税理士法人プライムパートナーズ

消費税の原則課税と簡易課税、どっちがお得?違いと注意点を解説

2025-01-01
目次

事業をされている方にとって、消費税の納税は避けて通れない大切な義務ですよね。実は、その消費税の計算方法には「原則課税」「簡易課税」という2つの方法があるのをご存知でしたか?どちらを選ぶかによって、納税額が大きく変わったり、経理の負担がぐっと軽くなったりすることがあるんです。この記事では、それぞれの制度の特徴や違い、どちらを選ぶべきか、そして注意点について、初心者の方にも分かりやすく解説していきますね。

消費税の納税額はどうやって決まるの?

まず、消費税の基本的な計算方法についておさらいしておきましょう。消費税の納税額は、とてもシンプルに言うと、お客様から預かった消費税から、仕入れや経費で支払った消費税を差し引いて計算されます。この仕組みが基本となり、2つの課税方式に分かれていきます。

原則課税とは?

「原則課税」は、その名の通り、消費税計算の基本となる方法です。計算式は以下のようになります。

納付する消費税額 = 売上にかかる消費税額(預かった消費税) – 仕入れや経費にかかる消費税額(支払った消費税)

例えば、商品を売って110円(うち消費税10円)を受け取り、その商品を77円(うち消費税7円)で仕入れていた場合、10円から7円を引いた3円を納税します。この「支払った消費税」を差し引くことを「仕入税額控除」と呼びます。原則課税では、この支払った消費税額を一つひとつ正確に集計して計算する必要があります。

簡易課税とは?

「簡易課税」は、中小企業の経理の負担を軽くするために作られた、特別な計算方法です。こちらは、実際に支払った消費税額を集計する代わりに、「みなし仕入率」というものを使って計算します。計算式はこちらです。

納付する消費税額 = 売上にかかる消費税額 – (売上にかかる消費税額 × みなし仕入率)

「みなし仕入率」は事業の種類によって国が定めた割合のことで、この割合を使って「これくらいは仕入れで消費税を支払っただろう」とみなして計算できるんです。これにより、経費の消費税を細かく計算する手間が省けます。

原則課税と簡易課税の5つの違いを徹底比較

それでは、2つの制度の具体的な違いを5つのポイントに分けて見ていきましょう。どちらがご自身の事業に合っているか、イメージしながら読み進めてみてくださいね。

 

比較ポイント原則課税簡易課税
計算方法預かった消費税から実際に支払った消費税を差し引く預かった消費税から「みなし仕入率」で計算した金額を差し引く
対象者すべての課税事業者基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者
事前手続き不要「消費税簡易課税制度選択届出書」の事前提出が必要
事務負担大きい(すべての経費の消費税管理が必要)小さい(売上の消費税管理だけでOK)
消費税の還付あり(赤字や高額な設備投資の場合)なし

計算方法の違い

一番大きな違いは、「仕入税額控除」の計算方法です。原則課税は、レシートや請求書を元に実際に支払った消費税額を一つひとつ積み上げて計算する「実額計算」です。一方、簡易課税は、売上にかかる消費税額さえわかれば、業種ごとの「みなし仕入率」を掛けるだけで計算できるため、非常にシンプルです。

対象となる事業者の違い

原則課税は、すべての課税事業者が対象です。一方、簡易課税制度を利用できるのは、基準期間(個人事業主なら前々年、法人なら前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の事業者に限られます。売上が5,000万円を超えると、自動的に原則課税で申告することになります。

事前の手続きの違い

原則課税を選択する場合、特別な手続きは必要ありません。しかし、簡易課税を選択したい場合は、適用を受けたい課税期間が始まる前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。一度提出すると、自動的に継続されるので毎年提出する必要はありません。

事務負担の違い

日々の経理作業の負担は大きく異なります。原則課税では、すべての経費について消費税がかかる取引(課税仕入れ)かどうかを区分し、税率(10%か8%)ごとに集計する必要があります。特に2023年10月から始まったインボイス制度では、仕入税額控除を受けるために適格請求書(インボイス)の保存が必要となり、事務負担はさらに増えました。
一方、簡易課税は売上さえ管理できていれば納税額を計算できるため、経費のインボイス対応などを気にする必要がなく、事務負担を大幅に軽減できます。

消費税の還付

原則課税では、売上より仕入れや経費が多かった場合(赤字の場合)や、高額な設備投資をして支払った消費税額が預かった消費税額を上回った場合に、その差額を還付金として受け取ることができます。しかし、簡易課税は売上を基準に計算するため、支払った消費税額がいくら多くても還付を受けることはできません。

簡易課税制度のキホン「みなし仕入率」とは?

簡易課税制度を理解する上で欠かせないのが「みなし仕入率」です。これは、業種によって仕入れや経費の割合がだいたい決まっているという考え方に基づいています。事業は6つの区分に分けられており、みなし仕入率が高いほど、納税額は少なくなります。

事業区分ごとのみなし仕入率

事業区分みなし仕入率
第1種事業(卸売業)90%
第2種事業(小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡))80%
第3種事業(製造業、建設業など)70%
第4種事業(飲食店業など、他に分類されない事業)60%
第5種事業(サービス業、運輸通信業、金融・保険業)50%
第6種事業(不動産業)40%

例えば、デザイナーやコンサルタントなどのサービス業(第5種事業)であれば、預かった消費税の50%を支払った消費税とみなして計算します。ご自身の事業がどれに当てはまるか、確認してみてくださいね。

どっちがお得?有利になるケースを具体例で解説

では、実際にどちらの制度を選ぶと納税額が少なくなるのでしょうか。事業の状況によって有利・不利が変わってきますので、具体的なケースを見ていきましょう。

原則課税が有利になるケース

原則課税は、実際に支払った消費税額が多い場合に有利になります。

  • 大きな設備投資を予定している場合
    例えば、課税売上2,000万円(預かり消費税200万円)の製造業の会社が、1,650万円(うち消費税150万円)の新しい機械を購入したとします。この年の経費にかかる消費税が60万円だった場合、支払った消費税の合計は210万円となり、預かった200万円を上回ります。この場合、差額の10万円が還付されます。簡易課税では還付はないため、原則課税が断然お得です。
  • 実際の経費率が「みなし仕入率」より高い場合
    外注費が多い建設業や、仕入が多い小売業などで、実際の経費の割合がみなし仕入率を超える場合は、原則課税の方が納税額を抑えられます。

簡易課税が有利になるケース

簡易課税は、実際に支払った消費税額が少ない場合に有利になります。

  • 実際の経費率が「みなし仕入率」より低い場合
    例えば、課税売上1,000万円(預かり消費税100万円)のフリーランスのコンサルタント(第5種事業:みなし仕入率50%)で、経費にかかった消費税が年間20万円だったとします。

    • 原則課税の場合:100万円 – 20万円 = 納税額80万円

    • 簡易課税の場合:100万円 – (100万円 × 50%) = 納税額50万円


    このケースでは、簡易課税の方が30万円もお得になります。人件費の割合が高いサービス業などは、簡易課税が有利になることが多いです。


  • 事務負担を軽減したい場合
    納税額の有利不利だけでなく、経理にかかる時間やコストを削減したいという方には簡易課税がおすすめです。

制度選択における注意点

どちらの制度を選ぶか決める前に、必ず知っておいてほしい注意点がいくつかあります。後から「知らなかった!」とならないように、しっかり確認しておきましょう。

事前の届出が必須

何度かお伝えしましたが、簡易課税を適用するには、適用を受けたい課税期間の初日の前日までに届出が必要です。「次の申告から簡易課税にしよう」と思っても、期限を過ぎていると次の次の課税期間まで待たなければなりませんので注意してください。

2年間の継続適用(2年縛り)

これが最も重要な注意点です。一度簡易課税を選択すると、原則として2年間は原則課税に戻ることができません。これを「2年縛り」と呼ぶこともあります。例えば、簡易課税を選択した翌年に大きな設備投資の計画が持ち上がり、原則課税なら還付が受けられたとしても、変更はできません。2年先までの事業計画をある程度見越して慎重に判断することが大切です。

インボイス制度との関係

簡易課税制度を選択している事業者は、仕入税額控除の計算でインボイスは不要なため、取引先から受け取る請求書がインボイスかどうかを気にする必要はありません。ただし、自社が買い手からインボイスの発行を求められた場合に対応する義務は、原則課税の事業者と変わりませんので、その点は注意が必要です。

まとめ

消費税の原則課税簡易課税、それぞれの特徴や違いについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。最後にポイントをまとめます。

  • 原則課税:実額で計算する方法。大きな設備投資や赤字で消費税の還付が見込める場合に有利だが、事務負担が大きい。
  • 簡易課税:みなし仕入率で計算する方法。経費が少ない事業で節税になりやすく、事務負担が圧倒的に軽い。ただし、適用には売上要件と事前の届出が必要で、2年縛りがある。

どちらの制度が有利になるかは、あなたの事業内容、経費の構造、そして将来の事業計画によって大きく異なります。目先の納税額だけでなく、事務負担や2年間の継続適用といったルールも考慮して、ご自身の事業に最適な方法を選択してくださいね。もし判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.6505 簡易課税制度

国税庁 No.6351 納付税額の計算のしかた

国税庁 No.6509 簡易課税制度の事業区分

国税庁 インボイス制度について

消費税の原則課税と簡易課税に関するよくある質問まとめ

Q. 消費税の原則課税と簡易課税の最大の違いは何ですか?

A. 消費税の計算方法です。原則課税は預かった消費税から実際に支払った消費税を差し引いて計算します。一方、簡易課税は預かった消費税に業種ごとの「みなし仕入率」を掛けて納税額を計算する簡便的な方法で、事務負担が軽くなるのが特徴です。

Q. 簡易課税制度を選ぶメリット・デメリットは何ですか?

A. メリットは、消費税の計算が簡単になり事務負担が軽減される点です。デメリットは、大きな設備投資などで支払った消費税が多くても、その全額を控除できず、還付も受けられない点です。

Q. 簡易課税は誰でも選択できるのですか?

A. いいえ、選択できるのは基準期間(前々事業年度)の課税売上高が5,000万円以下の事業者のみです。5,000万円を超えると、簡易課税は選択できません。

Q. 簡易課税にしたい場合、いつまでに何をすれば良いですか?

A. 適用を受けたい課税期間が始まる前日までに、「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。一度提出すると、原則として2年間は継続適用となります。

Q. インボイス制度が始まっても簡易課税は利用できますか?

A. はい、利用できます。インボイス制度が始まっても、簡易課税を選択している事業者は、売上にかかる消費税額をもとに納税額を計算するため、受け取った請求書がインボイスであるかどうかを問わず、仕入税額控除の計算が可能です。

Q. 原則課税と簡易課税、どちらが有利か迷っています。

A. 支払う消費税が少ない業種(サービス業など)は簡易課税が有利になる傾向があります。逆に、仕入や設備投資が多い業種は、支払った消費税を全額控除できる原則課税が有利になることが多いです。どちらが有利かは事業内容や設備投資の計画によって異なるため、シミュレーションしてみることをお勧めします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。