会社が所有する建物を、一部は従業員のための社宅、残りは事業用スペースとして活用したいと考えることはよくありますよね。でも、その際に「賃貸借契約書に書く面積は、社宅部分だけでいいの?それとも建物全体?」「固定資産税の軽減措置である小規模住宅用地の特例は、どの面積で判断されるの?」といった疑問が出てくるかと思います。契約や税金に関わることなので、正しく理解しておきたいですよね。この記事では、そんなお悩みを解決するために、契約書に記載すべき面積と、小規模住宅用地の判定方法について、わかりやすく解説していきます。
賃貸借契約書に記載すべき面積は「一部面積」です
会社所有の建物の一部を社宅として従業員に貸し出す場合、賃貸借契約書には原則として、実際に社宅として貸し出す部分の面積(一部面積)を記載します。建物全体の面積ではないので注意してくださいね。
なぜ「一部面積」を記載するの?
賃貸借契約は、「何を」「誰に」「いくらで」貸すのかを明確にするためのものです。そのため、契約の対象となる目的物、つまり従業員さんが実際に住んで使用する「社宅部分」を特定する必要があります。契約書に社宅部分の面積を具体的に記載することで、貸主(会社)と借主(従業員)の間の権利と義務の範囲がはっきりするんです。もし建物全体の面積を記載してしまうと、事業用スペースまで貸していると解釈されかねず、後々のトラブルの原因になる可能性もあります。
契約書作成で注意したいポイント
契約書には、貸し出す部屋の面積を記載するだけでなく、どの部分が対象なのかを誰が見てもわかるようにしておくことが大切です。以下の点を盛り込むと、より明確で親切な契約書になりますよ。
- 図面の添付:建物の図面(間取り図など)を添付し、社宅として貸し出す範囲を色分けなどで明示すると非常にわかりやすくなります。
- 共用部分のルール:エントランスや廊下、階段など、事業用スペースと共用する部分がある場合は、その利用ルール(利用可能な時間帯、清掃の分担など)を特記事項として記載しておくと、お互いに気持ちよく利用できます。
- 目的物の特定:「〇〇ビル 2階 201号室(専有面積〇〇㎡)」のように、部屋番号や具体的な場所を正確に記載しましょう。
固定資産税の小規模住宅用地の特例と判定面積
建物の一部を社宅(居住用)として利用する場合、その土地の固定資産税について「小規模住宅用地の特例」が適用される可能性があります。これは大きな節税につながる大切なポイントです。ここでは、その判定方法について見ていきましょう。
小規模住宅用地の特例ってどんな制度?
小規模住宅用地の特例とは、人々が住むための住宅が建っている土地(住宅用地)の固定資産税を軽減する制度です。具体的には、住宅1戸あたり200㎡までの部分(小規模住宅用地)について、固定資産税の課税標準額が価格の1/6に、都市計画税は1/3に減額されます。社宅も従業員が住むための「住宅」ですので、この特例の対象になるんです。
判定に使うのは「按分した面積」です
では、建物の一部が社宅、残りが事業用という「併用住宅」の場合、どの面積で判定するのでしょうか。答えは、建物全体の面積ではなく、居住部分の割合に応じて按分計算した面積で判定します。
つまり、「建物全体のうち、どれくらいの割合が住宅として使われているか」によって、土地のうちどれくらいの面積が住宅用地として認められるかが決まる、という仕組みです。建物全体の敷地面積がそのまま特例の対象になるわけではないので、注意が必要ですね。
併用住宅における特例の按分計算方法
併用住宅の場合、敷地のうち住宅用地として扱われる面積(課税標準の特例の対象となる面積)は、家屋の構造と居住部分の割合によって決まります。少し複雑に感じるかもしれませんが、ルールは明確に決まっています。
居住部分の割合に応じた適用率
敷地面積に下の表の率を掛けて、住宅用地の面積を計算します。社宅のような居住用の部分が建物の床面積の4分の1以上あるかどうかが、ひとつのポイントになります。
| 家屋における居住部分の割合 | 住宅用地とみなされる率 |
| 4分の1以上 2分の1未満 | 0.5(50%) |
| 2分の1以上 | 1.0(100%) |
例えば、建物の延床面積のうち40%が社宅(居住部分)の場合、敷地面積の50%が住宅用地として扱われます。その住宅用地とされた面積のうち、200㎡までの部分が小規模住宅用地として1/6の課税標準になります。
【具体例】で見てみよう
少しイメージしにくいかもしれないので、具体的な例で計算してみましょう。
- 敷地面積:300㎡
- 建物延床面積:400㎡
- 居住部分(社宅)の面積:150㎡
- 事業用部分(事務所)の面積:250㎡
1. 居住部分の割合を計算
150㎡(居住部分) ÷ 400㎡(延床面積) = 37.5%
2. 住宅用地率を判定
居住部分の割合が「4分の1(25%)以上 2分の1(50%)未満」に該当するため、住宅用地率は0.5 (50%) となります。
3. 住宅用地の面積を計算
300㎡(敷地面積) × 0.5(住宅用地率)= 150㎡
この結果、敷地300㎡のうち150㎡が住宅用地として認められます。そして、この150㎡は200㎡以下なので、すべてが小規模住宅用地となり、課税標準が1/6に減額される、ということになります。
忘れてはいけない!適正な社宅家賃の設定
建物の一部を社宅として貸す場合、従業員から徴収する家賃の額も非常に重要です。税務上、無償で貸したり、あまりにも低い家賃で貸したりすると、差額分が従業員への給与とみなされ、所得税が課税されてしまうからです。
給与課税されない家賃(賃貸料相当額)とは?
従業員から1ヶ月あたり一定額以上の家賃(これを「賃貸料相当額」といいます)を受け取っていれば、給与として課税されることはありません。国税庁が定める賃貸料相当額は、次の3つの合計額です。
- (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
- 12円 × (その建物の総床面積(㎡) ÷ 3.3㎡)
- (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%
この計算で出た金額の50%以上を従業員から家賃として徴収していれば、原則として給与課税の問題は生じません。毎年送られてくる固定資産税の課税明細書を基に、しっかり計算しておきましょう。
まとめ
会社所有の建物を一部社宅として活用する際のポイントをまとめます。
- 賃貸借契約書に記載する面積は、実際に貸し出す社宅部分の「一部面積」です。図面を添付するなどして、対象範囲を明確にしましょう。
- 固定資産税の小規模住宅用地の特例は、居住部分の割合に応じて按分計算された面積で判定されます。建物全体ではない点に注意が必要です。
- 従業員に給与課税されないためには、「賃貸料相当額」の50%以上を家賃として徴収することが大切です。
これらのポイントを押さえておくことで、法的なトラブルや税務上の問題を未然に防ぐことができます。契約書の作成や税金の計算で不安な点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
参考文献
社宅と事務所併用時の賃貸借契約と税金のよくある質問まとめ
Q. 会社所有の建物を一部社宅、一部事務所として貸す場合、賃貸借契約書に記載する面積はどの部分ですか?
A. 賃貸借の対象となる「社宅部分の面積」と「事務所部分の面積」をそれぞれ明記するのが一般的です。これにより、家賃や税金の計算根拠が明確になります。
Q. 事務所兼社宅の場合、固定資産税の「小規模住宅用地」の特例は適用されますか?
A. はい、適用されます。ただし、建物全体ではなく、総床面積に占める居住部分(社宅)の割合に応じて按分計算された土地の面積が、特例の対象となります。
Q. 小規模住宅用地の判定は、土地全体の面積で行うのですか?
A. いいえ、土地全体の面積ではありません。敷地面積に、建物の総床面積に対する「居住部分の床面積の割合」を掛けて算出した面積(住宅用地相当分)で判定します。
Q. 賃貸借契約書で社宅と事務所の面積を分けて記載するメリットは何ですか?
A. 消費税(事務所家賃は課税、社宅家賃は非課税)の区別や、固定資産税の軽減特例の適用範囲を明確にする根拠となるため、税務上の取扱いを正しく行う上で非常に重要です。
Q. 社宅と事務所で家賃を分ける必要はありますか?
A. はい、分けることを強く推奨します。事務所部分の家賃には消費税がかかりますが、社宅部分の家賃は非課税です。税務処理を正しく行うために、それぞれの賃料を明確に設定しましょう。
Q. 契約書を1通にまとめても問題ありませんか?
A. 問題ありません。1通の契約書の中に、貸し出す範囲、それぞれの用途(居住用・事業用)、面積、賃料の内訳などを明確に記載すれば、有効な契約として成立します。