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遺産分割で利益相反?未成年との相続で損しないための必須知識

2026-05-26
目次

ご家族が亡くなられ、相続人の中に未成年のお子さんがいらっしゃる場合、遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)で「利益相反」という問題が起こることがあります。これは、お子さんの権利を守るための大切なルールなのですが、知らずに進めてしまうと、せっかく決めた遺産分割が無効になってしまうこともあるんです。この記事では、遺産分割における利益相反とは何か、どんなケースが当てはまるのか、そしてどう対処すればよいのかを、分かりやすく丁寧にご説明しますね。

そもそも遺産分割での「利益相反」って何?

利益相反とは、簡単に言うと「一方の人が得をすると、もう一方の人が損をしてしまう関係」のことです。遺産分割の場面では、特に親権者である親と、その未成年のお子さんとの間で問題になりやすい法律上のルールです。例えば、お父さんが亡くなって、相続人がお母さんと未成年のお子さんだったとします。このとき、お母さんが自分の取り分を多くすれば、その分お子さんの取り分は少なくなってしまいますよね。このように、お互いの利益がぶつかり合ってしまう状態を利益相反と呼びます。

なぜ利益相反が問題になるの?

未成年のお子さんや判断能力が不十分な方は、法律上、ご自身で契約などの重要な決定をすることができません。そのため、通常は親権者や後見人が代理人となって手続きを行います。しかし、遺産分割のように代理人自身も利害関係者である場合、代理人が自分の利益を優先して、お子さんに不利な内容で話を進めてしまう可能性が否定できません。日本の法律(民法)では、こうした事態を防ぎ、立場の弱いお子さんなどの権利をしっかりと守るために、利益相反にあたる行為を原則として禁止しているのです。

利益相反は「形式的」に判断される

「うちは子どものことを一番に考えているから、不公平な分け方なんて絶対にしない」と思われるかもしれません。しかし、法律では、親権者の気持ちや意図とは関係なく、その行為が客観的・外形的に見て利益が対立する可能性があるかどうかで判断します。これを「形式的判断」といいます。たとえ、お子さんの法定相続分(法律で定められた相続割合)以上の財産を渡すつもりの遺産分割協議であっても、親と子が共同相続人として遺産分割協議を行うこと自体が、利益相反行為とみなされてしまうのです。

こんなケースは要注意!利益相反が生じる具体例

それでは、具体的にどのような場面で利益相反が問題になるのでしょうか。ご自身の状況と照らし合わせながら、確認してみてください。

親と未成年の子が共同相続人になるケース

最も典型的な例です。例えば、夫が亡くなり、相続人が妻と未成年の子である場合、妻と子は共同相続人となります。このとき、妻が子の代理人として遺産分割協議を行うことはできません。妻の取り分が増えれば、子の取り分が減るという直接的な利益相反関係にあるためです。

ケース 解説
父が死亡し、相続人が母と未成年の子1人 母は子の代理人になれません。子のために特別代理人の選任が必要です。

複数の未成年の子を親権者が代理するケース

親自身は相続人ではないけれど、複数の未成年の子どもの代理人になる、という場合にも利益相反は生じます。例えば、祖父が亡くなり、相続人である父はすでに他界しているため、未成年の長男と次男が代わって相続人(代襲相続)になったとします。この場合、親権者である母が長男と次男、両方の代理人として遺産分割協議をすることはできません。なぜなら、長男の取り分を多くすれば次男の取り分が減るというように、子ども同士の間でも利益が相反するからです。この場合は、どちらか一方の子のために特別代理人を選任する必要があります。

ケース 解説
祖父が死亡し、相続人が未成年の兄弟2人(親権者は母) 母は兄弟両方の代理人にはなれません。例えば、長男の代理人を母が務め、次男のために特別代理人を選任する必要があります。

成年後見人と被後見人が共同相続人になるケース

相続人の中に判断能力が不十分なため成年後見人がついている方(成年被後見人)がいる場合も、未成年者と同じように考えます。もし、成年後見人自身も共同相続人である場合、被後見人の代理人として遺産分割協議に参加することは利益相反にあたります。この場合も、被後見人のために特別代理人を選任する必要があります。

相続放棄でも利益相反になる場合

遺産分割だけでなく、相続放棄の手続きでも利益相反が問題になることがあります。例えば、親権者は相続するのに、子だけに相続放棄をさせるような場合です。子が相続放棄をすることで、結果的に親権者の相続分が増える可能性があるため、これは利益相反行為とみなされます。ただし、親権者と子が同時に相続放棄をする場合は、それによって親権者が利益を得るわけではないため、通常は利益相反にはあたらないとされています。

利益相反の対処法①:特別代理人の選任

利益相反の状態を解消し、適法に遺産分割協議を進めるための最も一般的な方法が、「特別代理人」を家庭裁判所に選任してもらうことです。特別代理人とは、その特定の行為(この場合は遺産分割協議)についてのみ、未成年者などの代理人となる人のことを指します。

特別代理人は誰がなれるの?

特別代理人になるための特別な資格は法律で定められていません。相続について利害関係のない親族(例えば、おじやおばなど)や、信頼できる知人などが候補者になることが多いです。適当な候補者が見つからない場合は、弁護士や司法書士などの専門家を候補者とすることもできます。誰を候補者にするかを決めた上で、家庭裁判所に申し立てを行います。

特別代理人選任の手続きの流れ

特別代理人の選任は、未成年のお子さんの住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てることで行います。手続きの大まかな流れと必要なものは以下の通りです。

手続きのステップ 内容
1. 申立て 親権者や利害関係人が、子の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出します。
2. 必要書類の準備 申立書のほか、未成年者と親権者の戸籍謄本、特別代理人候補者の住民票、遺産分割協議書案などが必要です。
3. 費用 子1人につき収入印紙800円分と、裁判所からの連絡に使われる郵便切手代(金額は裁判所によります)が必要です。
4. 審理・審判 家庭裁判所が提出された書類(特に遺産分割協議書案の内容がお子さんにとって不利益でないか)を審査し、問題がなければ特別代理人選任の審判が下ります。

審判が下りると、特別代理人は遺産分割協議に参加し、お子さんの代理人として遺産分割協議書に署名・押印することができるようになります。

利益相反の対処法②:相続放棄

もう一つの対処法として、親権者自身が相続放棄をするという方法もあります。親権者が相続人でなくなれば、子との間に遺産を分け合うという関係がなくなり、利益相反の状態が解消されるためです。

親権者が相続放棄するメリットと注意点

親権者が家庭裁判所で相続放棄の手続きをすれば、特別代理人を選任する手間を省いて、お子さんの法定代理人として遺産分割協議に参加できます。ただし、もちろん親権者自身の相続権は一切なくなりますので、慎重な判断が必要です。また、前述したように、相続人が未成年のお子さん複数人である場合は、親権者が相続放棄をしても子ども同士の利益相反は残るため、結局いずれかのお子さんのために特別代理人が必要になる点には注意しましょう。

もし利益相反のまま手続きを進めてしまったら?

もし、特別代理人を選任せずに、親権者が子の代理人として遺産分割協議書に署名・押印してしまったらどうなるのでしょうか。その場合、その遺産分割協議は「無権代理行為」とみなされ、原則として無効となります。

無効になるとどうなる?

遺産分割協議が無効になると、その協議書に基づいて行われた預貯金の解約や、不動産の名義変更(相続登記)なども、すべて効力を失ってしまいます。金融機関や法務局での手続きもストップしてしまいます。結局、家庭裁判所で特別代理人を選任するところから、すべての手続きを最初からやり直さなければならず、時間も手間も余計にかかってしまうことになります。

まとめ

遺産分割で相続人に未成年者や成年被後見人が含まれる場合、利益相反という法律上のルールに注意が必要です。特に、親権者と子が共同相続人になるようなケースでは、そのまま親権者が子の代理人になることはできず、子のために特別代理人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。この手続きを怠ると、せっかくまとまった遺産分割協議が無効になってしまうという大きなリスクがあります。大切なご家族の財産をスムーズに引き継ぐためにも、利益相反に該当しそうだと感じたら、お早めに弁護士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

参考文献

裁判所|特別代理人選任(親権者とその子との利益相反の場合)

国税庁|相続税のあらまし

遺産分割の利益相反に関するよくある質問まとめ

Q.遺産分割における「利益相反」とは何ですか?

A.一人の人が複数の相続人の代理人になるなど、一方の利益がもう一方の不利益になる状態のことです。例えば、親が未成年の子の代理人として遺産分割協議をすると、親自身の取り分を多くできてしまうため利益相反に該当します。

Q.親と未成年の子で遺産分割をする場合、なぜ利益相反になるのですか?

A.親(親権者)が子の代理人として遺産分割協議に参加すると、親自身の相続分を多くし、子の相続分を少なくすることができてしまうからです。このような立場上の利害対立を防ぐため、法律で制限されています。

Q.利益相反になる場合、どうすれば遺産分割協議を進められますか?

A.家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。特別代理人は、未成年の子などの代理人として、その人の利益を守るために遺産分割協議に参加します。

Q.認知症の親がいる場合の遺産分割でも利益相反は起こりますか?

A.はい、起こり得ます。例えば、子が認知症の親の成年後見人になっている場合、その子が自分と親の両方の立場で遺産分割協議を行うと利益相反になります。この場合、家庭裁判所に「特別代理監督人」の選任などを申し立てる必要があります。

Q.相続人全員で一人の弁護士に遺産分割を依頼することはできますか?

A.相続人間で意見の対立が全くない場合は可能ですが、少しでも利害が対立する可能性がある場合は、弁護士法上の利益相反に該当し、一人の弁護士が全員の代理をすることはできません。各相続人がそれぞれ別の弁護士に依頼する必要があります。

Q.利益相反の状態で進めた遺産分割協議はどうなりますか?

A.利益相反の状態で行われた遺産分割協議は「無権代理行為」となり、原則として無効です。後から子の追認が得られない限り、協議をやり直す必要があります。不動産登記なども無効となる可能性があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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