「東京に住んでいると相続税は他人事じゃないって本当?」「うちには大した財産はないから関係ないかな…」そう思っている方も多いかもしれませんね。実は、東京では他の地域に比べて相続税の申告が必要になる方の割合がとても高いんです。今回は、気になる東京の相続税事情と、ご自身が対象になるかの確認方法、そして今からできる対策について、わかりやすくお話ししていきますね。
東京の相続税事情、ホントのところは?
「東京の家庭の4軒に1軒は相続税がかかる」といった話を聞いたことがあるかもしれません。これは少し前のデータや特定の地域を指している可能性がありますが、最新のデータを見ても、東京が全国平均よりはるかに高い水準であることは間違いありません。国税庁の発表によると、令和5年(2023年)に亡くなった方のうち、東京国税局管内で相続税の申告書が提出された割合は約18.9%でした。全国平均が約9.6%なので、約2倍も高いことになります。これは、決して他人事ではない数字ですよね。
なぜ東京は相続税の対象になりやすいの?
一番の理由は、なんといっても土地の価格が高いことです。特に23区内では、ご自宅の土地と建物だけで相続税の基礎控除額を超えてしまうケースが少なくありません。預貯金はそれほど多くなくても、持ち家があるだけで申告の対象になる可能性があるのが東京の特徴なんです。
相続税がかかるかどうかのボーダーラインは?【基礎控除額】
相続税には、誰にでも適用される非課税の枠があり、これを「基礎控除額」と呼びます。遺産の総額がこの金額以下であれば、相続税の申告も納税も必要ありません。計算方法は以下の通りです。
【基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)】
法定相続人とは、法律で定められた遺産を相続する権利のある人のことです。配偶者は常に法定相続人となり、その次に子供、親、兄弟姉妹と続きます。ご自身の家族構成でいくらになるか、下の表で確認してみましょう。
| 法定相続人の数 | 基礎控除額 |
| 1人(例:配偶者のみ) | 3,600万円 |
| 2人(例:配偶者と子1人) | 4,200万円 |
| 3人(例:配偶者と子2人) | 4,800万円 |
| 4人(例:配偶者と子3人) | 5,400万円 |
2015年の税制改正が大きく影響
以前は「相続税はお金持ちだけの話」というイメージがありましたが、その常識が変わったのが平成27年(2015年)の税制改正です。この改正で、先ほどの基礎控除額が大幅に引き下げられました。それまでは「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だったものが、現在の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」になったことで、申告が必要な方が一気に増えたという背景があります。
うちの財産はいくら?相続税の対象になる財産とは
相続税を計算するときは、亡くなった方(被相続人)が残したすべての財産を合計します。これには、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれます。どんなものが対象になるか、一緒に見ていきましょう。
プラスの財産(課税対象)
現金や不動産だけでなく、価値のあるものはほとんどが対象となります。特に、亡くなる直前に引き出した現金や、家族名義でも実質的には故人のお金だった「名義預金」なども含まれるので注意が必要です。
| 財産の種類 | 具体例 |
| 不動産 | 土地、家屋、マンション、アパートなど |
| 金融資産 | 預貯金、株式、投資信託、国債など |
| 生命保険金・死亡退職金 | 受取人が相続人の場合(非課税枠あり) |
| その他 | 自動車、貴金属、骨董品、ゴルフ会員権など |
マイナスの財産(控除対象)
プラスの財産から差し引くことができるものもあります。借金や未払いの税金だけでなく、お葬式にかかった費用も含まれます。
| 控除できるもの | 具体例 |
| 債務 | 借入金、住宅ローン、未払いの医療費や税金など |
| 葬式費用 | 通夜・告別式の費用、火葬・埋葬費用、お布施など(香典返しは対象外) |
相続税を抑えるための代表的な特例
もし遺産総額が基礎控除額を超えてしまっても、すぐに諦める必要はありません。いくつかの特例を使うことで、税金の負担を大きく減らせる可能性があります。ここでは特に重要な2つの特例をご紹介します。
配偶者の税額軽減
配偶者が遺産を相続する場合には、非常に大きな軽減措置があります。具体的には、「法定相続分」または「1億6,000万円」のどちらか多い金額まで相続税がかかりません。多くのケースで配偶者の相続税はゼロになりますが、この特例を使うためには相続税の申告が必要です。また、次にその配偶者が亡くなった時(二次相続)の税負担が重くなる可能性もあるので、全体のバランスを考えることが大切です。
小規模宅地等の特例
ご自宅の土地など、特定の土地の評価額を最大で80%も減額できる、とても強力な特例です。地価の高い東京にお住まいの方にとっては、この特例が使えるかどうかが非常に重要になります。例えば、評価額が8,000万円の土地が、この特例を使うことで1,600万円として計算できるのです。ただし、適用には同居していることなど、細かい条件があるため、専門家への相談がおすすめです。
| 宅地の種類 | 限度面積 | 減額割合 |
| 特定居住用宅地等(自宅の土地) | 330㎡まで | 80% |
| 特定事業用宅地等(事業用の土地) | 400㎡まで | 80% |
| 貸付事業用宅地等(賃貸物件の土地) | 200㎡まで | 50% |
もし相続税申告が必要になったら?手続きの流れ
相続は、悲しみの中で多くの手続きを進めなければなりません。特に相続税の申告には期限があるため、流れをあらかじめ知っておくと安心です。
期限は10ヶ月以内!
相続税の申告と納税の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内と決められています。この期間は長いようで短く、財産の調査や評価、相続人同士の話し合い(遺産分割協議)など、やるべきことがたくさんあります。期限を過ぎてしまうと、ペナルティが課されることもあるので注意しましょう。
大まかな手続きステップ
一般的な手続きは、以下のようなステップで進みます。
1. 遺言書の有無を確認する
2. 相続人を確定させる(戸籍謄本などを集めます)
3. 相続財産を調査し、評価額を計算する
4. 相続人全員で遺産の分け方を話し合う(遺産分割協議)
5. 相続税申告書を作成し、税務署へ提出する
6. 期限内に相続税を納付する
今からできる!生前の相続税対策
相続税の対策は、亡くなってからではできることが限られます。ご家族のために、元気なうちから少しずつ準備を始めておくことが、円満な相続への一番の近道です。
生前贈与を活用する
暦年贈与という制度を使えば、1人あたり年間110万円までなら贈与税がかからずに財産を渡すことができます。毎年コツコツと続けることで、相続財産を計画的に減らすことが可能です。ただし、近年制度が変わり、亡くなる前7年以内に行われた贈与は相続財産に加算されることになったため、早めに始めることがより重要になりました。
生命保険を活用する
生命保険金は、受け取る際に「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。例えば相続人が3人なら、1,500万円までは相続税がかかりません。これは預貯金で残すよりも税制面で有利なだけでなく、受取人を指定できるため、納税資金として特定の人に確実に現金を残したい場合にも有効です。
遺言書を作成する
財産の分け方をあらかじめ遺言書で指定しておくことで、残された家族が遺産分割で揉めてしまう「争続」を防ぐことができます。特に不動産など分けにくい財産がある場合は、誰に何を相続させるかを明確にしておくことが、家族の絆を守ることにつながります。
まとめ
今回は、東京における相続税事情についてお話ししました。この記事のポイントを振り返ってみましょう。
- 東京では、亡くなった方の約18.9%が相続税の申告対象となっており、他人事ではありません。
- 相続税がかかるかの目安は、遺産総額が基礎控除額「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超えるかどうかです。
- 持ち家がある場合は、土地の評価額が高額になりがちですが、「小規模宅地等の特例」などで税負担を大きく減らせる可能性があります。
- 生前のうちから、贈与や生命保険の活用、遺言書の作成といった対策を始めることが大切です。
まずはご自身の財産がどれくらいあるのかを一度おおまかに把握してみることから始めてみてはいかがでしょうか。もし「うちは対象になるかもしれない…」と少しでも不安に感じたら、早めに税理士などの専門家に相談してみてくださいね。
参考文献
東京の相続税に関するよくある質問まとめ
Q. なぜ東京の家庭は相続税の申告割合が高いのですか?
A. 東京は地価が高く、土地や家屋などの不動産評価額が基礎控除額を上回りやすいためです。そのため、他の地域に比べて相続税の申告が必要になる家庭の割合が高くなる傾向にあります。
Q. 相続税の申告が必要になるのは、遺産がいくらからですか?
A. 相続税の申告は、遺産総額が「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算される基礎控除額を超える場合に必要となります。
Q. 相続税がかからない場合でも、申告は必要ですか?
A. 遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税の申告は不要です。ただし、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などの特例を利用して相続税が0円になる場合は、申告が必要です。
Q. 相続税の申告はいつまでに行えばよいですか?
A. 相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人が亡くなった日)の翌日から10か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に申告・納税する必要があります。
Q. 相続税の対象となる財産にはどのようなものがありますか?
A. 現金、預貯金、不動産(土地・建物)、有価証券(株式など)といったプラスの財産のほか、生命保険金や死亡退職金なども「みなし相続財産」として課税対象に含まれることがあります。
Q. 相続税の負担を減らす方法はありますか?
A. 生前贈与の活用、生命保険の非課税枠の利用、不動産評価額を下げる対策(小規模宅地等の特例など)といった方法が考えられます。専門家への相談をおすすめします。