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相続した空き家売却の3,000万円控除!要件や書類を徹底解説

2025-12-20
目次

ご両親などから相続したものの、誰も住む予定がない「空き家」。どうしようか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。実は、その空き家を売却する際に、税金がぐっとおさえられる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」という制度があるんです。この特例を使えば、譲渡所得から最高3,000万円もの金額を控除できます。今回は、このとてもお得な特例について、対象となる要件や売却のパターン、期限、そして手続きに必要な書類や注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきますね。

そもそもどんな制度?空き家売却の3,000万円特別控除とは

この制度は、増え続ける空き家を減らすことを目的に国が設けた特例です。正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。相続した空き家を売却して利益(譲渡所得)が出た場合に、その利益から最大3,000万円を差し引くことができるというものです。ただし、令和6年1月1日以降の売却で、相続人が3人以上いる場合は、控除額が1人あたり2,000万円になります。不動産を売却したときの税金は利益に対してかかるので、この控除を使えるかどうかで、手元に残る金額が大きく変わってきます。ぜひ内容をしっかり理解して、活用を検討してみてくださいね。

【要チェック】特例を受けるための対象要件

この特例は、誰でもどんな空き家でも使えるわけではありません。いくつかの細かい要件が定められています。ここでは「人」「家屋」「売却」の3つのポイントに分けて、対象となるための要件を見ていきましょう。

対象となる「人」の要件

まず、この特例を使えるのは、相続または遺贈によって、亡くなった方(被相続人)が住んでいた家屋とその敷地を取得した相続人です。つまり、親から家を相続した子どもなどが対象になります。ご自身がこの条件に当てはまるか、最初に確認してくださいね。

対象となる「空き家(家屋)」の要件

次に、売却する空き家自体にも満たすべき要件があります。少し細かいですが、とても大切なポイントです。

建築時期 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること。(いわゆる旧耐震基準の建物です)
建物の種類 区分所有建物(マンションなど)ではないこと。
居住状況 相続が始まる直前に、亡くなった方以外に住んでいる人がいなかったこと。(亡くなった方が一人暮らしだった、ということです)
相続後の利用状況 相続してから売却するまでの間、その家屋や敷地を事業用、貸付用、またはご自身の居住用として一度も使っていないこと。

特例の対象になる?老人ホーム入居の場合

「亡くなる直前は老人ホームに入居していた場合はどうなるの?」と疑問に思う方も多いですよね。ご安心ください。一定の条件を満たせば、老人ホームなどに入居していた場合でも特例の対象となります。

主な条件は以下の通りです。

  • 亡くなった方が、要介護認定や要支援認定を受けて老人ホーム等に入所していたこと。
  • 入所後、亡くなるまでその家を事業や貸付、他の人の居住用に使っていなかったこと。
  • 入所後も、家財道具を保管するなど、亡くなった方が一定の使用をしていたこと。

ただし、ご親族の家や一般の賃貸住宅に引っ越して亡くなった場合は、この特例の対象外となるので注意が必要です。

対象となる「売却」の要件

最後に、売却そのものに関する要件です。こちらも重要なポイントなので、しっかり確認しましょう。

売却価格 家屋と土地を合わせた売却価格が1億円以下であること。
売却相手 親子や夫婦など、特別な関係にある人への売却ではないこと。(他人への売却が原則です)

知っておきたい!3つの売却パターンと期限

特例の対象となる売却方法は、主に3つのパターンに分けられます。ご自身の状況に合わせて、どのパターンで売却するかを検討しましょう。また、売却には期限も設けられています。

パターン1:家屋を耐震リフォームして売却

相続した家屋をそのまま売却する場合は、売却する時点で現行の耐震基準を満たしている必要があります。昭和56年5月31日以前の建物は旧耐震基準で建てられているため、多くの場合、耐震リフォーム工事が必要になります。リフォーム後に「耐震基準適合証明書」などを取得し、家屋と敷地を一緒に売却するパターンです。

パターン2:家屋を取り壊して更地で売却

古い家屋を取り壊し、更地にして土地だけを売却するパターンです。この場合も特例の対象となります。ただし、家を取り壊してから土地を売るまでの間、その土地を駐車場として貸し出すなど、貸付用や事業用に使ってしまうと対象外になるので注意してください。

【令和6年改正】パターン3:売却後に買主が解体・耐震リフォーム

令和6年1月1日以降の売却から、新しいルールが追加されました。これは、家屋はそのままの状態で買主に売却し、売却の翌年2月15日までに、買主が耐震リフォームまたは家屋の取り壊しを行った場合でも特例の対象となる、というものです。これにより、売主側の負担が軽減され、特例を利用しやすくなりました。

いつまでに売却すればいいの?売却の期限

この特例には期限があります。それは、「相続の開始があった日(亡くなった日)から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却することです。例えば、2024年4月10日に相続が開始した場合、3年後の2027年4月9日を含む年、つまり2027年12月31日までに売却を完了させる必要があります。また、この特例制度自体の適用期限は、現在のところ令和9年(2027年)12月31日までとなっています。

確定申告で必要になる書類一覧

この特例を受けるためには、売却した翌年に必ず確定申告を行う必要があります。その際に提出する必要書類は、売却パターンによって少し異なりますが、主に以下のものが必要です。

全パターン共通で必要な主な書類
  • 確定申告書
  • 譲渡所得の内訳書
  • 売却した家屋・土地の登記事項証明書
  • 売買契約書の写し など
市区町村役場で取得する特に重要な書類 被相続人居住用家屋等確認書
この書類は、空き家のある市区町村役場で申請・交付してもらいます。要件を満たしていることを証明する重要な書類で、申請から交付まで時間がかかることもあるので、早めに準備を始めましょう。
売却パターンに応じて必要になる書類
  • パターン1の場合:耐震基準適合証明書 または 建設住宅性能評価書の写し
  • パターン2の場合:家屋の閉鎖事項証明書(取り壊したことの証明)など
  • パターン3の場合:買主が耐震改修や解体を行ったことを証明する書類 など

必要書類は多岐にわたるため、国税庁のホームページを確認したり、税務署に問い合わせたりして、漏れがないように準備を進めましょう。

実務上の注意点とよくある質問

最後に、特例を利用する上での注意点や、よくあるご質問についてお答えします。知っておくと役立つポイントばかりですので、ぜひ参考にしてください。

控除額が変わる?相続人が3人以上の場合

先にも少し触れましたが、令和6年1月1日以降の売却からルールが変更され、家屋と土地を相続した相続人が3人以上いる場合、特別控除額は1人あたり2,000万円になります。相続人が1人または2人の場合は、これまで通り3,000万円です。複数人で相続した場合は、ご自身の控除額がいくらになるか確認しておきましょう。

他の特例との併用はできる?

不動産売却に関する税金の特例は他にもありますが、併用できるものとできないものがあります。

  • 相続税の取得費加算の特例:併用できません。どちらか有利な方を選択する必要があります。
  • マイホームを売ったときの3,000万円特別控除:併用できません
  • 小規模宅地等の特例:併用できます。こちらは相続税の特例で、今回の特例は所得税の特例なので、それぞれの要件を満たせば両方の適用が可能です。

「被相続人居住用家屋等確認書」は早めに準備を

手続きの鍵となる「被相続人居住用家屋等確認書」は、市区町村の担当窓口で発行してもらいますが、申請に必要な書類も多く、発行までに2週間程度、あるいはそれ以上かかることもあります。確定申告の期限間際に慌てないように、売却が決まったらすぐにでも準備に取り掛かることをおすすめします。

まとめ

相続した空き家を売却する際の3,000万円特別控除は、税金の負担を大きく減らせる可能性のある、非常に有利な制度です。しかし、ご紹介したように、対象となるための要件が細かく定められています。ご自身の状況が要件に当てはまるかしっかりと確認し、期限内に、正しい手順で手続きを進めることが何よりも大切です。もし少しでも不安な点や分からないことがあれば、お近くの税務署や、税理士などの専門家に相談してみてくださいね。

参考文献

国税庁|No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

国土交通省|空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)

相続空き家3,000万円特別控除のよくある質問まとめ

Q.相続空き家の3,000万円控除は、誰が利用できますか?

A.相続によって家屋を取得した個人が対象です。被相続人(亡くなった方)が一人暮らしであったことなどが要件です。なお、被相続人が老人ホーム等に入居していた場合でも、一定の要件を満たせば適用できる可能性があります。

Q.特例の対象となる空き家には、どのような条件がありますか?

A.主に、①昭和56年5月31日以前に建築されたこと、②区分所有建物(マンション等)でないこと、③相続開始の直前まで被相続人以外に居住者がいなかったこと、といった条件を満たす必要があります。

Q.いつまでに売却すれば、この特例を使えますか?

A.相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ、令和9年12月31日までに売却する必要があります。期限を過ぎると適用できなくなるため注意が必要です。

Q.古家を解体して更地で売却した場合も、特例の対象になりますか?

A.はい、対象になります。ただし、家屋を取り壊してから譲渡契約を締結するまで、その土地を貸駐車場など他の用途に使用していないことが条件となります。

Q.特例を受けるために、確定申告で必要な書類は何ですか?

A.確定申告書に加えて、売却した家屋の所在地の市区町村から交付される「被相続人居住用家屋等確認書」や、売買契約書の写し、登記事項証明書などが必要になります。

Q.相続人が複数いる場合、控除額はどうなりますか?

A.相続人が3人以上の場合、1人あたりの控除額は2,000万円になります。相続人が1人または2人の場合は、1人あたり3,000万円です。控除額は合計ではなく、各相続人の譲渡所得からそれぞれ控除されます。

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