税理士法人プライムパートナーズ

不動産・株の譲渡所得でふるさと納税は増える?所得控除との関係も解説

2025-01-11
目次

不動産や株式を売却して大きな利益が出た年、「いつもより多くふるさと納税ができるかもしれない」と考えたことはありませんか?実は、不動産や株式の売却で得た「譲渡所得」があると、ふるさと納税の控除限度額が大きく上がることがあります。ただし、同時に医療費控除などの「所得控除」があると限度額が下がったり、注意すべき点もいくつか存在します。この記事では、不動産や株式の譲渡所得とふるさと納税の詳しい関係、所得控除がある場合の影響について、分かりやすく解説していきますね。

ふるさと納税と譲渡所得の基本的な関係

まずは、ふるさと納税の限度額がどのように決まり、なぜ譲渡所得があると限度額が上がるのか、基本的な仕組みから見ていきましょう。この仕組みを理解することが、お得にふるさと納税を活用する第一歩になりますよ。

ふるさと納税の控除限度額はどう決まるの?

ふるさと納税で自己負担2,000円で済む寄付の上限額(控除限度額)は、あなたの所得に応じて決まります。具体的には、お住まいの自治体に納める「住民税の所得割額」という金額が計算のベースになっています。
所得が多いほど納める住民税所得割額も多くなるため、それに比例してふるさと納税の控除限度額も高くなる、というシンプルな仕組みです。つまり、不動産や株式の売却で所得が増えれば、この住民税所得割額が増え、結果としてふるさと納税をより多くできる、ということなんです。

譲渡所得とは?2つの種類を理解しよう

譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を売却して得られる利益のことです。給与所得などとは別に税金が計算される「申告分離課税」という方式がとられますが、ふるさと納税の限度額を計算する際には、給与所得などと合算した総所得金額等を基に考えます。
特に、不動産と株式の譲渡所得は税金のルールが少し異なるので、分けて理解しておくと分かりやすいですよ。

所得の種類 内 容
不動産譲渡所得 土地や建物を売却して得た利益。所有期間によって税率が変わります。
株式等の譲渡所得 株式や投資信託などを売却して得た利益。税率は一律です。

譲渡所得があると、なぜ限度額が上がるの?

繰り返しになりますが、ふるさと納税の限度額は「住民税の所得割額」によって決まります。不動産や株式を売却して譲渡所得が発生すると、その利益に対して所得税と住民税が課税されます。つまり、あなたの課税対象となる所得全体が増えるということです。
課税所得が増えれば、当然「住民税の所得割額」も大きくなります。その結果、その金額を基準に計算されるふるさと納税の控除限度額も自動的に引き上げられる、というわけです。給与所得だけだった年に比べて、より多くの寄付が控除の対象になります。

不動産譲渡所得がある場合のふるさと納税

ご自宅や投資用マンションなどを売却して利益が出た場合、ふるさと納税の限度額はどのように変わるのでしょうか。ここでは、不動産の譲渡所得に絞って、計算方法や注意点を詳しく見ていきましょう。

不動産譲渡所得の計算方法

不動産の譲渡所得は、売却価格そのものではなく、売却価格から取得にかかった費用や売却にかかった経費を差し引いた「利益」の部分を指します。計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

取得費とは、不動産の購入代金や購入時の仲介手数料などのことです。譲渡費用には、売却時の仲介手数料や印紙税などが含まれます。この計算でプラスになった金額が、課税の対象となります。

所有期間で税率が変わる!長期と短期の違い

不動産譲渡所得の大きな特徴は、売却した不動産の所有期間によって税率が大きく変わることです。売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかどうかで判断します。

区分 税率(所得税+住民税)
長期譲渡所得(所有期間5年超) 20.315% (所得税15.315% + 住民税5%)
短期譲渡所得(所有期間5年以下) 39.63% (所得税30.63% + 住民税9%)

このように税率が異なるため、ふるさと納税の限度額計算に影響する住民税の金額も、長期か短期かで変わってきます。

【要注意】特例を使うと限度額は増えない?

マイホームを売却した場合、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」という非常に大きな特例を使えることがあります。この特例を適用すると、譲渡所得から最大3,000万円を差し引くことができます。
もし、この特例を使った結果、譲渡所得が0円またはマイナスになった場合、課税対象の所得は増えません。そのため、残念ながらふるさと納税の控除限度額も上がらない、ということになります。特例を使うことで税金自体は大幅に節税できますが、ふるさと納税の枠は増えない、という点は覚えておきましょう。

株式の譲渡所得がある場合のふるさと納税

次に、株式投資などで利益が出た場合のふるさと納税についてです。不動産とは少し違う注意点があるので、しっかり確認していきましょう。

株式の譲渡所得の計算方法

株式の譲渡所得の計算はシンプルです。売却価格から、その株式を取得したときの価格と売却時にかかった手数料などを差し引いて計算します。

譲渡所得 = 譲渡価額 - (取得費 + 手数料など)

株式の譲渡所得にかかる税率は、不動産と違って所有期間にかかわらず一律で20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)です。

口座の種類で手続きが変わるので注意!

株式投資をしている口座の種類によって、ふるさと納税の手続きへの影響が異なります。特に「源泉徴収ありの特定口座」で取引している方は注意が必要です。
・源泉徴収ありの特定口座
利益が出るたびに証券会社が税金を天引きしてくれるため、原則として確定申告は不要です。しかし、このままだと譲渡所得があなたの所得として認識されないため、ふるさと納税の限度額に反映されません。限度額を上げるためには、あえて確定申告をする必要があります。ただし、確定申告をすると、5か所以内の寄付で確定申告が不要になる「ワンストップ特例制度」は使えなくなりますのでご注意ください。
・源泉徴収なしの特定口座、一般口座
年間で20万円を超える利益が出た場合などは、確定申告が必要です。そのため、確定申告をする際に、ふるさと納税の寄付金控除もあわせて申告するだけで、自動的に譲渡所得が反映された限度額で計算されます。

譲渡損失が出た場合は?(損益通算と繰越控除)

もし株式の取引で年間のトータルがマイナス(譲渡損失)になった場合、確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺することができます(繰越控除)。
繰越控除を利用して利益と損失を相殺すると、その年の課税所得は減少します。課税所得が減るということは、ふるさと納税の控除限度額も下がってしまう可能性がありますので、その点は覚えておきましょう。

所得控除とふるさと納税の関係

譲渡所得だけでなく、医療費控除やiDeCo(イデコ)の掛金控除など、他の「所得控除」がある場合もふるさと納税の限度額に影響します。どのような影響があるのか見ていきましょう。

所得控除があると、ふるさと納税の限度額は下がる

医療費控除や生命保険料控除などの所得控除は、税金を計算する元の金額である「課税所得」を減らしてくれる制度です。課税所得が減ると、納めるべき税金が少なくなるというメリットがあります。
しかし、ふるさと納税の限度額は、この課税所得を基に計算される「住民税所得割額」に連動しています。そのため、所得控除を利用して課税所得が下がると、住民税所得割額も減り、結果としてふるさと納税の控除限度額も下がってしまうのです。節税にはなりますが、ふるさと納税の枠は少し小さくなる、と覚えておきましょう。

対象となる主な所得控除

ふるさと納税の限度額に影響を与える代表的な所得控除には、以下のようなものがあります。これらの控除を確定申告で申請する予定の方は、限度額が少し下がることを想定しておくと良いでしょう。

控除の種類 内容の例
医療費控除 年間の医療費が10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合に受けられる控除です。
社会保険料控除 ご自身で支払った国民年金保険料や国民健康保険料がある場合に受けられる控除です。
小規模企業共済等掛金控除 iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金を全額所得から控除できます。
生命保険料控除・地震保険料控除 支払った生命保険料や地震保険料の一部を所得から控除できます。
配偶者控除・扶養控除 配偶者や扶養している親族がいる場合に受けられる控除です。

【具体例】限度額はいくら変わる?簡単シミュレーション

それでは、実際に譲渡所得や所得控除があると、ふるさと納税の限度額はどのくらい変わるのでしょうか。簡単なモデルケースで見てみましょう。あくまで目安として参考にしてくださいね。

【基本条件】
年収600万円(給与所得のみ)の独身の方、社会保険料控除85万円、基礎控除48万円

ケース1:給与所得のみの場合

譲渡所得も特別な所得控除もない、基本のケースです。
この場合のふるさと納税の控除限度額の目安は、約77,000円です。

ケース2:不動産の長期譲渡所得が500万円追加された場合

基本条件に加えて、所有期間5年超の不動産を売却し、500万円の譲渡所得が発生したケースです。
所得が大幅に増えるため、控除限度額の目安は約190,000円に上がります。約11万円も多く寄付ができる計算になりますね。

ケース3:ケース2に医療費控除30万円が追加された場合

譲渡所得があり、さらに年間で多くの医療費がかかり、30万円の医療費控除を受けるケースです。
所得控除によって課税所得が減るため、控除限度額の目安は約184,000円に下がります。それでも、譲渡所得がない場合に比べると、はるかに高い限度額になります。

※上記の金額はあくまで簡易的なシミュレーションです。正確な金額を知りたい場合は、ふるさと納税サイトのシミュレーターを利用するか、税務署や税理士にご相談ください。

まとめ

不動産や株式の譲渡所得とふるさと納税の関係について、ポイントを振り返ってみましょう。

  • 不動産や株式を売却して譲渡所得(利益)が出ると、ふるさと納税の控除限度額は上がります
  • 不動産売却で「3,000万円特別控除」などの特例を使い、課税される譲渡所得が0円になった場合は、限度額は上がりません。
  • 「源泉徴収ありの特定口座」での株式の利益を限度額に反映させるには、確定申告が必要です。
  • 医療費控除やiDeCoなどの所得控除があると、課税所得が減るため、ふるさと納税の控除限度額は下がります

譲渡所得があった年は、ふるさと納税をよりお得に活用できる絶好のチャンスです。ご自身の所得状況を確認し、シミュレーターなどを活用して正確な限度額を把握した上で、素敵な返礼品を選んでみてはいかがでしょうか。

参考文献

不動産・株式譲渡所得とふるさと納税のよくある質問まとめ

Q.不動産や株を売って利益が出たら、ふるさと納税の限度額は増えますか?

A.はい、増えます。ふるさと納税の控除限度額は、個人の所得に応じて決まります。不動産や株式の譲渡所得(利益)も所得に含まれるため、その分だけ限度額が上がります。

Q.不動産売却で3,000万円特別控除を使ったら、ふるさと納税の限度額はどうなりますか?

A.限度額は増えません。3,000万円特別控除などの特例を適用して課税譲渡所得が0円になった場合、ふるさと納税の限度額計算の基礎となる所得も増えないため、限度額への影響はありません。

Q.「源泉徴収ありの特定口座」での株式利益も、ふるさと納税に影響しますか?

A.確定申告をしなければ影響しません。しかし、ふるさと納税の限度額を増やす目的などで確定申告をすると、株式の譲渡所得が所得に加算され、限度額が上がります。

Q.不動産や株の取引で損失が出た場合、ふるさと納税の限度額は減りますか?

A.はい、減る可能性があります。他の所得と損益通算するなどして、年間の総所得金額等が減少した場合、それを基に計算されるふるさと納税の控除限度額も下がります。

Q.ふるさと納税の限度額計算で、譲渡所得はどのように扱われますか?

A.給与所得など他の所得と合算した「総所得金額等」を基に、住民税の所得割額を算出し、控除限度額が計算されます。譲渡所得もこの「総所得金額等」に含まれます。

Q.譲渡所得がある年にふるさと納税をする際の注意点はありますか?

A.年間の所得が確定する前に寄付をすると、限度額を超えてしまうリスクがあります。特に年末に不動産や株式を売却する場合は、所得の見積もりを慎重に行い、限度額の範囲内で寄付をすることが重要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

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