相続などで土地の評価をする際、特に「雑種地」の評価は複雑で分かりにくいですよね。中でも、道路に値段がついていない「倍率地域」にある雑種地は、その土地が「市街化区域」にあるのか「市街化調整区域」にあるのかで評価方法が大きく変わります。この違いを知らないと、評価額が大きく変わってしまう可能性もあります。今回は、この2つの区域における雑種地の評価額の計算方法の違いを、わかりやすく解説していきますね。
雑種地とは?まずは基本をおさえよう
相続税の土地評価では、土地をその利用状況によって「宅地」や「田」「畑」「山林」など9つの種類(地目)に分けて評価します。「雑種地(ざっしゅち)」とは、このどの地目にも当てはまらない土地のことを指します。具体的には、駐車場や資材置場、空き地、テニスコートなどが雑種地に該当します。登記簿上の地目と現在の利用状況が違う場合は、現在の利用状況(現況)で判断するのが原則です。
この雑種地の評価が難しいのは、決まった評価方法がなく、その土地がどんな場所にあるかによって計算方法が変わるからです。特に、路線価が定められていない「倍率地域」では、これから説明する「市街化区域」と「市街化調整区域」のどちらに属するかが非常に重要になります。
倍率地域と路線価地域について
土地の評価方法は、主に「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。路線価方式は、主に市街地で使われ、道路ごとに設定された価格(路線価)をもとに評価します。一方、倍率方式は、路線価が定められていない郊外や農村部などで使われる方法です。固定資産税評価額に、国税庁が定める一定の「倍率」を掛けて評価額を計算します。お持ちの土地がどちらの地域にあるかは、国税庁のホームページで確認できますよ。
市街化区域と市街化調整区域とは?
都市計画法では、無秩序な市街地化を防ぐために、地域を「市街化区域」と「市街化調整区域」などに分けています。この区分によって、土地の評価方法が大きく変わってきます。
| 市街化区域 | すでに市街地を形成している区域、または今後10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域です。建物を建てて街を活性化させていくエリアなので、土地の評価額は高くなる傾向にあります。 |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域です。原則として、住宅や商業施設などの建物を自由に建てることができません。自然環境や農地を守るためのエリアなので、土地の活用に制限があり、評価額は低くなる傾向にあります。 |
【倍率地域】市街化区域にある雑種地の評価方法
それでは、具体的な計算方法を見ていきましょう。まず、倍率地域にある市街化区域の雑種地は、原則として「宅地と同じ価値がある」と考えて評価します。これを「宅地比準方式」といいます。すでに市街地であるため、雑種地であっても宅地として利用できる潜在的な価値が高いと判断されるためです。
計算式をチェック
市街化区域にある雑種地の評価額は、以下の計算式で求めます。
(近傍標準宅地の1㎡当たり固定資産税評価額 × 宅地の評価倍率 × 各種補正率 - 1㎡当たり宅地造成費) × 地積
計算のポイントと注意点
計算式だけ見ると難しそうですが、ポイントは「近くの宅地を基準に計算する」ということです。ここで一つ、とても重要な注意点があります。それは、お手元の固定資産税納税通知書に書かれている「雑種地の固定資産税評価額」に、宅地の倍率をそのまま掛けてはいけない、ということです。
雑種地の固定資産税評価額は、宅地よりも低く設定されていることが多いため、単純に倍率を掛けると正しい評価額になりません。そのため、まずはその雑種地の近くにある「標準的な宅地の1㎡当たりの固定資産税評価額」を調べる必要があります。この金額は、市役所などで確認するか、「全国地価マップ」などのサイトで固定資産税路線価を調べることで確認できます。
また、「宅地造成費」は、その土地を宅地として利用できるように整備するための費用ですが、駐車場としてアスファルト舗装がされている場合など、すでに土地が整っている場合は控除できないことが多いので注意してくださいね。
【倍率地域】市街化調整区域にある雑種地の評価方法
次に、倍率地域にある市街化調整区域の雑種地の評価方法です。こちらは市街化区域とは大きく異なります。市街化調整区域は、原則として建物の建築が制限されているため、その土地の価値は大きく下がります。この建築制限を評価額に反映させるのが最大のポイントです。
まずはどの土地に似ているか(比準地目)を判定
市街化調整区域の雑種地を評価する場合、まずその土地の周りの状況を見て、どの地目に似ているかを判断します。
- 周囲が住宅地など ⇒ 宅地に比準して評価(宅地比準)
- 周囲が田んぼや畑 ⇒ 農地に比準して評価(農地比準)
- 周囲が山林 ⇒ 山林に比準して評価(山林比準)
多くの場合は宅地に比準して評価しますが、状況によっては農地や山林として評価することもあります。
宅地に似ている場合(宅地比準方式)の計算方法
宅地に比準する場合の計算方法は、市街化区域の計算式と似ていますが、ある重要な要素が加わります。
(近傍標準宅地の1㎡当たり固定資産税評価額 × 宅地の評価倍率 × 各種補正率 × (1 – しんしゃく割合) - 1㎡当たり宅地造成費) × 地積
違いにお気づきでしょうか?「(1 – しんしゃく割合)」という項目が追加されていますね。これが市街化調整区域の評価の鍵となります。
「しんしゃく割合」って何?3つのパターンを解説
「しんしゃく割合」とは、市街化調整区域の建築制限の度合いに応じて評価額を減額するための割合のことです。「斟酌(しんしゃく)」とは「事情を汲み取って手加減する」といった意味合いで、まさに建築制限というマイナスの事情を評価額に反映させるものです。しんしゃく割合は、主に以下の3つのパターンに分けられます。
| しんしゃく割合50% | 原則として建物の建築が全くできない地域。一般的な市街化調整区域の多くがこれに該当します。評価額を50%も減額できる、非常に大きなポイントです。 |
| しんしゃく割合30% | 沿道サービス施設(コンビニやガソリンスタンドなど)や日用品販売店舗など、特定の用途であれば建築が許可される可能性がある地域。建築制限が少し緩やかであるため、減額割合も30%となります。 |
| しんしゃく割合0% | 市街化区域に隣接し、すでに宅地化が進んでいる「条例指定区域」など、市街化調整区域内でも宅地と同様に開発が許可される地域。この場合は建築制限がないとみなされ、減額はできません。 |
どのしんしゃく割合が適用されるかは、その土地が所在する市役所の都市計画課などで確認する必要があります。この判断一つで評価額が大きく変わるため、非常に重要な調査です。
評価方法の違いを一覧表で比較
最後に、倍率地域にある雑種地の評価方法の違いをまとめてみましょう。
| 項目 | 市街化区域の雑種地 |
| 評価の考え方 | 宅地とほぼ同じ価値があると考える(宅地比準) |
| 計算式のポイント | 近傍の宅地を基準に計算する。しんしゃく割合による減額はない。 |
| 評価額の傾向 | 高くなる傾向がある |
| 項目 | 市街化調整区域の雑種地(宅地比準の場合) |
| 評価の考え方 | 建築制限を考慮して評価する(宅地比準) |
| 計算式のポイント | 近傍の宅地を基準に、しんしゃく割合(50%、30%など)を適用して減額する。 |
| 評価額の傾向 | 低くなる傾向がある |
まとめ
いかがでしたでしょうか。倍率地域の雑種地の評価は、まずその土地が「市街化区域」にあるのか、「市街化調整区域」にあるのかを確認することが最初のステップです。
- 市街化区域なら、基本的には「宅地」と同じように評価します。
- 市街化調整区域なら、建築制限を考慮した「しんしゃく割合」による大幅な減額がポイントになります。
雑種地の評価は専門的な知識が必要で、特に市街化調整区域のしんしゃく割合の判断は非常に複雑です。評価額を正しく計算するためにも、もし少しでも不安があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
参考文献
倍率地域の雑種地評価に関するよくある質問まとめ
Q. そもそも倍率地域にある雑種地の評価はどのように行うのですか?
A. 倍率地域にある雑種地は、その土地が「市街化区域」にあるのか「市街化調整区域」にあるのかで評価方法が大きく変わります。
Q. 市街化区域内の雑種地と市街化調整区域内の雑種地では、評価方法にどんな違いがあるのですか?
A. 最も大きな違いは「宅地比準方式」を適用するかどうかです。市街化区域内の雑種地は、周辺の宅地と状況が似ているため、宅地として評価した価額から造成費を引く「宅地比準方式」で評価することが多いです。一方、市街化調整区域内の雑種地は、原則として建物の建築が制限されているため、この建築制限を評価額に反映させるのが最大のポイントです。
Q. 市街化区域の雑種地で使われる「宅地比準方式」とは何ですか?
A. 宅地比準方式とは、その雑種地がもし宅地だった場合の価額を基準に評価する方法です。具体的には、近隣の宅地の評価額などを基に雑種地の価額を算出し、そこから宅地にするために必要な造成費を差し引いて評価額を計算します。
Q. 市街化調整区域の雑種地は、なぜ宅地比準方式を使わないのですか?
A. 市街化調整区域は、原則として市街化を抑制する区域であり、建物の建築が厳しく制限されています。そのため、宅地への転用が容易ではないため、宅地としての価値を基準にする宅地比準方式は馴染まないとされています。
Q. 雑種地の評価で「造成費」は必ず控除できるのですか?
A. 造成費の控除は、宅地比準方式で評価する場合に適用されます。したがって、市街化区域内の雑種地などで宅地比準方式を用いる際に、宅地造成が必要と判断されれば控除できます。市街化調整区域の雑種地のように、倍率方式で評価する場合は造成費の控除はありません。
Q. 固定資産税評価額に倍率を掛けるだけの計算で問題ないのでしょうか?
A. 原則はその計算方法ですが、雑種地の現況が農地や山林に近い場合など、固定資産税評価額が実態より高く評価されているケースもあります。その場合は、近隣の類似した土地の評価額を参考にすることで、より適正な評価額を算出できる可能性があります。