書の提出先は、ご自身の住所地を管轄する税務署ではありません。亡くなった方(被相続人)の最後の住所地を管轄する税務署です。e-Taxで提出先税務署を選択する際に間違えないように注意しましょう。
スマートフォンだけで申告できますか?
いいえ、スマートフォンだけで相続税申告を完結させることはできません。所得税の確定申告の一部はスマホでできますが、相続税申告にはパソコンにインストールした「e-Taxソフト」が必須となります。スマホはマイナンバーカードの読み取りなどに利用できます。
まとめ
今回は、相続税申告をe-Taxで行うメリットややり方、注意点について解説しました。e-Taxを利用すれば、税務署に行かずに自宅から申告ができるなど多くのメリットがありますが、個人で行うには相続税の専門知識が不可欠で、税額の計算もすべて自分で行う必要があるなど、ハードルが高いのが実情です。
特に、土地の評価や非上場株式の評価が含まれる場合や、小規模宅地等の特例といった複雑な制度を利用する場合は、専門家でなければ適切な申告は非常に難しいでしょう。申告内容に少しでも不安がある場合は、無理せず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家に依頼すれば、e-Taxによる代理申告も含め、正確で安心な申告をしてもらえますよ。
参考文献
相続税のe-Tax申告に関するよくある質問
Q.相続税申告はe-Taxでできますか?
A.はい、平成31年1月から可能になりました。自宅のパソコンから申告手続きができますが、一部の添付書類は別途郵送などが必要になる場合があります。
Q.相続税をe-Taxで申告するメリットは何ですか?
A.税務署の閉庁時間を気にせず24時間いつでも提出できる点、添付書類の一部を提出省略できる点、還付金を早く受け取れる点などが主なメリットです。
Q.e-Taxで相続税申告をするデメリットはありますか?
A.マイナンバーカードやICカードリーダライタ等の事前準備が必要な点や、相続人が複数いる場合に全員の電子署名が必要となり手間がかかる点がデメリットとして挙げられます。
Q.e-Taxでの申告に必要なものは何ですか?
A.マイナンバーカード、ICカードリーダライタ(または対応スマートフォン)、インターネット環境のあるパソコン、事前に取得した利用者識別番号などが必要です。
Q.相続人が複数いる場合、e-Taxでの申告はどうすればよいですか?
A.相続人全員の電子署名が必要です。代表者が申告データを作成し、他の相続人にデータを回して各自が署名し、最終的に代表者が送信するという流れになります。
Q.税理士に依頼すればe-Tax申告は楽になりますか?
A.はい。税理士に依頼する場合、税理士が代理でe-Tax申告を行うため、ご自身の電子署名は不要になります。手続きの負担を大幅に軽減できます。