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役員社宅の50%ルールは間違い?小規模住宅の給与課税を避ける方法

2025-01-03
目次

役員社宅は、会社の経費を増やしつつ役員の手取りも実質的に増やすことができる、非常に有効な節税策です。ただ、その運用方法を間違えると、思わぬ税金が発生してしまう可能性があります。とくに「家賃の50%を役員から徴収すれば大丈夫」という話をよく耳にしますが、実はこれが役員社宅の場合、必ずしも正しくないことをご存知でしたか?この記事では、会社が役員に小規模住宅を貸す際に、給与として課税されないための正しい家賃設定について、わかりやすく解説していきます。

役員社宅と給与課税の基本ルール

まず、なぜ役員社宅が節税につながるのか、そしてなぜ家賃設定が重要なのか、基本的な仕組みからお話ししますね。会社が役員に社宅を提供し、その家賃の一部または全部を会社が負担すると、その負担分は会社の経費(損金)に計上できます。これにより会社の利益が圧縮され、法人税の節税につながるのです。しかし、役員から適切な家賃を徴収しないと、会社が負担した家賃分が「役員への給与」とみなされ、所得税が課税されてしまう(給与認定課税)というルールがあります。

給与課税されないための「賃貸料相当額」とは?

給与として課税されないためには、会社は役員から「賃貸料相当額」以上の家賃を受け取る必要があります。この「賃貸料相当額」とは、税法で定められた「これだけの家賃は最低限もらってくださいね」という金額のことです。もし役員から受け取る家賃がこの金額に満たない場合、その差額が役員の給与として課税対象になってしまいます。ですから、この「賃貸料相当額」を正しく計算することが、役員社宅をうまく活用する上で最も大切なポイントになるんです。

役員と従業員では社宅のルールが違う

ここで注意したいのが、役員と従業員とでは、社宅に関する税金のルールが異なるという点です。巷でよく言われる「家賃の50%ルール」は、実は従業員向けのルールが基になっています。従業員の場合は、税法で定められた「賃貸料相当額」の50%以上の家賃を徴収していれば、差額は給与課税されないという特例があります。しかし、役員にはこの50%の特例が原則として適用されません。この違いを知らずに同じように運用してしまうと、後で税務調査で指摘される可能性があるので、しっかり区別して理解しておきましょう。

役員の「賃貸料相当額」の正しい計算方法

それでは、役員の場合の「賃貸料相当額」はどのように計算すればよいのでしょうか。計算方法は、社宅の種類によって3つに区分されています。ほとんどのケースは「小規模な住宅」に該当しますが、まずはどの種類に当てはまるかを確認しましょう。

社宅の種類の判定

社宅は、まず「豪華社宅」に該当しないかを確認し、次に「小規模な住宅」に該当するかを判定します。

住宅の種類 判定基準
小規模な住宅 法定耐用年数が30年以下の木造などの建物は床面積132㎡以下
法定耐用年数が30年を超える鉄筋コンクリート造などの建物は床面積99㎡以下
小規模な住宅ではない住宅 上記の小規模な住宅の基準を超える住宅。
豪華社宅 床面積が240㎡を超えるなど、社会通念上、豪華と判断される住宅。この場合、節税メリットはほぼありません。

小規模住宅の「賃貸料相当額」計算式

役員に貸す住宅が「小規模な住宅」に該当する場合、賃貸料相当額は次の3つの合計額となります。この計算式で算出した金額を全額、役員から徴収する必要があります。

【賃貸料相当額 = (1) + (2) + (3)】

  1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
  2. 12円 ×(その建物の総床面積(㎡)÷ 3.3㎡)
  3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%

この計算式を見るとわかるように、実際の支払家賃は計算に一切関係ありません。固定資産税の課税標準額を基に計算するのが特徴です。

小規模住宅ではない場合の「賃貸料相当額」

もし社宅が小規模住宅の基準を超える場合、計算方法が少し変わります。特に、会社が物件を借り上げて役員に貸す「借り上げ社宅」の場合は、以下のいずれか多い方の金額が賃貸料相当額となります。

  • 会社が大家さんに支払っている家賃の50%の金額
  • 自社所有の場合の計算式で算出した金額

この「小規模ではない住宅」の場合に限り、「家賃の50%」という基準が出てきます。しかし、これはあくまで比較対象の一つであり、「50%を払っておけば良い」という単純な話ではないので注意が必要です。

【具体例】小規模住宅の賃貸料相当額を計算してみよう

言葉だけだと少し難しいので、具体的な数字を使って小規模住宅の賃貸料相当額を計算してみましょう。

計算の前提条件

  • 種類:鉄筋コンクリート造マンション(法定耐用年数30年超)
  • 会社が支払う家賃:月額200,000円
  • 専有部分の床面積:80㎡(99㎡以下なので小規模住宅)
  • 建物の固定資産税の課税標準額(該当部屋分):1,500万円
  • 敷地の固定資産税の課税標準額(該当部屋分):2,000万円

計算してみましょう

上記の前提条件を、先ほどの計算式に当てはめてみます。

  1. 建物の固定資産税分:1,500万円 × 0.2% = 30,000円
  2. 建物の床面積分:12円 × (80㎡ ÷ 3.3㎡) ≒ 2,909円
  3. 敷地の固定資産税分:2,000万円 × 0.22% = 44,000円

合計(賃貸料相当額):30,000円 + 2,909円 + 44,000円 = 76,909円

このケースでは、会社は役員から毎月76,909円以上の家賃を受け取っていれば、給与課税されることはありません。会社が支払う家賃200,000円との差額である123,091円は、会社の経費として計上できます。もし、よく言われる「家賃の50%」である100,000円を徴収するよりも、役員の負担を約23,000円減らしつつ、会社の経費をその分増やすことができるのです。

役員社宅を導入する際の注意点

役員社宅制度を正しく、そして最大限に活用するためには、いくつか注意すべき点があります。

契約は必ず「法人名義」で

大前提として、賃貸借契約は必ず法人名義で行う必要があります。役員個人が契約した物件の家賃を会社が補助する形をとると、それは「住宅手当」とみなされ、全額が給与として課税されてしまいます。

固定資産税課税標準額の確認方法

計算に不可欠な固定資産税の課税標準額は、自社所有物件であれば毎年の納税通知書で確認できます。借り上げ物件の場合は、大家さんや管理会社に問い合わせて確認する必要があります。自治体によっては、賃借人でも固定資産課税台帳を閲覧できる場合がありますので、確認してみましょう。

水道光熱費などは役員の個人負担

会社が経費にできるのは、あくまで家賃の部分です。水道光熱費や駐車場代、インターネット通信費など、役員が個人的に使用する費用は、役員本人が負担しなければなりません。これらを会社が負担すると、その分も給与として課税されてしまいます。

まとめ

会社が役員に小規模住宅を貸す場合、給与課税をされないためには、「賃貸料相当額」を正しく計算し、その全額を徴収する必要があります。従業員に適用される「賃貸料相当額の50%以上」というルールは役員には適用されない、という点をしっかり覚えておきましょう。

一見、計算が面倒に感じるかもしれませんが、正しく計算することで、会社の節税効果を最大化し、役員の負担も最適化することができます。「家賃の半分くらいで大丈夫だろう」という安易な判断はせず、この記事でご紹介した方法で一度きちんと計算してみてくださいね。もし計算や運用に不安がある場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

役員社宅の家賃と給与課税に関するよくある質問まとめ

Q.会社が役員に小規模な社宅を貸す場合、家賃が一定額以上なら給与課税されないというのは本当ですか?

A.いいえ。役員に貸す住宅が「小規模な住宅」に該当する場合、賃貸料相当額は、固定資産税の課税標準額を基に算出した金額を全額、役員から徴収する必要があります。

Q.給与課税されないルールの対象となる「小規模な住宅」とは、どのような住宅ですか?

A.法定耐用年数が30年以下の木造家屋などは床面積が132㎡以下、法定耐用年数が30年を超える鉄筋コンクリート造などは床面積が99㎡以下の住宅を指します。

Q.給与課税されない家賃の基準となる「相当な賃料」は、どのように計算するのですか?

A.「相当な賃料」は、(1)その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%、(2)12円×その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡、(3)その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22% の3つの合計額で計算します。

Q.もし社宅が「小規模な住宅」に該当しない場合は、どうなりますか?

A.小規模でない住宅の場合、会社が支払う家賃と役員から受け取る家賃との差額が給与として課税されます。ただし、自社所有の社宅か、他から借り受けた住宅かで計算方法が異なります。

Q.この役員社宅の家賃ルールは、一般の従業員にも適用されますか?

A.いいえ、従業員の場合は別のルールが適用されます。一般の従業員の場合は、役員よりもさらに有利な条件(「相当な賃料」の50%未満でも可)で給与課税されないケースがあります。

Q.会社が役員社宅制度を導入するメリットは何ですか?

A.役員個人にとっては、社会保険料や税金の負担が減り、実質的な手取り額が増える効果があります。会社にとっては、役員の社会保険料の会社負担分を軽減できるというメリットがあります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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対応責任者
税理士 島本 雅史

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