ご家族が亡くなられて遺産相続の手続きを進めるなかで、相続人同士の意見がまとまらず、弁護士への依頼を検討される方も少なくないでしょう。しかし、「弁護士に頼むと高そう…」という不安から、相談をためらってしまうこともあるかもしれません。確かに弁護士費用は決して安いものではありませんが、その内訳や相場を知ることで、漠然とした不安は解消できます。この記事では、遺産相続でかかる弁護士費用の種類や相場、具体的なケースでの費用シミュレーション、そして費用を抑えるためのポイントまで、分かりやすくお話ししていきますね。
遺産相続で弁護士にかかる費用の内訳と相場
弁護士に遺産相続の相談や依頼をした場合にかかる費用は、大きく分けて5つの項目があります。それぞれの費用がどのようなものなのか、一般的な相場とあわせて見ていきましょう。法律事務所によって料金体系は異なりますので、あくまで目安として参考にしてくださいね。
相談料:初回無料の事務所も多い
弁護士に正式に依頼する前に、まずは法律相談をするところから始まります。この相談にかかる費用が「相談料」です。一般的には「30分5,500円(税込)」程度が相場ですが、最近では初回の相談を無料にしている法律事務所もたくさんあります。まずは無料相談を活用して、弁護士との相性を見たり、費用の見積もりを取ったりするのがおすすめです。
着手金:依頼時に支払う初期費用
弁護士に正式に案件を依頼することを決めたときに、最初に支払う費用が「着手金」です。これは、弁護士が調査や交渉などを始めるための準備費用のようなもので、案件の結果(成功・不成功)にかかわらず、原則として返金はされません。相場としては、20万円~50万円程度に設定している事務所が多いですが、相続する財産の金額に応じて変動する場合もあります。なかには「着手金無料」のプランを用意している事務所もありますが、その分、後述する報酬金の割合が高めに設定されていることが多いので、トータルでかかる費用をしっかり確認することが大切です。
報酬金:成功度合いに応じて支払う費用
案件が無事に解決した際に、その成功の度合いに応じて支払う費用が「報酬金」です。一般的に、弁護士の活動によって確保できた遺産の額(これを「経済的利益」と言います)を基準に計算されます。多くの法律事務所では、現在でも「(旧)日本弁護士連合会報酬等基準」を参考に料金を設定しています。
| 経済的利益の額 | 報酬金の計算式 |
| 300万円以下の部分 | 経済的利益の16% |
| 300万円を超え3,000万円以下の部分 | 経済的利益の10% + 18万円 |
| 3,000万円を超え3億円以下の部分 | 経済的利益の6% + 138万円 |
| 3億円を超える部分 | 経済的利益の4% + 738万円 |
例えば、弁護士に依頼して1,000万円の遺産を取得できた場合、報酬金は「1,000万円 × 10% + 18万円 = 118万円(税別)」がひとつの目安となります。
実費:手続きにかかる経費
弁護士の報酬とは別に、手続きを進めるために実際にかかった費用のことを「実費」と呼びます。具体的には、戸籍謄本や不動産登記事項証明書の取得費用、裁判所に納める印紙代、郵便切手代、遠方へ出張する際の交通費などが含まれます。事案にもよりますが、数万円程度かかることが多いです。
日当:弁護士が出張した際にかかる費用
弁護士が事務所を離れて、裁判所での調停に出席したり、遠方の財産調査に行ったりする場合に発生するのが「日当」です。拘束時間に対する手当のようなもので、半日で3万円~5万円、1日で5万円~10万円程度が相場です。交通費や宿泊費は、この日当とは別に実費として請求されます。
【依頼内容別】遺産相続の弁護士費用シミュレーション
それでは、具体的な依頼内容ごとに、弁護士費用がどのくらいかかるのかを見ていきましょう。あくまで一般的なモデルケースですので、実際の費用は必ず依頼する弁護士にご確認くださいね。
遺産分割協議・調停を依頼した場合
相続人同士の話し合い(遺産分割協議)がまとまらない場合に、弁護士が代理人として交渉を行ったり、家庭裁判所での調停手続きを進めたりするケースです。遺産相続トラブルで最も多いご相談のひとつです。
| ケース | 弁護士に依頼して1,000万円の遺産を取得 |
| 相談料 | 0円(初回無料の場合) |
| 着手金 | 約33万円 |
| 報酬金 | 約130万円(1,000万円×10%+18万円+税) |
| 実費・日当 | 約5万円 |
| 合計 | 約168万円 |
遺留分侵害額請求を依頼した場合
遺言によって自分の取り分が法律で保障された最低限の相続分(遺留分)よりも少なくなってしまった場合に、その不足分を取り戻すための請求です。この場合も、着手金と報酬金(獲得できた金額に応じる)がかかるのが一般的です。
| ケース | 弁護士に依頼して500万円の遺留分を獲得 |
| 着手金 | 約22万円 |
| 報酬金 | 約75万円(500万円×10%+18万円+税) |
| 実費 | 約3万円 |
| 合計 | 約100万円 |
相続放棄の手続きを依頼した場合
故人に借金が多く、財産を一切相続したくない場合に行う手続きです。相続放棄は、着手金や報酬金ではなく、手数料として定額の料金を設定している事務所が多いです。相続人1人あたり5万円~15万円程度が相場です。財産調査もあわせて依頼する場合は、別途費用がかかることがあります。
遺言書作成を依頼した場合
将来の相続トラブルを防ぐために遺言書を作成するサポートです。こちらも手数料制が多く、一般的な内容の自筆証書遺言や公正証書遺言の作成サポートで10万円~30万円程度が相場です。財産内容が複雑だったり、特別な条項を入れたりする場合は、費用が加算されることがあります。また、公正証書遺言にする場合は、弁護士費用とは別に公証役場に支払う手数料が必要です。
弁護士費用は誰が負担するの?
遺産分割協議などで弁護士を依頼した場合、その費用は原則として「依頼した本人が全額負担」します。たとえ相手方の相続人が原因でトラブルになったとしても、相手に弁護士費用を請求することは基本的にできません。「弁護士費用は自己負担」ということを念頭に置いて、依頼を検討することが大切です。ただし、例外として、弁護士が遺言執行者に指定されている場合の費用は、相続財産の中から支払われるのが一般的です。この場合は、実質的に相続人全員で費用を負担することになります。
弁護士費用が高額になりやすいケース
同じ遺産相続の案件でも、内容によっては弁護士費用が相場より高くなることがあります。どのような場合に費用がかさみやすいのか、知っておきましょう。
相続人の数が多い、または関係が複雑な場合
相続人の数が多かったり、連絡が取りにくい人がいたりすると、弁護士の連絡や調整の手間が増えるため、その分費用が加算されることがあります。また、代襲相続が発生しているなど、相続関係が複雑な場合も同様です。
相続財産の種類が多い、または評価が難しい場合
相続財産に多数の不動産や、評価が難しい非上場株式などが含まれていると、財産調査や評価に時間と専門知識が必要になるため、費用が高くなる傾向があります。不動産鑑定士などの専門家に評価を依頼する場合は、その費用も別途かかります。
協議がまとまらず調停・審判に移行した場合
当事者同士の話し合いで解決せず、家庭裁判所での調停や審判に手続きが進むと、弁護士の稼働時間も長くなります。裁判所への出廷ごとに日当が発生したり、調停・審判に移行する際に追加の着手金が必要になったりすることもあります。
弁護士費用を安く抑えるための4つのポイント
弁護士費用は決して安くありませんが、いくつかのポイントを押さえることで、負担を少しでも軽くすることができます。ぜひ参考にしてみてください。
初回無料相談を有効活用する
まずは、初回無料相談を実施している法律事務所をいくつか探してみましょう。複数の弁護士から話を聞くことで、解決までの見通しや費用の見積もりを比較検討できます。費用だけでなく、親身に話を聞いてくれるか、説明が分かりやすいかなど、自分との相性を見極める良い機会にもなります。
料金体系が明確な事務所を選ぶ
依頼する前に、必ず料金体系について詳しく説明を受け、見積書をもらいましょう。「何にいくらかかるのか」「追加費用が発生するのはどのような場合か」などを明確にしてくれる、明朗会計の事務所を選ぶことが大切です。後から思わぬ費用を請求されるといったトラブルを防ぐことができます。
分割払いや後払いに対応しているか確認する
すぐにまとまったお金を用意するのが難しい場合でも、事務所によっては着手金の分割払いや後払い(相続財産を受け取ってから支払う方法)に応じてくれることがあります。費用の支払いに不安がある場合は、遠慮せずに相談してみましょう。
法テラスの利用を検討する
収入や資産が一定の基準以下であるなど、経済的に余裕がない方は、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用できる場合があります。この制度を利用すると、無料の法律相談が受けられたり、弁護士費用を立て替えてもらえたりします。立て替えてもらった費用は、月々5,000円~10,000円程度の分割で返済していくことになります。
まとめ
遺産相続でかかる弁護士費用は、依頼する内容や財産の額によって大きく変わります。決して安い金額ではありませんが、専門家である弁護士に依頼することで、複雑な手続きを任せられるだけでなく、感情的な対立を避け、法的に適切な形で円満な解決を目指せるという大きなメリットがあります。費用倒れにならないか心配な場合も、弁護士は事前にそのリスクを説明してくれます。まずは一人で悩まず、信頼できる弁護士を見つけるために、無料相談から一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考文献
遺産相続の弁護士費用に関するよくある質問まとめ
Q.遺産相続を弁護士に依頼した場合の費用相場は?
A.弁護士費用は法律相談料、着手金、報酬金などで構成されます。着手金と報酬金は、相続財産の額に応じて変動するのが一般的で、旧弁護士会報酬基準を参考にしている事務所が多いです。例えば、経済的利益が300万円以下の場合、着手金は8%、報酬金は16%が目安とされています。
Q.遺産相続の法律相談料はいくらくらいですか?
A.法律相談料は、30分5,000円~1万円程度が相場です。ただし、初回相談は無料としている法律事務所も多くありますので、事前に確認することをおすすめします。
Q.弁護士費用はいつ支払うのですか?
A.一般的に、法律相談料は相談時、着手金は正式に依頼する契約時に支払います。そして、報酬金は問題が解決した(遺産分割協議が成立したなど)時点で支払うケースが多いです。
Q.遺産相続の弁護士費用は誰が負担するのですか?
A.弁護士費用は、原則として依頼した本人が負担します。ただし、相続人全員の合意があれば、相続財産の中から支払うことも可能です。
Q.弁護士費用を安く抑える方法はありますか?
A.複数の法律事務所から見積もりを取って比較検討することや、初回無料相談を活用することが有効です。また、法テラスの民事法律扶助制度を利用できる場合もあります。
Q.弁護士に依頼するメリットは何ですか?
A.相続人同士の感情的な対立を避け、法的に妥当な解決を目指せる点です。複雑な手続きを任せられるため、時間や精神的な負担を大幅に軽減できるメリットもあります。